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第2部 呪いの館 救出編
5話
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彼は泣きながら邸内を走っていた。ココから逃げなければ。
先程隠れているように言った姉は無事だろうか?
姉の隠れている場所へ向かう途中、彼女の悲鳴が聞こえた。
彼女の部屋の方からだった。
少年は戦慄した。
ここはもうダメだと言ったのに。
だから決して見つからない場所へ誘導して、自分が来るまで隠れてるよう伝えたのにー。
急いで踵を返して、姉の部屋へ走った。
彼女の部屋のドアは破壊され開いていた。
廊下の壁に張り付いて部屋の様子を伺う。既に複数人の村人がいた。姉は大丈夫だろうか。
慎重に部屋に入るタイミングを伺っていた少年の背後から人の気配がした。ハッと気づいて振り返る前に、後頭部に衝撃が走る。
彼の意識はそこで途絶えた。
場面が変わる。
全体的にセピア色でくすんでいる。
目の前にはそれほど大きくはないが美しい洋館が建っていた。周囲は花と緑に囲まれている。
隣には自分と同じ位の小さな女の子と男の子。自分の姉と、最近一緒に住むようになった親戚だ。
新しい綺麗な館に3人ははしゃいで館中を走り回った。この家に初めて来た時の楽しい想い出だ。
場面が変わる。
森と神社だ。
先程より成長した少年は、興味深く周囲の森や神社を観察している。
これまで見た事ないもの全てが彼の好奇心を刺激する。
彼はこの国が好きだった。毎日がキラキラしていた。
場面が変わった。
少年は横たわっていた。
ここはどこだろう?
後頭部がズキズキ痛む。
視線を上に向けた瞬間。
降りてくる斧の刃がきらめいて見えたー。
◇◇◇
「ーーーっ!」
意識をリンクさせてた華は首を押さえて覚醒した。
ドキドキドキドキ…鼓動がうるさいほど騒いでいる。ハア、ハア、と恐怖で息ができない。
殴られ気を失って、目を覚ますと同時に殺された。
だから、彼は死ぬ直前の事を覚えていない…いや知らないのだ。
華は腕で瞼を押さえた。
泣かないって決めた。
なのに、嗚咽が止まらない。
恐怖ではなかった。
この少年は、きっとこの国や村が好きだったに違いない。
そんな彼に行った村人の非道が許せない。気づかない内に生命を刈り取られた少年が、ただただ憐れでならなかった。
涙が落ち着いてきたところで、自分が今、あのソファに横たわってるのだと気づいた。
彼の人生を垣間見たからか、もうこのソファに対して恐怖や嫌悪感はなかった。華の中に彼の存在を感じられた。
辛いが聞かなければいけない事があった。彼の死は悼むべきだが、やはり避けては通れない。
「あの神社で会った子達は…誰?あと…思い出せる範囲でいいの。何かこの呪いのを解くのに、手がかりになる物はないかしら」
華は静かに自分の中にいる少年に尋ねた。
華の意識が遠くなる。そして暗転した。
先程隠れているように言った姉は無事だろうか?
姉の隠れている場所へ向かう途中、彼女の悲鳴が聞こえた。
彼女の部屋の方からだった。
少年は戦慄した。
ここはもうダメだと言ったのに。
だから決して見つからない場所へ誘導して、自分が来るまで隠れてるよう伝えたのにー。
急いで踵を返して、姉の部屋へ走った。
彼女の部屋のドアは破壊され開いていた。
廊下の壁に張り付いて部屋の様子を伺う。既に複数人の村人がいた。姉は大丈夫だろうか。
慎重に部屋に入るタイミングを伺っていた少年の背後から人の気配がした。ハッと気づいて振り返る前に、後頭部に衝撃が走る。
彼の意識はそこで途絶えた。
場面が変わる。
全体的にセピア色でくすんでいる。
目の前にはそれほど大きくはないが美しい洋館が建っていた。周囲は花と緑に囲まれている。
隣には自分と同じ位の小さな女の子と男の子。自分の姉と、最近一緒に住むようになった親戚だ。
新しい綺麗な館に3人ははしゃいで館中を走り回った。この家に初めて来た時の楽しい想い出だ。
場面が変わる。
森と神社だ。
先程より成長した少年は、興味深く周囲の森や神社を観察している。
これまで見た事ないもの全てが彼の好奇心を刺激する。
彼はこの国が好きだった。毎日がキラキラしていた。
場面が変わった。
少年は横たわっていた。
ここはどこだろう?
後頭部がズキズキ痛む。
視線を上に向けた瞬間。
降りてくる斧の刃がきらめいて見えたー。
◇◇◇
「ーーーっ!」
意識をリンクさせてた華は首を押さえて覚醒した。
ドキドキドキドキ…鼓動がうるさいほど騒いでいる。ハア、ハア、と恐怖で息ができない。
殴られ気を失って、目を覚ますと同時に殺された。
だから、彼は死ぬ直前の事を覚えていない…いや知らないのだ。
華は腕で瞼を押さえた。
泣かないって決めた。
なのに、嗚咽が止まらない。
恐怖ではなかった。
この少年は、きっとこの国や村が好きだったに違いない。
そんな彼に行った村人の非道が許せない。気づかない内に生命を刈り取られた少年が、ただただ憐れでならなかった。
涙が落ち着いてきたところで、自分が今、あのソファに横たわってるのだと気づいた。
彼の人生を垣間見たからか、もうこのソファに対して恐怖や嫌悪感はなかった。華の中に彼の存在を感じられた。
辛いが聞かなければいけない事があった。彼の死は悼むべきだが、やはり避けては通れない。
「あの神社で会った子達は…誰?あと…思い出せる範囲でいいの。何かこの呪いのを解くのに、手がかりになる物はないかしら」
華は静かに自分の中にいる少年に尋ねた。
華の意識が遠くなる。そして暗転した。
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