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陰謀
目覚めたクラーラ
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医務室を出たジークハルトは、心が満たされる思いで僅かに微笑んだ。ヴェンデルガルトの笑顔が脳裏を離れない。彼女を助けているつもりで――助けられてばかりだ。暴漢に襲われそうになった時、怖さを思い出して泣いていた春の終わり近くの城の庭。南の国を去る時、愛おしく思い始めたアロイスとの別れ、彼女を愛しんでくれたツェーザルとも別れ……そして、懐いていてくれた使用人の裏切り。それらを背負って北に帰る馬車の中で泣いていた、小さな背中。ジークハルトは、そのどちらも見ていた。本来の彼女は、優しく繊細だ。それなのに、ジークハルト達を励ましてくれる、健気で――愛おしい少女。
「どうした、兄貴?」
「いや、何でもない。行くぞ」
立ち止まって医務室のドアを見ていたジークハルトに、ランドルフは話しかけた。それにハッとしたジークハルトは、慌てて執務室に向かった。ランドルフは不思議そうな顔をしながらも、それに続いて行った。
次の日。また同じように医務室に来たヴェンデルガルト達は、徹夜をしていたカリーナを寝かせて、眠り続けている少女の見守りをした。丁度東の薬を飲み終えたヴェンデルガルトは、すっかり元気になっていた。室内にいたので肌は白いままなのだが、ダンスを踊れるほど元気になったと、昨日夕食後ロルフやビルギット達とダンスを踊った。ロルフには、今の流行のダンスを教えて貰った。
その流れで、医務室でヴェンデルガルトはロルフとステップの練習をしていた。
「ふふ、やっぱりダンスは楽しいわ。ロルフのお陰ね」
「いえ、俺で役に立ってよかったです。ヴェンデルガルト様はパーティーに出る機会がなかったでしょうが、これから増えるかもしれませんからね。覚えていて損はないです」
「お二人ともお疲れ様です。お茶を用意しますね」
疲れたヴェンデルガルトとロルフが椅子に座ると、ビルギットが笑顔で部屋を出て行った。ワゴンでお茶を運んできたビルギットは、久し振りに東のお茶以外のものを用意した。ヴェンデルガルトの好きな、ローズティーだ。
「良い香りね」
ティーカップから漂う香りに、ヴェンデルガルトは微笑を浮かべた。
「ぅ……ん……」
その時、聞き慣れない声が上がった。ヴェンデルガルト達は、ハッとなって寝ている少女――クラーラに視線を向けた。彼女は身を起こして、目を擦っていた。
「ここ……どこ……?」
見慣れない部屋を見渡して、ヴェンデルガルトに視線を向けた。
「金の……魔女! いや、怖い……私……私……変な薬……いやぁ!!」
クラーラは絶叫に近い声を張り上げた。その声の大きさにヴェンデルガルトは思わず耳を塞ぎ、ビルギットはティーポットをワゴンに置いて、ロルフはヴェンデルガルトを抱き締めた。
「何事ですか!?」
見張りに立っていた白薔薇騎士が二人室内に入って来た。涙を流しながら身体を抱き締めて叫ぶ少女に、驚いているようだ。
「クラーラ様!」
絶叫が止まらないので、ビルギットが前に出てクラーラを抱き締めた。親が子を抱き締める様に、優しく髪を撫でる。
「大丈夫です、クラーラ様。ここには、あなたを虐める人はいません。大丈夫です、大丈夫です……」
「大丈夫」を繰り返して抱き締めるビルギットに、クラーラは次第に身体の力が抜ける様にビルギットに凭れ掛かった。声を張り上げるのを止めて、ビルギットにしがみつく。
「目を覚まされたのですね、すぐにジークハルト様に……!」
「待ってください、まだ彼女は話せません」
報告に行く、と言おうとした騎士の声をヴェンデルガルトは遮った。
「まずは、彼女の心を癒しましょう。それから、ゆっくり話を聞きましょう」
確かに、と先程の絶叫を聞いた騎士たちは顔を見合って頷いた。
「では、話せるようになったら教えていただけますか? 目を覚ました事は、一応報告をしておきます」
「よろしくお願いします」
白薔薇騎士が出て行くと、ヴェンデルガルトはビルギットが淹れた紅茶を一口飲んでから、カップをロルフに渡して立ち上がる。歩み寄って来るヴェンデルガルトに、クラーラは怯えているようだった。
「来ないで……ごめんなさい……薬はいや……ごめんなさい」
「癒し」
壊れたようにそう繰り返すクラーラに、ヴェンデルガルトは治癒魔法をかけた。光がクラーラを包むと、何処を見ているか分からなかったクラーラの瞳に光が戻った。
「……あの、金髪の魔女じゃない……ヴェンデルガルト、様……?」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔だったが、クラーラははっきりとヴェンデルガルトを見つめてそう尋ねた。ヴェンデルガルトは、優しく微笑んでハンカチで彼女の顔を拭いてあげる。
「はい、私はヴェンデルガルトです。クラーラ様、あなたはジークハルト様に助けて貰って今城にいます。ここは安全ですよ、よく頑張りましたね」
「ジークハルト様に……! そうよ、あの日確かに……ジークハルト様を見たわ! 私、助かったのですね……有難うございます、有難うございます……」
ヴェンデルガルトのハンカチでは足りない程、クラーラはまた新たな涙を流した。ヴェンデルガルトに頼まれて、ロルフはタオルとお湯を用意するため部屋を出た。
「どうした、兄貴?」
「いや、何でもない。行くぞ」
立ち止まって医務室のドアを見ていたジークハルトに、ランドルフは話しかけた。それにハッとしたジークハルトは、慌てて執務室に向かった。ランドルフは不思議そうな顔をしながらも、それに続いて行った。
次の日。また同じように医務室に来たヴェンデルガルト達は、徹夜をしていたカリーナを寝かせて、眠り続けている少女の見守りをした。丁度東の薬を飲み終えたヴェンデルガルトは、すっかり元気になっていた。室内にいたので肌は白いままなのだが、ダンスを踊れるほど元気になったと、昨日夕食後ロルフやビルギット達とダンスを踊った。ロルフには、今の流行のダンスを教えて貰った。
その流れで、医務室でヴェンデルガルトはロルフとステップの練習をしていた。
「ふふ、やっぱりダンスは楽しいわ。ロルフのお陰ね」
「いえ、俺で役に立ってよかったです。ヴェンデルガルト様はパーティーに出る機会がなかったでしょうが、これから増えるかもしれませんからね。覚えていて損はないです」
「お二人ともお疲れ様です。お茶を用意しますね」
疲れたヴェンデルガルトとロルフが椅子に座ると、ビルギットが笑顔で部屋を出て行った。ワゴンでお茶を運んできたビルギットは、久し振りに東のお茶以外のものを用意した。ヴェンデルガルトの好きな、ローズティーだ。
「良い香りね」
ティーカップから漂う香りに、ヴェンデルガルトは微笑を浮かべた。
「ぅ……ん……」
その時、聞き慣れない声が上がった。ヴェンデルガルト達は、ハッとなって寝ている少女――クラーラに視線を向けた。彼女は身を起こして、目を擦っていた。
「ここ……どこ……?」
見慣れない部屋を見渡して、ヴェンデルガルトに視線を向けた。
「金の……魔女! いや、怖い……私……私……変な薬……いやぁ!!」
クラーラは絶叫に近い声を張り上げた。その声の大きさにヴェンデルガルトは思わず耳を塞ぎ、ビルギットはティーポットをワゴンに置いて、ロルフはヴェンデルガルトを抱き締めた。
「何事ですか!?」
見張りに立っていた白薔薇騎士が二人室内に入って来た。涙を流しながら身体を抱き締めて叫ぶ少女に、驚いているようだ。
「クラーラ様!」
絶叫が止まらないので、ビルギットが前に出てクラーラを抱き締めた。親が子を抱き締める様に、優しく髪を撫でる。
「大丈夫です、クラーラ様。ここには、あなたを虐める人はいません。大丈夫です、大丈夫です……」
「大丈夫」を繰り返して抱き締めるビルギットに、クラーラは次第に身体の力が抜ける様にビルギットに凭れ掛かった。声を張り上げるのを止めて、ビルギットにしがみつく。
「目を覚まされたのですね、すぐにジークハルト様に……!」
「待ってください、まだ彼女は話せません」
報告に行く、と言おうとした騎士の声をヴェンデルガルトは遮った。
「まずは、彼女の心を癒しましょう。それから、ゆっくり話を聞きましょう」
確かに、と先程の絶叫を聞いた騎士たちは顔を見合って頷いた。
「では、話せるようになったら教えていただけますか? 目を覚ました事は、一応報告をしておきます」
「よろしくお願いします」
白薔薇騎士が出て行くと、ヴェンデルガルトはビルギットが淹れた紅茶を一口飲んでから、カップをロルフに渡して立ち上がる。歩み寄って来るヴェンデルガルトに、クラーラは怯えているようだった。
「来ないで……ごめんなさい……薬はいや……ごめんなさい」
「癒し」
壊れたようにそう繰り返すクラーラに、ヴェンデルガルトは治癒魔法をかけた。光がクラーラを包むと、何処を見ているか分からなかったクラーラの瞳に光が戻った。
「……あの、金髪の魔女じゃない……ヴェンデルガルト、様……?」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔だったが、クラーラははっきりとヴェンデルガルトを見つめてそう尋ねた。ヴェンデルガルトは、優しく微笑んでハンカチで彼女の顔を拭いてあげる。
「はい、私はヴェンデルガルトです。クラーラ様、あなたはジークハルト様に助けて貰って今城にいます。ここは安全ですよ、よく頑張りましたね」
「ジークハルト様に……! そうよ、あの日確かに……ジークハルト様を見たわ! 私、助かったのですね……有難うございます、有難うございます……」
ヴェンデルガルトのハンカチでは足りない程、クラーラはまた新たな涙を流した。ヴェンデルガルトに頼まれて、ロルフはタオルとお湯を用意するため部屋を出た。
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