Seele―目が見えるようになったのは奇跡ではなく、罰だった―

真紀

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第一章

op.3『命がけの理由』

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 高凌学院の高等部には、AからEまでの5つの学生オーケストラがある。成績順で振り分けられ、頂点がAオケだ。コンクール上位者ばかりが集まり、席次争いは熾烈だった。交響楽団の席争いは、声楽科の光たちには直接関係ないが、各オーケストラは、自分達専属の歌手を声楽専攻生から選んでいいことになっており、光はずっとAオーケストラの専属だった。



 学院内は今、一つの話題でもちきりだった。


「聞いたか? 東音祭の自由曲の楽譜、今日配られるらしいよ」


 四年に一度の東京アルモニア国際音楽祭――通称“東音祭”。若手音楽家の頂点の舞台だ。高校生枠もあり、高凌はその本命と目されていた。


 ピアノ科の和沙がつくったピアノ協奏曲・独唱付き、という、お祭り用の珍しい構成で、第一楽章と第三楽章の一部分で光が歌うことになっている。昨夜最終的な手直しが入り、やっと第二楽章までが仕上がったばかりの曲で、オーケストラたちもまだ聴いたことがない曲だ。


 最終楽章が、まだない。 それなのに光と和沙が選ばれる―――二人が専属のAオケが選ばれるほど、双子の実力は圧倒的だった。


「あ、それでか! 今日、やけにAオケのやつら早い登校してると思ったら。和沙が弾いて光が歌うんだろ? なんだかなぁ、鬼に金棒ペアだなぁ」

「そっかー、東音祭までもう二年ないんだよねぇ。あー、Aオケのやつら大変。ついに尻に火がつくぞ~」


 少し行くと、Aオケのメンバーがホールに入って行く姿もあった。


「どんな曲か楽しみ」

「いよいよ東音祭シフトかー。藤宮んとこの兄弟、なんか年中大変だねぇ。通常の音楽コンクールももちろん出るんだろ?」

「おれも出るよ、オーボエで。多分本選までは進めないとは思うけど……藤宮んとこはそうはいかないだろ」

「あー……あの二人はね……命懸けだろうな。なにせ今後の音楽活動全部かかってるもんな。ま、今年も敵なしとは思うけど……大変だよなぁ実際……高凌、学費も施設費も詐欺なみに超高いし、おれらみたいに、黙ってても親が金出してレッスン通わせてくれるーってわけにはいかないもんね……孤児じゃ」

「……やめとこ、この話題。和沙らも、触れられて楽しい話題じゃなかろうからな」

「だね」




 藤宮兄弟は、孤児だった。
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