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後日談

俺の婚約生活(後) ※

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キース視点です。

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『今までありがとうございました』

 学園から呼び戻された俺が見たのは、千切れたチェーンと指輪と共に、一枚のカード。

 身体から体温が削げ落ちた。



 侍女がほんの少し目を離した隙に、彼は部屋を出てしまった。門番は「寮に荷物を取りに行く」と聞いて、通してしまったらしい。門番の言う通り、彼が学園に向かったのなら、行き違いだったことになる。ヴィンスと共に翔んで帰ったのが仇になったのか。

 幸いなことに、寮では事務員が気を利かせて、彼を足止めしていてくれた。心臓が異様な速さで鼓動を打っている。談話室の引き戸を開くと、そこには三体のロームを抱え、やつれて小さくなった彼がいた。

 俺は冷静さを欠き、正気を失っていたと思う。だが、彼を見た瞬間、完全に狂気と入れ替わった。

「…ジャスパー」

 可哀想に。こんなに怯えて。俺に捕まらなければ、こんな目に遭わなかったのに。だから俺から逃げたかった?俺を置いて。赦さない。早く連れて帰って、誰にも見つからないようにしなければ。可愛い。愛してる。ずっと君を閉じ込めて、ずっと幸せにしてあげるからね。

「来るんだ」

 俺は乱暴に彼の手を掴むと、そのまま侯爵家の馬車に押し込んだ。彼はカタカタと震えながら、「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返していたが、彼は俺が何に対して憤っているのは理解していないだろう。絶対に許さない。



 例の部屋に連れ込み、後ろ手で内鍵を掛ける。

「ごめんなさ」

 それを繰り返すばかりの彼の唇を、強引に塞ぐ。捕まえた。もうここから絶対に逃さない。

 彼をさっさとベッドに運び、噛み付くように口付ける。ずっとロームに威嚇されてお預けだったが、もう躊躇しない。最初は弱々しく抵抗していた彼も、次第に従順になり、大人しくされるがままになる。二日も寝込んでいたせいか、思ったより消耗したせいか。やがて彼は、俺に身体を預けたまま気を失った。

 それから俺は、片時も彼から離れなかった。彼が目覚めるたびに水と食事を与え、それ以外はずっとキス。辛うじて、排泄と入浴だけは一人で行うことを許した。ロームは三体とも枕元にいて、俺の目の前ではふるりとも震えなかった。しかし彼がその気になれば、俺にでも龍神にでも擬態して、俺を容易に排除するだろう。容認とまでは行かないが、渋々許可している感じだろうか。

「ふ…ッ」

 時折涙を流して震える彼を、ひたすら腕に閉じ込めて、唇を塞ぐ。何も心配しなくていい。もう君を離さない。可愛いジャスパー。俺がずっとここにいて、君を守るから。

 俺が離れに籠もっていると知った母上からは、「任せよ」と一言伝言があった。父上からは、「用意しておく」と。何を、などと聞かなくても分かる。彼は、ケラハーの男である俺の心の内を、正確に理解している。



 契機が訪れたのは、その夜。

「あのっ…僕、もう大丈夫ですから…」

 腕の中で弱々しく涙を流すだけだった彼が、意を決したように俺を押し退けて、言った。

「大丈夫?何が?」

 ああ、いけないな。彼と俺との間には、まだ認識に齟齬があるようだ。誤解は正さなければ。しかし、彼がしっかり意思表示が出来るほど回復したのは良かった。ならばこれから、しっかりと「語り合えば」済むことだ。

 俺は彼のパジャマに手を掛けた。ロームがすかさず後孔に滑り込む。彼もこの行為に同意したということだ。瞬く間に準備を終えたロームに導かれ、俺は背後から一気に貫く。

「君はまだ、自分の状況を、正しく理解していないね?」

「ひぁッ!!あ”あッ!!ご!!ごべ!!な”ッ!!」

 パンパンパンパン。

 しばらく交わりを断っていた身体は、処女のように固い。だがそれに構わず俺の想いを打ちつけていると、彼の肉体はそれに応え、淫らにうねり、たちまち昇り詰める。

「ヒああああ!!!」

 人は簡単に嘘をつく。君はいつも「大丈夫」と言って、俺を遠ざける。だけど身体は正直だ。俺たちには「コミュニケーション」が足りない。快楽に弱いザコマンコで絶頂を繰り返し、過ぎた快楽から逃れようとする彼を捕まえて、尚も肉体言語を叩き込む。俺が、どれだけ、君を、愛しているか。

 ———身をもって思い知れ!

「あァ!!ああ!!ああ!!あ”ああ!!」

 愛情を込めてドスドスと突き上げ、エロエロマンコに全てを捧げ尽くす。彼の体力と魔力はほどなく尽き、俺の下で動かなくなった。



 彼が休んでいる間に、早速俺はかせと鎖を用意した。用意した、というと語弊があるかもしれない。元々この部屋に備え付けられていたものだ。

 ここは、表向きは「要人をかくまうための部屋」とされる。しかし実際は、「伴侶パートナー理解わかり合うための部屋」だ。およそ百年前、時の当主によって作られたと言われている。幸い、父と兄は使う機会はなかったが、最も最近では、大叔父が伴侶と長らく滞在したらしい。二年もの蜜月を過ごした彼らは、未だに領地の隅の保養地で、仲睦まじく暮らしている。母上は「おぞましい」と嫌悪しているが、未だ恋愛小説を嗜み、恋に恋する彼女こそ、この素晴らしさを理解しても良さそうなものだ。なお、同様の部屋は本邸にも存在する。当然領都の本邸と別邸にもだ。しかしとりわけ、この離れはこの部屋のために作られたもので、堅牢さで言えば、他の追随を許さない。

 彼のほっそりと引き締まった手首と足首に、カチャリと愛の鍵を掛ける。鈍く光るそれらと、それにつながる鎖が、これから彼のまとう全てだ。ああ、鎖に繋がれて生贄にされた伝承の乙女。君は彼女を超えて、遥かに美しい。俺の花嫁。さあ、存分に愛し合おう。

「ごっ、ごめんなさっ、あああ!!」

 目覚めたばかりの彼に、ごりゅっ、と欲望を捩じ込む。

「許さないって言っただろ?」

 彼は未だに、何が悪いのか分かっていない。ただ闇雲に許しを乞うて、「大丈夫」だなどと嘘をつき、俺からこそこそと逃げ回ろうとする。秀逸な頭脳を誇りながら、何故俺の愛だけは理解しようとしないのだろうか。

 幸いなことに、ロームも俺の肉体言語を後押ししてくれた。1アンはジャスパーの中に常駐して、排泄物の浄化、粘液での発情を促し、いつでもブチ込めるようにアナルを整えてくれる。2ドゥも同様、彼はペニスに張り付いて、快楽を与えながら精を搾り取る。もちろん小水をも取り込んで、不浄に行くことすら不要とする。3トロワは胸に張り付き、常に乳首を刺激して、そこから魔力を吸収している。

 結婚後、俺が夢見ていたプレイが、ここにある。

 雄膣を激しく犯しながら、同時にメスチンポを強烈に吸い上げ、乳首を揉みしだき。俺の下で、狂ったように泣き叫ぶジャスパーが、可愛くてたまらない。

「僕から逃げようなんて、悪い子だね、ジャスパー。しっかりお仕置きしないとな…」

 そして遂に、俺はお仕置きの名目で、彼の奥の奥を、ゴリリと拓く。

「いギあァァ!!!!!」

 叫んで跳ねる彼を押さえ付けて、俺のちんぽの味を、しっかりと焼き付ける。彼を模したロームには、散々捩じ込んで可愛がったそこ。やっとだ。さあ、雄子宮で強制限界アクメを決めて、孕むまで子種ゴックンするんだぞ。

 彼の絶叫が心地よく鼓膜をくすぐる中、俺はゴリゴリと子宮口の感触を楽しみ、ぎゅんぎゅん締め付ける痙攣マンコに、余すところなく愛を注いだ。



 しばらくすると、父上から呼び出しが来た。俺とジャスパーの現状を知っている家人は、基本そこに水を差すような愚かな真似はしない。わざわざ呼び出すということは、とうとう出来たのだ。

「お前なら、いつか使うと思っていた」

 彼はなんとも言えない表情で、それを手渡した。他人事みたいに言うが、母上がもし、勝負に負けたことで潔く輿入れを決めなければ、彼もきっとあの部屋を使っていたことだろう。まあ、そんな些細なことはどうでもいい。

「さあ、やっと出来たよ、ジャスパー」

 早速ジャスパーの元に戻ると、彼は目を覚ましていた。俺は満面の笑みで、彼の前で小箱を開く。頑丈なミスリルのチョーカー。彼の首にカチリと嵌めれば、胸元で俺の瞳の色が輝く。

「うん、似合ってる。これで君は、誰から見ても僕のものだ」

「キース、様?」

 チョーカーに付いたループに鎖を繋ぎ、鎖はベッドの支柱に。

「…逃さないよ、ジャスパー。僕を捨てるなんて、絶対に許さない」

「捨て…違っ、そんな」

 彼の反論は、唇で塞いだ。彼がどんなつもりだろうが、俺の元から離れるなど、絶対に許さない。君はこうして、俺を受け入れて、可愛く啼いていればいいんだ。君の世話は俺がするし、何者からも俺が守る。誰にも見せず、誰にも会わせず、ただ俺だけを見て、俺だけを感じて。

 さあ、今日もいっぱい気持ちよくしてあげようね。いっぱいズコズコハメハメして、ブチ犯してあげるからね。そら、イけ。イき狂え。

「へあぁッ!!き”ーしゅ様”ッ!!ギ…あっガ…!!!」

 ぐちゃぐちゃのイき顔を晒して、びっくんびっくんしている。可愛い俺の伴侶パートナー。さあ、君がしっかり俺の愛を理解するまで、たっぷり愛し合おう。



 しかし、俺の蜜月は唐突に終わりを迎えた。母上から「終わったぞ」という知らせを受け、俺たちはまた、学園生活に戻ることになった。

 馬鹿な伯爵令嬢の起こした騒ぎは、一転大規模な粛清で幕を下ろした。いかに彼女が浅慮せんりょとはいえ、一介の女学生が侯爵家の婚約者に無礼を働くなど、通常はあり得ないことだ。案の定、彼女をそそのかしたのは父たる伯爵で、その背後には派閥の長たる侯爵がいた。

 この国は、いくつかの国と国境を接している。そのうちいくつかは友好国、そして残りは敵対国だ。その敵対国の一つが西北の聖教国で、北の王国、つまり母の母国と同盟して、侵略を防衛している。

 聖教国は、西の侯爵に接触を図った。もし聖教国に恭順すれば、西北の辺境伯領と併せて独立国家と認め、同盟を組もうと。普通に考えれば、そんな絵空事が罷り通るはずがない。だが残念なことに、貴族は優秀な者ばかりではない。当主が倒れ、愚鈍な後継が据えられた侯爵家は、その話にまんまと乗ってしまった。

 結果、寄り子の子女の一部は、間接的に聖教国の手先となって、ジャスパーを攻撃したわけだ。もし俺の婚約者の座を射止めれば、国の軍事力の中枢に食い込むことができる。そうでなくとも、彼は西北の辺境伯の配下の子息だ。ケラハーと、母の祖国たる北の王国との間に溝が出来れば、万々歳なわけだ。そもそもジャスパーが男性とあって、彼女らには勝算があったのだろう。子を成さない男が俺の寵愛を受け続けるはずがない、況してや義母の肩入れなど。

 しかし彼らの誤算は、俺がジャスパーに妄執とも言える偏愛を抱いていたこと。母上がジャスパーに対して、熱愛と言っても良いほど傾倒していること。そしてその母上を、祖国の祖父王は未だに溺愛していることだ。

 今回の件は、早い段階から、ケラハーのみならず北の王国が総力を挙げて諜報に動いていた。結果、俺が学園で証拠を整理する頃には、ほとんど断罪の用意が終わっていた。結果、侯爵家と伯爵家はお取り潰し。所領は小さく分割され、傍系に下げ渡された。直接問題に関わった当主や令嬢は、それぞれ極寒の地で強制労働。実質死罪に等しい。その他、命令に背けず手下となっていた子女も、累を恐れてそれぞれの家で婚約破棄の上修道院へ。国家転覆自体は未遂に終わったため、このような結果に終わった。

 もっとも、侯爵家の盆暗当主や、その話に乗った伯爵、その令嬢について、分家や家臣は散々苦汁を舐めていたため、彼らが追放されて派閥が解体されたことを、多くの者が喜んだという。この手の分断工作は、聖教国のみならず、どこでもやっていることだ。多分我が国や北の王国とて、敵対国で同じようなことをしているだろう。実質大団円で終わったことは、幸運だったと言える。

 もちろん、ジャスパーが受けた苦痛や痛みを許すことはないが。彼らを強制労働にしたのは、死罪より辛い苦しみを味わせるためだ。あの時捉えた破落戸ごろつき共々、重犯罪者に揉まれて、精々役立つがいい。



 ともあれ、俺にとっては全てが好ましい方向へ動いた。

 ジャスパーとは、寮ではなく離れの二階で新婚生活がスタートした。

 彼の首には、俺の瞳の色を湛えたチョーカーが光っている。タイと干渉するという理由で、襟元のボタンはいくつか外させてある。これで彼が誰のものかは、一目瞭然だ。

 このチョーカーは、ケラハー家の家宝だ。代々、石を入れ替えては、パートナーの首元を飾る。位置特定機能や追跡機能も付いている魔道具で、装着した者が魔力を通さないと外れない。当然、これ一つで王都の一等地に屋敷が買えるほどの逸品だ。慎ましいジャスパーが、これを身に付けたまま持ち逃げするわけがない。

「君は僕の婚約者だ。君にこそ相応しいだろう?」

 しきりに恐縮するジャスパーに、俺はそっと囁く。

「ジャスパー。君は僕のものだ」

 彼は観念したかのように、瞳を閉じて、俺のキスを受け入れる。

 彼は、自分自身が俺に釣り合っていない、相応しくないと思っている。そして時折、何らかのきっかけでいたく傷ついては、時に泣き濡れて、俺から身を退こうとする。

 そんな彼を見て、俺は無上の愉悦を感じる。初めて俺に抱かれて、翌朝俺から逃げるために、乗合馬車の場所を尋ねたと知った時、俺はこれ以上ないほど興奮した。そして今回も。「君は穢れてなんていない」という俺の言葉を、慰めだと勘違いして、覚悟を決めたようにその身を差し出す。

「キース様…お慕いしています」

 俺はそんな健気な彼を、思い切り可愛がる。貞淑な彼は、昼間は学園で、俺の色の首輪を付けて。夜にはロームと共に嬲られて、雄子宮をブチ抜かれて絶叫して泣き叫ぶ。結婚したらいつかやりたいと思っていたことが、意図せず俺の手の内に転がり込んで来た。

「あ”ッ!♡ あ”んッ!♡ キーす”ッ、様”ァ!♡♡」

 今夜は首輪にリードを付けて。ああ、興奮する。俺の妻、可愛いジャスパー。



 こうして俺は、残り少ない学園生活と婚約生活を、幸せ一杯に満喫した。

 なお、結婚までには幾度か、他国から縁談の横槍が入ったり、ジャスパーに熱烈な引き抜きがあったりして、その度に「理解わかり合うための部屋」を使うことになったのだが、それはまた別の話だ。
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