図書館に棲む落ちこぼれの神様

渋川宙

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第9話 悩むなあ

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 そして寺本がそんな期待を抱いてしまうのは、この静嵐の態度にある。
「俺は消える。あと、少しで」
「――」
 その運命こそ消したいのだと、寺本はそっと溜め息を吐いていた。




 翌日。気まずいなあと思いながらも、愛佳は図書館に向かっていた。昨日、静嵐と初めて会話した。が、同時に嫌われてしまったように思う。
「絶対に変な奴だって思われているはず。ま、まあ、寺本先生が巻き込んだってのは明確になったんだけどさ」
 そんなことを考えながらも、いつものように図書館のゲートを潜った。エアコンの風が心地いいのはいつものこと。問題はこの先だ。
「――」
 ひょっとして本を読む場所を移動しているのでは。そんな懸念が真っ先に思い浮かぶ。だから、いつもの閲覧場所に行くのに、なぜか抜き足差し足になってしまう。人が少なくてよかったと思う瞬間だ。思わず遠回りをして、先に読む本を確保したほどだ。
「あっ」
 しかし、静嵐はいつもどおり、同じ窓際の席で本を読んでいた。そういえば、あそこはいつも静嵐がいるせいか、ただでさえ空いている図書館の中でも人気がない。静嵐だけがあそこにいるというのは、いつものことだった。そこに、愛佳がずかずかと入り込んでしまっていたわけだが。
「ああ、もう」
 どう考えてもマイナス思考になる。
 だって、静嵐の態度は明らかに友達になりたいなんてものではなかった。どうしようか。
 しかし、ここで避けるのは、もっと嫌われるような気がする。
「よし」
 覚悟を決め、愛佳は静嵐のいる席に向かった。
 こそっと座ったつもりだったが、そもそも人が少ないので、無駄な行動だっただろう。あっさりと静嵐が気付いた。顔を上げ、少し驚いた表情をして、そしてまた、本に視線を戻す。
「――」
 な、何か言ってくれてもいいんじゃないの。
 と、愛佳は思うが、こうも変わらないと拍子抜けしてしまう。
 そこは寺本の顔を立ててちょっとはコミュニケーションを取ってみるとか、そういうことはないのだろうか。ないだろうなと、自分でその問いに対して否定してしまう。
「ないな」
 たぶん、これ以上距離が縮まることはないな。
 それが、今日の態度から解ったことだ。静嵐が親しくなる努力をすることはない。
「はあ」
 どうすればいいんだろうと、愛佳が悩んでしまう。
 あれだけお節介を焼くのだ。たぶん、愛佳と親しくなることを望んでいるだろう。しかし、当の本人は何一つ望んでいない。
「――」
 成り行きに任せるしかないか。それとも、もう一度、寺本がお節介を焼くまで待つか。そのくらいしか選択肢はないだろう。愛佳は諦めて、自分の本に視線を戻したのだった。
「――」
 そんな愛佳の態度に、静嵐も意外な思いだったが、あまり干渉されず、また何も訊いてこないのならばいいかと、そのままにするのだった。



 そのまま数日が過ぎた頃。愛佳はちょっと不思議なことに気付いた。
「あれ?」
 静嵐の髪の色が薄くなっている。そんなことに気付いた。ただでさえ茶色だったのが、もっと薄い色合いに変わっていた。ひょっとして白髪になりつつあるのかと、驚いてしまう。
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