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一つ目の代価
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友紀が本に夢中の間、リビングでゲームをしているはずの二人は、何故かカウンターに並んで座り、難しい顔で話しをしようとしていた。
「友紀は、当分出てこないから、咲良に確認しておきたい事がある。」
咲良は広海に教室に入る前に今日時間があるか聞かれ、話をしたいと言われていた。友紀には内緒のようなので、話を合わせ今ここにいる。
「咲良は、ホントに友紀の親友になるつもりがあるか?俺は、離れた場所に行く事になっても薫と一緒に一生、友紀を見守り、助けていくつもりだ。」
「ずっとか、凄いな、俺はまだわからないな。俺の一番は弟だから、それでも、友紀とは長い付き合いをしたいとは思っている。」
「それなら、友紀の事で知っておいてほしい事がある。」
「友紀の事で、本人に内緒で話をしても大丈夫な事か?」
「友紀は、ホントは知られたくないだろうと思うが、友紀を護る為にも知った上で付き合っていってほしいと思っている。だから、これから話す事は、必要な時以外は内緒でお願いしたい。」
「誰にも漏らすなと言う事なら了解だ。出来るなら弟とも仲良くしてほしいと思っている。友紀なら弟も仲良くなれると思っているから。友紀を一番にする事は出来ないが、大切にしたい事に嘘はない。」
「俺も一番は薫だから、それは理解している。薫だって一番は俺だしな。」
咲良に話しても大丈夫だと確認出来たので、広海は話し出す。
「友紀と愁兄が苗字が違う事で聞いてきただろ、その事で友紀の様子が変わったのは感じてはいたか?」
「あぁ、それはなんと無くわかっていた。」
「二人は血の繋がりがないんだ。はっきり言って赤の他人という事だ。友紀を愁兄の父親が引き取ったんだ。」
「引き取ったって、友紀の親は?」
「友紀は親に見捨てられたんだ。部屋で一人母親の帰りを待っていたんだが、母親は帰るつもりなんて全く無かったらしい。
偶然に愁兄が死にかけてるところを見つけて助けることができた。小学生の間は孤児院にいたけど、中学生になるのを機会に愁兄の父親が友紀を引き取り一緒に住む事になったんだ。」
「帰るつもりがなかったって置き去りって事か?」
「そうだ。愁兄の親父が母親を見つけて会った時、母親はまだ生きてるのか、死んだと思ったのにって言ったらしい。それでも、友紀が退院する時に最後だからと合わせたらしい。その時に、友紀本人向かって、まだ生きてるなんてしぶといとか、生きる価値もない存在だとか、一緒にいたシスターにいらないから何処かに売り飛ばせば、幾らかのお金にはなると言ったそうだ。」
ふざけるなと咲良は悔しそうに唇を噛んでる。
「それに、日常的に母親にも、母親が連れこむ男からも暴力を振るわれ虐待されていた。だからなのかもしれないが、暴力的な事に異常な怯えを見せる。それに、友紀は、母親が自分を愛さなかったのは、自分が出来が悪いからとか、生きる価値もない人間だから愛される事はないと思っているみたいだな。」
「友紀が悪いわけじゃないだろう。」
「咲良、声がでかい。ちょっと声を抑えろ。」
ごめんと俯いた咲良は泣いていた。
「そして、友紀は愁兄を特別に思っているってことだ。でも、それを愁兄に知られると嫌われ、一緒にいられなくなると思い込んでる。愁兄は明らかに友紀を特別に思っているのにな。」
「友紀の事が気になったのが、わかった気がする。俺の弟も虐待されていたんだ。今だに過呼吸を起こすぐらい酷い後遺症がある。同じ空気を纏っているのかもな。」
そうか、弟の事を守ってやれよなと広海は咲良を励まし、咲良なら友紀を悲しませないだろうと思った。
「話は終わりだ、友紀だけじゃなく、俺ともよろしくな。さて、飯にでもするかな。友紀を呼んでくるよ。」
広海の後ろ姿を目で追いかけながら咲良は、友紀の優しい雰囲気が周りの人達を優しくさせるのかも知らないなと感じた。そして、そんな心優しくでも脆い心の友紀を護る仲間になる許可を貰えたみたいでホッとし、緊張していた体の力を抜いた。
弟とよく似た空気を纏う友紀、いつかほんとに弟を紹介出来たらと思う。
内緒の話の後、広海だけでなく咲良までが友紀を護る位置についた。
そんな3人を見た愁と薫の兄二人は、姫を護るナイト二人の姿に安堵を感じたが何故かお子様ナイトが微笑ましくて笑いを噛み殺した。
そんな3人は穏やかな日々を送っていたのだが、陰で友紀に向ける不穏な視線があるのに気づいていなかった。
広海はクラスが違うので、昼休みと放課後しかゆっくり友紀達と会う事が出来ない事が寂しく感じていた。
「咲良は、友紀とずっと一緒にいれていいよな。絶対来年は同じクラスを目指す。」
放課後、何も予定のない3人は、友紀が買い物をしたいと言うので荷物持ちに二人もついて行っていた。
「友紀、夕飯は何にするんだ?」
広海は、今日は薫がバイトで遅いから友紀の所で夕飯を済ませるよう言われていたので、メニューが気になって仕方なかった。
「今日は、広海がいるからハッシュドにしよかなって愁兄が行っていたけど。」
「マジで!俺好きなんだよな。愁兄最高!咲良は?用事あるのか?」
「イヤ、特別ないけど。」
「だったら一緒に食べようぜ。」
「広海、他所の家なのに勝手に決めたらダメだろ。友紀、気にする事ないからな。」
「えっ!咲良も食べるからって僕、愁兄に言ったよ。ダメだったの?」
「ダメじゃないけど、迷惑じゃないか?」
「全然、大丈夫だから。咲良こそ気にしないでいいからね。」
「了解、叔母さんに連絡入れとく。」
3人で賑やかに買い物をしてナイト二人が荷物を持ち、友紀の家に向かっていた。
家の近くの公園の側を通りかかった時、公園から転がってきたボールを小さな子が追いかけてきていた。
手ぶらな友紀が、慌てて道路に出てボールを拾い子供に渡そうと公園に向かっていたら、何処から現れたのかバイクが友紀目掛けて走ってきた。
咲良が荷物を放り出し友紀に手を伸ばすが、バイクの後ろ座席に座っていた人間の手が友紀に触れた後、バイクは走り去った。
びっくりした友紀はその場で立ち竦んでいた。
友紀の脇腹からお腹辺りまでの制服が刃物で切られていた。
今回は服だけで済んだが、顔とか手とかに当たっていたら大怪我になっていたと思うと、ナイト二人はバイクが走り去った方を睨み見つめていた。
友紀は何が起きたのか解らなかった。
でも、自分が誰かに恨まれているのだと思うと悲しくなってしまう。
そして、同時に愛されないだけではなく憎まれる自分はやはり生きる価値のない人間なのかと、コトリと小石を投げ込まれたように心の中に転がっていく。
だが、そんな小さな不安は無意識に霧散され心配し過ぎの二人に友紀は大丈夫と笑顔を見せ安心させる。
友紀に向けられた負の感情を纏った影は、また次の小石を投げ込もうと蠢いていた。
時間をかけ友紀を自分と同じ闇の沼に引き摺り込む為に。
「友紀は、当分出てこないから、咲良に確認しておきたい事がある。」
咲良は広海に教室に入る前に今日時間があるか聞かれ、話をしたいと言われていた。友紀には内緒のようなので、話を合わせ今ここにいる。
「咲良は、ホントに友紀の親友になるつもりがあるか?俺は、離れた場所に行く事になっても薫と一緒に一生、友紀を見守り、助けていくつもりだ。」
「ずっとか、凄いな、俺はまだわからないな。俺の一番は弟だから、それでも、友紀とは長い付き合いをしたいとは思っている。」
「それなら、友紀の事で知っておいてほしい事がある。」
「友紀の事で、本人に内緒で話をしても大丈夫な事か?」
「友紀は、ホントは知られたくないだろうと思うが、友紀を護る為にも知った上で付き合っていってほしいと思っている。だから、これから話す事は、必要な時以外は内緒でお願いしたい。」
「誰にも漏らすなと言う事なら了解だ。出来るなら弟とも仲良くしてほしいと思っている。友紀なら弟も仲良くなれると思っているから。友紀を一番にする事は出来ないが、大切にしたい事に嘘はない。」
「俺も一番は薫だから、それは理解している。薫だって一番は俺だしな。」
咲良に話しても大丈夫だと確認出来たので、広海は話し出す。
「友紀と愁兄が苗字が違う事で聞いてきただろ、その事で友紀の様子が変わったのは感じてはいたか?」
「あぁ、それはなんと無くわかっていた。」
「二人は血の繋がりがないんだ。はっきり言って赤の他人という事だ。友紀を愁兄の父親が引き取ったんだ。」
「引き取ったって、友紀の親は?」
「友紀は親に見捨てられたんだ。部屋で一人母親の帰りを待っていたんだが、母親は帰るつもりなんて全く無かったらしい。
偶然に愁兄が死にかけてるところを見つけて助けることができた。小学生の間は孤児院にいたけど、中学生になるのを機会に愁兄の父親が友紀を引き取り一緒に住む事になったんだ。」
「帰るつもりがなかったって置き去りって事か?」
「そうだ。愁兄の親父が母親を見つけて会った時、母親はまだ生きてるのか、死んだと思ったのにって言ったらしい。それでも、友紀が退院する時に最後だからと合わせたらしい。その時に、友紀本人向かって、まだ生きてるなんてしぶといとか、生きる価値もない存在だとか、一緒にいたシスターにいらないから何処かに売り飛ばせば、幾らかのお金にはなると言ったそうだ。」
ふざけるなと咲良は悔しそうに唇を噛んでる。
「それに、日常的に母親にも、母親が連れこむ男からも暴力を振るわれ虐待されていた。だからなのかもしれないが、暴力的な事に異常な怯えを見せる。それに、友紀は、母親が自分を愛さなかったのは、自分が出来が悪いからとか、生きる価値もない人間だから愛される事はないと思っているみたいだな。」
「友紀が悪いわけじゃないだろう。」
「咲良、声がでかい。ちょっと声を抑えろ。」
ごめんと俯いた咲良は泣いていた。
「そして、友紀は愁兄を特別に思っているってことだ。でも、それを愁兄に知られると嫌われ、一緒にいられなくなると思い込んでる。愁兄は明らかに友紀を特別に思っているのにな。」
「友紀の事が気になったのが、わかった気がする。俺の弟も虐待されていたんだ。今だに過呼吸を起こすぐらい酷い後遺症がある。同じ空気を纏っているのかもな。」
そうか、弟の事を守ってやれよなと広海は咲良を励まし、咲良なら友紀を悲しませないだろうと思った。
「話は終わりだ、友紀だけじゃなく、俺ともよろしくな。さて、飯にでもするかな。友紀を呼んでくるよ。」
広海の後ろ姿を目で追いかけながら咲良は、友紀の優しい雰囲気が周りの人達を優しくさせるのかも知らないなと感じた。そして、そんな心優しくでも脆い心の友紀を護る仲間になる許可を貰えたみたいでホッとし、緊張していた体の力を抜いた。
弟とよく似た空気を纏う友紀、いつかほんとに弟を紹介出来たらと思う。
内緒の話の後、広海だけでなく咲良までが友紀を護る位置についた。
そんな3人を見た愁と薫の兄二人は、姫を護るナイト二人の姿に安堵を感じたが何故かお子様ナイトが微笑ましくて笑いを噛み殺した。
そんな3人は穏やかな日々を送っていたのだが、陰で友紀に向ける不穏な視線があるのに気づいていなかった。
広海はクラスが違うので、昼休みと放課後しかゆっくり友紀達と会う事が出来ない事が寂しく感じていた。
「咲良は、友紀とずっと一緒にいれていいよな。絶対来年は同じクラスを目指す。」
放課後、何も予定のない3人は、友紀が買い物をしたいと言うので荷物持ちに二人もついて行っていた。
「友紀、夕飯は何にするんだ?」
広海は、今日は薫がバイトで遅いから友紀の所で夕飯を済ませるよう言われていたので、メニューが気になって仕方なかった。
「今日は、広海がいるからハッシュドにしよかなって愁兄が行っていたけど。」
「マジで!俺好きなんだよな。愁兄最高!咲良は?用事あるのか?」
「イヤ、特別ないけど。」
「だったら一緒に食べようぜ。」
「広海、他所の家なのに勝手に決めたらダメだろ。友紀、気にする事ないからな。」
「えっ!咲良も食べるからって僕、愁兄に言ったよ。ダメだったの?」
「ダメじゃないけど、迷惑じゃないか?」
「全然、大丈夫だから。咲良こそ気にしないでいいからね。」
「了解、叔母さんに連絡入れとく。」
3人で賑やかに買い物をしてナイト二人が荷物を持ち、友紀の家に向かっていた。
家の近くの公園の側を通りかかった時、公園から転がってきたボールを小さな子が追いかけてきていた。
手ぶらな友紀が、慌てて道路に出てボールを拾い子供に渡そうと公園に向かっていたら、何処から現れたのかバイクが友紀目掛けて走ってきた。
咲良が荷物を放り出し友紀に手を伸ばすが、バイクの後ろ座席に座っていた人間の手が友紀に触れた後、バイクは走り去った。
びっくりした友紀はその場で立ち竦んでいた。
友紀の脇腹からお腹辺りまでの制服が刃物で切られていた。
今回は服だけで済んだが、顔とか手とかに当たっていたら大怪我になっていたと思うと、ナイト二人はバイクが走り去った方を睨み見つめていた。
友紀は何が起きたのか解らなかった。
でも、自分が誰かに恨まれているのだと思うと悲しくなってしまう。
そして、同時に愛されないだけではなく憎まれる自分はやはり生きる価値のない人間なのかと、コトリと小石を投げ込まれたように心の中に転がっていく。
だが、そんな小さな不安は無意識に霧散され心配し過ぎの二人に友紀は大丈夫と笑顔を見せ安心させる。
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