食の使徒 素人だけど使徒に選ばれちゃいました。癒しの食事を貴方に 幻想食材シリーズ

ドワーフの国へ

　ハイエルフの王女を救った事は一層噂になり各国に話が流れた。　
　
　社交界で絶賛するハイエルフの女王を見るのは、他国の人間にとって初めてのことで、また以前まで見せていた傲慢で強がりな性格は鳴りを潜め、穏やかで優雅、美しく優しく他国の使徒をほめるその姿は珍しいという言葉以上に人々の心を奪った。　
　
　そして長寿になればなるほど、色々な事に鈍感になるハイエルフが食の使徒の料理を大絶賛、まるで物語でも語るかのように語ったその姿は食の使徒のいつきの名声を極めて上昇させた。　
　
　また世界会議に参加している国々も、ハイエルフの王女を助ける為尽力したことにより、参加したいと言い出す国は前以上に殺到した。　
　
　そしてついにリンネ堂一同、いつき達が最初に訪問する国が決定した。　
　
　龍王国への訪問はあくまでも緊急事態、世界会議を通さず使徒が直接いくと言った国なのであくまでも例外である。　
　
　そして一番最初の国に選ばれたのは土と岩に覆われた国、ドワーフの国。　
　
　ドワーフの国は山や岩をくりぬいて住処を作り、アリの巣の如く発展していったくにである。　
　
　計画的に区画を作って、安全性を確保しても限界はあり、建物、家自体が崩れてしまい下敷きになり死亡する例も多く、また鍛冶や細工で有名なドワーフである。　
　
　事故で指の一本二本ない者や義手、義足の人間は数多に存在する。　
　
　それ故に、鍛冶、魔道具を作る事を諦めてしまったドワーフも多い、また岩と砂に囲まれる事が多くまともな食材がとれず、他の種族から悪食と言われる種族の一つでもある。　
　
　そんなドワーフ達の主な栄養源は雑穀などが混ざったエールである。　
　
　酒、エールのおかゆといってもいい、ドワーフのエールは子供から大人まで、確実に味わったことの故郷の味の様な物だが、それも自分たちだけを自分たちで養っていた時の話であり、今では各国からの援助もあって、新鮮な野菜に肉などもまともに味わうことが出来るが、食材を扱うのは圧倒的に後進国である。　
　
　さてそんなドワーフの国の名物モンスターといえば、サンドワームにサンドリザード、巨大なさそりやスネークパイソンとかになるのだが、ドワーフ達はこれらを駆除こそはすれど、食材としてみたことは一度もない。　
　
　主に食材になるのはリザードウルフやサボテンの実などであり、黄銅芋などは同調理しても食えないと言われた代物でもある。　
　
　他にも野菜はジュエルシリーズが多く、サファイアトマト、ルビートマト、黄金リンゴ、サファイアピーマン、プラチナキャベツに白菜などいろいろな野菜がそんざいするのだが、収穫が難しく、まともにたべれるのは三分の一と少なく、逆に完全に鉱石にしてしまい、宝石として他国と売買した方がマシなどといわれるが、宝石化するまえの野菜たちは超高級品で味も超一流である。　
　
　むしろ食べれる状態にして出荷した方が金額も何倍にもなるのだが、正確な確保の仕方が未だにわからずドワーフ達の頭を悩ませている。　
　
　肉にいたってはウルフとシープの二つしかおらず、またどちらも手ごわい魔物なので肉にありつけるのもなかなか難しいのが現状である。　
　
　デザートは小麦の巣といわれる、湧き水の様に小麦、大麦がわく場所があり、そこから定期的に確保している。　
　
　水は湖から手に入れるが、あまり質はよくなく、澄んだ極上の湖もあれば、飲めば腹をこわす湖も少なくはない。　
　
　「と、ドワーフの国の詳細はこんなところよ。いつきには住民に料理を振る舞ってもらって、傷ついたドワーフ達を治癒してもらおうって話よ」　
　
　「リンネ堂全員招待とはいえ、全住民に料理いきわたるかな？」　
　
　「そこは国自体が協力してくれるから問題ないわ」　
　
　「問題は何を作るかですね。できるなら、その国の食材でその国に根ざした料理が作れるようになりたいです」　
　
　「ドワーフの国の食材でドワーフの国の名物料理をですか？それはまたなかなか難しい話ですな」　
　
　「食材として扱われない魔物も多いですからね」　
　
　「サンドワーム、辺りならなんとか美味しく食べられそうですけどね？」　
　
　そういうと周りはシンと静かになった。　
　
　「サンドワームですかぁ・・・あまりおもいつきませんなぁ」　
　
　「まずはしっかり現地で食材を吟味してみないと、まだわかんないよ」　
　
　もしかしたら地球の何かに似た食材があるかもしれないし、処理の仕方で食べられるようになるかもしれない。　
　
　食の使徒っていう加護は、そういった現地の人が食べれないと思っている物を美味しく調理する加護でもある。　
　
　適切な処理の仕方さえわかれば、きっと美味しく食べれるはずだ。　
　
　料理人としてまだまだだし、未熟だけど、そういう食べ方とかは加護がどうすればいいか教えてくれる。　
　
　多分みんなは治癒だけが目的かもしれないけど、食べれる食材が増えたりすれば、それはそれで嬉しいんじゃないだろうか？そう思った。　
　
　期待されてるのは治癒だけど、料理の方でも貢献できるように、誰かの為になれればいいなぁ　
　
　お酒も好きな国だから、熟成の能力でお酒を造るのもいいかもしれない。　
　
　見本さえあればきっとコピーもできるだろうし。　
　
　こうして最初に訪問する国はドワーフの国に決定した。