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2ネイビー伯爵家での日々の始まり//幼少期

2-18 ご招待を受けました。

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 翌日、エリック様から招待状が届きました。ルビー侯爵家、相変わらず行動が早いですね。エディも一緒にって書いてありますが、むしろエディに用があるのではないでしょうか?

ルビー侯爵家を訪問すると、さっそくエディはルビー侯爵家の剣の練習場へ連れて行かれ、剣を持ったことすらない僕は用意してくれたお茶とお菓子を頂きながら見学です。

 今日もエリック様は瞬殺されていました。エディはいつもは剣を手にする機会などないからでしょうか楽しそうに見えます。騎士科志望って言ってたから剣も好きなんでしょうね。少し二人が羨ましいですしちょっとだけ仲間外れにされた気分です。



 三日後また招待を受けました。姉上も付いて来たいと言いましたが、今回はエディもって書いてなかったし、招待されていない姉上が押しかけるのも問題がありそうだし、僕一人で行きます。
 今日はエリック様が私室に通してくれました。デスクと椅子にソファそれから壁際は全部本棚です。机の上には将棋盤が広げられていたので、思わず手を伸ばします。だって竜と馬が逆ですからね、直しておきます。

「お前、将棋できるのか?」
「ええ、まあ」

まあ、どころか僕は将棋を売り出す為に父上やルディがルールを作成するのを手伝っているんですけどね

「よし、それなら今日はこれで勝負だ!新しいゲームだから、なかなか相手がいなくてさ」

エリック様は嬉しそうですが、また勝負ですか?僕は何の為に呼ばれたんでしょうか?

「あ、そうだ、ちょっと待ってろ」

部屋から出て行ってしまったエリック様を待ちながら書架の本を手に取ります。

「待たせたな、茶を淹れてきた」

エリック様自身が淹れたのでしょうか?お茶の乗った盆を持っています。

「ああ、その本、貸してやろうか?」

僕は本を書棚に返そうとしたのですが折角なのでお借りします。兵法の本なんて初めて読みましたから。

 盆を横に置いて、さあ、勝負です。テーブルに広げた盤に駒を並べますが、明らかに僕の方が早いです。そりゃあ開発の手伝いしているんだから当たり前ですよね、そして当たり前ですけどそんな僕にルールブックを確認しながらのエリック様が勝てるわけもなく、すぐに勝負がついてしまいました。

「歩兵は、敵陣深くに攻め込めば金に昇格できるんです、他の駒もそうですよ」
「ああ、でも納得できないんだよな」
「そこは、ゲームですからね、それに、敵陣に攻め込むまでに一歩ずつ進んでいるんですよ、最初から動かない歩兵だっているでしょ?」
「……そうか、こっちの金は最初から最後まで動かなくても金だもんなあ」

エリック様は盤を睨んでいますが、あまり悔しそうではありませんね。

「エリック様。勝者が正義、でしたら今日は僕が正義ですね。もう謝るとか、どっちが正しいとか終わりにしませんか?」

正直、もう面倒なんです。家を一歩出れば僕が男爵家からの養子であることに文句を言う人が居るんだってことを身をもって知った事は良かったし、誰もケガをしたわけじゃないし、エリック様が僕を気に入らないという事も分かりました。

「これから先、お互いに関わり合いにならなければいいことですよね。」
「……いやだ……」

嫌だって言われましても、じゃあどうすればいいですか?「はあ」ってエリック様が溜息をついたけど、僕だってその倍くらいの溜息をつきたいです。

「僕が男爵家から伯爵家に養子入りしたという事実は変わりません。それをエリック様がご不快に思うのでしたら、僕の方も視界に入らないように注意しますからエリック様の方でも――」
「王家の茶会に俺が居たって知ってた?」

僕の言葉を遮ってまで、王家のお茶会の話ですか?二年も前の?僕は頭の中の記憶を遡りますが王子と姉上しか出てきません。

「あそこに俺は武の一族の公爵令嬢と一緒に参加した。その時に紺の揃いの服を着て目立っている姉弟がいた。姉の方はやたら弟の世話を焼いていて、弟の方は王子ばかり気にしていて、公爵令嬢が視線を送っているのに全く気づきもしない……結局最後までアイツはその弟に話しかける事が出来なかった。俺もそれに気が付いていたのに何もしてやらなかった」

アイツっていうのはクレナイ公爵令嬢でしょうか?彼女を無視したというのが今回の騒動の遠因だというのなら、自分で蒔いた種ということでしょうか?

「すいません あの時は、僕も姉上も緊張していて自分の事で精一杯だったんです」
「俺もそれは忘れかけていたのに、今回、嫌々行った茶会でその姉弟に再会した。俺は思い出したのにお前らは俺の事なんて覚えてない。その時点で俺は面白くなかった。それなのに、サンルームではお前らだけで話が始まっただろ、俺だけBクラスだからって仲間外れにしてんのか?ってムカついた。」

仲間外れですか、僕もエリック様とエディが試合している時にちょっと疎外感ありましから少しわかりますけど…でも、エリック様がBクラスなんて知りませんでしたよ。

「そのうち、お前がどっか田舎の男爵家の出身って言うのが聞こえてきた。貴族の地位にはその資質の有る者がつくべきなのに、男爵家から運の良さだけで伯爵家に来た奴が俺をこんな気持ちにさせるのかって思ったらよけいにムカついたんだよ。」

エリック様が膝の上の拳を握りしめます。そういわれても、僕の望みで伯爵家に来たわけでも無いし、それになんでもムカついたって言うの止めた方がいいですよ。

「まずはそんなヤツを実弟あつかいするエリザベス様の考えを正そうと思ったら、エリザベス様はお前を擁護して俺に逆らうし、しまいには、お前がきて俺の事を嘲笑ったからつい、手が出てしまったんだ。」

嘲笑う?ああ、あの姉上を引き離そうと思った時?上手に微笑えていなかったんですね、僕はすぐに感情が顔に出るって言われているから、隠すことも下手なのかもしれません。
あの時は僕だってエリック様を警戒していたから優しく笑うなんてできるはずなかったんです。

「家に連れ帰られて、親に絞られた。だから実力でどっちが正しいか知らしめようと思った」
「それで剣で勝った方が正義って、流石におかしくないですか?僕は剣を握った事もないんですよ」
「そうだよな、絶対に勝てるはずの相手に勝負を挑むなんて間違っているよな。流れでエディと勝負することになって、負け続けてやっと、俺は正しいのか?って自分を疑う気持ちになった。お前は俺がエディに何回負けても嗤わなかった。往生際悪く、家に呼んでまで挑んでそれでも負けた俺にも何も言わない。謝罪も求めなかった」

それは、悪いって思ってない相手に謝ってもらっても意味ないと思ったし、エリック様に興味が無かったというのもありますけど、それは黙っておきます。

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