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一つ目の代価
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ガタガタと椅子の動く音にいつの間にか授業が終わっているのに気づいた友紀は、午後の授業が何の授業をしていたかも全く覚えていない。
バタバタと皆んなが教室を出て行くのを不思議そうに眺めていた友紀は、隣の席に恐々目をやるとそこには咲良の姿はなく、友達になってくれた筈の咲良が黙っていない事に動揺してしまう。
どこに行ったんだろうと、教室を見渡しキョロキョロとする友紀を咲良は不思議に思いながら、
「友紀、教室移動だよ、行こう。」
後ろの出口で友紀を呼ぶ咲良が、変わりない様子なのを友紀は安堵しぼんやり見つめてしまっていた。
「友紀、急げ。ほら教科書、ノートは?」
動かない友紀の側に戻ってきた咲良は、ぼんやりとしてる友紀の準備を手伝い、ごめんを繰り返す友紀の腕を取り二人慌てて教室を飛び出した。
霞がかかった頭の友紀は、始終ぼんやりとした状態で放課後を迎えていた。
咲良曰く、最初の授業はどの科目も先生の自己紹介やら雑談で終わったらしいとの事らしい。
教室の隅の席で、授業の事を全く覚えていないと落ち込む友紀を気にすることないと、咲良は、頭を撫ぜ慰めたり、大丈夫だと励ましたりしていた。
放課後の教室では、そんな二人に目を向ける者はなく部活の話しに花を咲かせる者や、寄り道の相談をしながら出て行く者で賑わっていた。
隣のクラスの広海が迎えに教室にやって来て、咲良に手を挙げ来た事を知らせ友紀の机の横に立ち声をかけた。
「友紀、帰るぞ。兄貴二人は生徒会だと、帰りにどこか寄ろうか?」
咲良も気づいていたし、足音を忍ばせたわけでも無く普通に歩いてたのに、友紀が肩をビクッとさせ驚いている。
「あれ、広海いつ来たの?」
そんな友紀の言葉に大きな溜息を零す広海だが、いつもの事だと諦め文句も言わない。
「友紀は相変わらずぼんやりさんだな。咲良、この後用事あるか?」
隣で帰る支度をしていた咲良、
「今日はバイト無いし、暇。」
「えっ、バイトしてるのか?学校の許可は?」
「俺の叔父さん家、酒屋だから。簡単にOKさ。」
「いいな、俺も雇え。」
「雇えって上から目線だな。」
二人はケラケラ笑い、
「友紀、支度出来たか?」
「ん、何の?」
「帰らないのか友紀は?」
「あっそうか、帰る支度だね。」
バタバタと片付けてる友紀の横で咲良が広海に同情の視線を送っている。
「広海は大変だな、友紀はずっとこんな感じなのか?」
咲良の呆れた顔に広海は溜息を溢し、多少のフォローを入れようとしている。
「ぼんやりなのは変わらないな。やり始めると早いんだが。俺なんかより集中力抜群だからな。」
広海が集中力は友紀の方があるんだがなと、肩を落としている姿に、励まそうと
「俺も集中力あるって言われるが、好きな事にだけ発揮するな。」
「嫌いな事には全くか、俺もだ。」
勉強には、全くのほうだなと似た者同士だと長年の親友みたいになってる。
友紀が帰り支度を済ませ、待ってくれてる二人に声をかける。
「お待たせ、帰ろう。」
「おう、どうする?外で食べるか?」
学校の外、通りに出た所で広海が、
「咲良、美味しい弁当か惣菜でも買って、俺の家来ないか?」
「いいのか?」
「薫も帰ってくるし、ちょうどいいさ。友紀もいいか?」
「僕はいいよ。広海の本少し借りていい?」
好きなの選べばいいよと、広海が家の方向に歩き出すと咲良が、
「こっちだったら、手作り弁当の店があるから、そこにするか?弁当だけじゃなく、お好み焼きもあるよ。そこでいいか?」
「マジか、お好み焼き食べてみたかったんだ。こっちのはフワフワなんだろ?」
広海がワクワクしながら聞く。
「広海はこっちじゃないのか?」
「俺も友紀も四国だから、ぺったんこのお好み焼きだったよ。」
なぁ~って友紀に話を振ってくれるから、
「でも、美味しかったよ。フワフワのお好み焼きってどんなんだろうね。」
三人で食べ物の話しで盛り上がり、また、店の中でもワイワイと騒ぎながら買い物を楽しんだ。
「凄いマンションに住んでんだな。」
マンションを見上げる咲良が、
「叔父さんの家、店舗と住居が一緒の一軒家だし、実家も一軒家だからな。マンションは初めてだ。」
と、周りを興味津々に眺めてる。
鍵で自動ドアを開けエレベーターに乗り込むと、
「俺、これ苦手なんだわ、胃がせりあがるようだろ。」
咲良が、顔を顰めているのが、可笑しくて広海がクスクスと笑ってる。
「笑うなよ、酔いそうだ。」
「もしかして、咲良ってジェットコースターも駄目なんじゃ。」
「あれは、人間の乗るもんじゃない。」
掛け合い漫才のような二人の話に友紀も笑顔で眺めてる。
「どうぞ、入って。」
中に入った咲良は、
「何でこんなに広いとこに一人で住んでんだ?贅沢だろ。」
「一人じゃないし、薫と住んでる。ここ、薫の部屋なの。俺は居候なわけ。」
「薫さんが付き合ってるって言ってたのってマジだったのか!」
引くかと思ったのに、咲良はいいなぁと羨ましそうにしている。
夕飯には早いから、どうするって事で、友紀は広海の部屋で本を物色すると言うと、二人はゲームをするからと用意を始めた。
広海の部屋には、たくさんの色んなジャンルの本がある。かなりの読書家の広海が選ぶ本はどれも友紀の興味をそそる。
最近は、写真集とかもよく見るようになった。建築のジャンルにあった建物の写真集も心惹かれた。
広海が呼びに来るまで、本の世界にどっぷりとはまっていた。
バタバタと皆んなが教室を出て行くのを不思議そうに眺めていた友紀は、隣の席に恐々目をやるとそこには咲良の姿はなく、友達になってくれた筈の咲良が黙っていない事に動揺してしまう。
どこに行ったんだろうと、教室を見渡しキョロキョロとする友紀を咲良は不思議に思いながら、
「友紀、教室移動だよ、行こう。」
後ろの出口で友紀を呼ぶ咲良が、変わりない様子なのを友紀は安堵しぼんやり見つめてしまっていた。
「友紀、急げ。ほら教科書、ノートは?」
動かない友紀の側に戻ってきた咲良は、ぼんやりとしてる友紀の準備を手伝い、ごめんを繰り返す友紀の腕を取り二人慌てて教室を飛び出した。
霞がかかった頭の友紀は、始終ぼんやりとした状態で放課後を迎えていた。
咲良曰く、最初の授業はどの科目も先生の自己紹介やら雑談で終わったらしいとの事らしい。
教室の隅の席で、授業の事を全く覚えていないと落ち込む友紀を気にすることないと、咲良は、頭を撫ぜ慰めたり、大丈夫だと励ましたりしていた。
放課後の教室では、そんな二人に目を向ける者はなく部活の話しに花を咲かせる者や、寄り道の相談をしながら出て行く者で賑わっていた。
隣のクラスの広海が迎えに教室にやって来て、咲良に手を挙げ来た事を知らせ友紀の机の横に立ち声をかけた。
「友紀、帰るぞ。兄貴二人は生徒会だと、帰りにどこか寄ろうか?」
咲良も気づいていたし、足音を忍ばせたわけでも無く普通に歩いてたのに、友紀が肩をビクッとさせ驚いている。
「あれ、広海いつ来たの?」
そんな友紀の言葉に大きな溜息を零す広海だが、いつもの事だと諦め文句も言わない。
「友紀は相変わらずぼんやりさんだな。咲良、この後用事あるか?」
隣で帰る支度をしていた咲良、
「今日はバイト無いし、暇。」
「えっ、バイトしてるのか?学校の許可は?」
「俺の叔父さん家、酒屋だから。簡単にOKさ。」
「いいな、俺も雇え。」
「雇えって上から目線だな。」
二人はケラケラ笑い、
「友紀、支度出来たか?」
「ん、何の?」
「帰らないのか友紀は?」
「あっそうか、帰る支度だね。」
バタバタと片付けてる友紀の横で咲良が広海に同情の視線を送っている。
「広海は大変だな、友紀はずっとこんな感じなのか?」
咲良の呆れた顔に広海は溜息を溢し、多少のフォローを入れようとしている。
「ぼんやりなのは変わらないな。やり始めると早いんだが。俺なんかより集中力抜群だからな。」
広海が集中力は友紀の方があるんだがなと、肩を落としている姿に、励まそうと
「俺も集中力あるって言われるが、好きな事にだけ発揮するな。」
「嫌いな事には全くか、俺もだ。」
勉強には、全くのほうだなと似た者同士だと長年の親友みたいになってる。
友紀が帰り支度を済ませ、待ってくれてる二人に声をかける。
「お待たせ、帰ろう。」
「おう、どうする?外で食べるか?」
学校の外、通りに出た所で広海が、
「咲良、美味しい弁当か惣菜でも買って、俺の家来ないか?」
「いいのか?」
「薫も帰ってくるし、ちょうどいいさ。友紀もいいか?」
「僕はいいよ。広海の本少し借りていい?」
好きなの選べばいいよと、広海が家の方向に歩き出すと咲良が、
「こっちだったら、手作り弁当の店があるから、そこにするか?弁当だけじゃなく、お好み焼きもあるよ。そこでいいか?」
「マジか、お好み焼き食べてみたかったんだ。こっちのはフワフワなんだろ?」
広海がワクワクしながら聞く。
「広海はこっちじゃないのか?」
「俺も友紀も四国だから、ぺったんこのお好み焼きだったよ。」
なぁ~って友紀に話を振ってくれるから、
「でも、美味しかったよ。フワフワのお好み焼きってどんなんだろうね。」
三人で食べ物の話しで盛り上がり、また、店の中でもワイワイと騒ぎながら買い物を楽しんだ。
「凄いマンションに住んでんだな。」
マンションを見上げる咲良が、
「叔父さんの家、店舗と住居が一緒の一軒家だし、実家も一軒家だからな。マンションは初めてだ。」
と、周りを興味津々に眺めてる。
鍵で自動ドアを開けエレベーターに乗り込むと、
「俺、これ苦手なんだわ、胃がせりあがるようだろ。」
咲良が、顔を顰めているのが、可笑しくて広海がクスクスと笑ってる。
「笑うなよ、酔いそうだ。」
「もしかして、咲良ってジェットコースターも駄目なんじゃ。」
「あれは、人間の乗るもんじゃない。」
掛け合い漫才のような二人の話に友紀も笑顔で眺めてる。
「どうぞ、入って。」
中に入った咲良は、
「何でこんなに広いとこに一人で住んでんだ?贅沢だろ。」
「一人じゃないし、薫と住んでる。ここ、薫の部屋なの。俺は居候なわけ。」
「薫さんが付き合ってるって言ってたのってマジだったのか!」
引くかと思ったのに、咲良はいいなぁと羨ましそうにしている。
夕飯には早いから、どうするって事で、友紀は広海の部屋で本を物色すると言うと、二人はゲームをするからと用意を始めた。
広海の部屋には、たくさんの色んなジャンルの本がある。かなりの読書家の広海が選ぶ本はどれも友紀の興味をそそる。
最近は、写真集とかもよく見るようになった。建築のジャンルにあった建物の写真集も心惹かれた。
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