12 / 14
五月 万の店の仕事
12
しおりを挟む
店に一歩踏み入れたわたしの第一印象は、わけがわからない、である。
外観に似合わず、いや、ある意味お似合いで田舎の駄菓子屋めいた商店具合を発揮しているのはまだわかる。
だが、そこに置いてあるものはわけもわからないものばかりである。
まるでおとぎ話の魔女の家のよう。よくわからない蜥蜴の死体のようなものが干してあったり、お札が無造作に陳列されていたりする。
水晶玉やら宝石やらが無造作に放置されていれば、巨大な招き猫やタヌキがスペースを占領している。
そして、そのどれにも深い埃が降り積もっていた。
もしやここは新手の廃墟なのでは、とわたしに思わせるには十分すぎる構えである。
「ここ、やっているのか……?」
そう伊津野さんに問うたのは必然のことであろう。
「やっています。ただ、あまり片付けなどを自分でやる人ではないのです」
なるほど、店主はまともな人物ではなさそうである。スピリチュアル界隈の重鎮方にはお会いしたことないが、アニメなどでは大抵まともではない。
現実でもその法則が働いているのかもしれない。帰りたい。
しかし、今更、帰ることはできないであろう。毒を食らわば皿までともいうではないか。
これから食すのが毒という前提は非常に偏見じみた悪い決めつけであろうが、しかしてこんな惨状を放置している万事屋というものを信用できるかといえば出来るはずもない。
わたしは良識的な駄目人間なのである。誰かを家に上げるときには、必ずと言っていいほど掃除をする。
もちろん収納スペースに限りなく見られたくないものを詰め込む。猥褻図書も無論そこに詰め込み、清廉潔白を演出するのである。
そういうこともしない、この惨状を見てわたしの中でこの店の店主の評価がわりと下方修正されて行った。
しかし、伊津野さんの知り合いという点を考慮しなければなるまい。彼女は見る限り常識をわきまえた人物である。
その人が信用しているというのなら、信用するに値するだけの何かがあるのではないかと考えるべきではないか。
そう答えがすぐ目の前にある不毛な考えを延々としているうちに、伊津野さんの先導でわたしは店の奥へと歩みを進めることになる。
どうやらあのような埃も積もりに積もった散々たる惨状なのは店先だけであるらしい。
奥の廊下はきいきいと良い音を鳴らす軋みがあるものの、しっかりと雑巾がけがしてあるらしく、足跡が付くようなことはなかった。
廊下に物はなく、綺麗に片付いているではないか。埃ひとつない古びた廊下というのは実に趣深くわたし好みであった。
旧い建物の匂いというのは熟成されたワインのように芳醇な香りをしている。田舎の親戚の家を思わせどこか落ち着くが、こちらはさらに深みがあるようであった。
熟成に熟成を重ねた芳醇極まるその匂いはともすれば酔っぱらいそうになるほどである。
廊下を右へ左へ、どこへ曲がるのか複雑怪奇な廊下を進む。
ここらでひとつ気が付いたことなのだが、外で見たこの店の大きさと明らかに一致していない。
これまた奇怪なと思うが、まあ、そういうこともあるだろうと受け入れ体勢である。
スピリチュアルな現場ならばそういうことも起こるだろう。学校の怪談と同じである。
よくある階段の段数が変わるというあれと似たようなものだ。まだ実害がない分、むしろ有用とすら思える。
利用できる空間は大いに越したことはないのである。
「ここです」
おそらくは最も奥の部屋だろうに通される。
襖を開いたわたしたちを最初に向かえるのは煙たさであった。
外観に似合わず、いや、ある意味お似合いで田舎の駄菓子屋めいた商店具合を発揮しているのはまだわかる。
だが、そこに置いてあるものはわけもわからないものばかりである。
まるでおとぎ話の魔女の家のよう。よくわからない蜥蜴の死体のようなものが干してあったり、お札が無造作に陳列されていたりする。
水晶玉やら宝石やらが無造作に放置されていれば、巨大な招き猫やタヌキがスペースを占領している。
そして、そのどれにも深い埃が降り積もっていた。
もしやここは新手の廃墟なのでは、とわたしに思わせるには十分すぎる構えである。
「ここ、やっているのか……?」
そう伊津野さんに問うたのは必然のことであろう。
「やっています。ただ、あまり片付けなどを自分でやる人ではないのです」
なるほど、店主はまともな人物ではなさそうである。スピリチュアル界隈の重鎮方にはお会いしたことないが、アニメなどでは大抵まともではない。
現実でもその法則が働いているのかもしれない。帰りたい。
しかし、今更、帰ることはできないであろう。毒を食らわば皿までともいうではないか。
これから食すのが毒という前提は非常に偏見じみた悪い決めつけであろうが、しかしてこんな惨状を放置している万事屋というものを信用できるかといえば出来るはずもない。
わたしは良識的な駄目人間なのである。誰かを家に上げるときには、必ずと言っていいほど掃除をする。
もちろん収納スペースに限りなく見られたくないものを詰め込む。猥褻図書も無論そこに詰め込み、清廉潔白を演出するのである。
そういうこともしない、この惨状を見てわたしの中でこの店の店主の評価がわりと下方修正されて行った。
しかし、伊津野さんの知り合いという点を考慮しなければなるまい。彼女は見る限り常識をわきまえた人物である。
その人が信用しているというのなら、信用するに値するだけの何かがあるのではないかと考えるべきではないか。
そう答えがすぐ目の前にある不毛な考えを延々としているうちに、伊津野さんの先導でわたしは店の奥へと歩みを進めることになる。
どうやらあのような埃も積もりに積もった散々たる惨状なのは店先だけであるらしい。
奥の廊下はきいきいと良い音を鳴らす軋みがあるものの、しっかりと雑巾がけがしてあるらしく、足跡が付くようなことはなかった。
廊下に物はなく、綺麗に片付いているではないか。埃ひとつない古びた廊下というのは実に趣深くわたし好みであった。
旧い建物の匂いというのは熟成されたワインのように芳醇な香りをしている。田舎の親戚の家を思わせどこか落ち着くが、こちらはさらに深みがあるようであった。
熟成に熟成を重ねた芳醇極まるその匂いはともすれば酔っぱらいそうになるほどである。
廊下を右へ左へ、どこへ曲がるのか複雑怪奇な廊下を進む。
ここらでひとつ気が付いたことなのだが、外で見たこの店の大きさと明らかに一致していない。
これまた奇怪なと思うが、まあ、そういうこともあるだろうと受け入れ体勢である。
スピリチュアルな現場ならばそういうことも起こるだろう。学校の怪談と同じである。
よくある階段の段数が変わるというあれと似たようなものだ。まだ実害がない分、むしろ有用とすら思える。
利用できる空間は大いに越したことはないのである。
「ここです」
おそらくは最も奥の部屋だろうに通される。
襖を開いたわたしたちを最初に向かえるのは煙たさであった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる