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第2部 呪いの館 救出編
20話
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子供の様に泣きじゃくる彼を抱きしめたまま、彼女が話しかけた。彼女はまだまだ、彼に愛を伝え切れてない。
「そのまま聞いていて」
彼女はポツリポツリ、自分の想いを告白した。
子供の頃から父と弟の間に入れなくて淋しかった事。黒髪の青年に告白してフラれ絶望した時に、寄り添ってくれたカレに徐々に惹かれていった事。
最終的に「一生側にいる。淋しい想いをさせない」とプロポーズしてくれた事が嬉しかった事。
「だからワタシもアナタの側にいるって決めたの。愛してるわ」
もう彼は彼女の愛を疑ってなかった。彼が思っていた以上に、彼女は自分を愛してくれていたのだ。
彼女の言葉に、彼は塞いでいた両手から顔を上げた。彼女が優しく溢れ落ちる涙を拭いてくれる。
ソッと彼女が青年の目元にキスを落とした。そして、見つめ合いお互いの顔が近づくー。
「ストーップ!ここまで!」
いきなり少年の霊に変わった怜が、彼女の唇を手の平で押さえた。
「ぷはっ!何するの?」
「それはこっちのセリフ!姉さん吐いた口でキスとか勘弁してよ!」
全くその通り。青年と彼女が良い雰囲気の中、少年と怜と華は、やめてーっ!と悲鳴を上げていた。
見かねた少年が青年の首根っこを掴んで、交代したのだ。
「…それは、そうね」
彼女も反省したようだ。青年だけが彼女に触れさせろと暴れている…のを怜が抑えていた。
「姉さん、落ち着いたなら真面目な話をしよう」
少年が彼女を見つめる。怜の雰囲気は先程とガラリと変わっていた。凛々しい顔立ちから、優しそうな雰囲気に切り替わっている。
目の前の彼を弟だと認識して、彼女も頷いた。
「今回は復讐でなく、何故あんな事が起きたか解明する。それでいい?」
「ええ。もう…ここから解放されたいわ。それに…早く彼の名前を思い出して…呼びたいわ」
照れたように微笑んだ。それは、あの日神社で彼が見た美しい笑顔と酷似していた。暴れていた青年もそれを見て大人しくなった。
「じゃあ姉さんが思い出した事で、何かヒントになる事があれば教えて」
彼女は頷いた。あくまで必要な事だけでいいと気遣ってくれる弟の優しさに安堵した。
「ワタシが死ぬ前に村人が言ってたの。恨むなら、はな様を恨めって」
「はな様?」
それは神社でよく会っていた黒髪の女の子。黒髪の青年の妹で、村長の娘の名前だった。
彼女はお転婆で元気な女の子だった。どちらといえば表裏がない性格で、人を陥れるとは思えない。
それにー。
「名前…何で憶えてるんだ?」
少年は愕然とした。殺された3人と多くの村人。黒髪の青年。恐らく事件に関わった可能性のある全員が、名前を無くし縛りつけられているのに。
だが考えられる答えは1つしか無かった。
「少なくとも…父さんは彼女は事件に関わっていないと判断したんだ。だから呪わなかった」
「どうして…」
「わからない。でも、あの子はボク達と仲が良かったし。いつかボクらの国に遊び行くからって言ってた。自ら進んでボク達を殺そうとするとは思えない…」
それは彼女も同感だった。少なくとも彼女は、はなを妹の様に可愛がっていたし、はなも姉弟に懐いていた。
少年が、ちょっと待って、と言って目を瞑り頭を押さえた。
次に目を開けた時、黒眼に戻っていた。本来の身体の持ち主である怜に交代したようだ。
怜の発した言葉に全員が驚愕した。
「村長の娘はな。僕その人物を知ってる」
「そのまま聞いていて」
彼女はポツリポツリ、自分の想いを告白した。
子供の頃から父と弟の間に入れなくて淋しかった事。黒髪の青年に告白してフラれ絶望した時に、寄り添ってくれたカレに徐々に惹かれていった事。
最終的に「一生側にいる。淋しい想いをさせない」とプロポーズしてくれた事が嬉しかった事。
「だからワタシもアナタの側にいるって決めたの。愛してるわ」
もう彼は彼女の愛を疑ってなかった。彼が思っていた以上に、彼女は自分を愛してくれていたのだ。
彼女の言葉に、彼は塞いでいた両手から顔を上げた。彼女が優しく溢れ落ちる涙を拭いてくれる。
ソッと彼女が青年の目元にキスを落とした。そして、見つめ合いお互いの顔が近づくー。
「ストーップ!ここまで!」
いきなり少年の霊に変わった怜が、彼女の唇を手の平で押さえた。
「ぷはっ!何するの?」
「それはこっちのセリフ!姉さん吐いた口でキスとか勘弁してよ!」
全くその通り。青年と彼女が良い雰囲気の中、少年と怜と華は、やめてーっ!と悲鳴を上げていた。
見かねた少年が青年の首根っこを掴んで、交代したのだ。
「…それは、そうね」
彼女も反省したようだ。青年だけが彼女に触れさせろと暴れている…のを怜が抑えていた。
「姉さん、落ち着いたなら真面目な話をしよう」
少年が彼女を見つめる。怜の雰囲気は先程とガラリと変わっていた。凛々しい顔立ちから、優しそうな雰囲気に切り替わっている。
目の前の彼を弟だと認識して、彼女も頷いた。
「今回は復讐でなく、何故あんな事が起きたか解明する。それでいい?」
「ええ。もう…ここから解放されたいわ。それに…早く彼の名前を思い出して…呼びたいわ」
照れたように微笑んだ。それは、あの日神社で彼が見た美しい笑顔と酷似していた。暴れていた青年もそれを見て大人しくなった。
「じゃあ姉さんが思い出した事で、何かヒントになる事があれば教えて」
彼女は頷いた。あくまで必要な事だけでいいと気遣ってくれる弟の優しさに安堵した。
「ワタシが死ぬ前に村人が言ってたの。恨むなら、はな様を恨めって」
「はな様?」
それは神社でよく会っていた黒髪の女の子。黒髪の青年の妹で、村長の娘の名前だった。
彼女はお転婆で元気な女の子だった。どちらといえば表裏がない性格で、人を陥れるとは思えない。
それにー。
「名前…何で憶えてるんだ?」
少年は愕然とした。殺された3人と多くの村人。黒髪の青年。恐らく事件に関わった可能性のある全員が、名前を無くし縛りつけられているのに。
だが考えられる答えは1つしか無かった。
「少なくとも…父さんは彼女は事件に関わっていないと判断したんだ。だから呪わなかった」
「どうして…」
「わからない。でも、あの子はボク達と仲が良かったし。いつかボクらの国に遊び行くからって言ってた。自ら進んでボク達を殺そうとするとは思えない…」
それは彼女も同感だった。少なくとも彼女は、はなを妹の様に可愛がっていたし、はなも姉弟に懐いていた。
少年が、ちょっと待って、と言って目を瞑り頭を押さえた。
次に目を開けた時、黒眼に戻っていた。本来の身体の持ち主である怜に交代したようだ。
怜の発した言葉に全員が驚愕した。
「村長の娘はな。僕その人物を知ってる」
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