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陰謀
ヴェンデルガルトの不調
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夏がそろそろ終わる頃。バーチュ王国から使者が来た。あの後の事を、報告しに来てくれたらしい。
アンゲラー王国の王族とハーレムの人間は全て公開処刑、ハーレムにあった『龍殺しの実』はレーヴェニヒ王国が処分した事。アンゲラー王国の領土はヘンライン王国と分けた事。これによりヘンライン王国は、バーチュ王国を通らず貿易が出来るようになった事。同盟は結んだままでいる事、などが手紙には書かれていた。
「これは、ヴェンデル宛ですね」
と、別の手紙をギルベルトがヴェンデルガルトに渡した。
「有難うございます」
手紙は、ツェーザルからだった。手紙からは、懐かしい南の国の香りがした。
『ヴェンデルガルトちゃん、元気かしら? 最後にお別れの挨拶が出来なかったのが、ちょっぴり残念だわ。あなたには、本当にお世話になったわね。心から感謝するわ。アロイスの事は残念だけど、目を覚ましてくれることを願っているわ。それとね、あなたに言った事は今でも間違っていないと思うの。立場や状況で伴侶を選ぶのではなく、ヴェンデルガルトちゃんが選んだ人と結ばれて欲しいわ。あなたが本当に好きになった人と。私は、来年の春には結婚する事になったわ。王子が二人もいない今、王が跡継ぎを心配してね。だから、余計にあなたには幸せになって欲しい。たまに思うの。私が自由だったら、あなたに――なんて、少し夢見たりしてね。これからヘンライン王国には、兵士教育も教えて強い国になって貰うわ。お互い助け合う事が出来るように。いつか、一度でもいいからまたあなたに会える事を願っている。可愛いヴェンデルガルトちゃん、幸せになってね』
ヴェンデルガルトは使者に、「私もツェーザル様に手紙を書きたいので、頼んでもよろしいでしょうか」と願った。バーチュ王国の使者はそれを快諾してくれた。
ヴェンデルガルトは自分の思いを込めて、ツェーザルにあてて手紙を書いた。彼の幸せも願い。そうして、編み上げた赤色のアヤーも、手紙に添えた。アロイスの瞳の色だ。アロイスに渡したものより、少し上手になった気がする。ガラス玉で装飾して、ネックレスにした。
「これを、お願いします」
と渡すと、使者は笑みを深くした。
「私は、あの時国境の警備をしていました。火傷した兵たちを治すあなたの素晴らしいお姿は覚えています――聖女様、とこちらでは言うのですね。奇跡を見る事が出来ました」
使者の言葉に、ヴェンデルガルトは深々と頭を下げた。
そうして、バーチュ王国の使者を見送った後。ヴェンデルガルトの周りで異変が起き始めていた。まず、深夜になると異臭がするようになった。何かを炙っているような変な香りで、しばらくは気にしないでいようとしたが、気分が悪くなり日中でもヴェンデルガルトは貧血を起こす事が多くなった。肌が青白くなり、何度かカールが意識のなくなったヴェンデルガルトを抱えて、彼女の部屋まで送った。
「何でしょう――やはり、夜中の異臭でしょうか?」
「異臭?」
ビルギットの言葉に、カールが部屋の匂いを嗅いだ、微かだが、何かを燃やしたような香りが残っていた。
「最近、夜中になると変な匂いがするとヴェンデルガルト様が言ってらっしゃったんです。確かに朝部屋に入ると、妙な匂いがしています」
ベッドに横になっているヴェンデルガルトは、苦しそうな浅い息を繰り返していた。カールは心配そうにそのヴェンデルガルトの頭を撫でて、ビルギットを見上げた。
「ジークハルトに話して、相談してみるよ。俺も心配だ」
「よろしくお願いします。ようやく帰って来られたのに、ヴェンデルガルト様が不憫で……」
カールは、焦げた匂いと共に何か覚えがある香りに首を傾げた。どこで嗅いだか分からないが、嗅いだ記憶がある匂いだった。
「毒の可能性が高いな」
ジークハルトに報告に行くと、彼は顎に手を当てて首を僅かに傾げた。
「そうなると、やはりフロレンツィアが怪しいな。あの一族は、毒草を好む」
前回彼女が襲われた時に分かった、ジキタリスを育てていた事を思い出したようだ。
「イザークを呼んでくれ。調べて貰おう。こういう調べる事は、彼が向いている」
「分かった、呼んで来るよ」
カールが部屋を出ると、ジークハルトは深々と溜息をついた。フロレンツィアとその一族のせいで、ジークハルトは頭を抱える事ばかりだ。彼らが皇国を乗っ取ろうとしている事は分かっているのに、その証拠が全く掴めない。そればかりかヴェンデルガルトが現れて人気が出ると、それに嫉妬したフロレンツィアが何かをするのにそれすらも謎のまま終わってしまう。
今度は、皇国内の戦いか――。
ジークハルトが疲れたように目頭を指で押すと、ノックの音がしてイザークが部屋に入っていた。
アンゲラー王国の王族とハーレムの人間は全て公開処刑、ハーレムにあった『龍殺しの実』はレーヴェニヒ王国が処分した事。アンゲラー王国の領土はヘンライン王国と分けた事。これによりヘンライン王国は、バーチュ王国を通らず貿易が出来るようになった事。同盟は結んだままでいる事、などが手紙には書かれていた。
「これは、ヴェンデル宛ですね」
と、別の手紙をギルベルトがヴェンデルガルトに渡した。
「有難うございます」
手紙は、ツェーザルからだった。手紙からは、懐かしい南の国の香りがした。
『ヴェンデルガルトちゃん、元気かしら? 最後にお別れの挨拶が出来なかったのが、ちょっぴり残念だわ。あなたには、本当にお世話になったわね。心から感謝するわ。アロイスの事は残念だけど、目を覚ましてくれることを願っているわ。それとね、あなたに言った事は今でも間違っていないと思うの。立場や状況で伴侶を選ぶのではなく、ヴェンデルガルトちゃんが選んだ人と結ばれて欲しいわ。あなたが本当に好きになった人と。私は、来年の春には結婚する事になったわ。王子が二人もいない今、王が跡継ぎを心配してね。だから、余計にあなたには幸せになって欲しい。たまに思うの。私が自由だったら、あなたに――なんて、少し夢見たりしてね。これからヘンライン王国には、兵士教育も教えて強い国になって貰うわ。お互い助け合う事が出来るように。いつか、一度でもいいからまたあなたに会える事を願っている。可愛いヴェンデルガルトちゃん、幸せになってね』
ヴェンデルガルトは使者に、「私もツェーザル様に手紙を書きたいので、頼んでもよろしいでしょうか」と願った。バーチュ王国の使者はそれを快諾してくれた。
ヴェンデルガルトは自分の思いを込めて、ツェーザルにあてて手紙を書いた。彼の幸せも願い。そうして、編み上げた赤色のアヤーも、手紙に添えた。アロイスの瞳の色だ。アロイスに渡したものより、少し上手になった気がする。ガラス玉で装飾して、ネックレスにした。
「これを、お願いします」
と渡すと、使者は笑みを深くした。
「私は、あの時国境の警備をしていました。火傷した兵たちを治すあなたの素晴らしいお姿は覚えています――聖女様、とこちらでは言うのですね。奇跡を見る事が出来ました」
使者の言葉に、ヴェンデルガルトは深々と頭を下げた。
そうして、バーチュ王国の使者を見送った後。ヴェンデルガルトの周りで異変が起き始めていた。まず、深夜になると異臭がするようになった。何かを炙っているような変な香りで、しばらくは気にしないでいようとしたが、気分が悪くなり日中でもヴェンデルガルトは貧血を起こす事が多くなった。肌が青白くなり、何度かカールが意識のなくなったヴェンデルガルトを抱えて、彼女の部屋まで送った。
「何でしょう――やはり、夜中の異臭でしょうか?」
「異臭?」
ビルギットの言葉に、カールが部屋の匂いを嗅いだ、微かだが、何かを燃やしたような香りが残っていた。
「最近、夜中になると変な匂いがするとヴェンデルガルト様が言ってらっしゃったんです。確かに朝部屋に入ると、妙な匂いがしています」
ベッドに横になっているヴェンデルガルトは、苦しそうな浅い息を繰り返していた。カールは心配そうにそのヴェンデルガルトの頭を撫でて、ビルギットを見上げた。
「ジークハルトに話して、相談してみるよ。俺も心配だ」
「よろしくお願いします。ようやく帰って来られたのに、ヴェンデルガルト様が不憫で……」
カールは、焦げた匂いと共に何か覚えがある香りに首を傾げた。どこで嗅いだか分からないが、嗅いだ記憶がある匂いだった。
「毒の可能性が高いな」
ジークハルトに報告に行くと、彼は顎に手を当てて首を僅かに傾げた。
「そうなると、やはりフロレンツィアが怪しいな。あの一族は、毒草を好む」
前回彼女が襲われた時に分かった、ジキタリスを育てていた事を思い出したようだ。
「イザークを呼んでくれ。調べて貰おう。こういう調べる事は、彼が向いている」
「分かった、呼んで来るよ」
カールが部屋を出ると、ジークハルトは深々と溜息をついた。フロレンツィアとその一族のせいで、ジークハルトは頭を抱える事ばかりだ。彼らが皇国を乗っ取ろうとしている事は分かっているのに、その証拠が全く掴めない。そればかりかヴェンデルガルトが現れて人気が出ると、それに嫉妬したフロレンツィアが何かをするのにそれすらも謎のまま終わってしまう。
今度は、皇国内の戦いか――。
ジークハルトが疲れたように目頭を指で押すと、ノックの音がしてイザークが部屋に入っていた。
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