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二章 属性魔法学との対峙

67話 その男、狙いを定める

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「……そう言うからには、鉱石採取で稼いでいるわけじゃないんだね?」
「えぇ、魔物から刈り取れるアイテムがほとんどですね。ただ、怪しいとは言い切れないんすよ、これが。たしかに、獲得した賞金はかなりの額ですが……入手率の低いレアアイテムを刈り取ってきてる。強い魔物に出くわし、その魔物が質のいい素材を落とすって豪運があれば、別におかしな話でもないんす」

「……ただの運がいい奴かも、ってことか」
「まぁはい。しかも、その人は少し前まで一流冒険者として有名だったオレステ・オレン。今は、剣士エリ・エルスターさんが知名度としては圧倒的ですけど、それに並ぶくらいの強さでした。中級のちょっと強い敵を倒すくらい、造作ないでしょうし」

オレステ・オレン――。
その名前は、たしかに聞いたことがある。

そして、実際に顔を合わせたこともあるはずだ。
ただしそれはまだ、彼が冒険者になる前の話である。たしかリーナと同じ学年で、王立第一魔法学校の生徒だった。
ただ、魔術の授業は受けていなかったはずだから、細かいことは覚えていないが。

そこから先の細かい情報は、リーナに聞いて見なければ分からない。

「ただそれでも、君は怪しいと感じるんだね?」
「えぇ。まぁ根拠はないんすけどね。最近は、ほとんど活動してなかったみたいだったのに、急に再開したと思ったらこの活躍ですからね。王都でも、知名度も急激に上がっています。なんか勘繰りたくなりますよ」
「……なるほど。なら、こっちで少し調べてみるさ」
「えっ。いいんですか、先生。アーマヅラの発生関連の調査でお忙しいんじゃ」

俺は、ふっと軽い笑みを返す。

「まぁ、直接的には関係ないことかもしれないけど……なにか繋がりがあるかもしれない。回り回って、こちらの調査にもつながるかもしれないだろう。いつか言ったはずだ。なにかに行き詰まったら、まったく関係のないところに、解決の糸口があるかもしれない。だから決めつけないでいろいろな道を探る必要がある――ってね」
「……はは、えーっと聞きましたっけ、そんなの」

思ったのとは違う微妙な反応が返ってきて、俺はそこで、あぁ、と納得する。
そういえばそうだ。

「あの頃の君は、とくに最初の頃は、ひどいやんちゃ坊主だったからな。聞いてなかったかもしれないね」
「ちょ、先生、やめてくださいよ、恥ずかしいっす。今聞いて、今覚えましたから!」
「なら、次また確認するとしよう」
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