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BL短編集
神様と青年の恋愛物語。白蓮と銀
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真言を唱えれば信じる神に想いが届き、願いが叶う。
神様に届く真言の言葉は
『オンマカキャラヤソワカ』
その言葉だけが唯一僕が覚えていることだ。
それ以外
僕は僕に関する全ての記憶がない。
自分の名前すら覚えていない。
気がついたら里の人に拾われていた。
僕を拾ってくれた里の人の話では、隣村で起こった土砂崩れで潰れた村の唯一の生き残りらしい。
僕が唯一生き残れた理由は、体が土にほとんど埋もれている状態だったが髪の毛の色が銀色だったことが幸いし発見されるのが早かった為命拾いしたようだ。
僕の髪の色が銀色なのは生まれつきなのかどうなのかは記憶がない僕には分からないが里で銀色の髪をしているものは僕ひとりだ。
顔形の整った僕には銀の髪が良く似合っていると褒めてくれたが、そんな僕の突出した容姿と全ての記憶を失ってしまっていることで、ごく一部の里の者からは、無念を残した亡霊ではないか?この里をあの村の道連れにする疫病神ではないか?などと噂を立てられ僕を煙たがる人達も居た。
しかしそれでも僕は拾ってくれて、親切にしてくれる里の人に対して何か恩返しがしたくて毎日畑や荷物運びなどの手伝いをしていた。
そんなある日、僕は里の人に薪拾いを頼まれ山に入った。
木を拾っていると後ろからガサガサと物音がした。
……イノシシか?
だとするとまずい、僕は狩の方法も、遭遇したときの対処も知らない。
冷や汗をかきながら茂みをじっと見つめる。
しかしイノシシとは違った気配を感じた。
茂みの向こうから聞こえてくるのはズルズルと何かを引きずる音。
確実にイノシシでは無い。それよりも大きく禍々しい何か……。
イノシシへの恐怖とはまた違った恐ろしさが這い上がってくる。
べちゃり、
茂みから最初に現れたのは黒く粘着質な腕、
ひゅっ
喉の奥が鳴り、脳みそは警告をガンガンとならしている。心臓はバクバクといつもの倍の速度で脈打っている。
恐ろしさで足がすくみ動けない
どちゃっ…
鈍い音がしておぞましい全体が姿を表す。
化け物、いや、化け物とひと括りにできるものなのか?
そう思うくらい不安定で深い闇、ドロドロとした何かの生物を型どろうとしたモノ
「……た、す……け」
僕の口からはかすれた声しか出なかった。
おそらくここで叫んでもこの深い山では誰も気が付かないだろう。
絶望、それが今の自分にピッタリだった。
せっかく生き残ったのにここで僕は...
手が近づいてくる。
目をぎゅっと瞑り、これから起こるであろう何かに対して腹をくくった。
スルリ、
しかしその腕は僕が思っていた動きとは遥かに遠い、優くどこか懐かしい手付きで僕を撫でるのだった。
ドロリとしている粘液のようなものは僕にくっつくことはなく、不思議と柔らかい人間の肌のように感じた。
黒い塊と目が合う。
恐怖の具現化のような存在が目の前にいるのに、何故か緊張が少しずつ溶けていく。
「……き、みは、だれ?」
声を絞り出すが返事はない。
しかしそれに答えるようにまたゆっくりと撫でられる。
見た目はおぞましいがどうやら襲ってくる気はないらしい。
だんだんと体の力が抜けていく。
尻もちをつくと籠がゴトリと音を鳴らす。
その音に俺はハッとする
「あ、薪……集めなきゃ」
言葉が通じているかは分からないが、薪を集めないと里の人が困る。
僕の心の声が聞こえたのか黒い塊は
ピタリ、と撫でる手を止め
そして次に動いたかと思うと、黒い塊の手が僕の手を優しく引いて進んでいく。
...どこに連れて行かれるんだろう。
しかし不思議と僕に恐怖心はなかった。
好奇心からだろうか、それとも怖さのあまり感覚がおかしくなってしまったのか。
よくわからないが何故か心は安心で満たされている。
スッと黒い塊が止まる。
そこには薪に丁度よい大きさの木片がちらばっていた。
「まさか僕をここに連れて来てくれたのか?」
見上げる黒い塊は何も言葉を発しない。
「ありがとう」僕はただ素直にお礼を告げた。
そして僕が薪をせっせと集めると、黒い塊も薪集めをせっせと手伝ってくれた。
……案外いいやつかもしれない。
薪をカゴいっぱいに集まった。
「ありがとう、ございます。」
伝わっているかはわからないがもう一度頭を下げてお礼を言った。
すると黙ったままの黒い塊はまた僕の手を引き、来た道を戻ってくれた。
そして最後の別れ際に黒い塊は僕に一輪の何かを渡してくれた。
よくみるとそれは四枚の葉のついた草だった。
里に帰ると「短時間でこんなにいっぱい」と驚かれた。
それから手に持っていた四枚の葉のついた草は四つ葉のクローバーだということを教えてくれて花言葉は『幸運』だと知った。
葉一枚づつに意味が込められていて「希望」、「信仰」、「愛情」、「幸福」の四つの意味がまとめられているという。
あの山で四つ葉に出会えるのはとても珍しいらしく里の人が押し花の栞を作ってくれた。
身一つ、過去の記憶も思い出もなにひとつ持っていない自分に出来た唯一の宝物。
それから毎日何かを頼まれて山に行っては黒い塊と会っていた。
最近は色々遊ぶようにもなった。
言葉は通じないが、優しく、山を何でも知っている塊と一緒にいるのは、いつの間にか至福のひとときだった。
そんな日々が続き次第に、いつも頼まれたモノをカゴいっぱいにして持って帰ってくる僕を見て、亡霊だ、疫病神だと煙たがっていた里の人達も僕のことを里の一員だと認めてくれるようになった。
僕は里の人達と打ち解けられるようになって里の子ども達も僕を慕ってくれて山で黒い塊に教えてもらった遊びを子ども達に教えて一緒に遊ぶようになった。
山にいる時間より里にいる時間が日に日に増えて行きいつの間にか黒い塊に会わない日々が半年程になったある日。
里を流行り病が襲った。
里の医者では治すことの出来ない病で小さい子どもから徐々に大人まで次々。
僕は里の人達がこれ以上苦しむ姿を見ていられなくて、藁にも縋る思いで毎日真言を天に向かって唱えた。
『オンマカキャラヤソワカ』
唱え続けて三日が経った頃、どこからともなく腰の曲がった白髪の老人が流行り病に効くという薬を売りにやって来た。
突然現れた素性の分からない薬売りに里の人達は警戒した。しかし僕は信じた。きっとこの薬を飲めば助かる。それを証明するため、僕が薬の毒味を買って出た。飲まず食わずで真言を唱え続けていた僕の体も流行り病に侵されかけていたが、驚くことに半日もしないうちに病が消え、いつもの元気を取り戻した。それを固唾を飲んで見守っていた里の人達は安堵し僕の勇姿を讃えながら薬を飲み全員無事元気を取り戻した。
白髪の薬売りの老人にお礼を言い食事を振る舞って宴を催すと、その席で老人が昔話を始めた。その話の中で、昔その老人もあの潰れた村に薬を売りに行ったことがあると言うのだ。
すっかり忘れていた、自分の生まれ育った村のこと。
この里になれすぎて、昔の村のことを最近は微塵も考えていなかった。
白髪の老人にもっと詳しく話を聞けば昔のことを知れて僕は記憶を取り戻せるかもしれない。
しかし、今の里の暮らしに満足しはじめていた僕は未知なるものを知る興味と恐怖が入り混じり、複雑な感情になった。
世の中には知らなければいいこともある。
しかし聞かなければ何も始まらない、そんな気もした。
だから僕は覚悟を決め
「僕に潰れた村のことを教えて下さい」と伝えた。
曲がった背中を傾けながら白髪の老人はこちらを向く。
「……本当にええんか。」
しわがれた声でかえしてくる。
「はい、やっぱり自分の過去を知りたい」
白髪の老人は少しの間黙り、何かを決意したように僕に言った。
「その村はもうないが。でも、その村を守ってきた神社ならまだあるはずだ。……気になるようだったら連れて行ってやってもいい。そこへ行けば何か思い出すじゃろ」
眼孔鋭く話す老人に少し緊張しながらも僕は強くうなずいた。
「そこへ僕を連れてって下さい」
明日、俺は記憶を取り戻してしまうのだろうか。
大きな好奇心と少しの不安
しかしその不安の中でも思い出さなければならないという小さな義務感のようなものも感じていた。
朝早く里の皆に見送られながら老人と二人山道を進んでいく。
目的地に行く間、その村の守り神である黒の神様について教えてもらった。
日本には古来より八百万の神々がいるといわれ、その中でも七福神は人々から厚く信仰されていた。
俺の生まれ育った村では黒の神様、正式名は大黒天様を深く信仰していて、人間の信仰心が強ければ強いほど力を宿し、ご利益である。
五穀豊穣、財運福徳、縁結びなどの恩恵を受け続けた村は毎年不作や飢饉が困ることなく、また治癒神様でもあるため、病にも苦しむことなく平穏に過ごしていたみたいだった。
その他に村には独特な風習があったらしく、18歳になるまでに村の住人全員が結婚しなければならない。そして結婚してたくさんの子をもうけることが村の繁栄の為に必要だという意識が高かったようだ。しかしその風習に背き18歳になっても結婚を頑なにしない青年が居た。村一番の美少年で、彼と結婚したい女性は沢山いた、選り取りみどり選びたい放題だったにも関わらず、結婚を拒み続けた為に、村の住人は痺れを切らし嫌がる青年を捕まえて村一番の美人の娘と強引に祝言を挙げようとした。
その時大嵐が襲いかかり、大雨に土砂崩れが起きて村一面が土で全て覆われ全滅した
そこまで話すと老人は足を止めた。
どうやら目的地についたみたいだ。
目の前にあるのは古びた神社。
...ここが黒の神様の神社...
記憶が戻ってくる気配はない、..もしかして僕の故郷ではないのか? と思った
そんな時、老人が話を続けた。
「大黒天様は、元来とても温厚で優しい神様じゃった。しかし、そんな神様も墜ちるときがあったんじゃ」
「落ちる?」
「そーじゃ、大黒天様は、堕ちたんじゃ、堕ちて人間の命に手を加えてしまったんじゃ。生と死を裏返すことは神様でもしちゃぁいけない。
じゃが、その禁忌に手を染めてしまったんじゃ
一人の青年を愛してしまった故に……」
え?と僕は老人を見る。
老人は一言、
「黒の神様の名前は___白蓮」
その瞬間、頭に鈍い痛みが走る。
知っている。
おそらくその神様のことを誰よりもよく知っている。
僕の頬に涙が伝う感覚がする。
あぁ、思い出した。
思い出してしまった。
昔の記憶。
村で幸せな環境に包まれて僕は育った。
母はとても優しく、父は頼りのある人だった。
ある日、両親に頼まれて薪を集めに山へ入った時
当時僕は9歳くらいだったと思う。幼かった僕は、薪拾いのことなどすっかり忘れて、綺麗な紋白蝶やカッコいいカブトムシに夢中になってしまいいつの間にか来た道を見失い迷子になってしまった。
不安と寂しさで泣き出しそうになる僕の背後から声をかけられた。
聞きなれないその声に俺はびっくりして身構えた。
そんな怯える僕の頭を優しく撫でられ
僕を撫でる手を目で上へ追っていくと、目を見開く程の容姿の人が居た。
綺麗な羽織を纏ったその人は
美しい黒い髪に、くっくりした二重瞼、宝石のような輝く瞳、スラッと通った鼻筋。
爽やかな風のような笑顔で美しい輪郭の唇をスイと上げて僕に向けてニコリと笑った。
それが当時9歳だった僕と彼との出会いだった。
その後は暇さえあれば大黒神社の近くに一人でこっそり行っては彼と遊んでいた。
「びゃくれ~ん」
「銀、今日も来てくれたんだね」
「うん。だって白蓮と遊ぶの楽しいもん」
「ワタシも楽しいよ」
色んなことを話して、いろんな遊びを教えてもらって。
そのうち僕はその美しい彼のことが『好きだ』という自分の気持ちに気づいた。初恋だった。きっと一目惚れだったと思う。
だから幼い僕は白蓮に告白した。
『いつか大人になったら白蓮と結婚したい。僕と結婚して下さい!!』
幼いながらも僕の精一杯の真剣なプロポーズだった。
渡せる指輪も何もなかったから代わりに必死で探して見つけた四つ葉のクローバーを白蓮にプレゼントした。
白蓮はそれを喜んで受け取ってくれた。
それからあっという間に月日が流れ、僕が17歳のころになると、徐々に僕の家は僕の結婚の話で騒がしくなり始めた。
村の風習に従わなければこの村には居られない、しかしいくらお見合いをしても、白蓮のことが好きな僕は誰とも結婚したくない。だからといって親に白蓮のことを話す訳にもいかない。村の安寧の為、子孫繁栄を皆が望んでいる。男同士の結婚なんて天地がひっくり返っても受け入れて貰えるはずがない。
両親は毎日のように僕に良い相手がみつかりますように、と大黒神社に祈っていると言っていたが、僕は毎日、白蓮以外の相手と結婚はしたくないと大黒神社で祈っていた。
(白蓮以外の誰かと結婚させられるくらいならこんな風習、こんな村、無くなっちゃえばいい!!)
そして遂に18歳になりいよいよ俺の我が儘も通用しなくなり、村中の人達が集まり、村長がこの村で一番と二番の美人を連れて来て『このふたりのどちらかを選べ!』と迫って来た。
「銀次! もう、待てない、これは村の大切な風習だ。そのしきたりを守らない者が一人でも現れたら、その後にそれを真似る者が必ず出てくる、そうなれば結婚が遅れ子孫繁栄が危ぶまれる。そうなればこの村はいつか存続出来なくなる、だから今すぐ決めろ!」
その瞬間、事件は起きた。
突然の大雨、雷鳴が響き
未曾の大嵐であっという間に
村が土砂に流され
あぁ、死んじゃうのか。
死への恐怖で頭がいっぱいになっているなか、ふと白蓮の顔がよぎる。
『..銀』
脳裏に僕の名前を呼ぶあの優しい声が響いた気がした。
『..銀、困った時に唱えなさい。きっとワタシが助けてあげるから』
『オンマカキャラヤソワカ』『オンマカキャラヤソワカ』
そこで記憶が途絶えている。
恐らくその次に気がついたのは里の人に拾ってもらった頃だろう。
ただこの記憶を思い出した今、僕にはあの人が何者だったのか安易に予想がついた。
きっとその人はこの神殿の中にいる。
容姿の美しさが人間離れしていた時点で、なぜ昔の自分は気が付かなかったのだろうか。
彼はこの神社に祀られている神様なのだろう。
そして里の森で出会った黒い塊。
あれもきっと……。
老人が言っていた神様が墜ちるのは人間の生死を変えてしまうこと。
僕は恐らくあの土砂崩れで死んでいたはずだ。
しかし今こうやって生きている。
ここから導き出せる答えは一つしかないだろう。
ふらりと僕は神社の本殿に向かって足を進める。
老人が矢継ぎ早に『此処へ入ってしまったら最後、もうあの里へは帰れない』そう言っている気がするが、僕にはもう関係ないように感じた。
ギギギ……と鈍い音を立てて戸を開く。
そこにはやはり、あの黒い塊が立っていた。
黒い塊は僕が来るのを待っていたと言うように手を広げて僕を迎え入れる。
僕は黒い塊に吸い込まれるように腕の中へと入っていった。
涙が止まらなかった。
里という居場所をもらえる僕に対して、美しい容姿を捨て、黒い塊になってしまった神様は行く場もなく、ずっとここに一人でいたのだ。
きっと僕を救ってしまったから。
「ごめんなさい、僕の為に、こんな姿で、ひとりにさせてしまって」
謝りながら泣きじゃくる僕をあやす手はあのときと同じように優しかった。
暫く僕をあやすと撫でる手が止まり、とんとん、と頭を突かれた。
顔を上げると黒い塊は盃を僕に渡してきた。
盃を交わす。その行為の意味は僕でさえも知っている。
お見合いなんかの話をしているときにさんざん教えられたのだ。
僕は黒い塊、いや、白蓮と…。
お見合いのときにはなかった、じわじわと心を幸せで満たされる感覚。
恐らくどの縁談話をされても心が拒絶したのは、この幸せで満たされる感情を誰にも抱けなかったからだ。
この感情を僕が抱くのは唯一白蓮にだけだ。
自問自答に思考を傾け、無言の僕に対し
心なしか黒い塊は不安で揺れているようにも見える。
今度は僕が安心させるように優しく撫でる。
僕自身の感情に気がついた今、とる行動は一つしかない。
もしこれで白蓮から奪ってしまった時間、力を償えるなら。
黒い塊だろうと構わない。白蓮だけにこんな罰を背負わせたくない。僕も罪を背負うよ、白蓮が黒い塊のままなら僕も黒い塊になってもいい。
僕は彼の為ならなんでもしてあげる。してあげたい。
もう白蓮をひとりにはさせない。もう絶対さみしい思いはさせない。
そう思い、躊躇いも迷いもなく盃に口づけた..。
その瞬間
目も眩むような強い光が一瞬辺りを包み
「_やっと、結ばれた。」
聞き覚えのあるその声に
ふと僕が見上げれば、昔のような美しい姿で微笑む彼_白蓮がいた。
「今日は初夜だよ」
そういって微笑む白蓮の後ろで戸の閉まる音だけが静かな空間に響いた。
古めかしかった境内は、いつの間にか絢爛豪華な場所へと姿を変え、驚く間もなく手を取られ
鶯張りの長い渡り廊下を抜け、たどり着いた正面
襖を引いて案内された欄間には
薄明かりを宿した行灯と二組の寝床が用意されてあった。
足を踏み入れると薫る焚かれたお香に身を包まれ、その甘い匂いにクラリとしてよろけた拍子に布団の上に横たえた。
見上げる僕と見下げる白蓮
枕元の灯火の揺らめきが現実と幻想を曖昧にさせて
「ずっとこうしたかった」
そう言って抱き締めた白蓮の腕の強さに驚いて僕の鼓動が飛び跳ねる。
「..僕もです」
ずっと僕もこうしたかった。
やっと僕達
「..銀」
「..白蓮様」
端正な顔が近づいて来て僕は無意識に瞳を綴じた。
殷勤を通じ
彼に求められれば身も心も素直に差し出す。
甘く優しい口づけを貰って
口を少し緩めれば白蓮の舌がぬるりと入って来て、ゾクリとして
舌を絡められ軽く舌を吸われ、僕の身体はピクンと跳ねる。
濃厚な口づけは
淫靡な音と交わう涎で何度も糸を引かせ
乱れた着流の衿から露わになった自分の胸元に気づき
恥じらいで思わず身じろぐと両手首を掴まれ押さえられ寝床に深く僕の身体が沈む。
白蓮が上から僕を見下げながら黙って僕の指に白蓮の指を絡ませ握り合う。
身じろげなくなった僕の身体に白蓮はゆっくり顔を近づけてはだけた胸元をペロリと舐め上げる。
「ハァッぁっ」
鼻から抜ける甘い声が僕の口から洩れる。
そのまま胸元辺りを不埒な彼の唇が幾度も焼印するように痛いくらいきつく吸い付いてビリビリ身体が痺れ震える。
「はぁっ……ああっ、あっ…んっ……」
着流しを甘剥きされ
白蓮の前で全てを晒した。
なすがままに大きく脚を広げられ
舐め回すように見つめられ
羞恥で視界が歪む。
薄赤色の行灯の横に置いてあった潤滑油を彼が手に取り
彼を受け入れるべく僕の秘口へ白蓮の指が触れる。
秘口に潤滑油が塗られ丁寧に慣らされ
「ンッあっぁ」
あっという間に熟した窪みから指を抜かれると
白蓮は花王牡丹と隠逸菊花文様のあしらわれた羽織をすっと肩から落とした。
美しい肉体を持った美顔の白蓮が色めく瞳で僕を見つめながら
僕の秘口に太く育った硬い熱源を宛がった。
「はぁっぁ、あっあっあっあっ」
秩序から道を外し
熱くて太いものがゆっくり挿ってきて
声涙ともに下って
身体は仰け反って
キラキラする天を見つめた
軽く前後に白蓮の腰が動くと甘い悦びが僕の腰に絡みつき
俺の口から吐息と喘ぎが混ざりあって漏れる
「はぁっ……ああっ、あっ…んっ……」
そのまま甘い揺れから贈られる悦楽を全身で感じながら
しがみついた白蓮の首筋に唇を寄せ軽く吸い上げると彼もまた同じように僕の首筋を吸い上げた。
「っ、ぁッハァッ」
長い歳月待ち望んだこの時を
じゃれつくもどかしい互いの感情で心をいっぱいに満たしながら欲情を加速させ
薄明りの欄間の部屋で肌と肌を合わせ甘い声と淫靡な音を響かせる。
「はぁぁっ」
想い人に抱かれて
白蓮様、と
口をついて
涙と一緒に零れ落ちる
「..銀、愛してるいるよ」
「僕も愛しています」
合縁奇縁の二人は
感情が相まってまぐわいは烈火の一途を辿る。
ズンッと深くを強く突かれ
「はぁっぁ、あっあっあっあっ」
快楽が脳天から全身に喜びと共に駆けずり回る。
「はっ、あっアッっアッっあんっあんっ白蓮さま」
「銀、ハァーハァー銀、銀、」
「アアッ、アアッ白蓮さまー」
噎ぶくような甘い愛の行為に
僕の心と身体は
トロトロに
溶かされていく
今にも弾けそうな僕の中心を白蓮の右手が掴む。
「アッっ、はぁ、白蓮様、、もう」
「放ちたいか?」
白蓮の問いかけに涙々して静かに頷く
目元を伝う雫に彼が唇を寄せ口づけを一つ与えられたあと
濡れそぼり貪欲に天を向く熱い楔を上下に擦られ
「ンッあっアッアアッ」
繋がった場所も揺さぶられ、熱い楔も扱かれて、重なる快楽の強さに、口許から垂涎し、快楽に顔を歪め、喘ぎ、濃艶あまねき逸楽した様を白蓮に見られながら続く手淫によって高められ
「ああッ、はぁはぁイッてしまいます、ああもうイキます、アアッ―イクはぁぁっ...」
呼吸を乱し仰け反りながら身体を震わせ僕は熱くしぶき放った。
そして白蓮も後を追うように僕の中で果てた。
********
色欲を高めるお香は役目を終え大黒天(白蓮)の手によって消された。
祝杯の杯を交わす。
「大黒天様、おめでとうございます。」
「あぁ、お前の手引きが上手くいった。こうやって愛しい子と結ばれたのはお前のおかげだよ。」
「いえいえ、私はその青年を連れてきただけでございます。大黒天様が望むのなら叶える、それが私めの役目でございます。」
そうお伝えしながら深々と頭を垂れた。
「お前も仮の姿を解いて、一献やろう」
許しを得て白髪の老人の姿からポンと白い煙と共に元の姿、きつねになり、大黒天から受けた杯を肉球のついた手に収める。
閉じられた睫毛を湿らす涙が格子戸からの月明かりに抱かれ、キラキラさせながら眠る銀色の髪の青年を膝の上に寝かせ優しく大黒天が撫でながら
「ワタシはもう神ではない、禁忌をおかし今は人間の身となった、お前もこれからは白蓮と呼んでくれ」とどこか嬉しそうに呟く。
「しかし、大黒天、、いや白蓮様はなぜ、あんなことをなさったのですか?」
「あんなこと?」
「村をお潰しになられたことです」
「ああ、それのことか」
「はい、村を潰して禁忌を犯さなくても青年を手に入れる方法は他にもあったのでは……。」
青年を撫でる手を止めニッタリと白蓮はわらう。
「あの村が好きでもない相手と強引に見合いをさせ子孫繁栄を強要していたのは知っているだろう?ワタシはそれが許せなかっただけだ。嫌がるこの子を助けたかった」
「だからって、……村の人々を全て生き埋めにして殺さなくても..」
「全てではない。彼の両親は紋白蝶とカブトムシに変えてやったのだから」
神の怒りを買ってしまった末路ということか。
白蓮の膝の上で寝返りをうった青年の懐から何かがコトリと落ちる。
それを白蓮が拾いあげる。四つ葉のクローバーの栞。
白蓮はその栞をいとおしく見つめた。
それは遠いいつかの四つ葉のクローバーだ。
そのクローバーは最初、婿入りの誓いと共に青年が白蓮に渡したものだ。
それを時を経て今度は黒い塊へと醜く変化してしまった白蓮が青年に渡した思い出深いもの。
「なぁーキツネよ」
「なんでしょう」
「四つ葉のクローバーの花言葉を知っているか?」
「確か『幸運』だったと思いますが」
「勿論それもあるが、 それだけじゃないぞ。」
「それだけじゃないと申しますと?他にも意味があるのですか?」
「そうだ、四つ葉には幸運の他にもうひとつ大事な意味がある。」
「それは一体どんな?」
「四つ葉のクローバーのもうひとつの意味は『私のものになって』という相手に対する強い執着を持つ花なのだ」
そういって満足気に白蓮は杯を傾け一気に飲み干した。
執着。
それは時に
人よ世も、神の世も、とても恐ろしいものでございます。
~完~
☆登場人物☆
(元)大黒の神様 白蓮・・・村の守り神として何百年と祀られていたが、ある時その村の銀次と名のつく少年に心を奪われ、仮の人間の姿となり、銀次に近づき、やがて相思相愛となる。神は彼を「銀」と呼び彼は神を「白蓮」と呼んだ。
それから数年後、神は銀と結ばれたいが為に禁忌をおかした。それにより他の神の怒りを買い神の力を失い罪による罰を受け醜い姿へ変えられてしまった。しかしそんな姿になってしまっても尚、銀を愛する気持ちは変わらず、陰ながら銀を見守り続けて月日が流れた。そんな数年を過ごし再び銀の窮地、里に流行り病が蔓延し、自分の助けを乞う銀の真言を唱える声が白蓮の耳に届く。自分は醜い姿の為里へ降りることは出来ない、そこで従えるキツネを使い薬を届けさせた。元は治癒神様、それくらいのことは出来る。それにより里の人も銀も助かった。その後キツネの機転により、記憶を取り戻せた銀は白蓮と再会を果し、盃を交わし無事に結ばれた。
今は人間となった白蓮と銀は幸せに暮らしている。
銀次・・・記憶喪失前の名前は銀次、里では銀と呼ばれていた。森で白蓮に出会い、神様とは知らずに恋をしてプロポーズする。その後村の掟を拒み続けて、最後には強引な縁談をさせられそうになり、心の中で白蓮に助けを乞い、白蓮の禁忌により村人を皆殺し。唯一生き残った銀次は代償として記憶を失う。生き埋め同然の姿で里の人に発見され保護されたが、発見を早くする為に白蓮が銀次の髪の色を銀色に変えていた。記憶を失っている銀次はそのこと知らないが、記憶を取り戻してから後に白蓮からそのことを聞いた。
白髪の老人・・・神様に仕えるキツネ。禁忌をおかし醜い姿に変えられてしまった大黒天(白蓮)に対してもずっと変わらぬ忠誠を誓い仕えていた。そんなキツネは水面下で他の神々に直談判しどうにか姿形だけでも人間の姿にしてもらえないかと日々お願いしていた。しかしなかなか神々の許しがもらえず数年が経ち、もどかしい思いのなか、銀次の暮らす里で流行り病が蔓延していることを知り、白蓮の指示により里に薬を届けるよう云われ、醜い姿にさせられても尚、銀次を恨むことなく愛し続け助け続ける白蓮の誠意に心を打たれ、再び神々の元へ交渉に向かい、神々に対し、『もしも二人の愛が本物なら、醜い姿のままの白蓮と人間である銀次は盃を交わすはず。もし盃を交わすことが出来た暁には白蓮を人間の姿に戻して欲しい。』と神々にお願いした。神々はキツネの必死の申し出に折れ了承した。
銀次の父母・・・白蓮の温情によりカブトムシと紋白蝶になり銀次を見守っている。
村の人々・・・白蓮の怒りを買い黄泉の国。
里の人々・・・生き埋めの銀を助け、記憶喪失の彼を受け入れ仲良く暮らす。
流行り病の際、銀のおかけで命拾いし平和に暮らす。
記憶を取り戻すべく出掛けて行った銀が待てど暮らせど帰って来ないことを心配していたが、再び白髪の老人だけが里へ来て、銀は幸せに暮らしていることを伝えられ安堵した。その際、白髪の老人に大黒神社を大事にまつると全ての災いから守って下さると伝えられ、里の人々は大黒神社を氏神様として崇め祀り後世大事にした。
神様に届く真言の言葉は
『オンマカキャラヤソワカ』
その言葉だけが唯一僕が覚えていることだ。
それ以外
僕は僕に関する全ての記憶がない。
自分の名前すら覚えていない。
気がついたら里の人に拾われていた。
僕を拾ってくれた里の人の話では、隣村で起こった土砂崩れで潰れた村の唯一の生き残りらしい。
僕が唯一生き残れた理由は、体が土にほとんど埋もれている状態だったが髪の毛の色が銀色だったことが幸いし発見されるのが早かった為命拾いしたようだ。
僕の髪の色が銀色なのは生まれつきなのかどうなのかは記憶がない僕には分からないが里で銀色の髪をしているものは僕ひとりだ。
顔形の整った僕には銀の髪が良く似合っていると褒めてくれたが、そんな僕の突出した容姿と全ての記憶を失ってしまっていることで、ごく一部の里の者からは、無念を残した亡霊ではないか?この里をあの村の道連れにする疫病神ではないか?などと噂を立てられ僕を煙たがる人達も居た。
しかしそれでも僕は拾ってくれて、親切にしてくれる里の人に対して何か恩返しがしたくて毎日畑や荷物運びなどの手伝いをしていた。
そんなある日、僕は里の人に薪拾いを頼まれ山に入った。
木を拾っていると後ろからガサガサと物音がした。
……イノシシか?
だとするとまずい、僕は狩の方法も、遭遇したときの対処も知らない。
冷や汗をかきながら茂みをじっと見つめる。
しかしイノシシとは違った気配を感じた。
茂みの向こうから聞こえてくるのはズルズルと何かを引きずる音。
確実にイノシシでは無い。それよりも大きく禍々しい何か……。
イノシシへの恐怖とはまた違った恐ろしさが這い上がってくる。
べちゃり、
茂みから最初に現れたのは黒く粘着質な腕、
ひゅっ
喉の奥が鳴り、脳みそは警告をガンガンとならしている。心臓はバクバクといつもの倍の速度で脈打っている。
恐ろしさで足がすくみ動けない
どちゃっ…
鈍い音がしておぞましい全体が姿を表す。
化け物、いや、化け物とひと括りにできるものなのか?
そう思うくらい不安定で深い闇、ドロドロとした何かの生物を型どろうとしたモノ
「……た、す……け」
僕の口からはかすれた声しか出なかった。
おそらくここで叫んでもこの深い山では誰も気が付かないだろう。
絶望、それが今の自分にピッタリだった。
せっかく生き残ったのにここで僕は...
手が近づいてくる。
目をぎゅっと瞑り、これから起こるであろう何かに対して腹をくくった。
スルリ、
しかしその腕は僕が思っていた動きとは遥かに遠い、優くどこか懐かしい手付きで僕を撫でるのだった。
ドロリとしている粘液のようなものは僕にくっつくことはなく、不思議と柔らかい人間の肌のように感じた。
黒い塊と目が合う。
恐怖の具現化のような存在が目の前にいるのに、何故か緊張が少しずつ溶けていく。
「……き、みは、だれ?」
声を絞り出すが返事はない。
しかしそれに答えるようにまたゆっくりと撫でられる。
見た目はおぞましいがどうやら襲ってくる気はないらしい。
だんだんと体の力が抜けていく。
尻もちをつくと籠がゴトリと音を鳴らす。
その音に俺はハッとする
「あ、薪……集めなきゃ」
言葉が通じているかは分からないが、薪を集めないと里の人が困る。
僕の心の声が聞こえたのか黒い塊は
ピタリ、と撫でる手を止め
そして次に動いたかと思うと、黒い塊の手が僕の手を優しく引いて進んでいく。
...どこに連れて行かれるんだろう。
しかし不思議と僕に恐怖心はなかった。
好奇心からだろうか、それとも怖さのあまり感覚がおかしくなってしまったのか。
よくわからないが何故か心は安心で満たされている。
スッと黒い塊が止まる。
そこには薪に丁度よい大きさの木片がちらばっていた。
「まさか僕をここに連れて来てくれたのか?」
見上げる黒い塊は何も言葉を発しない。
「ありがとう」僕はただ素直にお礼を告げた。
そして僕が薪をせっせと集めると、黒い塊も薪集めをせっせと手伝ってくれた。
……案外いいやつかもしれない。
薪をカゴいっぱいに集まった。
「ありがとう、ございます。」
伝わっているかはわからないがもう一度頭を下げてお礼を言った。
すると黙ったままの黒い塊はまた僕の手を引き、来た道を戻ってくれた。
そして最後の別れ際に黒い塊は僕に一輪の何かを渡してくれた。
よくみるとそれは四枚の葉のついた草だった。
里に帰ると「短時間でこんなにいっぱい」と驚かれた。
それから手に持っていた四枚の葉のついた草は四つ葉のクローバーだということを教えてくれて花言葉は『幸運』だと知った。
葉一枚づつに意味が込められていて「希望」、「信仰」、「愛情」、「幸福」の四つの意味がまとめられているという。
あの山で四つ葉に出会えるのはとても珍しいらしく里の人が押し花の栞を作ってくれた。
身一つ、過去の記憶も思い出もなにひとつ持っていない自分に出来た唯一の宝物。
それから毎日何かを頼まれて山に行っては黒い塊と会っていた。
最近は色々遊ぶようにもなった。
言葉は通じないが、優しく、山を何でも知っている塊と一緒にいるのは、いつの間にか至福のひとときだった。
そんな日々が続き次第に、いつも頼まれたモノをカゴいっぱいにして持って帰ってくる僕を見て、亡霊だ、疫病神だと煙たがっていた里の人達も僕のことを里の一員だと認めてくれるようになった。
僕は里の人達と打ち解けられるようになって里の子ども達も僕を慕ってくれて山で黒い塊に教えてもらった遊びを子ども達に教えて一緒に遊ぶようになった。
山にいる時間より里にいる時間が日に日に増えて行きいつの間にか黒い塊に会わない日々が半年程になったある日。
里を流行り病が襲った。
里の医者では治すことの出来ない病で小さい子どもから徐々に大人まで次々。
僕は里の人達がこれ以上苦しむ姿を見ていられなくて、藁にも縋る思いで毎日真言を天に向かって唱えた。
『オンマカキャラヤソワカ』
唱え続けて三日が経った頃、どこからともなく腰の曲がった白髪の老人が流行り病に効くという薬を売りにやって来た。
突然現れた素性の分からない薬売りに里の人達は警戒した。しかし僕は信じた。きっとこの薬を飲めば助かる。それを証明するため、僕が薬の毒味を買って出た。飲まず食わずで真言を唱え続けていた僕の体も流行り病に侵されかけていたが、驚くことに半日もしないうちに病が消え、いつもの元気を取り戻した。それを固唾を飲んで見守っていた里の人達は安堵し僕の勇姿を讃えながら薬を飲み全員無事元気を取り戻した。
白髪の薬売りの老人にお礼を言い食事を振る舞って宴を催すと、その席で老人が昔話を始めた。その話の中で、昔その老人もあの潰れた村に薬を売りに行ったことがあると言うのだ。
すっかり忘れていた、自分の生まれ育った村のこと。
この里になれすぎて、昔の村のことを最近は微塵も考えていなかった。
白髪の老人にもっと詳しく話を聞けば昔のことを知れて僕は記憶を取り戻せるかもしれない。
しかし、今の里の暮らしに満足しはじめていた僕は未知なるものを知る興味と恐怖が入り混じり、複雑な感情になった。
世の中には知らなければいいこともある。
しかし聞かなければ何も始まらない、そんな気もした。
だから僕は覚悟を決め
「僕に潰れた村のことを教えて下さい」と伝えた。
曲がった背中を傾けながら白髪の老人はこちらを向く。
「……本当にええんか。」
しわがれた声でかえしてくる。
「はい、やっぱり自分の過去を知りたい」
白髪の老人は少しの間黙り、何かを決意したように僕に言った。
「その村はもうないが。でも、その村を守ってきた神社ならまだあるはずだ。……気になるようだったら連れて行ってやってもいい。そこへ行けば何か思い出すじゃろ」
眼孔鋭く話す老人に少し緊張しながらも僕は強くうなずいた。
「そこへ僕を連れてって下さい」
明日、俺は記憶を取り戻してしまうのだろうか。
大きな好奇心と少しの不安
しかしその不安の中でも思い出さなければならないという小さな義務感のようなものも感じていた。
朝早く里の皆に見送られながら老人と二人山道を進んでいく。
目的地に行く間、その村の守り神である黒の神様について教えてもらった。
日本には古来より八百万の神々がいるといわれ、その中でも七福神は人々から厚く信仰されていた。
俺の生まれ育った村では黒の神様、正式名は大黒天様を深く信仰していて、人間の信仰心が強ければ強いほど力を宿し、ご利益である。
五穀豊穣、財運福徳、縁結びなどの恩恵を受け続けた村は毎年不作や飢饉が困ることなく、また治癒神様でもあるため、病にも苦しむことなく平穏に過ごしていたみたいだった。
その他に村には独特な風習があったらしく、18歳になるまでに村の住人全員が結婚しなければならない。そして結婚してたくさんの子をもうけることが村の繁栄の為に必要だという意識が高かったようだ。しかしその風習に背き18歳になっても結婚を頑なにしない青年が居た。村一番の美少年で、彼と結婚したい女性は沢山いた、選り取りみどり選びたい放題だったにも関わらず、結婚を拒み続けた為に、村の住人は痺れを切らし嫌がる青年を捕まえて村一番の美人の娘と強引に祝言を挙げようとした。
その時大嵐が襲いかかり、大雨に土砂崩れが起きて村一面が土で全て覆われ全滅した
そこまで話すと老人は足を止めた。
どうやら目的地についたみたいだ。
目の前にあるのは古びた神社。
...ここが黒の神様の神社...
記憶が戻ってくる気配はない、..もしかして僕の故郷ではないのか? と思った
そんな時、老人が話を続けた。
「大黒天様は、元来とても温厚で優しい神様じゃった。しかし、そんな神様も墜ちるときがあったんじゃ」
「落ちる?」
「そーじゃ、大黒天様は、堕ちたんじゃ、堕ちて人間の命に手を加えてしまったんじゃ。生と死を裏返すことは神様でもしちゃぁいけない。
じゃが、その禁忌に手を染めてしまったんじゃ
一人の青年を愛してしまった故に……」
え?と僕は老人を見る。
老人は一言、
「黒の神様の名前は___白蓮」
その瞬間、頭に鈍い痛みが走る。
知っている。
おそらくその神様のことを誰よりもよく知っている。
僕の頬に涙が伝う感覚がする。
あぁ、思い出した。
思い出してしまった。
昔の記憶。
村で幸せな環境に包まれて僕は育った。
母はとても優しく、父は頼りのある人だった。
ある日、両親に頼まれて薪を集めに山へ入った時
当時僕は9歳くらいだったと思う。幼かった僕は、薪拾いのことなどすっかり忘れて、綺麗な紋白蝶やカッコいいカブトムシに夢中になってしまいいつの間にか来た道を見失い迷子になってしまった。
不安と寂しさで泣き出しそうになる僕の背後から声をかけられた。
聞きなれないその声に俺はびっくりして身構えた。
そんな怯える僕の頭を優しく撫でられ
僕を撫でる手を目で上へ追っていくと、目を見開く程の容姿の人が居た。
綺麗な羽織を纏ったその人は
美しい黒い髪に、くっくりした二重瞼、宝石のような輝く瞳、スラッと通った鼻筋。
爽やかな風のような笑顔で美しい輪郭の唇をスイと上げて僕に向けてニコリと笑った。
それが当時9歳だった僕と彼との出会いだった。
その後は暇さえあれば大黒神社の近くに一人でこっそり行っては彼と遊んでいた。
「びゃくれ~ん」
「銀、今日も来てくれたんだね」
「うん。だって白蓮と遊ぶの楽しいもん」
「ワタシも楽しいよ」
色んなことを話して、いろんな遊びを教えてもらって。
そのうち僕はその美しい彼のことが『好きだ』という自分の気持ちに気づいた。初恋だった。きっと一目惚れだったと思う。
だから幼い僕は白蓮に告白した。
『いつか大人になったら白蓮と結婚したい。僕と結婚して下さい!!』
幼いながらも僕の精一杯の真剣なプロポーズだった。
渡せる指輪も何もなかったから代わりに必死で探して見つけた四つ葉のクローバーを白蓮にプレゼントした。
白蓮はそれを喜んで受け取ってくれた。
それからあっという間に月日が流れ、僕が17歳のころになると、徐々に僕の家は僕の結婚の話で騒がしくなり始めた。
村の風習に従わなければこの村には居られない、しかしいくらお見合いをしても、白蓮のことが好きな僕は誰とも結婚したくない。だからといって親に白蓮のことを話す訳にもいかない。村の安寧の為、子孫繁栄を皆が望んでいる。男同士の結婚なんて天地がひっくり返っても受け入れて貰えるはずがない。
両親は毎日のように僕に良い相手がみつかりますように、と大黒神社に祈っていると言っていたが、僕は毎日、白蓮以外の相手と結婚はしたくないと大黒神社で祈っていた。
(白蓮以外の誰かと結婚させられるくらいならこんな風習、こんな村、無くなっちゃえばいい!!)
そして遂に18歳になりいよいよ俺の我が儘も通用しなくなり、村中の人達が集まり、村長がこの村で一番と二番の美人を連れて来て『このふたりのどちらかを選べ!』と迫って来た。
「銀次! もう、待てない、これは村の大切な風習だ。そのしきたりを守らない者が一人でも現れたら、その後にそれを真似る者が必ず出てくる、そうなれば結婚が遅れ子孫繁栄が危ぶまれる。そうなればこの村はいつか存続出来なくなる、だから今すぐ決めろ!」
その瞬間、事件は起きた。
突然の大雨、雷鳴が響き
未曾の大嵐であっという間に
村が土砂に流され
あぁ、死んじゃうのか。
死への恐怖で頭がいっぱいになっているなか、ふと白蓮の顔がよぎる。
『..銀』
脳裏に僕の名前を呼ぶあの優しい声が響いた気がした。
『..銀、困った時に唱えなさい。きっとワタシが助けてあげるから』
『オンマカキャラヤソワカ』『オンマカキャラヤソワカ』
そこで記憶が途絶えている。
恐らくその次に気がついたのは里の人に拾ってもらった頃だろう。
ただこの記憶を思い出した今、僕にはあの人が何者だったのか安易に予想がついた。
きっとその人はこの神殿の中にいる。
容姿の美しさが人間離れしていた時点で、なぜ昔の自分は気が付かなかったのだろうか。
彼はこの神社に祀られている神様なのだろう。
そして里の森で出会った黒い塊。
あれもきっと……。
老人が言っていた神様が墜ちるのは人間の生死を変えてしまうこと。
僕は恐らくあの土砂崩れで死んでいたはずだ。
しかし今こうやって生きている。
ここから導き出せる答えは一つしかないだろう。
ふらりと僕は神社の本殿に向かって足を進める。
老人が矢継ぎ早に『此処へ入ってしまったら最後、もうあの里へは帰れない』そう言っている気がするが、僕にはもう関係ないように感じた。
ギギギ……と鈍い音を立てて戸を開く。
そこにはやはり、あの黒い塊が立っていた。
黒い塊は僕が来るのを待っていたと言うように手を広げて僕を迎え入れる。
僕は黒い塊に吸い込まれるように腕の中へと入っていった。
涙が止まらなかった。
里という居場所をもらえる僕に対して、美しい容姿を捨て、黒い塊になってしまった神様は行く場もなく、ずっとここに一人でいたのだ。
きっと僕を救ってしまったから。
「ごめんなさい、僕の為に、こんな姿で、ひとりにさせてしまって」
謝りながら泣きじゃくる僕をあやす手はあのときと同じように優しかった。
暫く僕をあやすと撫でる手が止まり、とんとん、と頭を突かれた。
顔を上げると黒い塊は盃を僕に渡してきた。
盃を交わす。その行為の意味は僕でさえも知っている。
お見合いなんかの話をしているときにさんざん教えられたのだ。
僕は黒い塊、いや、白蓮と…。
お見合いのときにはなかった、じわじわと心を幸せで満たされる感覚。
恐らくどの縁談話をされても心が拒絶したのは、この幸せで満たされる感情を誰にも抱けなかったからだ。
この感情を僕が抱くのは唯一白蓮にだけだ。
自問自答に思考を傾け、無言の僕に対し
心なしか黒い塊は不安で揺れているようにも見える。
今度は僕が安心させるように優しく撫でる。
僕自身の感情に気がついた今、とる行動は一つしかない。
もしこれで白蓮から奪ってしまった時間、力を償えるなら。
黒い塊だろうと構わない。白蓮だけにこんな罰を背負わせたくない。僕も罪を背負うよ、白蓮が黒い塊のままなら僕も黒い塊になってもいい。
僕は彼の為ならなんでもしてあげる。してあげたい。
もう白蓮をひとりにはさせない。もう絶対さみしい思いはさせない。
そう思い、躊躇いも迷いもなく盃に口づけた..。
その瞬間
目も眩むような強い光が一瞬辺りを包み
「_やっと、結ばれた。」
聞き覚えのあるその声に
ふと僕が見上げれば、昔のような美しい姿で微笑む彼_白蓮がいた。
「今日は初夜だよ」
そういって微笑む白蓮の後ろで戸の閉まる音だけが静かな空間に響いた。
古めかしかった境内は、いつの間にか絢爛豪華な場所へと姿を変え、驚く間もなく手を取られ
鶯張りの長い渡り廊下を抜け、たどり着いた正面
襖を引いて案内された欄間には
薄明かりを宿した行灯と二組の寝床が用意されてあった。
足を踏み入れると薫る焚かれたお香に身を包まれ、その甘い匂いにクラリとしてよろけた拍子に布団の上に横たえた。
見上げる僕と見下げる白蓮
枕元の灯火の揺らめきが現実と幻想を曖昧にさせて
「ずっとこうしたかった」
そう言って抱き締めた白蓮の腕の強さに驚いて僕の鼓動が飛び跳ねる。
「..僕もです」
ずっと僕もこうしたかった。
やっと僕達
「..銀」
「..白蓮様」
端正な顔が近づいて来て僕は無意識に瞳を綴じた。
殷勤を通じ
彼に求められれば身も心も素直に差し出す。
甘く優しい口づけを貰って
口を少し緩めれば白蓮の舌がぬるりと入って来て、ゾクリとして
舌を絡められ軽く舌を吸われ、僕の身体はピクンと跳ねる。
濃厚な口づけは
淫靡な音と交わう涎で何度も糸を引かせ
乱れた着流の衿から露わになった自分の胸元に気づき
恥じらいで思わず身じろぐと両手首を掴まれ押さえられ寝床に深く僕の身体が沈む。
白蓮が上から僕を見下げながら黙って僕の指に白蓮の指を絡ませ握り合う。
身じろげなくなった僕の身体に白蓮はゆっくり顔を近づけてはだけた胸元をペロリと舐め上げる。
「ハァッぁっ」
鼻から抜ける甘い声が僕の口から洩れる。
そのまま胸元辺りを不埒な彼の唇が幾度も焼印するように痛いくらいきつく吸い付いてビリビリ身体が痺れ震える。
「はぁっ……ああっ、あっ…んっ……」
着流しを甘剥きされ
白蓮の前で全てを晒した。
なすがままに大きく脚を広げられ
舐め回すように見つめられ
羞恥で視界が歪む。
薄赤色の行灯の横に置いてあった潤滑油を彼が手に取り
彼を受け入れるべく僕の秘口へ白蓮の指が触れる。
秘口に潤滑油が塗られ丁寧に慣らされ
「ンッあっぁ」
あっという間に熟した窪みから指を抜かれると
白蓮は花王牡丹と隠逸菊花文様のあしらわれた羽織をすっと肩から落とした。
美しい肉体を持った美顔の白蓮が色めく瞳で僕を見つめながら
僕の秘口に太く育った硬い熱源を宛がった。
「はぁっぁ、あっあっあっあっ」
秩序から道を外し
熱くて太いものがゆっくり挿ってきて
声涙ともに下って
身体は仰け反って
キラキラする天を見つめた
軽く前後に白蓮の腰が動くと甘い悦びが僕の腰に絡みつき
俺の口から吐息と喘ぎが混ざりあって漏れる
「はぁっ……ああっ、あっ…んっ……」
そのまま甘い揺れから贈られる悦楽を全身で感じながら
しがみついた白蓮の首筋に唇を寄せ軽く吸い上げると彼もまた同じように僕の首筋を吸い上げた。
「っ、ぁッハァッ」
長い歳月待ち望んだこの時を
じゃれつくもどかしい互いの感情で心をいっぱいに満たしながら欲情を加速させ
薄明りの欄間の部屋で肌と肌を合わせ甘い声と淫靡な音を響かせる。
「はぁぁっ」
想い人に抱かれて
白蓮様、と
口をついて
涙と一緒に零れ落ちる
「..銀、愛してるいるよ」
「僕も愛しています」
合縁奇縁の二人は
感情が相まってまぐわいは烈火の一途を辿る。
ズンッと深くを強く突かれ
「はぁっぁ、あっあっあっあっ」
快楽が脳天から全身に喜びと共に駆けずり回る。
「はっ、あっアッっアッっあんっあんっ白蓮さま」
「銀、ハァーハァー銀、銀、」
「アアッ、アアッ白蓮さまー」
噎ぶくような甘い愛の行為に
僕の心と身体は
トロトロに
溶かされていく
今にも弾けそうな僕の中心を白蓮の右手が掴む。
「アッっ、はぁ、白蓮様、、もう」
「放ちたいか?」
白蓮の問いかけに涙々して静かに頷く
目元を伝う雫に彼が唇を寄せ口づけを一つ与えられたあと
濡れそぼり貪欲に天を向く熱い楔を上下に擦られ
「ンッあっアッアアッ」
繋がった場所も揺さぶられ、熱い楔も扱かれて、重なる快楽の強さに、口許から垂涎し、快楽に顔を歪め、喘ぎ、濃艶あまねき逸楽した様を白蓮に見られながら続く手淫によって高められ
「ああッ、はぁはぁイッてしまいます、ああもうイキます、アアッ―イクはぁぁっ...」
呼吸を乱し仰け反りながら身体を震わせ僕は熱くしぶき放った。
そして白蓮も後を追うように僕の中で果てた。
********
色欲を高めるお香は役目を終え大黒天(白蓮)の手によって消された。
祝杯の杯を交わす。
「大黒天様、おめでとうございます。」
「あぁ、お前の手引きが上手くいった。こうやって愛しい子と結ばれたのはお前のおかげだよ。」
「いえいえ、私はその青年を連れてきただけでございます。大黒天様が望むのなら叶える、それが私めの役目でございます。」
そうお伝えしながら深々と頭を垂れた。
「お前も仮の姿を解いて、一献やろう」
許しを得て白髪の老人の姿からポンと白い煙と共に元の姿、きつねになり、大黒天から受けた杯を肉球のついた手に収める。
閉じられた睫毛を湿らす涙が格子戸からの月明かりに抱かれ、キラキラさせながら眠る銀色の髪の青年を膝の上に寝かせ優しく大黒天が撫でながら
「ワタシはもう神ではない、禁忌をおかし今は人間の身となった、お前もこれからは白蓮と呼んでくれ」とどこか嬉しそうに呟く。
「しかし、大黒天、、いや白蓮様はなぜ、あんなことをなさったのですか?」
「あんなこと?」
「村をお潰しになられたことです」
「ああ、それのことか」
「はい、村を潰して禁忌を犯さなくても青年を手に入れる方法は他にもあったのでは……。」
青年を撫でる手を止めニッタリと白蓮はわらう。
「あの村が好きでもない相手と強引に見合いをさせ子孫繁栄を強要していたのは知っているだろう?ワタシはそれが許せなかっただけだ。嫌がるこの子を助けたかった」
「だからって、……村の人々を全て生き埋めにして殺さなくても..」
「全てではない。彼の両親は紋白蝶とカブトムシに変えてやったのだから」
神の怒りを買ってしまった末路ということか。
白蓮の膝の上で寝返りをうった青年の懐から何かがコトリと落ちる。
それを白蓮が拾いあげる。四つ葉のクローバーの栞。
白蓮はその栞をいとおしく見つめた。
それは遠いいつかの四つ葉のクローバーだ。
そのクローバーは最初、婿入りの誓いと共に青年が白蓮に渡したものだ。
それを時を経て今度は黒い塊へと醜く変化してしまった白蓮が青年に渡した思い出深いもの。
「なぁーキツネよ」
「なんでしょう」
「四つ葉のクローバーの花言葉を知っているか?」
「確か『幸運』だったと思いますが」
「勿論それもあるが、 それだけじゃないぞ。」
「それだけじゃないと申しますと?他にも意味があるのですか?」
「そうだ、四つ葉には幸運の他にもうひとつ大事な意味がある。」
「それは一体どんな?」
「四つ葉のクローバーのもうひとつの意味は『私のものになって』という相手に対する強い執着を持つ花なのだ」
そういって満足気に白蓮は杯を傾け一気に飲み干した。
執着。
それは時に
人よ世も、神の世も、とても恐ろしいものでございます。
~完~
☆登場人物☆
(元)大黒の神様 白蓮・・・村の守り神として何百年と祀られていたが、ある時その村の銀次と名のつく少年に心を奪われ、仮の人間の姿となり、銀次に近づき、やがて相思相愛となる。神は彼を「銀」と呼び彼は神を「白蓮」と呼んだ。
それから数年後、神は銀と結ばれたいが為に禁忌をおかした。それにより他の神の怒りを買い神の力を失い罪による罰を受け醜い姿へ変えられてしまった。しかしそんな姿になってしまっても尚、銀を愛する気持ちは変わらず、陰ながら銀を見守り続けて月日が流れた。そんな数年を過ごし再び銀の窮地、里に流行り病が蔓延し、自分の助けを乞う銀の真言を唱える声が白蓮の耳に届く。自分は醜い姿の為里へ降りることは出来ない、そこで従えるキツネを使い薬を届けさせた。元は治癒神様、それくらいのことは出来る。それにより里の人も銀も助かった。その後キツネの機転により、記憶を取り戻せた銀は白蓮と再会を果し、盃を交わし無事に結ばれた。
今は人間となった白蓮と銀は幸せに暮らしている。
銀次・・・記憶喪失前の名前は銀次、里では銀と呼ばれていた。森で白蓮に出会い、神様とは知らずに恋をしてプロポーズする。その後村の掟を拒み続けて、最後には強引な縁談をさせられそうになり、心の中で白蓮に助けを乞い、白蓮の禁忌により村人を皆殺し。唯一生き残った銀次は代償として記憶を失う。生き埋め同然の姿で里の人に発見され保護されたが、発見を早くする為に白蓮が銀次の髪の色を銀色に変えていた。記憶を失っている銀次はそのこと知らないが、記憶を取り戻してから後に白蓮からそのことを聞いた。
白髪の老人・・・神様に仕えるキツネ。禁忌をおかし醜い姿に変えられてしまった大黒天(白蓮)に対してもずっと変わらぬ忠誠を誓い仕えていた。そんなキツネは水面下で他の神々に直談判しどうにか姿形だけでも人間の姿にしてもらえないかと日々お願いしていた。しかしなかなか神々の許しがもらえず数年が経ち、もどかしい思いのなか、銀次の暮らす里で流行り病が蔓延していることを知り、白蓮の指示により里に薬を届けるよう云われ、醜い姿にさせられても尚、銀次を恨むことなく愛し続け助け続ける白蓮の誠意に心を打たれ、再び神々の元へ交渉に向かい、神々に対し、『もしも二人の愛が本物なら、醜い姿のままの白蓮と人間である銀次は盃を交わすはず。もし盃を交わすことが出来た暁には白蓮を人間の姿に戻して欲しい。』と神々にお願いした。神々はキツネの必死の申し出に折れ了承した。
銀次の父母・・・白蓮の温情によりカブトムシと紋白蝶になり銀次を見守っている。
村の人々・・・白蓮の怒りを買い黄泉の国。
里の人々・・・生き埋めの銀を助け、記憶喪失の彼を受け入れ仲良く暮らす。
流行り病の際、銀のおかけで命拾いし平和に暮らす。
記憶を取り戻すべく出掛けて行った銀が待てど暮らせど帰って来ないことを心配していたが、再び白髪の老人だけが里へ来て、銀は幸せに暮らしていることを伝えられ安堵した。その際、白髪の老人に大黒神社を大事にまつると全ての災いから守って下さると伝えられ、里の人々は大黒神社を氏神様として崇め祀り後世大事にした。
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