【完結】たっくんとコウちゃん【大学生編】

秋空花林

文字の大きさ
1 / 19

1 理性

しおりを挟む
 オレの理性の話をしよう。

 オレは元々わんぱく坊主だったから、子供の頃は本能で生きてた。

 中学になった頃、ある出来事から、どちらかと言えば冷静な性格になった。

 だから高校卒業した今となっては、かなり理性的な方だと思ってる。

 なのに、今、オレはその理性を試されていた。



「コウちゃん、待って、今日はもう休もう」
「どうして?僕、今夜はたっくんと一緒にいたい」

 オレは今、ホテルのベッドの上で、コウちゃんに迫られていた。

 明日から2人でルームシェアをする予定で。
 準備の為1日早く移動して来ていた。

 ビジネスホテルに部屋はちゃんと2部屋取ってたし、さっき夕飯を一緒にとって、また明日って別れた筈なのに。

 なのに。

 コウちゃんが夜中に、部屋に遊びに来た。

 オレもコウちゃんも風呂上がりで。あ、なんかヤバいかもって思ったら、案の定コウちゃんが迫って来たんだ。

「たっくん、僕、今夜ここで寝ていい?」
「ベッドが狭いから」
「でも、くっつけば一緒に寝れるよ?」

 ダメ? 眉尻を下げて、見上げてくるコウちゃんは物凄く可愛かった。それはもう理性が吹き飛びそうな位に。

 オレだって。2人で住む様になったら、そういう事もあるかもって、思ってたさ。でも、こんないきなりなんて、こ、心の準備が!

 無言で焦ってるオレに、コウちゃんがちょっと照れながら聞いてきた。

「もしかして、たっくん、そういう経験ない?」
「それはー…」

 ある。しかも、多分豊富な方だと思う。

 彼女が途切れた事は無いし。オレも健康男子だし。相手が望めば、そういう事だってしてきた。

 でも恋人にそんな事を言うのは憚れて、どう言っていいのか分からず、視線を彷徨わせてしまう。

 オレの様子を見て何かを悟ったコウちゃんは、シュンと落ち込んだ。

「…たっくん経験あるんだ」
「…アリマス」

 嘘は言えない。

「なのに僕とは…ダメなの?」
「いや、そういう事じゃなくて」
「やっぱり男同士だから?」

 もうコウちゃんは泣きそうだった。

 あぁ、もう!違うのに!

 たまらず、オレは目の前のコウちゃんを抱きしめた。



◆◆◆



 僕の理性の話をしよう。

 僕は人見知りで臆病だ。怖がりだし、なかなか勇気を出す事なんてない。だから比較的理性的だと思う。

 でも、たっくんとの事とは別!

 長年の想いが叶って、やっと恋人同士になれたのに。どうした訳か、付き合って1年は経つのに、たっくんは僕に手を出さない。

 キスさえした事ないんだ!信じられない!

 だから今夜、僕はすごい一大決心をして臨んだんだ。なのに、なかなか煮え切らないたっくんに、もしかして?って聞いてみた。

「もしかして、たっくん、そういう経験ない?」

 こんなにカッコよくて、モテモテのたっくんがまさか?

 でも、やっぱりまさか、だった。無言で視線を彷徨わせていたたっくんは、とうとう白状した。

「…アリマス」

 やっぱり。なら、もう考えられるのは1つしかない。泣きそう。

「やっぱり男同士だから?」

 思わず声が震えてしまった僕を、たっくんがギュッて抱きしめてきた。

「それは違う!」

 結構大きな声だったから、僕はビックリして涙が引っ込んでしまった。

「コウちゃんに無理させるのが怖いから…!」

 元々ひ弱な僕がそういうのに耐えられないんじゃないかって心配で、ずっと我慢してたらしい。

 何それ?ひどい。

「たっくん、僕の気持ち全然分かってない」
「…コウちゃん」
「そんな風に大事にされても、嬉しくないよ。僕だって大好きな人に触れたり、キスしたり、そういう事、たっくんとしたいのにっ」

 気持ちが溢れて、今度こそ涙が出てきた。

 パパもママもたっくんも。いつまでも僕をひ弱扱いして、色んな事を我慢させる。僕はもう元気なのに。

「ごめん」

 たっくんが謝りながら、僕を胸に引き寄せた。

 あれもダメ、これもダメ、そうやって沢山の事を規制されて生きてきた。入院もして、手術もして、リハビリもして、やっと、やっと、普通の生活をしていいって言われたのに。

 これまで押し込めていた不満がドッと溢れてきたみたいに、涙が止まらなかった。

 どの位そうしていたか、わからない。

 僕の涙が止まるまで、たっくんはずっと僕を優しく抱きしめてくれていた。おかげで、たっくんの上着はびしょ濡れだった。

「たっくん、ごめんね、服が濡れちゃった」

 自分の服の袖で顔をゴシゴシ拭きながら、たっくんに謝った。そんな僕の頬に、たっくんがそっと手を添えた。

「…たっくん?」

 どうしたのかな?って、顔を上げた僕に。

 たっくんが、チュッと口付けた。


ーーー


 作者の勝手なイメージは。
 オオカミたっくんと、ウサギのコウちゃんです。

 という訳で、次話閲覧注意です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

悋気応変!

七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。 厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。 ────────── クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。 ◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。 ◇プロローグ漫画も公開中です。 表紙:七賀ごふん

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

処理中です...