今日初対面の令嬢に嫌がらせをしていた事を理由に婚約破棄を宣言されましたが、そちらがその気なら好きにさせていただいても良いですよね?

弥生

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婚約破棄編

第八話

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「頭の出来が残念な殿下…確かにライアン殿の言う通りだ」
 色々な事実を突き付けられ放心状態で項垂れていたグレイ王子がノロノロと顔を上げる

「最初はアリシアを守れる強い男に、彼女に相応しい王子になるためならどんな努力でもして2人で幸せな家庭を築く事が俺の夢だったのに…いつからこうなったんだろうな」
 何をしても人より上手く出来なくていつの頃からか努力する事も放棄してしまった子どもの夢の成れの果ての王子の姿がそこにあった

「アリシア・ローズデール嬢本当に申し訳ない事をした、今回の事だけではなく今までずっと…」
 許してもらえる事ではないけれど謝らせて欲しいと頭を下げる王子
「グレイ殿下…今となってはもう遠い日ですが、お互いに政略結婚の道具だったとは言っても殿下との未来を楽しみにしていた頃もあったのですよ」
 何事にも一生懸命で優しかった貴方は間違いなく素敵な紳士でした
 ほんの僅かな期間でも本当にそう思っていた、嘘偽りの無い本心を言って私も会釈をする
「!!そうか…俺の行動次第ではそんな未来も有ったのだな…アリシア、今度は本当の紳士と幸せな結婚をしてくれ」

「お越しになられた皆さんも今日はこのような事態を引き起こしてしまい申し訳ありませんでした、私は退出しますので舞踏会をお楽しみ下さい」
 そうグレイ王子が招待客にも謝罪をした後今度は国王に向き直る
「父上…私は今から謹慎をします、いかなる処分も受けますので処遇が決まり次第お教え願います」

 グレイ王子が退出した時ライアンお兄様が小さな声で「そうだな、お前達の婚約が決定した頃のあの王子のまま成長をしていたら、私もアリシアとの結婚を心の底から祝福出来ていたのだが…こんな結果になって残念だよ」
「ライアンお兄様」
 私達が婚約した頃からあまり良い顔をしていなかったお兄様だったが本心では始めの頃は認めてくれていたのだ

「ちょっとグレイ様!私はどうすれば良いのですか!?待って下さい私を見捨てる気!?」
 しんみりした空気に水を差す絶叫をしたのは、すっぴん男爵令嬢ことクロエ・カーター男爵令嬢
 しかし騙した上にあれ程扱き下ろした相手に縋ろうとするとはこの期に及んで良い度胸をしている、そのメンタルの強さをもっと別の事に活用すれば大成する事も夢では無いのに、まあ楽して贅沢する方法しか考えていないようではそれも無理か…
「王族の妃が楽なものだと考えたら大間違いなのですがね」
 そこまでしてその立場が欲しかったのなら何時でも喜んでお譲りしたのに

「往生際が悪いぞクロエ・カーター男爵令嬢!何をやっておる早くその娘を連れていかんか」
 ここにきてやっと動いた国王陛下…いや今の今まで何もしなかったとか本当に国王何をやっているんだよ
「嫌ちょっと離してよー!!」
 引きずられて強制退場させられる男爵令嬢、うわー声が遠くなってもまだうるさいよ

「アリシア、お前も帰ってから話があるから逃げるなよ?」
 そう綺麗な笑顔で言うライアンお兄様を見て、今日睡眠時間取れるかな?と思わず遠い目になりながら、あの声の大きさならムチムチは今頃エントランスあたりにいるのかな?と現実逃避する
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