「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

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二章 属性魔法学との対峙

57話 その男、国王に認められる。


「今回はあくまでデモンストレーションですから、これ以上に膨れることはありません。ですが、少なくとも五大元素以外にもこうした反応があることはご理解いただけますでしょう? これが今回、大物の魔物が出た理由です。強い瘴気が起きた結果、ダンジョンの中にダンジョンができる現象が発生していたようです。もっともまだ、どういう機序で瘴気と元素が混じったかは不明ですが」

これには、さきほどまで半信半疑といったふうだった貴族らの態度も代わっていた。
多くの人が、俺の話を聞こうとしてくれている。

が、しかし。
やはり属性魔法の教授陣は、どうしても認めようとしない。

「そんなものはインチキだ! どうせ風の魔素を使って、膨らませたように見せただけだろう!」などと声を荒らげる。

それに、シモーニも鷹揚に頷く。

「どうだ。反論して見たらどうだ。我々が理解できる形で存在を証明してみるがいい」

そしてもっともらしく、こんなことを言うのだ。
しかも、論点をずらしてもきている。本題はダンジョン内にダンジョンができた理由の改名なのだ。

「……困ったな」

一番どうしようもないタイプの批判だ。
どういうふうに返答をしても、「理解できない」と言われればそれまでだ。

待っているのは水かけ論だけだと確信できる。

リーナが一つ大きくため息をつき、困ったようにこちらを窺ってくる。
さてどうしようかと、俺が困っていたそのときだ。

属性魔法学の教授陣の一人が立ちあがった。
その顔には、見覚えがあった。

「先生。あの人、ダンジョンに調査に来てた――」
「あぁ、そうだな」

ダンジョン調査に来ていた教授だ。どうやら彼も、今日の発表会に来ていたらしい。
突然立ち上がるから、周囲の目が彼へと集まる。

「……インチキではありませんよ」

そこで彼は思いきったように、こう口にした。

「アデル先生の魔術は、インチキなどではありません。インチキで倒せるような相手じゃないんですよ、あの化け物は。研究自体の是非は分かりかねますし、私だって信じられない部分がないとは言えない。だが、少なくともそれだけは主張したい」

まさかの人からの援護であった。
正直、他の教授陣にはいっさい期待していなかったから、驚きしかない。

なかなか勇気のいる行動だったと思う。
この状況で、俺の味方をできる人間はそういない。なにせ自分のクビを握っている人物が後ろにいるのだ。


そして、この勇気ある一言が滞っていた展開を動かすこととなった。
貴族の席に座っていた、公爵とおぼしき一人が立ちあがって言う。

「とりあえず、話を聞きましょう。いいですね、教授の方々」

こう言われてしまったら、いくら学会で権力を持っているシモーニとはいえ、逆らえないらしい。

それを黙認して、場に静寂が訪れる。
そのなかで俺とリーナは、再度説明を始める。

基礎的な話から質問時間まで、たっぷり約授業一コマ分。

だいたいのことを話し終えたところで、説明会の進行役により、裁定の槌が大きく鳴らされる。

「国王様、ご裁定を」

その言葉で、全員の目が会場中央の玉座にいるグランデ国王の元へと向けられた。
国王は白く長い顎髭に手をやりながら目を瞑っていた。

なにやら考え込んでいるようだったから、判断に迷っているのかもしれない。
リーナが隣で息を呑む音が聞こえる。

俺もつられて、ごくりと唾を飲む。

そこへ下された裁定は――

「五属性の魔素だけでは分からなかった、危険な魔物の発生理由を解き明かした功績は大きい。引き続き、そもそも魔素と瘴気が混ざった原因の調査をしてほしい」

ほぼ勝ったといっても過言ないくらい、俺たちにとっては色よいものであった。

俺はリーナと目を見合わせ、微笑みを交わして、喜びを分かち合う。


それにしても、グランデ国王はなかなかに聡明な人らしい。
魔術の存在は、五属性主義の上になりたっているグランデ王家の権力を否定することにも繋がりかねない。

それを実益のためにこうして認められるあたりは、さすがは国の王に座る器と言おうか。

それに比べて、シモーニだけはいつまでも変わらない。

説明会が散会になり、会場からばらばらと人が引けていく中、彼は俺の方を眉間にしわを寄せて睨みつけてくる。

まるで凶器をつきつけんばかりの鋭さだ。
すぐに挫折し辞めていく人間も多い、魔法学会を生き抜いてきた人間だけのことはある。なかなかの迫力があった。

が、ここは無視が最適だ。
場外乱闘したってしょうがないのは、さきほどのリーナの忠告で心得ていた。

俺はリーナとともに手早く片付けを済ませて、残っていた貴族の方々に頭を下げると、すぐに裏手から会場を後にした。

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