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蒙古タンメン 情報屋トムソン

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 味覚 
 
 以前日本人は塩味に強く、醬油、味噌、塩などに特段に拘り多くの種類の醬油に味噌、塩が存在する。 
 
 そして島国だった故にか、日本でとれるスパイスなども限られていたため、スパイス文化や辛みなどの味の開拓は遅れているほうだったであろう。 
 
 辛み、最近では激辛ブームで海外でも危ないと言われている唐辛子の類をチャーハンにしたり、またはカップ麺ややきそばなどが販売され挑戦する者も多くでたが、撃沈した者も多い事だろう。 
 
 私はただ辛みに辛みを重ねた、ちょっと無茶したテレビや動画向けの辛い料理は、正直な話辛いのはわかるが、辛さの中にある旨味を感じ取れないとただ苦痛で終わるだけなのでは?と考えてしまったり、テレビ番組でも激辛料理を出されて、全然辛くないと無反応な俳優に本当に旨味まで感じているか甚だ疑問を思っていた。 
 
 辛みとは痛覚であり、辛みはある一定の自分の限界を超えると、辛みから味覚は苦味に変り、そして苦味から最終的に痛みに変るのである。 
 
 強烈な痛みや苦味を伴う辛さの料理を作るのは容易である。 
 
 でもそこに旨味を感じる調理ができてこそ真の激辛料理であり、激辛を食べて無反応なリアクションな人間はただただ鈍感な味覚音痴であり、むしろ辛い!辛い!と叫びながら汗を流し、でも美味い!とハフハフしながら食べてる姿が真の激辛好きな姿ではないだろうか?そして辛いものが好きだからこそ、段々と辛さに慣れ味覚が鈍感になっていく。 
 
 慣れとは痛みに慣れたりと鈍感になっていくことであり、ある意味では最初のフレッシュな状態ではなく衰えていっていると考えてもいい。 
 
 さて辛みについてある程度語ったところで、じゃあ辛い料理を作っている様々な料理店で旨味まで真に追及している店はあるのか? 
 
 これが意外とあるのである! 
 
 ジャンルは色々だが、ただ有名な唐辛子を突っ込んだだけの料理とは一段も二段も格が違く、己の辛みと旨味に邁進する店は日本に何店舗も存在する! 
 
 今回模倣するのはそんな超超有名店でありながら、辛みと旨味を追及してある意味で辛みのと旨味の最高地点に到達しているといってもいいウマ辛い名店!!! 
 
 蒙古タンメン中本である!!! 
 
 中国料理中本を前進にもち、蒙古タンメン中本を開業!そしてついにはカップラーメン業界にまで進出! 
 
 だが、普通はカップラーメンなどではやはり本店の味には到底及ばないなど物足りなさを感じる所を、蒙古タンメンのカップラーメンはその常識を覆し!カップラーメンと言う限られた表現の中で、しっかりと本店の意思!旨味!を完全再現!まさにこんな辛美味いラーメンを食ってしまったら、本店のラーメンはどんだけ美味いんだ!?と度肝を抜かれるクオリティ!中毒性なのである! 
 
 そして本店のド本命ラーメン!野菜の甘味!豆腐と餡の辛さ!スープの奥深さ!一段!一段!上る事に辛さを足していき、一番食べていて快感度の高い辛さを探れる制度、残ったスープに米を投入しても美味い!そしてまさにただ辛いだけじゃなく、旨味をしっかりと表現した唯一無二を誇る旨辛ラーメン店!!! 
 
 模倣するとはいっても簡単に出来る訳もなく。 
 
 根本であるスープから試行錯誤を重ねた斗真は、辛さと美味さの分水嶺に立たされ続けた!!! 
 
 雑な辛さを選べば、旨味が死に!旨味を増せば、辛さの魅力の中毒性が下がる!色々な面で足し算と引き算がされ、複数に混ざり在り、不確定要素さえ計算の範囲内に表現されている蒙古タンメン中本は、模倣する人間の前には、まさに数学の難問の如しのしかかった!ラーメン界の超難問数式!それが蒙古タンメンの正体だったのだ! 
 
 斗真は料理を始めた初心者だった頃から、辛い料理は出してみたいと思っていた。 
 
 だが蒙古タンメンを模倣する事選んでしまったが故に、安易にただ辛いものであるだけのラーメンは出せず!一か月二か月、半年、八か月と模倣を繰り返し、やっとやっとその足元!煮て非なる斗真流蒙古タンメンが出来上がったのは、つい最近の事である。 
 
 スープで躓き、麺で悩み、餡で複雑になり、また乗せる野菜炒めでも心は砕かれた!!! 
 
 その結果、蒙古タンメンの頂とは違う、斗真流の蒙古タンメンの頂に否!八合目にやっと到達したのである。 
 
 作った本人が贔屓目に見て、しみじみと美味さと辛さに酔いしれる事が出来る斗真流蒙古タンメン!それを今日客に振舞うのである!!! 
 
 情報屋 トムソン 
 
 八百万始まって以来、今日は辛い料理が出されると言う。 
 
 ブリタニア大陸にスパイスを使った辛い料理はほとんど存在しない。 
 
 情報屋トムソンが興味を示したのは、砂漠の国など亜熱帯地方で有名な辛い料理を八百万が出すと聞いて、情報屋としてこれは絶対に知らなければいけないと考えた事と、トムソンが経験した辛い料理、悪くはないが個性が強いもので、食べ過ぎると胃を痛める食べ物、程度の知識しかなく、辛いものが本当に美味いものに変わるのか?八百万ならありえるのでは?と言う不確定なものを確かめる為でもあった。
 
 気配を隠して店まできているのに、ねね嬢ちゃんはしっかりと俺の隠形見破り確認すると席まで案内される。 
 
 いつになく客共が興奮しているのが見てとれる。 
 
 どいつもこいつも顔赤くしながら汗流して、美味い美味いといっている。 
 
 その姿が信じられず、また本当か?俺の食った辛い料理は結構な種類があるが、それでもここまでがっつくような、それこそ美味いと大声出す様なもんはなかった。 
 
 これが辛いって味か、うん?まぁまぁ悪くないな、結構食えるもんじゃないか、程度の感覚で中には匂いがきつく食欲が失せるものもあったりしたもんだ。 
 
 辛さは今回は初めてだからと、全員が辛さ5の設定にされていると言う。 
 
 孤児の子に運ばれて生きて、最後に余裕があったらライスも〆にいいですよなんて言われた。 
 
 ラーメンか!なるほど!ラーメンの辛い奴か! 
 
 斗真の旦那といったら、塩、醬油、味噌、家系、二郎、どろ系、と確かにハズレがない。 
 
 ラーメンに赤いスープ、野菜も盛られ、湯気が少し目に染みる。 
 
 どうれと、まずはレンゲでスープを飲む。 
 
 か!!!!!!辛い!ぐぉ!これは飲みかたを間違えるとむせそうになる辛さ!熱々のスープがゆっくり胃袋に納められる存在感を感じる!! 
 
 だがこの後味!甘味を感じるだと!!??辛さの跡に少しの甘味!まろやかなスープの味がしっかりとあって、そこに辛み、甘味、塩味、酸味など複雑に一本の芯に巻き付くが如し複雑怪奇!!! 
 
 今度は餡をぺろり、むむ??ん???甘いな、、、んぐお!からい!甘味のあとにピンと突き抜ける強烈な辛さ!ほっほっほと空気まで辛くなる辛さ!だがこれがやばい!スープ、と餡それぞれが別ベクトルの辛さと甘さを表現する! 
 
 あ!駄目だ!これはスープと餡をからめた段階で膝に来る美味さだ!!脳内でバチバチにスープ飲みたい!甘辛い!あれが飲みたい!と暴れ出す。 
 
 すかさず麺と野菜を持ち上げ、ずずっと一口、ぐんうううううう!辛い!でも美味い!んでもって甘辛い!これはあれだ!いつぞやの中華料理甘酢あんかけ!あれに辛みを足したかのような!中毒性のある辛さってやつだ! 
 
 口はもう辛くて!痛い!汗が目に染みる!でももう一口!大口をあけてずずっと行く!これだ!この濃厚さまろやかさにがっつり濃厚な甘味!そして辛み!野菜!肉とまた感じる味を変えつつも、足しては引いてが繰り返され、脳内を駆け巡る!!! 
 
 時折あの夜空に浮かぶ花火が連想される。 
 
 どーんと辛みが咲いたと思えば、横ではちょっと小さな花火甘味がまたどーんと舌全体で咲、消えてゆく。 
 
 たたたたたた!!!!!!食べるって!飯を食うって!楽しい!!! 
 
 美味いって事はこんなにも幸せで、何気ないいつもの味ですら感動したり、空腹だった時いつもの料理ですら快感かわるのに、八百万ではその極致に近い色んな未知の味が楽しめる。 
 
 毎日俺達の舌は新しい斗真の美味いだろ?って概念と共に、また新しい美味いを知ることが出来るんだ。 
 
 これのなんて贅沢な事か!!ラーメンだって天ぷらだってソバだってうどんだってフライだってパスタだってうな丼だって別に定期的に同じ料理をだしたって全然いいんだ。 
 
 むしろそれを望んでいる奴や、いっそのことラーメンやうな丼天丼専門店になってもいいじゃねぇかなんて言う奴だっている。 
 
 それでも斗真の旦那は毎日俺達に知らない味、新しい味を出来る限り教えるかのように作るんだ。 
 
 またアレが食いたい!またあの料理が食いたい!そんな料理沢山あるさ!それでも今日はなんの?どんな味の料理がでるんだ?って矛盾したわくわくが溢れ出る。 
 
 そんでもって今回は辛いラーメンときた! 
 
 辛いのだって、俺達は全く知らない訳じゃないんだ。 
 
 でも辛いが美味いってなんだ!?辛いってのはかーっとなって酒でも飲んだ時の様なちょっとした癖があって、体もあったまって、なんとなく知ってる辛いって味はこんなもんだろ?って言う俺達の知識。 
 
 そんなもんなんてとぶっちぎるだけぶっちぎった。 
 
 辛いってのは美味いんだ!辛美味い!ウマ辛い!甘辛い!突き抜ける辛さ!辛さの世界はこんなにも広いと言わしめたラーメン! 
 
 汗だくになった客たちは、八百万本館に消えていく。 
 
 初めての辛さに滝の様な汗をかいてしまったので、浴場にさっぱりしにいくのだ。 
 
 汗かくだけかいて気持ちよくなって!それを風呂で流してさっぱりして!湯から上がって風を感じながら炭酸ジュースや牛乳、中には酒を飲んでいる奴もいる。 
 
 一部の人間で辛いブームがきてたが、これは本格的にブームがくるかもしれない。 
 
 八百万を出てトムソンは消える。 
 
 新たな味覚の波が来ることを確信して。
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