愛しい人は誰のもの?

koyumi

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第8話

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 愛しい人は、俺のことが好き?
 
 まさかの展開に、ジワジワ川嶋さんの言葉を脳内で反復させる。
 彼女いますか?から始まり、『好き』で終わる文章から読み取れるものは何か?
 いや、今、猛烈に真っ赤な顔して俺を潤み目で見つめている彼女に、”嘘”なんて感じるわけがない。


「ま、マジ?マジで町島なのっ?なんで?なんで?」

 グンと半身乗り出して、まず最初に口を開いたのは逢沢だった。

 おいっ、待てよ!
 それは俺のセリフだし、俺以上に驚くんじゃない!

「逢沢さん、そこは町島が聞くところだよ。俺達はお邪魔虫なんだ。ほら、もうこうなったら退散だ。行こ行こ。」
「や、で、でも、ま、町島!大丈夫か!?

「…………」
「ほら、俺達がいると何も始まらない。他人の告白より、自分のことを心配しろ。こっちに来い。」

 中川講師は逢沢の手をガシッと掴み、引っ張るようにして店を出た。
 その行為には驚いたが、今は目の前の自分の状況をどうにかしなくてはならない。

 信じていいのか?
 あの川嶋さんが、今、俺を好きだと言っていることを……。

「……あ、あの……町島さんが、助けてくれて、私、本当に嬉しかったんです。本当にドジで、えと、なんか抜けてるみたいで……頼り、ないんですけど……」

「い、いや……それは、なんていうか……ごめん……こんなんで……」

「や、違っ、あぁー、私、やっぱり無理!告白なんて、できないっ!」

「え?ど、どういう……意味?」

「町島さん!私たちも行きましょう!」

「行く?」

 なぜか話が合っていないと思いながら、川嶋さんはバッグを手に、中川講師が逢沢にしたように俺の手をガシッと掴み、席を立った。

「ここじゃ、無理なんで、いくらなんでも無理なんで」

 川嶋さんはそんなことを呟きながら歩き、店を出ようとした。

「あ、待って、勘定……」

「大丈夫です。飲み放題にして、中川が立て替えてくれてるから。」

「あ、そ、う……」

 始めて一緒に飲んだのに、勘定は他の男が立て替えているという微妙な状況に、俺は閉口してしまった。

 だが、この先待ち受ける場面は、こんな微妙な状況などお茶の子さいさいの出来事だったんだと、後から必死に思った。


☆☆☆☆☆☆☆



 通りに出ると、川嶋さんはタクシーを呼び、俺を押し込むように乗せた。
 ルームミラー越しに運転手にニヤつかれ、俺はムッとした。
 だが、その様子に気付いた川嶋さんは、「ごめんなさい、でも」と呟いて、運転手に行き先を告げた。

「東3丁目の◯△マートの前で下ろしてください。」

(ん?コンビニに何か用か?しかも東3丁目って、結構遠いな……)

 車内でも川嶋さんは俺の手を離さなかった。
 緊張で、尋常じゃないくらい汗ばんでいるのがわかり、俺はそっと離れようとした。だが、
「もう離しませんから」
と言われ、余計に腕を絡ませられた。
 逢沢にも何度かされたことはあるが、全く比べ物にならない。相手は川嶋さんだ。
 肘の辺りに彼女の膨らみを感じ、それを意識しないようにすればするほど下半身が疼いてしまう。
 こんな所で反応してしまうのは心外だ。

 きっと今、斜め左に視線を落とせば、川嶋さんの空いたデコルテから谷間が見えることも想像できたが、それをやってしまうと、間違いなく昂ぶること確定なので、ずっと窓の外を見るようにした。
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