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32 騎士団長と王太子の密会 1
しおりを挟むアルトとジェイドが両想いになった翌日。
ジェイドは今日も我が公爵家に滞在している。
アルトは休暇が昨日までだったので騎士団に仕事に向かった。
「・・・行きたくない」
「アルト、お仕事でしょ?」
「・・・・・・だって、せっかく想いが通じ合ったのに」
「---ん、じゃあさ、コレあげるよ」
駄々を捏ねるアルトに苦笑して、カムイはアルトに翡翠の魔石が付いたネックレスを渡した。
「コレは俺の魔力を籠めてある御守り。呪いを跳ね返したり状態異常無効とか怪我を治癒する魔法陣を刻んであるからな。触れば俺の魔力を感じるだろう?」
「---カムイ、ありがとう!」
「でだ、代わりと言ってはなんだが、その、琥珀の魔石に、アルトの魔力を籠めて欲しいんですけど・・・」
照れながら差し出す。
一瞬、間があった後、アルトが凄い勢いで魔石を握りしめて魔石注入してくれた。
「あっありがとう!」
「これくらいどうって事無い」
アルトが照れながら言った。
「ふふ、じゃあ早速装飾品に組み込んで身に着けよう。本当にありがとう、じゃあ気をつけて行ってらっしゃい」
「---ん、行ってきます」
そんな感じで朝からワタワタしながら出かけて行ったのだった。
そんな中、フルクベルトは王太子に先触れを出してから、王城内の騎士団詰め所の団長の執務室に向かっていた。
---アルトとジェイドの婚約の為にはジェイドの報告をあげるしかないが、今回の件は騎士団が調査を受け持っている為、陛下ではなく騎士団総長を務める王太子殿下が優先される。
その報告の為に先触れを出したのだ。
さすがに殿下はお忙しいからな。
時間を取って頂けたら、今分かっている事だけでも報告をしてから二人の婚約について話をせねば・・・。
・・・殿下はおそらく反対はなさらないだろうが、興味は持たれるだろうな。
執務室で副団長のエンドルフィンと情報を擦り合わせてから仕事に入った。
そして午前の休憩に入る頃に殿下から先触れが入った。
エンドルフィンがお茶の準備をして待っていると、王太子殿下が執務室にいらっしゃった。
応接室の方にお通しして、侍従は部屋の外へ待機して貰う。
殿下付きの護衛である近衛騎士をどうしようかと窺うと、殿下が先手を打って来た。
「知っての通り、彼は私の専属護衛騎士である前に乳兄弟だ。ここでの情報はもとより私の許可なく知り得た情報を漏らさないという宣誓魔法も使っている。安心するといい」
そういって後ろに控える護衛騎士に視線を送るとしっかりと頷いた。
---ならば大丈夫だろう。
「殿下、この部屋に防音結界の魔法を展開しますが、よろしいですね?」
「---構わない」
「では・・・」
断ってから魔法を展開した。
室内が無音になる。
「・・・それ程厄介な報告なんだな?」
瞳に剣呑な色をのせてフルクベルトを見つめる王太子殿下。
背後の護衛騎士も表情を硬くした。
「---まずはこちらを。世界樹に調査に入ったアイントラハトの報告を元に本人に聞き取り調査を行って作製したものです」
私の言葉にピクリと反応したが、資料を受け取って目を通し始めた。
・・・読み進んでいくにつれ、困惑と驚愕、そして怒りが感じられた。
一通り読み終えると眉間を指で揉みながら資料を後ろに差し出す。
ルイーズにも読めと言っているのだろう。
それを躊躇なく受け取り同じように目を通すと、殿下と同じように最後は殺気が漏れていた。
静まり返る室内。
殿下が深い溜息を吐いた。
「---先ほど、本人に聞き取り調査をしたと言っていたな?」
「ええ。彼は今、秘密裏に我が家に滞在しております」
「・・・連れて来たのか」
「もちろん本人の合意の上です。無理矢理ではありませんよ。実は彼・・・ジェイドはアイントラハトと両想いでして。昨夜、婚姻を前提としたお付き合いをしたいと申し出てくれましてね」
和やかに話すフルクベルトに一瞬ポカンとしてから・・・。
「「はあああああ---?!」」
殿下とルイーズが同時に叫んだ。
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