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第25話 ディープスカイ
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「なんで……こんなことに………」
力ない声音がダンジョン32階層の一角に木霊する。
レインである。
レインは魔物たちから身を隠すため、32階層の隠し部屋に避難していた。
壁を背に頭を抱えるレインの側には青白い顔のムムとレレが横たわっている。
眠る2人を見つめて、レインは大粒の涙をこぼした。
「俺のせいだ……俺が、俺が絶世の美女を手に入れたいと言ったばかりに……2人が死んじまったぁああッ」
そう、レインの傍らで横たわる2人は既に死んでいるのだ。
そんなレインの瞳には既に光は灯っていない。
レインは腰に提げた短刀を手に取り、自らの喉元に突きつけている。
彼は……レインは自害するつもりなのだろう。
それは今から2日ほど前のことだった。
◆
「逃げてください! レインさまッ!」
「ここは私たちがなんとか致します!」
「バカを言うなッ! お前たちは戦闘力なんてねぇじゃねぇーかッ」
32階層で12体のゴーレムに囲まれてるレイン一行。
レインの手には折れた大剣が握り締められていた。
硬いゴーレムの体にレインの大剣は通用せずに、砕けてしまったのだ。
さらに、ダンジョンは下層に行けば行くほど魔物が生み出されるスピードも上がる。
まさに今、レインたちを取り囲むゴーレムたちの後方で複数の粘膜が産み落とされた。
中からは体長5メートルを超えるゴーレムが粘膜を引き裂き生まれくる。
ムムとレレの2人はゴーレムを仕留めることは困難と判断し、自分たちが盾になるからその隙にレイン一人で逃げてくれと言い張っている。
しかし、レインの言う通り。ムムの能力は回復であり、レレはエンチャンターである。
2人の戦闘力は皆無に等しい。
だからレインは2人に声を荒げていた。
前に出ようとする2人を腕で遮り、レインは素早く周囲を見渡した。
(ゴーレムの攻撃力と防御力は尋常じゃない。だが、活路はある。ゴーレムはとにかく動きが遅い。倒すことは不可能でも逃げ切ることならできる!)
レインは折れた大剣を地面に投げ捨てて、懐から地図を取り出した。
冒険者パーティー〝麗〟から高額で買い取ったダンジョン内のマップだ。
そのマップにはダンジョン35層までのすべてが記載されている。
レインは素早くマップに目を通して、隠し部屋までの最短ルートを確認する。
(少し遠いが……相手はゴーレムだ。ムムとレレの足でもなんとかなるだろう」
判断すると、レインは2人に指示を出す。
「ムム、レレッ! 俺が突破口を切り開く! 合図を出したら俺に続いて走るんだッ!」
「「……はい! レインさまッ!!」」
2人のレインに対する信頼は絶大だ。
このような絶対絶命のピンチの中でも、レインが諦めていないのだから助かる道はあると疑ってなどいない。
愛する男を疑う女などいるだろうか? 否ッ!
それに、これまでに2人がレインに助けられてきたことを考慮すれば、もはや疑う余地などないのだ。
だから2人の顔にも希望が宿る。
何も恐ることはない、なぜなら自分たちには未来の勇者、レイン・ディープスカイがついているのだからッ!
大剣を失っても彼ならやれる。
2人の瞳に写る彼の背中はとても大きく逞しい。
その背中に……確かに勇者の影を見たのだッ。
「この俺を……レイン・ディープスカイをなめんじゃねぇぇええええええッ!!」
レインが叫びを上げると、眩い光が辺を包み込んだ。
それは闇を切り裂く光――光は複数に分かれて集約しながら形を形成する。
宙を漂う複数の光剛剣。
光を集約した光剛剣は凄まじい熱を帯びている。
その威力は絶大なのだが、難点がある。
それは光剛剣が熱過ぎて掴めないということに加え、コントロールが不可能なため直線上に飛ばすことしかできないのだ。
なぜ光剛剣を操作できないのか……その理由は簡単だった。
レインは恐ろしくマナコントロールの才に欠けている。
自らのマナを練り上げて作り出す光剛剣を操作するほどのマナコントロールがレインにはない。
要するにレイン自体が欠陥品である。
本来、レイン・ディープスカイの光剛剣ほど恵まれた能力を有していたら、勇者になることも不可能ではない。
というか……恐らく今頃勇者と呼ばれていただろう。
レイン・ディープスカイは残念な男なのである。
「これでも喰らえやぁぁあああああああああッ!!」
マナコントロールが大の苦手であるレインは、光剛剣を適当にぶっぱした。
「「キャァァアアアアアアアアアアッ!!?」」
もちろん狙いなど定められる訳もなく、乱れ飛ぶ灼熱の剣にムムとレレは悲鳴を上げる。
だが、ゴーレムの図体は大きいので希に突き刺さることもある。
「道ができた! 2人共走るんだッ!!」
光剛剣が突き刺さったゴーレムは刹那で跡形なく灰と化す。
ゴーレムが数体消えたことで道が切り開かれたレインたちは一目散に駆け出した。
「お見事です! レインさま!」
「さすがは私たちの勇者さまです!」
「ワハハハッ! 当然だ! 俺がもしも光剛剣を完璧に使いこなせていたら……今頃世界一の伝説の勇者として語り継がれていたことだろう!」
「はい!」
「間違いありませんねッ!」
まぁ……それはある意味間違っていないのだが……使いこなせないのだから夢物語だ。
ピンチを切り抜けたレインたちはご機嫌で32階層を駆け回る。
目的地は32階層の隠し部屋。
そこまでたどり着けば一度休息を取り、身を潜めながら33階層を目指すつもりでいたのだが……。
レインの真横を何かが猛スピードで駆け抜けた。
それと同時にけたたましい衝撃音が鳴り響く。
「なんだッ?」
「レイン……さま……」
「ん……? どうしたムム?」
レインの傍らを走っていたムムが一点を見つめたまま膝から崩れ落ちた。
そのムムを見てレインは立ち止まり首を傾げて、その視線の方角に顔を差し向ける。
「ぁぁあああぁぁああぁあああぁぁっぁあ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛っ!?!?」
前方に目を向けた瞬間――レインの顔が絶望に歪み、ダンジョン内に悲壮な絶望がどこまでも響き渡った。
レインもまたムム同様力なく崩れ落ちると、息をすることも忘れて一点を見つめている。
状況が……理解が追いつかないのだろう。
無理もないことだった。
レインは見てしまったのだ。
ゴーレムの腕が切り離されて、凄まじい速度でレレの体を壁に叩きつけているさまを……。
ムムは立ち上がり、声にならない声を上げながら妹レレの下まで駆け寄ると、すぐさま回復魔法をかけている。
「れ゛れ゛ぇええ! じっがりしで……いま、なおじであげるがら……」
ムムはピクリとも動かなくなったレレの体に何度も、何度も回復魔法をかけているが、レレが反応することはない。
「どうじで……どうじでぇうごがないんですがぁぁあああ゛あ゛!!」
レインはその光景を呆然と眺めていた、その時――!!
再びレインの横を何かが掠めて駆け抜けた。
刹那、凄まじい轟音が木霊する。
「あっ……ぁぁあああぁぁぁぁああぁぁぁぁっっああああぁぁあぁッ!!」
再び絶叫するレイン。
目の前で……ムムの頭がゴーレムの飛んできた腕によって叩きつけられたのだから当然だ。
レインは慌てて立ち上がり、絶叫しながら2人の元へと駆け寄った。
「あぁっ………………」
レインは無残なムムとレレの姿を見て、泣き崩れた。
それは誰の目から見ても……助からないとわかるほど無残な光景。
2人は……即死だった。
レインは血まみれになった2人の体を抱きしめながら、天を仰ぎ悲しみの叫びを上げる。
背後から忍び寄るゴーレム集団など、レインには見えていない。
ただ、悲しみで爆発したレインのマナが光剛剣を無数に、数え切れないほど大量に生成すると、光の速度で四方を駆け抜けた。
すべてが一瞬で跡形なく消えていく。
ゴーレムも岩壁も、何もかも音も無く消えてしまった。
一体どのくらいの時間、レインは泣いていたのだろう。
そして、どうやって2人を運び隠し部屋にたどり着いたのか、レインは覚えていない。
あれから2日が経過したということさえ、レインは分からずにいる。
2人を守れなかった自分は生きている価値すらないのだと、レインは短剣を握りしめていた。
ムムとレレに取ってレインが特別な存在であるように、レインに取っても2人は特別な存在だった。
レインは貴族の家柄に生まれ、騎士になるべく騎士を育成する学校に通っていたのだが、16歳の時に退学を言い渡される。
マナコントロールが致命的に苦手だったレインは、光剛剣をまともに扱うことができないため、危険だとみなされたのだ。
その結果、名門貴族アスラル家を追い出された。
以降、レインは自らのことを深く濃い空、ディープスカイと名乗った。
この名にはレインの信念が込められている。
誰もが見上げるくらい、手を伸ばしても決して届くことのないくらいの存在になり、自分を見下したすべての者をいつか見返すのだと……。
そんな自分を初めて認めてくれたのがムムとレレだった。
いつもレインのことを小馬鹿にするランランとは違い、ムムとレレはレインこそが勇者になる存在だと言ってくれた。
それが何度も折れかけたレインの唯一の支えだったのだ。
その支えが今……折れた。
瞼を閉じて、レインはそっと呟いた。
「すまない……俺も今からそっちに行くよ。ムム、レレ」
自ら命を断つと決めたレインの前で爆音が鳴り響き、砂塵が舞い上がった。
どうやらゴーレムの大群が隠し部屋を見つけ出して破壊してしまったようだ。
「また……お前たちか……」
レインはフラつきながら立ち上がると、横たわる2人に視線を落とした。
「これ以上……痛い思いはさせないからな」
レインは短刀をゴーレムたちへと突きつけて、鬨の声を響かせる。
誰にもこれ以上愛する2人を傷つけさせはしないのだと……。
もうマナもほとんど残っていない体に鞭打ち、立ち向かったのだ。
力ない声音がダンジョン32階層の一角に木霊する。
レインである。
レインは魔物たちから身を隠すため、32階層の隠し部屋に避難していた。
壁を背に頭を抱えるレインの側には青白い顔のムムとレレが横たわっている。
眠る2人を見つめて、レインは大粒の涙をこぼした。
「俺のせいだ……俺が、俺が絶世の美女を手に入れたいと言ったばかりに……2人が死んじまったぁああッ」
そう、レインの傍らで横たわる2人は既に死んでいるのだ。
そんなレインの瞳には既に光は灯っていない。
レインは腰に提げた短刀を手に取り、自らの喉元に突きつけている。
彼は……レインは自害するつもりなのだろう。
それは今から2日ほど前のことだった。
◆
「逃げてください! レインさまッ!」
「ここは私たちがなんとか致します!」
「バカを言うなッ! お前たちは戦闘力なんてねぇじゃねぇーかッ」
32階層で12体のゴーレムに囲まれてるレイン一行。
レインの手には折れた大剣が握り締められていた。
硬いゴーレムの体にレインの大剣は通用せずに、砕けてしまったのだ。
さらに、ダンジョンは下層に行けば行くほど魔物が生み出されるスピードも上がる。
まさに今、レインたちを取り囲むゴーレムたちの後方で複数の粘膜が産み落とされた。
中からは体長5メートルを超えるゴーレムが粘膜を引き裂き生まれくる。
ムムとレレの2人はゴーレムを仕留めることは困難と判断し、自分たちが盾になるからその隙にレイン一人で逃げてくれと言い張っている。
しかし、レインの言う通り。ムムの能力は回復であり、レレはエンチャンターである。
2人の戦闘力は皆無に等しい。
だからレインは2人に声を荒げていた。
前に出ようとする2人を腕で遮り、レインは素早く周囲を見渡した。
(ゴーレムの攻撃力と防御力は尋常じゃない。だが、活路はある。ゴーレムはとにかく動きが遅い。倒すことは不可能でも逃げ切ることならできる!)
レインは折れた大剣を地面に投げ捨てて、懐から地図を取り出した。
冒険者パーティー〝麗〟から高額で買い取ったダンジョン内のマップだ。
そのマップにはダンジョン35層までのすべてが記載されている。
レインは素早くマップに目を通して、隠し部屋までの最短ルートを確認する。
(少し遠いが……相手はゴーレムだ。ムムとレレの足でもなんとかなるだろう」
判断すると、レインは2人に指示を出す。
「ムム、レレッ! 俺が突破口を切り開く! 合図を出したら俺に続いて走るんだッ!」
「「……はい! レインさまッ!!」」
2人のレインに対する信頼は絶大だ。
このような絶対絶命のピンチの中でも、レインが諦めていないのだから助かる道はあると疑ってなどいない。
愛する男を疑う女などいるだろうか? 否ッ!
それに、これまでに2人がレインに助けられてきたことを考慮すれば、もはや疑う余地などないのだ。
だから2人の顔にも希望が宿る。
何も恐ることはない、なぜなら自分たちには未来の勇者、レイン・ディープスカイがついているのだからッ!
大剣を失っても彼ならやれる。
2人の瞳に写る彼の背中はとても大きく逞しい。
その背中に……確かに勇者の影を見たのだッ。
「この俺を……レイン・ディープスカイをなめんじゃねぇぇええええええッ!!」
レインが叫びを上げると、眩い光が辺を包み込んだ。
それは闇を切り裂く光――光は複数に分かれて集約しながら形を形成する。
宙を漂う複数の光剛剣。
光を集約した光剛剣は凄まじい熱を帯びている。
その威力は絶大なのだが、難点がある。
それは光剛剣が熱過ぎて掴めないということに加え、コントロールが不可能なため直線上に飛ばすことしかできないのだ。
なぜ光剛剣を操作できないのか……その理由は簡単だった。
レインは恐ろしくマナコントロールの才に欠けている。
自らのマナを練り上げて作り出す光剛剣を操作するほどのマナコントロールがレインにはない。
要するにレイン自体が欠陥品である。
本来、レイン・ディープスカイの光剛剣ほど恵まれた能力を有していたら、勇者になることも不可能ではない。
というか……恐らく今頃勇者と呼ばれていただろう。
レイン・ディープスカイは残念な男なのである。
「これでも喰らえやぁぁあああああああああッ!!」
マナコントロールが大の苦手であるレインは、光剛剣を適当にぶっぱした。
「「キャァァアアアアアアアアアアッ!!?」」
もちろん狙いなど定められる訳もなく、乱れ飛ぶ灼熱の剣にムムとレレは悲鳴を上げる。
だが、ゴーレムの図体は大きいので希に突き刺さることもある。
「道ができた! 2人共走るんだッ!!」
光剛剣が突き刺さったゴーレムは刹那で跡形なく灰と化す。
ゴーレムが数体消えたことで道が切り開かれたレインたちは一目散に駆け出した。
「お見事です! レインさま!」
「さすがは私たちの勇者さまです!」
「ワハハハッ! 当然だ! 俺がもしも光剛剣を完璧に使いこなせていたら……今頃世界一の伝説の勇者として語り継がれていたことだろう!」
「はい!」
「間違いありませんねッ!」
まぁ……それはある意味間違っていないのだが……使いこなせないのだから夢物語だ。
ピンチを切り抜けたレインたちはご機嫌で32階層を駆け回る。
目的地は32階層の隠し部屋。
そこまでたどり着けば一度休息を取り、身を潜めながら33階層を目指すつもりでいたのだが……。
レインの真横を何かが猛スピードで駆け抜けた。
それと同時にけたたましい衝撃音が鳴り響く。
「なんだッ?」
「レイン……さま……」
「ん……? どうしたムム?」
レインの傍らを走っていたムムが一点を見つめたまま膝から崩れ落ちた。
そのムムを見てレインは立ち止まり首を傾げて、その視線の方角に顔を差し向ける。
「ぁぁあああぁぁああぁあああぁぁっぁあ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛っ!?!?」
前方に目を向けた瞬間――レインの顔が絶望に歪み、ダンジョン内に悲壮な絶望がどこまでも響き渡った。
レインもまたムム同様力なく崩れ落ちると、息をすることも忘れて一点を見つめている。
状況が……理解が追いつかないのだろう。
無理もないことだった。
レインは見てしまったのだ。
ゴーレムの腕が切り離されて、凄まじい速度でレレの体を壁に叩きつけているさまを……。
ムムは立ち上がり、声にならない声を上げながら妹レレの下まで駆け寄ると、すぐさま回復魔法をかけている。
「れ゛れ゛ぇええ! じっがりしで……いま、なおじであげるがら……」
ムムはピクリとも動かなくなったレレの体に何度も、何度も回復魔法をかけているが、レレが反応することはない。
「どうじで……どうじでぇうごがないんですがぁぁあああ゛あ゛!!」
レインはその光景を呆然と眺めていた、その時――!!
再びレインの横を何かが掠めて駆け抜けた。
刹那、凄まじい轟音が木霊する。
「あっ……ぁぁあああぁぁぁぁああぁぁぁぁっっああああぁぁあぁッ!!」
再び絶叫するレイン。
目の前で……ムムの頭がゴーレムの飛んできた腕によって叩きつけられたのだから当然だ。
レインは慌てて立ち上がり、絶叫しながら2人の元へと駆け寄った。
「あぁっ………………」
レインは無残なムムとレレの姿を見て、泣き崩れた。
それは誰の目から見ても……助からないとわかるほど無残な光景。
2人は……即死だった。
レインは血まみれになった2人の体を抱きしめながら、天を仰ぎ悲しみの叫びを上げる。
背後から忍び寄るゴーレム集団など、レインには見えていない。
ただ、悲しみで爆発したレインのマナが光剛剣を無数に、数え切れないほど大量に生成すると、光の速度で四方を駆け抜けた。
すべてが一瞬で跡形なく消えていく。
ゴーレムも岩壁も、何もかも音も無く消えてしまった。
一体どのくらいの時間、レインは泣いていたのだろう。
そして、どうやって2人を運び隠し部屋にたどり着いたのか、レインは覚えていない。
あれから2日が経過したということさえ、レインは分からずにいる。
2人を守れなかった自分は生きている価値すらないのだと、レインは短剣を握りしめていた。
ムムとレレに取ってレインが特別な存在であるように、レインに取っても2人は特別な存在だった。
レインは貴族の家柄に生まれ、騎士になるべく騎士を育成する学校に通っていたのだが、16歳の時に退学を言い渡される。
マナコントロールが致命的に苦手だったレインは、光剛剣をまともに扱うことができないため、危険だとみなされたのだ。
その結果、名門貴族アスラル家を追い出された。
以降、レインは自らのことを深く濃い空、ディープスカイと名乗った。
この名にはレインの信念が込められている。
誰もが見上げるくらい、手を伸ばしても決して届くことのないくらいの存在になり、自分を見下したすべての者をいつか見返すのだと……。
そんな自分を初めて認めてくれたのがムムとレレだった。
いつもレインのことを小馬鹿にするランランとは違い、ムムとレレはレインこそが勇者になる存在だと言ってくれた。
それが何度も折れかけたレインの唯一の支えだったのだ。
その支えが今……折れた。
瞼を閉じて、レインはそっと呟いた。
「すまない……俺も今からそっちに行くよ。ムム、レレ」
自ら命を断つと決めたレインの前で爆音が鳴り響き、砂塵が舞い上がった。
どうやらゴーレムの大群が隠し部屋を見つけ出して破壊してしまったようだ。
「また……お前たちか……」
レインはフラつきながら立ち上がると、横たわる2人に視線を落とした。
「これ以上……痛い思いはさせないからな」
レインは短刀をゴーレムたちへと突きつけて、鬨の声を響かせる。
誰にもこれ以上愛する2人を傷つけさせはしないのだと……。
もうマナもほとんど残っていない体に鞭打ち、立ち向かったのだ。
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