極度の男性恐怖症悪役令嬢は配役変更を希望します!

SAKURA

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第一章 極度の男性恐怖症な少女は悪役令嬢に転生する

第十話 書庫で出会った老人

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「………昨日はお見苦しいところを見せてすみませんでした」

まさか人前で号泣するとは………お恥ずかしい………反省です。

「良いんですよ。(可愛らしかったですし)」
「え?」
「いえ、なんでもありません」
「ソウデスカ」

早急に忘れていただきたい。

「今日はどうなされますか?」
「そうですねぇ………」

メアリーにきかれるも、いまいち思い浮かばない。
病人(?)は基本暇なのです。
だって、やることないんですもん。 

「この家のことを知りたい気もしますが、当主様にはできればお会いたくないんですよね………」
「そうですか………では書庫はいかがですか?」
「書庫?」
「ええ、旦那様には専用の書斎がございますから、書庫なら滅多に来られないと思いますよ」
「なるほど………」

本は好きですし、良い機会ですね。
いろいろ勉強するチャンスです!

「じゃあそうします。案内してくれますか?」
「もちろんです」 


(書庫)

「………!!」

ふおぉぉぉぉぉぉぉ!!
すごい!すごいです!本がたくさん………!!

「喜んでいただけたようで何よりです」
「だって、こんなにあるんですよ!読み放題じゃないですか!」
「ふふ、お嬢様がこんなに本が好きだったとは………もっと早くにお連れすれば良かったですね」
「あ!ありがとうございます!すみません………ついついはしゃいでしまって………」
「おきになさらないでください。私はやることがあるのでここで失礼させていただきますが、大丈夫ですか?」
「あ、はい!おきになさらず!」
「ありがとうございます。それでは、失礼致します」

そういって、立ち去るメアリーを見送ってから私は再び目の前の大量の本に向き合った。

「どれから読みましょうか………!!」

必ず読破して見せますよ!
そう意気込んで、私は目の前の一冊に手を伸ばした。

「うふふ………さぁ何がかかれているのかしら………!!」

そして、開いた本に目を通し、閉じる。

「………そうですよね………分かってましたよ………」

言わずもがな、のです。
そりゃあそうですよね!だって転生したてほやほやなのに文字なんて分かるわけないじゃないですか!
知ってましたけど!でも期待もしてたんです!!(泣)

「まずは字を覚えるところから………ですね。なにか参考書みたいなのありますかね………」

なかったら死にます。社会的に。
とはいえ、文字もわからないのだから当然題名もわからなくて………。

「どれなんでしょう………?」

なんだか、先程まで宝の山のように見えていた本が鉄壁に見えてきました。

「お探しのものはこちらですかな?」
「っ………!?」

急に聞こえた男性の声に思わず体が強ばった。

「あなたは………」

でも、その姿を見た瞬間ほっと力が抜けた。

「セバス………さん」
「ほほほ。覚えていただけているだなんて光栄ございます。ユリアお嬢様」

なぜなら、その人は、あの日私を旦那様から救ってくれたロマンスグレーのお爺様だったからです。

「あのときはありがとうございました、セバスさん」
「いえいえおきになさらず。旦那様はご家族が絡むと少々残念になってしまいますからね」

と、穏やかに笑った。
なんだか、落ち着く。

「ささ。こちらが文字の教本でございます。さぁどうぞ」
「あ、ありがとうございます。すみません、持たせたままで」
「いいのですよ。年を取ってからというもの旦那様もあまりご用を言い付けになられなくて少々寂しく思っていたところですから。こんな老体でよければどうぞお使いください」
「でも、ちゃんと休まないとダメですよ?セバスさん」
「ほほほ。心配していただけてじいやは大変嬉しゅうございます。でも、ご安心ください。私はまだまだ現役ですよ」
「じゃあ、少し手伝ってもらってもいいですか?セバスさん」
「もちろんでございます。それとユリアお嬢様、たかが使用人にそこまでかしこまらなくても良いのです。どうぞ、セバスまたはじいやと呼び捨てになさってください」
「わかった………じいや」
「はい」

メアリーの時とは違い、セバスさんには自然と敬語をはずすことができた。
これがいわゆるお爺さんパワーなのかな………?

(数時間後)


「そしてここは………」
「こう………?」
「はい、お上手ですよ」
「えへへ」
「ユリアお嬢様は飲み込みが早いですね。じいやはユリアお嬢様の天才ぶりに感激です」
「そ、そんなことないよ。じいやのおかげ」
「ご謙遜なさらないでください。この歳でここまでできるのはほとんどいらっしゃいませんよ。すべてユリアお嬢様の実力です」
「そう………?」
「はい」

じいやの教え方が上手なのもあってか、私はどんどん知識を吸収していった。
確かに気づいたら、教本も五巻までいっていた。

「ありがとう」

人に褒めれるのも久しぶりだった。
すごく、居心地の良い時間。

「さぁ、ユリアお嬢様。そろそろ夕刻時ですよ。メアリーが夕食を用意して待っているはずです」
「もうそんな時間だったんだ………わかった。もういくね」

あまりにもあっという間で驚いた。
今日のご飯はなんだろう………。

「ねぇ、じいやこの本持っていって良い?」
「構いませんよ。ユリアお嬢様のお好きなように」
「ありがとう!あ、それと………」

「また、来ても良い?」
「………!」

じいやは少しだけ驚いた顔をしつつも、次には優しい笑顔を向けてくれた。

「はい、いつでもお待ちしております」



***



ユリアが立ち去った書庫。
彼はまだにそこにいた。

「おや、父上。どうなさったんですか?こんなところで」
「いや、お前こそどうしたんだ?キリム」
「私は旦那様に資料を頼まれたので」
「そうか。まったく………旦那様もたまには私のことも使ってくださればいいのに」
「もう良い歳なんですからやめてくださいよ」
「ほっほっほ。私はまだまだ現役ですぞ?」
「そんなこと言ってると、また腰を痛めますよ」
「あれは油断しただけさ」
「油断大敵と私に教えたのはどこのどちら様でしたっけね」
「うっ………」

さすがの彼も息子にそう言われると来るものがあるらしい。

「それで?お嬢様のご様子はどうでしたか?」
「………お元気そうだったよ。久々に笑顔が見れたわい」
「それは………旦那様が泣いてしまいますね」
「ほほほ!老いぼれへのご褒美ということでご勘弁いただきたいですな」
「………そうですね。父上」

セバス・ブライアン。
だいだいエリストラーヴァ公爵家に仕える家柄で、前当主である。
キリムの実の父親だ。
彼にとってユリアは孫のような存在だった。
だからこそ、彼女の危機と聞き付けて本邸からやって来たのだった。

「本当に………大きくなられた」

彼は最後に見た幼い少女の笑顔を心に刻み、また笑ったのだった。



☆☆☆

優しいご老人と話してると気が緩むことってありますよね
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