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第一章 コウセツって何だろう
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「あの! 僕が連れて来られたのは、禁呪を解くためですよね? なぜ、その、こんな……」
ルチアーノは、ガウンを脱ぐ動作を止めると、きょとんとした顔でこちらを見た。
「なぜだと? 協力すると、言ったではないか。できることは、何でもすると。今さら怖じ気づいて、約束を違える気か?」
まさか、と真純は思った。もう一度、ボネーラの台詞を反芻する。
――交接が、手っ取り早い手段かと……。
「コウセツって、そういう意味ですか!?」
真っ赤になった真純を見て、ルチアーノは首をかしげた。
「はて。意味を理解していなかったのか? 言語は自動的に変換されるゆえ、異世界人との会話は支障無いと、ボネーラは申しておったが」
「いえ……。他のお話は、ちゃんと理解できました。ただ、交接という言葉だけが……」
バリバリの理系である真純は、国語がいまいち苦手だったのだ。もっと本を読んでおくべきだった、と今さらながら後悔する。
「道理で、あっさり同意したわけか」
ルチアーノは、深いため息をついた。ガウンの前を、再び合わせる。
「あまりに抵抗が無いので、すでに男との経験があるのかと思ったぞ」
「いえ、全く」
真純は、ぶんぶんとかぶりを振った。キスだって未経験だったくらいだ。男性はもちろん、女性とも経験が無い。思い切ってそう打ち明けると、ルチアーノはまたもやため息をついた。
「そなた、一体いくつだ?」
「二十歳ですが」
「私と同い年ではないか」
ルチアーノは、目を丸くした。
「そなたの世界では、それが普通なのか?」
「普通、というわけでは……。人によるかと」
ぼそぼそと答えると、ルチアーノはふっと笑った。真純の頭を、軽く撫でる。
「では、そなたが初心ということか。そうとは知らず、いきなり口づけたりして、悪かった……。そういうことなら、この方法は止めておくか?」
「ですが……、呪文を知らない場合、こうするしか無いんですよね?」
「仕方あるまい」
ルチアーノは、スマートな仕草で立ち上がった。
「ボネーラに、調べさせよう。……まあ、あやつも説明が足りぬのだ。ボネーラが言いかったのは、私がそなたを抱き、その中に精を注ぐということだ。それにより、私をむしばむ魔力は、そなたへと移っていく。普通の者なら魔力に冒されてしまうところ、そなたは解毒の能力を持つ回復魔術師ゆえ、それを中和できる、と」
赤面するようなフレーズが含まれてはいたものの、今度は真純も、その意味を理解することができた。
「わかったようだな? では、今宵はゆっくりと休め。部屋は、すでに用意させてある」
言いながらルチアーノは、早くも燭台の灯りを消そうとしている。だが真純は、それを押し止めた。彼のガウンの裾をちょんとつまんで、告げる。
「この方法で、お願いします」
ルチアーノが、目を見張る。
「だが、そなた、初めてだと……」
「ちゃんと意味を確認せずに同意したのは、僕です。一度約束したことは、守らないといけません」
ルチアーノの瞳は、ますます大きく見開かれた。
「それに。呪文が見つかるかどうかは、わからないのでしょう? 急ぐ状況でもあるようですし、試せる方法があるなら、やってみるべきでは?」
早く元の世界へ帰りたいし、と心の中で付け加える。そんな真純を見て、ルチアーノは軽く微笑を浮かべた。
「案外、肝がすわっておるのだな……。よかろう。できるだけ、優しくしてやる」
ルチアーノは、ガウンを脱ぐ動作を止めると、きょとんとした顔でこちらを見た。
「なぜだと? 協力すると、言ったではないか。できることは、何でもすると。今さら怖じ気づいて、約束を違える気か?」
まさか、と真純は思った。もう一度、ボネーラの台詞を反芻する。
――交接が、手っ取り早い手段かと……。
「コウセツって、そういう意味ですか!?」
真っ赤になった真純を見て、ルチアーノは首をかしげた。
「はて。意味を理解していなかったのか? 言語は自動的に変換されるゆえ、異世界人との会話は支障無いと、ボネーラは申しておったが」
「いえ……。他のお話は、ちゃんと理解できました。ただ、交接という言葉だけが……」
バリバリの理系である真純は、国語がいまいち苦手だったのだ。もっと本を読んでおくべきだった、と今さらながら後悔する。
「道理で、あっさり同意したわけか」
ルチアーノは、深いため息をついた。ガウンの前を、再び合わせる。
「あまりに抵抗が無いので、すでに男との経験があるのかと思ったぞ」
「いえ、全く」
真純は、ぶんぶんとかぶりを振った。キスだって未経験だったくらいだ。男性はもちろん、女性とも経験が無い。思い切ってそう打ち明けると、ルチアーノはまたもやため息をついた。
「そなた、一体いくつだ?」
「二十歳ですが」
「私と同い年ではないか」
ルチアーノは、目を丸くした。
「そなたの世界では、それが普通なのか?」
「普通、というわけでは……。人によるかと」
ぼそぼそと答えると、ルチアーノはふっと笑った。真純の頭を、軽く撫でる。
「では、そなたが初心ということか。そうとは知らず、いきなり口づけたりして、悪かった……。そういうことなら、この方法は止めておくか?」
「ですが……、呪文を知らない場合、こうするしか無いんですよね?」
「仕方あるまい」
ルチアーノは、スマートな仕草で立ち上がった。
「ボネーラに、調べさせよう。……まあ、あやつも説明が足りぬのだ。ボネーラが言いかったのは、私がそなたを抱き、その中に精を注ぐということだ。それにより、私をむしばむ魔力は、そなたへと移っていく。普通の者なら魔力に冒されてしまうところ、そなたは解毒の能力を持つ回復魔術師ゆえ、それを中和できる、と」
赤面するようなフレーズが含まれてはいたものの、今度は真純も、その意味を理解することができた。
「わかったようだな? では、今宵はゆっくりと休め。部屋は、すでに用意させてある」
言いながらルチアーノは、早くも燭台の灯りを消そうとしている。だが真純は、それを押し止めた。彼のガウンの裾をちょんとつまんで、告げる。
「この方法で、お願いします」
ルチアーノが、目を見張る。
「だが、そなた、初めてだと……」
「ちゃんと意味を確認せずに同意したのは、僕です。一度約束したことは、守らないといけません」
ルチアーノの瞳は、ますます大きく見開かれた。
「それに。呪文が見つかるかどうかは、わからないのでしょう? 急ぐ状況でもあるようですし、試せる方法があるなら、やってみるべきでは?」
早く元の世界へ帰りたいし、と心の中で付け加える。そんな真純を見て、ルチアーノは軽く微笑を浮かべた。
「案外、肝がすわっておるのだな……。よかろう。できるだけ、優しくしてやる」
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