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第9章 運命の選択編
第58話 お母さん、ありがとう
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あの衝撃の日から一週間が経った。
あれから一週間、私は学校では何事も無かったかのように振舞っていたけど、家に帰ってからは何もする気になれず布団に潜り込んでいた。
そして涙が自然と流れる。
私は何の為に『この世界』に来たの?
私は何の為に『この世界』で人生をやり直していたの?
今となっては最初の頃に思っていた通り、全てが『夢』であってほしいと思う様になっていた。
コンコン……
「浩美、大丈夫?」
お母さんが心配してくれている。
心配させて申し訳ないけど、今はソッとしてほしい……
ドア越しにお母さんが再び話し出す。
「何があったかお母さんには分からないけど、できれば相談してほしいなぁ……もしかしたら浩美の役に立てる話ができるかもしれないわよ……」
そうかもしれない。
でも、今の私の状況を話すのは辛いし、恥ずかしい。
私が何も返事をしないでいるとお母さんが再び話し出す。
「もし、浩美が落ち込んでいる理由が『恋の悩み』だとしたら、余計にお母さんに聞かせてほしいなぁ……こう見えてお母さんは昔から友達の『恋愛相談』にのっていたのよ。それにお母さんとお父さんが結婚するまでの話を聞けば何かヒントがあるかもしれないわよ」
えっ!?
私はお母さんの話に少し興味を持ってしまった。
そして……
「お母さん、部屋に入ってきてくれる?」
私はお母さんに全てでは無いけど少しだけ話を聞いてもらうことにした。
ガチャ……
「入るわね?」
「う、うん……」
私は布団から出るとベッドの上に座り、お母さんは私の勉強机用の椅子をベッドの前まで持って来て座った。
「それではお話を聞かせてもらいましょうか?」
「う、うん……あのね……」
私はお母さんに説明を始めた。
勿論、『前の世界』から『この世界』に来ているなんて話はする気はない。
まぁ、それを言ったところでお母さんに信じてもらえるはずは無いし……
だから私は単純に昔から好きな人がいて、中学生になったらその人に告白をしようと思っていたけど、その人には好きな人がいて本気かどうかは分からないけど『結婚』まで考えているみたいだということをお母さんに説明した。
お母さんは黙って最後まで私の話を聞いてくれていた。
そして少し考えた顔をしたけど、直ぐに話し出した。
「なるほどね。浩美も辛かったわねぇ……」
私はお母さんの第一声で涙がボロボロと流れ出してきた。
でもお母さんはニコッと微笑みながら私を抱きしめてこう言った。
「浩美、大丈夫よ。あなたは良い経験をしたのよ。これから大人になっていく為の第一歩みたいなものよ。だから大丈夫、そんなに落ち込む必要はないわ……」
「で、でも……」
「それにね、いくら彼に好きな人がいてもね、あなたの想いは伝えたっていいの。想いを伝えるのは自由なんだから。お母さんもそうだったわ……」
「えっ、お母さんも同じようなことがあったの?」
「うん、あったわよ。お母さんも昔、大好きな人がいてね……でも、その人には昔から片思いをしている人がいたのよ……」
「えっ、そうなの?」
私は驚いた。まさかお母さんも同じような経験をしていただなんて……
「それで、どうしたの?」
「フフフ、勿論、彼に告白したわよ。自分の想いを全てぶつけてやったわ」
「そ、それでどうだったの?」
「うん、フラれたわよ。でもお母さんは彼に想いの全てをぶつけることができたから、気持ちは晴れていたわね」
「フラれたのに心が晴れるの?」
「晴れるわよぉぉ。まぁ、お母さんもその時はこんなに気持ちが晴れるとは思っていなかったけどね。でも想いを伝えないまま一生後悔するよりは想いをちゃんと伝えた方が良いって思ったから……というか、お母さんも実は死んだお母さん、浩美のお婆ちゃんに言われたんだけどね……」
「えっ、お婆ちゃんに!?」
「そうよ。お婆ちゃんは性格が少し男っぽかったから私にしてくれたアドバイスは大胆だったわ」
「他に何て言われたの?」
私が問うとお母さんは少し思い出し笑いをしてから優しく語り出した。
「あんたが想いを全てぶつけることができたら相手の心には一生、自分のことを好きでいてくれた、あんたの記憶、想いが残る。その人はあんたの想いを壊さない為にもこれから好きな人に対して更に優しくなり大事にするようになる。そう、あんたはその人を成長させる為に役に立つ人間になったのよ。そんな人間になれたことを誇りに思いなさい。そして自信を持って生きていたら今度はあんたのことを想ってくれる人がきっと現れるからってね……」
「お婆ちゃん、凄いね……」
「でしょう? お母さん、目からうろこだったわ。だからお母さんは大好きな人に告白して、そしてフラれたの。でも、その数年後、お父さんが目の前に現れたのよ。それも前からお母さんの頑張っている姿に惹かれていたんだってね……ウフ、ちょっと照れくさいわね」
「へぇ、お父さんがずっとお母さんのことを見てくれていたんだ……」
「フフフ、そうなのよ。ビックリでしょ?」
そっか……
フラれたっていいんだ……
だって私は彼のことを死ぬまで……死んでも大好きなんだから……大好きな彼の成長に役に立てるのなら私は嬉しい……
「分かったわ、お母さん……私、フラれてもいい、彼に私の想いを全てぶつけて告白するわ……彼に私の記憶を埋め込んでやるわ!! ちょっとだけ、彼を成長させる為に困らせてあげようと思う」
そう、私は『この世界』に想いを伝える為に来たんだから……
「フフフ、さすがお母さんの娘だわ。それにお婆ちゃんの孫ね。その調子よ。浩美は元気が一番だわ。だから頑張って告白してフラれなさい」
娘にフラれなさいって言う母親っておかしいかな?
でも、私はお母さんの言っていることが正しいと思えたし、私に対して凄く愛情を感じた。
こんな素敵なお母さんを数年後、飛行機事故で死なせたくない。
その為にも彼に対する想いに決着をつけて私は新たな目標に向かうことを決意した。
「お母さん、ありがとう……」
私は涙が治まるまで、お母さんの胸の中にいたのだった。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
ショックから立ち直れない浩美だったが母の言葉のお陰で気持ちに変化が起こる。
そして浩美は大好きな彼の成長の為に、自分の記憶を埋め込ませる為に告白しフラれる決意をするのだった。
どうぞ次回もお楽しみに…………
あれから一週間、私は学校では何事も無かったかのように振舞っていたけど、家に帰ってからは何もする気になれず布団に潜り込んでいた。
そして涙が自然と流れる。
私は何の為に『この世界』に来たの?
私は何の為に『この世界』で人生をやり直していたの?
今となっては最初の頃に思っていた通り、全てが『夢』であってほしいと思う様になっていた。
コンコン……
「浩美、大丈夫?」
お母さんが心配してくれている。
心配させて申し訳ないけど、今はソッとしてほしい……
ドア越しにお母さんが再び話し出す。
「何があったかお母さんには分からないけど、できれば相談してほしいなぁ……もしかしたら浩美の役に立てる話ができるかもしれないわよ……」
そうかもしれない。
でも、今の私の状況を話すのは辛いし、恥ずかしい。
私が何も返事をしないでいるとお母さんが再び話し出す。
「もし、浩美が落ち込んでいる理由が『恋の悩み』だとしたら、余計にお母さんに聞かせてほしいなぁ……こう見えてお母さんは昔から友達の『恋愛相談』にのっていたのよ。それにお母さんとお父さんが結婚するまでの話を聞けば何かヒントがあるかもしれないわよ」
えっ!?
私はお母さんの話に少し興味を持ってしまった。
そして……
「お母さん、部屋に入ってきてくれる?」
私はお母さんに全てでは無いけど少しだけ話を聞いてもらうことにした。
ガチャ……
「入るわね?」
「う、うん……」
私は布団から出るとベッドの上に座り、お母さんは私の勉強机用の椅子をベッドの前まで持って来て座った。
「それではお話を聞かせてもらいましょうか?」
「う、うん……あのね……」
私はお母さんに説明を始めた。
勿論、『前の世界』から『この世界』に来ているなんて話はする気はない。
まぁ、それを言ったところでお母さんに信じてもらえるはずは無いし……
だから私は単純に昔から好きな人がいて、中学生になったらその人に告白をしようと思っていたけど、その人には好きな人がいて本気かどうかは分からないけど『結婚』まで考えているみたいだということをお母さんに説明した。
お母さんは黙って最後まで私の話を聞いてくれていた。
そして少し考えた顔をしたけど、直ぐに話し出した。
「なるほどね。浩美も辛かったわねぇ……」
私はお母さんの第一声で涙がボロボロと流れ出してきた。
でもお母さんはニコッと微笑みながら私を抱きしめてこう言った。
「浩美、大丈夫よ。あなたは良い経験をしたのよ。これから大人になっていく為の第一歩みたいなものよ。だから大丈夫、そんなに落ち込む必要はないわ……」
「で、でも……」
「それにね、いくら彼に好きな人がいてもね、あなたの想いは伝えたっていいの。想いを伝えるのは自由なんだから。お母さんもそうだったわ……」
「えっ、お母さんも同じようなことがあったの?」
「うん、あったわよ。お母さんも昔、大好きな人がいてね……でも、その人には昔から片思いをしている人がいたのよ……」
「えっ、そうなの?」
私は驚いた。まさかお母さんも同じような経験をしていただなんて……
「それで、どうしたの?」
「フフフ、勿論、彼に告白したわよ。自分の想いを全てぶつけてやったわ」
「そ、それでどうだったの?」
「うん、フラれたわよ。でもお母さんは彼に想いの全てをぶつけることができたから、気持ちは晴れていたわね」
「フラれたのに心が晴れるの?」
「晴れるわよぉぉ。まぁ、お母さんもその時はこんなに気持ちが晴れるとは思っていなかったけどね。でも想いを伝えないまま一生後悔するよりは想いをちゃんと伝えた方が良いって思ったから……というか、お母さんも実は死んだお母さん、浩美のお婆ちゃんに言われたんだけどね……」
「えっ、お婆ちゃんに!?」
「そうよ。お婆ちゃんは性格が少し男っぽかったから私にしてくれたアドバイスは大胆だったわ」
「他に何て言われたの?」
私が問うとお母さんは少し思い出し笑いをしてから優しく語り出した。
「あんたが想いを全てぶつけることができたら相手の心には一生、自分のことを好きでいてくれた、あんたの記憶、想いが残る。その人はあんたの想いを壊さない為にもこれから好きな人に対して更に優しくなり大事にするようになる。そう、あんたはその人を成長させる為に役に立つ人間になったのよ。そんな人間になれたことを誇りに思いなさい。そして自信を持って生きていたら今度はあんたのことを想ってくれる人がきっと現れるからってね……」
「お婆ちゃん、凄いね……」
「でしょう? お母さん、目からうろこだったわ。だからお母さんは大好きな人に告白して、そしてフラれたの。でも、その数年後、お父さんが目の前に現れたのよ。それも前からお母さんの頑張っている姿に惹かれていたんだってね……ウフ、ちょっと照れくさいわね」
「へぇ、お父さんがずっとお母さんのことを見てくれていたんだ……」
「フフフ、そうなのよ。ビックリでしょ?」
そっか……
フラれたっていいんだ……
だって私は彼のことを死ぬまで……死んでも大好きなんだから……大好きな彼の成長に役に立てるのなら私は嬉しい……
「分かったわ、お母さん……私、フラれてもいい、彼に私の想いを全てぶつけて告白するわ……彼に私の記憶を埋め込んでやるわ!! ちょっとだけ、彼を成長させる為に困らせてあげようと思う」
そう、私は『この世界』に想いを伝える為に来たんだから……
「フフフ、さすがお母さんの娘だわ。それにお婆ちゃんの孫ね。その調子よ。浩美は元気が一番だわ。だから頑張って告白してフラれなさい」
娘にフラれなさいって言う母親っておかしいかな?
でも、私はお母さんの言っていることが正しいと思えたし、私に対して凄く愛情を感じた。
こんな素敵なお母さんを数年後、飛行機事故で死なせたくない。
その為にも彼に対する想いに決着をつけて私は新たな目標に向かうことを決意した。
「お母さん、ありがとう……」
私は涙が治まるまで、お母さんの胸の中にいたのだった。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
ショックから立ち直れない浩美だったが母の言葉のお陰で気持ちに変化が起こる。
そして浩美は大好きな彼の成長の為に、自分の記憶を埋め込ませる為に告白しフラれる決意をするのだった。
どうぞ次回もお楽しみに…………
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