図書館に棲む落ちこぼれの神様

渋川宙

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第14話 それって…

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「感じ取ったんだ」
「何を」
「いずれ――いや、ともかく、もう存在すべきじゃないってね」
「――」
 肝心な部分は全く言ってくれない。でも、酷く辛そうなのは解った。
 何かがあって、消えようと決心した。それだけは確かだが、それが何かは語りたくないと、そういうことらしい。
「神に見初められた母はね」
「え?」
「とても早くに亡くなったんだよ」
「――」
「まるで、神が子どもを授かった彼女を消してしまったかのように」
「――」
 急に語られたその言葉に、愛佳は何を言えばいいのか解らなかった。ただ、静嵐がずっと寂しかったのだろうと、そう思う。
「じゃあ、これからは」
「止めてくれっ」
 何か言おうとするより前に、静嵐が今までにないほど鋭い声で制した。びくっと、腕を掴んでいた愛佳は震えてしまう。
「俺はそんな母を哀れに思った人たちによって生きながらえた。いつしか年を取らなくなり、神の血を引いていると気付いてからは、より大切に――でも、それは母に向けられたものであって、俺に向けられたものじゃなかった。それなのに、どうして俺は」
「――」
 言わないでおこうとした、神になった理由がこれかと、愛佳は掴んだままの腕を、ぎゅっと握ってしまう。これ以上傷つかないでと、でも、消えたい理由は知りたくて、吐き出される言葉を止める事が出来ない。
「ずっと存在するから、ずっと俺は、ある程度の人たちにとって神だったのかもしれない。でも、中身はこんな、人間と変わらない馬鹿な、ただ誰かといたいだけの人間なのに」
「静嵐」
「そして怖かった。何時か自分が、父と同じ事をするのではと。自分の感情だけを優先して、相手のことなんて慮ることもせず、運命だけねじ曲げてしまうのではと。そして、その人の寿命を奪ってしまうのではと、怖くて仕方がなかったんだ」
「――」
 女性を寄せ付けたがらない。その理由が吐き出される。
 ああ、それがずっと、孤独を嫌いながらも孤独にしていた理由かと、愛佳は悲しくなる。
「図書館という場所を与えられて、ほっとしていたし、あそこは大好きだ。本の中だけは、俺も普通の人間だなって思えたから。色んな感情が湧き上がってきたり、これはどういうことかって知りたかったり。心の動きは人間そのものだと、そう実感できた。でも、出来たからこそ思う。いつかその」
 そこで静嵐は愛佳を見て、そしてすぐに視線を逸らした。それに、愛佳はひょっとしてと顔を赤くしてしまう。
「誰かに恋してしまう前に、消えるべきだって、もっと早くに気付くべきだった。いや、気付いたから消えかかったのかな」
「――」
「どのみち、俺は消える。これが始まったのは君に出会う前だ。この感情と、消えることは関係ない」
「そんなっ」
「だからこそ、君と親しくなりたくなかった。消えるのが、惜しくなってしまうから」
「――」
 あまりに唐突な言葉に、そしてそれってという言葉に、愛佳は呆然となってしまう。
「ここまで、話すつもりは無かったのにな。君はどうにも、俺の色んな感情を揺さぶってくる」
 静嵐はそう言うと寂しそうに笑った。
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