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第3章 再会編

第11話 初恋の人との再会

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「はーい、どちら様ですか?」

 久しぶりに聞く『つねちゃん』の声……
 俺の心臓の鼓動は更に激しくなっていく。

 そんな俺を見かねて志保さんが口を開いた。

「すみませーん!! 私、鎌田と申すものですが、常谷先生の『元教え子』の『五十鈴 隆君』をお連れしましたぁぁぁ!!」

「えっ!?」

 ガチャッ

 『つねちゃん』の驚く声と同時に直ぐにドアが開く。

 そして俺が想像していた以上の出来事が起こってしまう。

「たっ、隆君!!」

 ガバッ

「えっ!? つ、つねちゃん……?」

 『つねちゃんは』俺の名前を呼ぶと同時に抱き着いてきたのだ。
 そして涙を流しながらこう言った。

「ほっ、本当に隆君だ……し、信じられない……まさか本当に隆君が私の家を訪ねに来てくれるなんて……ゆ、夢じゃ無いよね……?」

 そんな『つねちゃん』の身体のぬくもりを感じながら俺は恥ずかしさのあまり身体が硬直していた。そしてまさか『つねちゃん』がこんなにも俺に会うのを喜んでくれるなんて……

 俺の方が夢を見ているようだ……
 いや、この『世界』事態が俺にとっては『夢の途中』なんだが……

 この状態を驚いた表情で見ていた志保さんが『つねちゃん』に話しかける。

「あ…あのぉぉ……すみません……」

「あっ!! ご…ごめんなさい……私ったら、隆君を連れて来てくれたアナタにお礼も何も言わなくて……」

 『つねちゃん』は少し焦った表情で志保さんにお詫びを言った後、俺達二人を部屋に招いてくれた。

 これが『つねちゃん』の部屋かぁぁ……
 さすが女性の部屋だな。綺麗に片付いているし、家具やカーテンなどの色合いも女性っぽい優しい色だな……

 『現実世界』の俺の部屋とはエライ違いだ……いや、『この世界』の俺の部屋もたいがいだがな……

「たっ、隆君? そんなに先生の部屋をまじまじと見ないでくれるかな? 先生とても恥ずかしいわ……」

 『つねちゃん』は少し頬を赤らめながら俺にそう言うと

「今、お茶を入れるわね。二人共そこに座って少し待っててね?」

 そう言って、台所に行くのであった。


 そしてようやく三人が揃ってテーブルを囲み、ゆっくり落ち着いて話が出来る状態になった。

「まず、私から自己紹介させてくださいね? 私は隆君の家の近所に住んで居ます『鎌田志保』と言います。この近くの『青葉大学』に通っている二回生です」

「えっ、そうなの? 私も『青葉大学』の卒業生よ」

 そうだったんだ。『つねちゃん』も志保さんと同じ大学に通っていたのか?

 そこから二人の会話が続いていく。
 俺をほったらかしにして……

 志保さんは話し出したら止まらない人だから、ある程度俺は覚悟をしていたが、本来なら『主役』であるはずの俺が二人の会話に一切入れずにいた。

 いや、入らない様にしていた。

 それは見た目だけが小学一年生の俺が急に二人の会話に入るのは凄く違和感があるんじゃないかと思い、あえて『大人の考え』として気を遣っていたからだ。

 しかし、いっこうに二人の会話は終わらない。っていうか志保さんからの『つねちゃん』への質問攻めが全然終わらないだけなんだが……

 ただ、志保さんの質問攻めのおかげで『つねちゃん』に関して色々と知る事は出来た。

 『つねちゃん』の実家はここから更に駅が四つ向こうの『北青葉里きたあおばさと』という、この路線の終点の駅がある街にあるという事……

 実家にはご両親と大学生の弟さんが住んでいる事……

 このアパートには大学生の頃から住んでいる事……

 そして本当は今日、友人と買い物に行く約束をしていたが、その友人が風邪を引いてしまい、急遽買い物が延期になったので『つねちゃん』がこの時間に家にいた事……

 最後にここが一番肝心なところだが、今付き合っている人はいない事……

「ほんと、友達には申し訳ないけど、あの子が風邪を引いてくれて助かったわ。じゃないと隆君達にこうやって会えなかったものね……」

 俺は『つねちゃん』が本当に俺に会えて喜んでくれている事を確信し、幸せをかみしめていた。だが、そろそろ俺も『つねちゃん』と話がしたい。

 その思いがドンドン強くなり、俺は居ても立っても居られない心境になってしまい、思わず今ここで、特に志保さんのいる前で聞いてはいけない事を『つねちゃん』に聞いてしまう。

「つっ、つねちゃん!! 前に俺が言った事、覚えてくれてるかな!?」
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