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「ア、アリアフィーネ、そろそろやめるのだ。念のために、早くここから出るとしよう」

「あ、そうですね、ご主人様。つい夢中になってしまって……」

 アリアフィーネの抱擁を味わうこと暫し――

 そんなやり取りを交わしながら、クロノがアリアフィーネの胸から抜け出す。

「少女よ、歩けるか?」

「は、はいですわ! 助けていただき、本当にありがとうございます!」

 シルバーブロンドの美少女エルフにクロノが問いかけると、彼女はそう言って返事をする。

 どうやら大した怪我もしていないようで、クロノは一安心する。

「一人では不安であろう。吾輩たちと一緒に迷宮を出るとしよう」

「よ、よろしいのですの……?」

「ああ、ちょうど帰るところだったのでな。おっと、その前に……」

 シルバーブロンドの美少女エルフとやり取りを交わしながら、クロノはハイオークの死体の元へ戻り、転がった首を手にする。

 せっかく倒したのだ。
 ギルドに持って帰り、貰えるのであれば討伐報酬をもらってしまおうという考えである。

 本来なら死体を丸ごとストレージに入れて、持ち帰りたいところではあるが、アリアフィーネ以外の人間が見ている前なので迂闊に使うことはできない。

「そういえば……まだ名乗ってなかったな。吾輩の名はクロノ、そして彼女の名はアリアフィーネだ」

「あ、こちらこそ名乗りが遅れて申し訳ありません! わたくしの名前はシェリルと申します。一応Dランク冒険者をやっておりますの!」

 互いの自己紹介が終わったところで、改めてシルバーブロンドの美少女エルフ――シェリルが頭を下げる。

 Dランクの冒険者……一応一人前と認められた階級ではあるが、さすがにハイオークが相手では歯が立たないというものだ。

(む……? 何やら顔が赤いような気がするが……大丈夫か?)

 シェリルの顔を見て、クロノはそのことに気づく。

 そんなクロノの頭の中に、カレンの声が響く――

【シェリルがクロノ様に恋心を抱いたようです。性交渉が可能になりましたが、いかがいたしますか?】

(ええい! やかましいわ! というか、この少女もなのか!?)

 アリアフィーネに続き、たまたま助けた少女に惚れられてしまった……。
 カレンからもたらされた、要らん情報に、クロノは驚愕することとなる。

 クロノの驚いたような表情に、アリアフィーネとシェリルは「「……?」」と、不思議そうな顔を浮かべながらも、彼の後に続き迷宮を後にするのであった。

★☆★☆★

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