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日本人の味覚

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 八百万 日本、海外、そして異世界の人間をみてきた斗真は考える。 
 
 日本人は実は味覚が優れている。 
 
 唐突に日本人を褒め始めてどうした?と思う方もいるかもしれない。 
 
 だが個人的に見て来た日本人の味覚を考えると、タバコを吸っている様な人間、俺の舌はそんな高価な食べ物なんかよりジャンクな物が好きだと言う人間、色々な人間をひっくるめて世界的にみたらかなり上位に存在するのではないかと思う。 
 
 その理由として、日本人は水にうるさい。 
 
 東京の水はまずいと言われ、それから50、60年の年月を得て東京はまずいと言われた水、カルキや消毒液臭いと言われる水の改善に努めあげ、ついには東京の水も中々うまい水に仕上げたのにも関わらず、それでも田舎の井戸水や湧き水には今一歩届かない東京の水を、日本人はまずいと言う。 
 
 そして米にも日本人はうるさい、最高級な物は新潟県、魚沼産の米の事を言うが、近年では聞いた事もない無名の米を何気なく購入して食べてみるも昔に比べて、そんなにブランド差などあるか?と思わせる程、無名の米たちも味に磨きをかけて来た。 
 
 そう高級ブランドの米や水などじゃないとまずいと言われ、思われてきた物達は、ここ30年間人間が努力する事によってうまいといわれてる品種やブランド達に下から突き上げる様に格段に品質を向上させてきたのである。 
 
 これはまずいと言われ、思われてきた物達の逆襲である。 
 
 その結果、一つ二つ味は落ちるものの値段的にはかなり安い無名の米を購入する事や値段的に安いのに品質もそれなりによいのでコストパフォーマンス的に選ばれてきた米や野菜などが存在したりする。 
 
 それほど拘るほどに世界的に見て日本人の味覚は鋭い部類にはいる。 
 
 そしてこういう事、日本人が日本人を褒めるような事を言うと、怒る人間や嫌な事を言う人間、すぐに右や左などに分類したがりその後貶してくる人間達がいる。 
 
 そういう人間達の声の大きさに怯え、一般人は、日本人は日本人を褒めるような事を言う事は恥ずかしい事なのだと思う様になり、自分達を褒めたり誇りに思ったりすることをしないようになっていった。 
 
 日本人野球選手が海外と言う世界的大スターになって、それを喜んで見ていると嫌な人間は必ずこういうのだ。 
 
 褒められているのは君じゃないよ、自分の事じゃないのに何がそんなに嬉しいのかと。 
 
 そんな事をいったら全てのスポーツや色々な有名人が活躍しているほとんどが自分と無関係だ。 
 
 人が喜ぶ姿をみて喜ぶことはおかしな事なのだろうか?同じ日本人を応援する事は間違った事なのだろうか?そうして自信のなくなっていく人はスポーツでも何でも、人を応援する事を辞め、喜ぶこともやめ、どんどんと無機質な日常と喜びの欠如した毎日に落とされていく。 
 
 そうした日々をすごして、ネットの海に潜っていると、日本がやたらと海外で褒められている記事や日本の事を題材とした掲示板の彼らの生の声を知る事になる。 
 
 そこでは日本人が褒める事を辞めた、諦めた様な事や、あまり気にしていない小さなことまでピックアップされ喜ばれていた。 
 
 日本人が日本人を褒める事をホルホルとか嫌な言葉で、安易に日本人を褒める事自画自賛は寒いからやめろよと言われ、やめた結果。 
 
 日本人を褒めてくれたり、これが凄いと語ってくれるのは海外の人たちだけとなった。 
 
 日本人を凄いじゃん、やるじゃん、と褒めてくれたり、世界的に見てこれって凄い事なんだよと教えてくれるのはいつだって海外のお客様達だ。 
 
 海外から遊びに来て楽しんでもらって、喜んでもらって、そうして日本人を褒めたりしてくれるのは海外の人たちだけになってしまった。 
 
 自分達で自分達を落とし続けて、傷つけて、誇りも捨てて、もう日本は駄目なんだなと思ったこの世界に、日本もいい国じゃないかと言ってくれるのは海外の人たちだけだ。 
 
 話がずれたが、味覚の話だ。 
 
 日本人の味覚は世界的にみて、そう悪くはない、だけど日本人でもあまり得意としていない味覚の部分がある。 
 
 それは、脂の美味さである。 
 
 脂もしくは脂身が食べたい!そうおもう人間は少ないかもしれない、実際に食べたいと思っても脂を使った料理といったら、二郎ラーメンの背油か背油系ラーメン、他には豚バラを使った角煮やチャーシューくらいしかないだろう。 
 
 他にも煮込み料理、これが日本は圧倒的に弱い。 
 
 思いつく限り味噌煮込み、ホルモンの煮込み、あと分類するなら鍋という別ジャンルになってしまう。 
 
 だがここで食の大家、偉大な歴史ある中国をみてみよう。 
 
 中国の煮込み料理は深い、肉を煮れば漫画の様に持ち上げただけで肉から骨がごろんとはずれる程煮込んだりもする。 
 
 そして日本では大抵肉を処理する段階で、牛と豚は体毛が生える大外の皮は外して処理される事が多いが、中国などではこの大外の皮をバーナーで焦げるまで炙り、体毛を焼きそして水で焦げを落としてから一度煮て、その下処理が終わった後本調理が始まる。 
 
 そして煮込まれた大外の皮はぷるんぷるんのもっちもち、下の脂とあわさりじゅるじゅると飲めるのど越しに快感と甘みと旨味を覚える極上の味がするのだ。 
 
 日本でそんな大外の皮も味わいたいとおもったら、精々が豚足くらいしかない、しかも豚足といえば足先の短い物を差し、豚すね肉やアイスバインなどといわれる大振りの所うっている店は少ない。 
 
 ホルモンもそうである。 
 
 日本ではしろころホルモンとして一時期人気になったが、本場の中国や韓国ではてっちゃんの部分を15センチほどの長い状態で焼く、炭ではなくフライパンで焼く事で、外側の皮がパリパリシャクシャクとパイ生地の様にからりと揚がり、筒状の中にある脂からはじゅわじゅわと極上の脂が飛び出るのだ。 
 
 多くの配信者が食べているその様子はとても美味しそうで、何度喉を鳴らしたことか、所が真似をした日本人の反応は蝋燭みたいであまり美味しくないといった反応で、みていて食欲のそそるものではなかった反応にがっかりしたものである。 
 
 この通り、日本人はあまり脂を旨味とは崇拝していない、むしろ毛嫌いしている人の方が圧倒的に多い人間達なのである。 
 
 現に内臓からとれる、貴重な網脂やキク脂といった部分を取り扱う店は圧倒的に少ない。 
 
 和牛の差しの脂ですら胸焼けがと嫌がる人間も少なくない、以上の通り、日本人は水や米にうるさく微かな味を感じ取り、脂には弱い人が多いのである。 
 
 他にも塩分や、動物性の出汁や海藻や魚から出る出汁の味にも鋭く、ただしょっぱいと言う一辺倒味ではなく、しっかりと旨味を感じ取り区分けする事が出来るのが日本人の長所と言える。 
 
 それ故に塩の種類、醬油の種類、味噌の種類は数えきれないほどあり、それぞれの味の違いを感じる事が出来る日本人は塩味に強く。 
 
 またラーメンなどで表現すると、家系ラーメンの出汁の味も全部が全部似たような味ではなく、店ごとにうまさを評価できる事から日本人の味覚は鋭いと言える。 
 
 海外からの旅行客の人によっては、日本人のラーメンは全部しょっぱいだけと言う人もいるが、その塩味を細かく分類して違いを評価できるのは素晴らしい事だと思う。 
 
 今度は異世界人を見てみよう。 
 
 斗真が感じた異世界人の味覚は酸味によっていて、辛みや塩味にうまさを覚えた、または塩味に違いがある事に気づいたのは八百万が出来てからだと思われる。 
 
 甘味についても砂糖と果物の果汁を使ったものが多く、砂糖が沢山使われているのがいいという人もいれば、もっと控えめの方がいい人と意見はわかれている様だ。 
 
 辛みについては最近辛いのが好きと言う人が増え、パスタの日にタバスコを沢山かけている人をみるようになった。 
 
 今度は蒙古タンメン系のラーメンを出してみるのも良さそうだと思う。 
 
 日本のただ強烈に辛ければいいといった料理ではなく、辛さの中にしっかりと旨味と快感を覚える蒙古タンメンは辛い料理の登竜門であり、極められた一つの辛い料理といっていいほど研ぎ澄まされている。 
 
 さて、明日は何を作ろうか?
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