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もううんざりなのよ@セントジョンズウッド
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学校から帰った直樹は、薄暗いリビングで課題とにらめっこしていた。
夕暮れのロンドンは電気をつけていてもどこかどんよりとしている。
ジリリリンと耳障りに電話が鳴った。
ロンドンのセントジョンズウッド地区にある一軒家はだだっ広く、呼び出し音が派手に響く。
「Hello?」
「ああ、直樹か」
父の為則だったことに安心する。電話で英語を話すのは苦手なのだ。
「うん」
「仕事で今夜は帰れなくなった。いつものところに金があるから、今日の夕食は姉さんと食べてくれ」
ビジネスライクに用件だけを告げられ、直樹は頷いた。
今日の夕食は、じゃない。今日の夕食も、だ。
家族で共に食事をする機会は週に1回もない。食器棚の引き出しにはデリバリーのチラシが詰め込まれている。
「じゃあ、戸締り気をつけろよ」
「あの、父さん。来週の学校の音楽祭なんだけど」
今日招待状もらってきたから、と最後まで言う前に遮られた。
「父さんは仕事だから。姉さんに来てもらいなさい」
父さんはいつも、姉さんにしてもらえという。茗子が直樹のために何もする気がないことを知っているくせに。
「分かった」
暗澹とした気持ちで、直樹は受話器を置いた。
しばらくすると、茗子が大学から帰ってきた。課題は全然進んでいない。
ただいまも言わずに冷蔵庫からロンドンプライドの瓶を取り出す茗子に、おずおずと話しかけた。
「あの、姉ちゃん」
「なに」
「宿題、分からないとこがあって」
「どこ」
二十一歳の茗子は、ビール瓶片手に直樹を不機嫌そうに見下ろした。
「これ。課題の意味が分からなくて」
差し出したプリントを乱暴に受け取り、茗子は呆れたように眉をしかめた。
「教えてくれる友達もいないの」
隣の席の子に聞いてみたけれど、「意味が分からないって意味が分かんない」と大仰に肩をすくめて去ってしまった。
押し黙っていると、茗子は「あんた、英語くらいさっさとできるようになりなさいよ」と呟き、すらすらと英文を訳した。
「3月8日の「国際女性デー」に関する課題。あなたは、1900年代の「デイリー・メール」紙の記者です。当時行われた、女性社会政治連合「サフラジェット」の女性参政権に関するデモンストレーション活動を報じる記事を書きなさい。当時の写真や風刺画を用いて読み手の関心を引く記事にすること。事実関係だけではなく、女性参政権に関する反対派と賛成派の意見をそれぞれ盛り込むこと、でしょ」
「……そんなの、できない」
授業の方法も課題の内容も日本の学校とは全然違う。
「できない課題なんて出さないわよ。面白い課題じゃない。こんなの正解なんてないんだから、好きなように書けばいいのよ」
茗子は、いかにも海外在留の日本人女子大生というように、おかっぱに切りそろえた黒髪に濃い目の化粧をしている。
ぽっちゃりの体型も英国では気にならないのか、ぴったりとしたTシャツにデニムのミニスカート姿だ。
黙りこくったままプリントを握りしめる直樹に、茗子が言った。
「あんたの学校、ボーディングスクールでしょ。寮に入れば?」
「え?」
直樹の学校は7歳から16歳までを受け入れている寮制学校だが、学生の半分は自宅や部外のホームステイ先から通学している。
直樹は不安げに茗子を見る。
それは、家を出ていけということだろうか。
「もううんざりなのよ。毎日毎日家に帰ってあんたの暗い顔見るの。それにあんただって」
直樹は物心ついた頃から姉の言葉が怖い。
形を持たないはずのそれは、しかしナイフのように直樹を刺す。
痛みを伴う言葉は、聞かなかったことにして錘を付けて胸の奥に沈み落とす癖がついていた。
その先を聞きたくなくて、直樹は逃げ出すように二階の自室へ駆けこんだ。
直樹の後ろ姿に向かって、茗子はひとり呟いた。
「寮に入れば英語なんてすぐできるようになって、友達だってできるわよ」
ふわりと。
大好きな匂いとぬくもりを感じ、眠りから醒めた。
「……ちかま、さん?」
至近距離に近間の顔があった。
目元にやわらかな感触。キスをされている。
伏せられていた睫毛が上がり、宝石のような双眸が不安そうに直樹を捉えた。
「起こしたか?」
「いえ、あの。俺、泣いてました?」
視界が滲んでいるし、目元が張り付いているようだ。
「うん。嫌な夢見たか?」
近間はとても心配そうだ。うなされていたのかもしれない。
夢。
見ていただろうか。
身を起こして記憶を探るが、何も思い出せない。
「思い出せません」
頭を振る直樹の目元に、近間はもう一度キスを落とした。
「今夜はいい夢を見られるよ」
「いらっしゃい」
世田谷区桜新町にある父のマンションを訪れると、茗子が出迎えてくれた。
薄化粧に草木染のワンピースを纏った休日仕様の茗子は、ナチュラルな印象だ。
「久しぶり、姉さん。これ、お土産」
リクエストされていた肉骨茶(バクテー)セットを手渡す。
「ありがと。あら、近間さんは?」
「今日は別行動。いきなり近間さんを連れてきたら、父さん腰抜かすだろ」
「それもそうね」
マンションの部屋は小奇麗に片付いているが、装飾品が少なくがらんとしている。
一番奥の今は閉まっている扉が父の部屋なのだろう。直樹の視線に気づいた茗子が言った。
「食事とトイレとお風呂以外はほとんど天の岩戸」
「中で何してるんだ?」
知らないわと姉は首を振った。
「私も、土日のどちらか様子見に来るだけだから。時々宅配便は届くけど、中身は分からないし。たまに、部屋からぶつぶつ怪しい声が聞こえるのよね」
「変な宗教にハマってたりしないよな」
「あり得るわね。まあ、お父さんが自分のお金をどう使おうが勝手だけど」
茗子はすたすたと父の部屋に向かうと、ノックをした。
「お父さん。直樹が来たわよ」
「ああ、今行く」
扉越しに聞こえた声に、直樹はひゅっと息を吸いこんだ。久々に聞いた父の声は、記憶にあるよりも低くて掠れていた。
父の為則が部屋から出てくる。直樹を認めると眩しそうに目を細めた。
「よく来たな、直樹」
夕暮れのロンドンは電気をつけていてもどこかどんよりとしている。
ジリリリンと耳障りに電話が鳴った。
ロンドンのセントジョンズウッド地区にある一軒家はだだっ広く、呼び出し音が派手に響く。
「Hello?」
「ああ、直樹か」
父の為則だったことに安心する。電話で英語を話すのは苦手なのだ。
「うん」
「仕事で今夜は帰れなくなった。いつものところに金があるから、今日の夕食は姉さんと食べてくれ」
ビジネスライクに用件だけを告げられ、直樹は頷いた。
今日の夕食は、じゃない。今日の夕食も、だ。
家族で共に食事をする機会は週に1回もない。食器棚の引き出しにはデリバリーのチラシが詰め込まれている。
「じゃあ、戸締り気をつけろよ」
「あの、父さん。来週の学校の音楽祭なんだけど」
今日招待状もらってきたから、と最後まで言う前に遮られた。
「父さんは仕事だから。姉さんに来てもらいなさい」
父さんはいつも、姉さんにしてもらえという。茗子が直樹のために何もする気がないことを知っているくせに。
「分かった」
暗澹とした気持ちで、直樹は受話器を置いた。
しばらくすると、茗子が大学から帰ってきた。課題は全然進んでいない。
ただいまも言わずに冷蔵庫からロンドンプライドの瓶を取り出す茗子に、おずおずと話しかけた。
「あの、姉ちゃん」
「なに」
「宿題、分からないとこがあって」
「どこ」
二十一歳の茗子は、ビール瓶片手に直樹を不機嫌そうに見下ろした。
「これ。課題の意味が分からなくて」
差し出したプリントを乱暴に受け取り、茗子は呆れたように眉をしかめた。
「教えてくれる友達もいないの」
隣の席の子に聞いてみたけれど、「意味が分からないって意味が分かんない」と大仰に肩をすくめて去ってしまった。
押し黙っていると、茗子は「あんた、英語くらいさっさとできるようになりなさいよ」と呟き、すらすらと英文を訳した。
「3月8日の「国際女性デー」に関する課題。あなたは、1900年代の「デイリー・メール」紙の記者です。当時行われた、女性社会政治連合「サフラジェット」の女性参政権に関するデモンストレーション活動を報じる記事を書きなさい。当時の写真や風刺画を用いて読み手の関心を引く記事にすること。事実関係だけではなく、女性参政権に関する反対派と賛成派の意見をそれぞれ盛り込むこと、でしょ」
「……そんなの、できない」
授業の方法も課題の内容も日本の学校とは全然違う。
「できない課題なんて出さないわよ。面白い課題じゃない。こんなの正解なんてないんだから、好きなように書けばいいのよ」
茗子は、いかにも海外在留の日本人女子大生というように、おかっぱに切りそろえた黒髪に濃い目の化粧をしている。
ぽっちゃりの体型も英国では気にならないのか、ぴったりとしたTシャツにデニムのミニスカート姿だ。
黙りこくったままプリントを握りしめる直樹に、茗子が言った。
「あんたの学校、ボーディングスクールでしょ。寮に入れば?」
「え?」
直樹の学校は7歳から16歳までを受け入れている寮制学校だが、学生の半分は自宅や部外のホームステイ先から通学している。
直樹は不安げに茗子を見る。
それは、家を出ていけということだろうか。
「もううんざりなのよ。毎日毎日家に帰ってあんたの暗い顔見るの。それにあんただって」
直樹は物心ついた頃から姉の言葉が怖い。
形を持たないはずのそれは、しかしナイフのように直樹を刺す。
痛みを伴う言葉は、聞かなかったことにして錘を付けて胸の奥に沈み落とす癖がついていた。
その先を聞きたくなくて、直樹は逃げ出すように二階の自室へ駆けこんだ。
直樹の後ろ姿に向かって、茗子はひとり呟いた。
「寮に入れば英語なんてすぐできるようになって、友達だってできるわよ」
ふわりと。
大好きな匂いとぬくもりを感じ、眠りから醒めた。
「……ちかま、さん?」
至近距離に近間の顔があった。
目元にやわらかな感触。キスをされている。
伏せられていた睫毛が上がり、宝石のような双眸が不安そうに直樹を捉えた。
「起こしたか?」
「いえ、あの。俺、泣いてました?」
視界が滲んでいるし、目元が張り付いているようだ。
「うん。嫌な夢見たか?」
近間はとても心配そうだ。うなされていたのかもしれない。
夢。
見ていただろうか。
身を起こして記憶を探るが、何も思い出せない。
「思い出せません」
頭を振る直樹の目元に、近間はもう一度キスを落とした。
「今夜はいい夢を見られるよ」
「いらっしゃい」
世田谷区桜新町にある父のマンションを訪れると、茗子が出迎えてくれた。
薄化粧に草木染のワンピースを纏った休日仕様の茗子は、ナチュラルな印象だ。
「久しぶり、姉さん。これ、お土産」
リクエストされていた肉骨茶(バクテー)セットを手渡す。
「ありがと。あら、近間さんは?」
「今日は別行動。いきなり近間さんを連れてきたら、父さん腰抜かすだろ」
「それもそうね」
マンションの部屋は小奇麗に片付いているが、装飾品が少なくがらんとしている。
一番奥の今は閉まっている扉が父の部屋なのだろう。直樹の視線に気づいた茗子が言った。
「食事とトイレとお風呂以外はほとんど天の岩戸」
「中で何してるんだ?」
知らないわと姉は首を振った。
「私も、土日のどちらか様子見に来るだけだから。時々宅配便は届くけど、中身は分からないし。たまに、部屋からぶつぶつ怪しい声が聞こえるのよね」
「変な宗教にハマってたりしないよな」
「あり得るわね。まあ、お父さんが自分のお金をどう使おうが勝手だけど」
茗子はすたすたと父の部屋に向かうと、ノックをした。
「お父さん。直樹が来たわよ」
「ああ、今行く」
扉越しに聞こえた声に、直樹はひゅっと息を吸いこんだ。久々に聞いた父の声は、記憶にあるよりも低くて掠れていた。
父の為則が部屋から出てくる。直樹を認めると眩しそうに目を細めた。
「よく来たな、直樹」
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