倫としましょう

koyumi

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第11話

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 木浦が選んだのは、この界隈にやたらと多い焼き鳥屋だった。

 雛実は木浦から場所と時間を聞くと、すぐに細川に内容をメールで伝えた。

 雛実に連絡する為に携帯を手に持っていた細川は、不意にメールがきて驚いたが、内容を把握するとニヤリと笑った。
『◯◯鳥居酒屋で、19時45分から2時間コースで予約しました。』
 雛実が伝えたのはこれだけだ。
 わざとではないが、自分達以外に何人かいることは伝えていなかった。 


 木浦は着替えるとすぐに店に向かった。デパートから歩いて5分。ただし、これは木浦の足の長さでだ。
 だから、店が見えた頃、先に退店していた雛実が入って行く姿が見えた。
 駆け足で追いつくと、ちょうど店員に案内される前だった。

「雛実ちゃん、一緒に行こう。」

 雛実は、その柔らかな声に振り返るとスーツ姿の木浦がいた。
 普段、上半身は食品部門の白い制服を纏っている為、木浦の背広姿を見るのは久々だった。

(か、カッコいいかも……。)

 思わずドキっとしてしまい、顔を赤らめてしまった。
 紺色の清潔感溢れるスーツに、同系色のネクタイ。薄くストライプの入ったワイシャツ。黒縁のメガネ。
 絵に描いたようなスマートな木浦は、店に入るなり、他の女性客の視線もちらほら浴びていた。

「ごめんね、沢口さん達は来られないみたいで、他にも何人か声かけたんだけど、結局1人しか参加できなかったんだ。」

 席に着くなり申し訳なさそうにそう言った木浦。

「1人?誰ですか?」

 雛実にしてみれば、木浦がいるだけでも十分有難いことだ。その上、まだ他にも来てくれる人もいるとは。

「高垣さんだよ。知ってるよね?婦人服売場の主任の。」

「ええっ!?高垣さん?ええっ!?」

 てっきり同期の子だと思っていたのに、主任クラスの人間が来るなど全く予想していなかった……!

「フッ、すごくびっくりしてるね。高垣さん、苦手だった?」

(苦手どころか怖いですよ!
 あの人と飲みたい女子社員なんていないですよ!)

 ……と、声を大にして言いたい。
 が、今は緊急事態である。1人でも多い方が何かと助かるはずである。

(もしかしたら細川さんのいい話し相手になるかも……!)

 そう考えを切り替えることができた雛実は、

「いえいえ、楽しくなりそうですね。」

と、木浦の目を見ながら答えた。

 そんな雛実を見ながら、木浦もまた懐かしい感覚を覚え始めていた。
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