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一つ目の代価
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入学式、初めての場所、初めての人たち、考えただけで怖い。何故こんな身がすくむのだろう。
「友紀、用意はできたか?」
部屋に呼びに来てくれた愁にしがみつくと、そっと抱き返してくれる。暖かい腕に抱かれ恐怖が薄れてくる。
「友紀、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。もう平気。」
ドアチャイムが鳴った。
「薫達が来たよ、行こう。」
リビングに降りて行くと、広海の後ろから抱きしめてる薫がいて、固まってしまった。
「薫、朝から何やってんだ?」
「何って広海がネクタイ結べないって言うから、よし、これでいい。」
なんだ、びっくりした、薫が広海の首にキスしてる様に見えてしまった。
「紛らわしい事するな、朝から盛ってるのかと思ったんだがな。」
「な、な、何、言ってんですか、そんな事するわけないでしょ。」
「おぉいいね、してもいいならするけど。」
余裕の兄二人の会話に真っ赤に狼狽える僕達お子様二人。
バカバカしい朝の会話に笑い出していた。
まだ少し、緊張していたけど楽になった気がする。
「さぁ行くぞ。」
友紀と広海を挟んで並んで歩く。
薫は広海の寝癖を直しながら、
「高校と中学、同じ敷地内だが結構離れてるから会いに行くの大変だよな。」
「会いに来なくていいよ、友紀がいるんだし。」
「なんだよ、俺に会いたくないのか?」
「そんな事言ってないだろう、薫も忙しいだろうなと思ったからさ。」
もごもごと語尾が小さい声になる広海の肩を抱く薫に広海が恥ずかしいと逃げる。
いつもの仲の良い喧嘩が始まる。
「友紀、昼は一緒に学食にするか?かなり混むだろうが、どうする?何か買って外で食べるか?」
「僕はどっちでもいいよ。」
「じゃ、売店でパンでも買うかな。教室まで迎えに行くから、広海と待っていて。」
「うん、わかった。」
「おまえらいい加減にしろ!」
愁はまだ戯れあってる二人に一括してため息をこぼす。
高校の門が先に見えて来て、兄二人はまたな!と手を上げ行ってしまった。
愁がいなくなった途端、緊張してくる。
「友紀、小学校での虐めがトラウマになってるか?だから、今でも初めての場所や学校が怖いか?」
広海が情けない表情なのが可笑しくて、
「そんな事ないよ。緊張してるだけだよ。」
安心したのか広海にも笑顔が戻った。
『僕は大丈夫、一人じゃない。』
と、呟き自分の世界が少し広がるんだから勇気を出さなきゃ、自分の手で新たな扉を開けるんだと一歩を踏み出した。
広海と同じクラスではなかったが、同じ並びの教室だからいつでも会えると微笑んでくれるから俯かないようにしようと頑張れる。
周りは退屈そうにしているが、入学式を初めて経験する友紀には何もかも新鮮に感じた。
式も終わり教室へと移動になる。広海が友紀を見つけ隣に並ぶ。
「式って小学も中学もかわらねぇな、退屈で寝そうだった。」
「僕はワクワクしちゃった。初めてだから。」
「そうか、友紀は途中からだから初めてか~、目がキラキラして綺麗だ。」
「馬鹿、変な事言わないでよ、恥ずかしい。」
広海こそカッコいい。いつの間にか背も高くなり、がっしりと男らしい体格で顔もキリッと意思の強そうな男前になった広海が羨ましいと思った。女顔だし、筋肉があまり付かない自分の身体がちょっと恨めしいなぁとガッカリと肩を落とす友紀だった。
其々の教室に入り、黒板に貼られた紙に書かれた席に座るように指示が書かれていた。
確認した席は、一番後ろの窓際で友紀には特等席のように思えた。
窓からぼんやり外を眺めていたら、
「お前、なんて名前なんだ?」
そんな声が耳に入ってきたが、自分に話しかけてくるなんてあり得ないと思っている友紀は、外を眺めていた。
おい!と肩を掴まれ、友紀はビックリして小さな悲鳴をあげてしまった。
「ごめん、ビックリさせるつもりじゃなかったんだ、聞こえてないのかと思ったから。」
友紀が恐る恐る見上げると強面の背の高い男の人が立って見下ろしていた。
「ぼ、ぼ、僕に何か用?」
隣の席に腰掛けた彼は、
「俺、さくら、お前は?」
何を聞かれたのか頭が回らず、固まったまま見つめてしまっていた。
「お前の名前?聞こえているよな?」
慌てて首を縦に振り、
「御坂…」
と呟いた。
彼はよろしくと言い笑った。強面だった表情が途端に人懐こい顔に変わった。
「1学期はずっと席替えないらしいから隣の席同士よろしくな。」
と、握手を求めてきた彼は、何故かとても優しげな視線で友紀を見ていた。
だから、友紀も素直に笑顔を向ける事が出来、隣がサクラで良かったと内心ホッとしていた。
担任からの色々と説明があり、昼休みになった。
ぼんやりと広海たちが来るのを待っていると、隣の席からサクラが、
「お昼はどうするんだ?」
「僕は友達と約束してるけど。」
「そっか、学食ってどんなか知ってるか?」
「兄さんが凄く混むって言ってたよ。行くの?」
「どうするかな?御坂は弁当でも持ってきたのか?」
「ううん、兄さんが購買で買ってきてくれるの。」
珍しく笑みを浮かべ話をしている友紀を見つけ側に来た広海は、友紀が笑顔を向けていた彼を威嚇する。
「友紀、薫はまだ?誰こいつ?」
「広海、そんな風に言うのはよくないよ。」
広海を宥めようとするが、サクラも面白くなさそうに広海を見る。
睨み合いのようになり、その視線が友紀の記憶の中の男達と重なり、友紀は身体が震えてしまうのを抑えられない。
「お願いだから、二人とも怖い。」
友紀の震える声に広海が反応し、
「ごめん、友紀。」
情けない声で謝り頭を撫ぜながら大丈夫だと慰める。
その様子にサクラが不思議そうに
「お前ら恋人同士?」
「はぁ?違うけど、なんか文句があるのか?」
「ないよ。俺、九鬼咲良。お前は?」
急に自己紹介をした彼に肩透かしをくらった感が拭えず、不貞腐れた広海はボソリと
「坂下広海」と、呟く。
二人をヒヤヒヤしながら見ていたけど、サクラの自己紹介に、
「エッ、サクラって下の名前なの?その強面でサクラは……。」
と、この場の雰囲気からはちょっとピントがズレた友紀のポカンとした態度や言葉に、
「そこに反応するか?」
と広海が呆れた声をあげてサクラを伺う。
「よく言われる。今はこんなだが、小さい頃は愛くるしい可愛さだったんだよ。名前にピッタリのな。」
そんな二人に咲良がウインク付きでニヤリと笑った。
友紀も広海も咲良のオシャレな返事に声に出して笑ってしまった。
「お前、面白い。サクラってどんな字で書くんだ?まさか木のサクラじゃないよな。」
「それは勘弁だよ。咲くに良いって書く。坂下はヒロミで御坂はユキ、三人とも女名だな。」
ホントだなと笑い、広海と咲良がよろしくと握手をしたりして、一気に仲良くなっている。
「友紀、用意はできたか?」
部屋に呼びに来てくれた愁にしがみつくと、そっと抱き返してくれる。暖かい腕に抱かれ恐怖が薄れてくる。
「友紀、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。もう平気。」
ドアチャイムが鳴った。
「薫達が来たよ、行こう。」
リビングに降りて行くと、広海の後ろから抱きしめてる薫がいて、固まってしまった。
「薫、朝から何やってんだ?」
「何って広海がネクタイ結べないって言うから、よし、これでいい。」
なんだ、びっくりした、薫が広海の首にキスしてる様に見えてしまった。
「紛らわしい事するな、朝から盛ってるのかと思ったんだがな。」
「な、な、何、言ってんですか、そんな事するわけないでしょ。」
「おぉいいね、してもいいならするけど。」
余裕の兄二人の会話に真っ赤に狼狽える僕達お子様二人。
バカバカしい朝の会話に笑い出していた。
まだ少し、緊張していたけど楽になった気がする。
「さぁ行くぞ。」
友紀と広海を挟んで並んで歩く。
薫は広海の寝癖を直しながら、
「高校と中学、同じ敷地内だが結構離れてるから会いに行くの大変だよな。」
「会いに来なくていいよ、友紀がいるんだし。」
「なんだよ、俺に会いたくないのか?」
「そんな事言ってないだろう、薫も忙しいだろうなと思ったからさ。」
もごもごと語尾が小さい声になる広海の肩を抱く薫に広海が恥ずかしいと逃げる。
いつもの仲の良い喧嘩が始まる。
「友紀、昼は一緒に学食にするか?かなり混むだろうが、どうする?何か買って外で食べるか?」
「僕はどっちでもいいよ。」
「じゃ、売店でパンでも買うかな。教室まで迎えに行くから、広海と待っていて。」
「うん、わかった。」
「おまえらいい加減にしろ!」
愁はまだ戯れあってる二人に一括してため息をこぼす。
高校の門が先に見えて来て、兄二人はまたな!と手を上げ行ってしまった。
愁がいなくなった途端、緊張してくる。
「友紀、小学校での虐めがトラウマになってるか?だから、今でも初めての場所や学校が怖いか?」
広海が情けない表情なのが可笑しくて、
「そんな事ないよ。緊張してるだけだよ。」
安心したのか広海にも笑顔が戻った。
『僕は大丈夫、一人じゃない。』
と、呟き自分の世界が少し広がるんだから勇気を出さなきゃ、自分の手で新たな扉を開けるんだと一歩を踏み出した。
広海と同じクラスではなかったが、同じ並びの教室だからいつでも会えると微笑んでくれるから俯かないようにしようと頑張れる。
周りは退屈そうにしているが、入学式を初めて経験する友紀には何もかも新鮮に感じた。
式も終わり教室へと移動になる。広海が友紀を見つけ隣に並ぶ。
「式って小学も中学もかわらねぇな、退屈で寝そうだった。」
「僕はワクワクしちゃった。初めてだから。」
「そうか、友紀は途中からだから初めてか~、目がキラキラして綺麗だ。」
「馬鹿、変な事言わないでよ、恥ずかしい。」
広海こそカッコいい。いつの間にか背も高くなり、がっしりと男らしい体格で顔もキリッと意思の強そうな男前になった広海が羨ましいと思った。女顔だし、筋肉があまり付かない自分の身体がちょっと恨めしいなぁとガッカリと肩を落とす友紀だった。
其々の教室に入り、黒板に貼られた紙に書かれた席に座るように指示が書かれていた。
確認した席は、一番後ろの窓際で友紀には特等席のように思えた。
窓からぼんやり外を眺めていたら、
「お前、なんて名前なんだ?」
そんな声が耳に入ってきたが、自分に話しかけてくるなんてあり得ないと思っている友紀は、外を眺めていた。
おい!と肩を掴まれ、友紀はビックリして小さな悲鳴をあげてしまった。
「ごめん、ビックリさせるつもりじゃなかったんだ、聞こえてないのかと思ったから。」
友紀が恐る恐る見上げると強面の背の高い男の人が立って見下ろしていた。
「ぼ、ぼ、僕に何か用?」
隣の席に腰掛けた彼は、
「俺、さくら、お前は?」
何を聞かれたのか頭が回らず、固まったまま見つめてしまっていた。
「お前の名前?聞こえているよな?」
慌てて首を縦に振り、
「御坂…」
と呟いた。
彼はよろしくと言い笑った。強面だった表情が途端に人懐こい顔に変わった。
「1学期はずっと席替えないらしいから隣の席同士よろしくな。」
と、握手を求めてきた彼は、何故かとても優しげな視線で友紀を見ていた。
だから、友紀も素直に笑顔を向ける事が出来、隣がサクラで良かったと内心ホッとしていた。
担任からの色々と説明があり、昼休みになった。
ぼんやりと広海たちが来るのを待っていると、隣の席からサクラが、
「お昼はどうするんだ?」
「僕は友達と約束してるけど。」
「そっか、学食ってどんなか知ってるか?」
「兄さんが凄く混むって言ってたよ。行くの?」
「どうするかな?御坂は弁当でも持ってきたのか?」
「ううん、兄さんが購買で買ってきてくれるの。」
珍しく笑みを浮かべ話をしている友紀を見つけ側に来た広海は、友紀が笑顔を向けていた彼を威嚇する。
「友紀、薫はまだ?誰こいつ?」
「広海、そんな風に言うのはよくないよ。」
広海を宥めようとするが、サクラも面白くなさそうに広海を見る。
睨み合いのようになり、その視線が友紀の記憶の中の男達と重なり、友紀は身体が震えてしまうのを抑えられない。
「お願いだから、二人とも怖い。」
友紀の震える声に広海が反応し、
「ごめん、友紀。」
情けない声で謝り頭を撫ぜながら大丈夫だと慰める。
その様子にサクラが不思議そうに
「お前ら恋人同士?」
「はぁ?違うけど、なんか文句があるのか?」
「ないよ。俺、九鬼咲良。お前は?」
急に自己紹介をした彼に肩透かしをくらった感が拭えず、不貞腐れた広海はボソリと
「坂下広海」と、呟く。
二人をヒヤヒヤしながら見ていたけど、サクラの自己紹介に、
「エッ、サクラって下の名前なの?その強面でサクラは……。」
と、この場の雰囲気からはちょっとピントがズレた友紀のポカンとした態度や言葉に、
「そこに反応するか?」
と広海が呆れた声をあげてサクラを伺う。
「よく言われる。今はこんなだが、小さい頃は愛くるしい可愛さだったんだよ。名前にピッタリのな。」
そんな二人に咲良がウインク付きでニヤリと笑った。
友紀も広海も咲良のオシャレな返事に声に出して笑ってしまった。
「お前、面白い。サクラってどんな字で書くんだ?まさか木のサクラじゃないよな。」
「それは勘弁だよ。咲くに良いって書く。坂下はヒロミで御坂はユキ、三人とも女名だな。」
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