あなたを想う

まめ

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出会い

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 弟は過保護な両親の元すくすくと育ちニ歳の誕生日を迎えた。宙に浮いた状態だったカイエンの立場がいよいよ危うくなり、両親も追い出す訳にはいかなかったのだろう。彼を別邸に住まわせると言い出した。

 私はそれに反対した。

 姉にも手紙でその旨を伝えるも、両親の決定には逆らえないと返事を寄越した。

 本人の意思とは関係なくカイエンの荷物は別邸へ運ばれ、彼は当然のことだとそれを受け入れ大人しく従った。

「レオーネが泣く必要はないよ」

「だって、お姉様は味方になってくれるって…」

「大人の判断に逆らうことなんか出来ないさ」

「カイは悔しくないの?」

「養子縁組されてた訳じゃ無いし、元々スペーシアと結婚させて後を継がせるつもりだったみたいだから、それが無くなるなら、別になんとも無いよ」

 初めて知らされた内容に私は驚いた。

「お姉様とカイが…」

「でも、僕はレオーネと結婚するって決めてたからね。今もその気持ちは変わらないし。スペーシアは好みじゃないんだ」

「んー、何だか素直に喜べない」

「嬉しく無い?」

 顔を近づけてくるカイエンに両手で抵抗の意思を示す。すんでのところでクスリと笑われた。

「揶揄ったのね!」

 唇を尖らせフィッと横を向けば揶揄ってなんかないよと言って、髪に指を絡ませてきた。

「約束は覚えてる?」

 揶揄われっぱなしは悔しいのでそっぽを向いたままコクリと頷く。

「どんなことがあっても何年先になっても必ず君と結婚するから。忘れないで」

「絶対よ。カイこそ約束破らないでね」


 そして別邸に住まいを移して更に一年後、彼は私を残して学園寮に入った。


 二人が帰ってくる学園の長期休みを楽しみにしていたが、二人共戻ってはこなかった。


 カイエンの実家である侯爵家夫妻と跡取りである彼の異母兄が急逝し、養子縁組されて居なかった彼はそのまま侯爵を継ぐことになった。学園へ向かうのを見送ったのが彼との別れとなるとは思っていなかったため、彼にとってここで飼い殺しのような生活を送るよりも良かったことなのに、遠い存在になってしまった彼に淋しさをより募らせた。


 同じ頃、姉が学園を無断で退学し、姿を消したと連絡が入り、我が家は騒然となった。


 捜索隊を出して年頃の娘に瑕疵を作るべきでは無いと判断した両親は信頼のおける知人の伝手で姉を探したが、ひと月経っても見つからなかった。恋仲になっていた者が居たと姉の友人達から聞かされ、駆け落ちでもしたのだと醜聞を嫌った両親は姉の捜索を打ち切った。


 姉のことをカイエンに相談したかったが、急な爵位の受け継ぎと新しい生活に慣れるのに大変だろうと、私は一人で姉を心配し眠れない日々を過ごした。


 そして姉もカイエンも居ない学園で淋しい気持ちを埋めてくれるディーノに出会った。




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