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14,ホテル

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 ホテルで受付を済ませると、僕らは指定された部屋に入って荷物を床に置く。
 僕らの身分については特に何も言われなかった。
 高校二年でそれなりに大人びた雰囲気にお互い近づいていたからだろう。面倒なことを訊かれることも無く、利用することが出来た。

「……本当に入っちゃったね」

 白石さんは室内をきょろきょろと見渡しながら言う。

「僕も本当に入れるとは思っていなかった」
「えぇ……? 冗談のつもりで誘ったの?」
「いや、そうじゃなくて……」
「大丈夫。分かってるから」

 白石さんはくいくいと手を動かして、僕をベッドへと誘う。
 僕は彼女と一緒に寝台へと歩く。ベッドの縁に白石さんは腰掛けたので、僕も傍に腰を下ろした。
 僕らは正面の空間を見つめて、動くタイミングを見計らっていた。
 先に口を開いたのは、白石さんだった。

「……何か緊張するね」
「無理言ってごめん。嫌ならやらなくても大丈夫」
「お金払ってるんだよ? やらなくちゃ駄目でしょ」
「それもそうだよな……」

 誘っておいていざ始めようとすると尻込みしている自分に心の中で苦笑する。

「……ねえ、倉部くんさ。私がいなくなったら、他の彼女作るの?」
「……どうだろうな」

 少し考えたけど、白石さん以上に僕と結びつける人が現れると思えなかった。
 というか、僕なんかに他に彼女が出来るのか?

「……高校の内は作らないと思う。まあ、作れる自信が無いんだけど」
「私も作らないかな。というか、女子高に移るから男子と交流する機会がほぼ無くなるんだけど」
「お互い予定は無し……か」

 僕は白石さんの運命の相手ではないと思う。
 僕にとっては彼女は身体だけじゃなくて心でも繋がれると感じる相手だけど、白石さんがどう思っているのかは分からない。
 彼女の容姿と学力なら、もっといい男と出会えるだろう。

「倉部くん。あのさ」
「ん? 何?」

 白石さんは僕の顔を見てきた。
 落ち着いているけど、けれども熱も帯びた眼差し。
 僕も視線を返す。

「……これからお互い、別々の異性と出会うことになるかもしれない。その人と肉体関係を持つことになるかもしれない。十年後、二十年後に『今』を思い出して、『あの時は馬鹿なことしたな』って思うかもしれない」
「たぶん、そうなんだろうな」
「だからさ。私に全部教えて。これから出会うことになるかもしれない人よりも、誰よりも思い出に残る、上手な触れ合いをして欲しい。私も、あなたが出会うことになるかもしれない誰かよりも上手にやるから」
「分かった。『特別な人』だからな。白石さんは」
「私にとっても、君は『特別な人』なんだからね」

 僕らは微笑みあう。
 彼女の頬は、赤くなっていた。たぶん、僕もそうなのだろう。
 静かに見つめ合う僕ら。やがて彼女の方が、ベッドにゆっくりと背中から倒れこむ。
 胸元がはだけた浴衣が官能的。
 ゴムはご丁寧に枕元に置かれていたので、それに手を伸ばし、いつでも付けられるように傍に持ってくる。

「来て」

 白石さんが誘う。
 僕はその横に寝そべって、シャープな身体をぎゅっと抱きしめる。
 少し動けばぶつかりそうなほど至近距離に、彼女の顔があった。
 探るように指と指を絡ませて、軽く力をこめる。

「なんかさ。いいよね。こういうの」
「僕もだ。なんか恋人って感じがする」

 彼女の口が僕の口を塞ぐ。
 全身を密着させて、互いを求め合う。控えめだけどいやらしい水音が、部屋に響いた。
 やがて白石さんの側から口付けを解く。
 その頬は、薄らと赤く染まっている。たぶん、僕も同じだった。

「脱がせて。倉部くん」

 彼女の要求に、僕は頷いて答える。
 腕を腰付近に回し、帯紐を緩めて解く。
 続いて彼女の胸元に手を伸ばすと、僕はゆっくりと開いて彼女の内側を暴いていく。
 白石さんの下着が露になる。彼女の下着は飾り気の無いシンプルなデザインで、白を基調とした色をしていた。
 視線を落として下半身を見る。ショーツの股間の部分には、恥ずかしい染みが浮かんでいた。

「もう濡れてるみたいだけど」
「う、うるさいっ。……こんな状況じゃ仕方ないでしょっ」
「もう本番する?」
「……楽しませてからにして」

 彼女が何を言いたいのか理解した僕は、股を開かせて右手を下着の中に潜り込ませる。
 湿った秘裂を優しく撫でてやると、白石さんは甘い声を出す。
 熱い吐息が僕の顔にかかる。蕩けた表情を僕に向け、期待したような視線を送ってきた。
 花の芽のようなクリを指の腹で転がす。
 丹念に弄ってやると、たまらず彼女は声を出す。

「あっ♡んっ……んぁっ……♡そ、そこ駄目だって♡ずるいからっ♡」
「結構ベトベトになってる」
「教えなくていいからっ♡あっ、それ、その触り方卑怯だよっ♡」
「手加減は出来ない」
「倉部くんっ♡ホント意地悪だよね……っ♡」

 遠慮しようと思ったけど、僕も結構興奮していたので、彼女の膣内に自分の指を入れる。
 ぬめぬめとした粘膜が絡みついてきて、熱したとろみが心地良い。
 内側を擦るたび、彼女の余裕が無くなっていくのが分かった。
 嫌、嫌と言うけどその手は僕の腕をぎゅっと掴んでいて、思っていることと行動が一致していない。
 爪の先で軽く膣肉を引っかいてやると、その瞬間彼女は決壊した。

「ああああああっ……♡はぁぁぁぁっ♡んんんっ♡」

 びくっ、びくっと白石さんの身体が震えるのが伝わってくる。
 身体を丸めて、快楽の渦にぎゅっと耐える彼女が愛おしくて、左腕で僕の方に軽く引き寄せる。
 額と額が触れ合う。密着した胸から彼女の鼓動が、どくん、どくんと伝わってきた。
 熱い鼓動。

「はぁー……っ♡あー……♡」

 惚けている彼女をよそに、僕はもぞもぞと服を脱いで準備する。ゴムも手元に置いておく。
 脱ぎ終わった頃には彼女はある程度落ち着きを取り戻していて、天井を見つめていた。

「倉部くんさ。もしも私が裏アカウント作ってなかったら、私たちはどんな関係だったかな」
「……ただのクラスメイトの一人だったと思うよ。こんな関係にはなってないと思う」
「うん。だよね。……あれのお陰で大切な人だなって思える人が出来たからさ。ああいう愚かなことしたのも、悪くなかったのかな……って思った」
「じゃあ、目いっぱい楽しませるから。舌出して」
「いいよ。……んっ……♡ちゅ、くちゅ、ちゅっ……♡」

 舌を絡ませ、唾液を交換し、愛を確かめる。
 彼女を抱きしめたままベッドの上で寝返りを打つように転がって、押し倒した体位に僕はなった。

「来て……」

 白石さんが、僕に求める。
 股布をずらすと、そこには蜜で湿った彼女の恥ずかしい部分があり、男を受け入れるために待っている。
 愛液に塗れたその部位に、僕は自分の性器を突き入れた。
 ヒクヒクと疼く膣内を押しのけて、一気に最奥まで辿り着く。

「ひゃぁっ♡駄目だってっ♡いきなりすぎるって……♡や、やめっ、またキスするの?♡」

 貪るように、白石さんの唇を奪う。
 上も下も繋がって、彼女の言葉を遮るようにキスをする。
 腰を夢中で振って、肉の洞窟を揺さぶる。
「むぐぐぐぐっ……♡ぷはぁっ。息できないよっ♡」
「ごめん。興奮しすぎた」

 謝りつつも、僕はピストンを続ける。
 ずちゅ、ずちゅ、と幾度も彼女の中に押し付けられていく。

「駄目だって♡そこぐりぐり押し付けるの反則っ♡」
「止めた方がいい?」
「違うからぁ……♡」

 湿った歓喜の声を白石さんは漏らす。肉欲に溺れた可憐な音色が、僕の劣情をより一層激しく煽る。
 深奥付近は洋ナシのように括れていて、それが雁首をきゅっと締め付ける形をしていて、僕の精を搾り取ろうとしているかのようだった。
 起伏に富んだ穴に肉棒を押し付けていき、その度に粘っこい、生々しい音が響く。
 突端は愛液を潤滑油として、より深くへと誘われるかのようだった。
 彼女との交流が始まった切っ掛けは、偶然だった。
 偶然彼女の裏アカウントを発見したから、偶然それが白石さんのものだと判別できたから。偶然彼女と僕は気があったから。
 偶然。偶然。偶然。
 けど、幾度も続けばそれは運命になる。
 白石さんと交流が生まれたのは、運命だった気がした。運命の人ではないのかもしれないけど、それでも彼女は何億という選択肢と瞬間から勝ち取ってきた大切な人で、手放したくなくて、かけがえが無くて。
 そう思った時には、僕は口を開いていた。

「ねえ。言いたいことがある」
「え、何?」
「白石さんが目指す大学に行くよ」
「へぇ!?」

 蕩けていた彼女の顔が、一瞬で素に戻る。
 畳み掛けるように、僕は続きを口にする。

「今以上に勉強してさ。白石さんと同じ大学に行く。それなら、一緒に会えるでしょ」
「……うん。そうしてもいいよ」
「あれ、いいの?」
「いいけどっ。いいけど何で今言うのっ? 嬉しいよっ? でもこんなことしてる最中に卑怯だよっ」
「何が卑怯なの?」
「……もう未練残さないつもりだったのに、それは駄目だって……」

 ピストンを止めた僕の肉棒に、彼女の膣内がきゅんきゅんと疼いている感覚が伝わってきた。

「ごめん。白石さんの顔見てたら、どうしても伝えたい気持ちになった」
「女の子追いかけるために進路決めるなんて、馬鹿だね。君は」

 白石さんはそう言って微笑む。彼女の左手が、僕の頬に優しく触れた。

「勉強するから。白石さんに、追いつくから」
「私の志望校、難しいけど大丈夫?」
「……大丈夫」
「不安だなぁ。ま、受かったらお祝いしてあげる。……ああ、私も同時期に受験するわけだから、私も祝ってもらわないと」
「ならこれが前祝ってことで」
「ちょ、やめっ♡」

 繋がったままだったペニスの抽送を再開する。
 彼女に覆いかぶさって、ぎゅっと抱きしめながら腰を打ち付ける。
 彼女の官能を花開かせるように。自分だけじゃなく、白石さんも愉しめるように優しくピストンを加える。

「倉部くんっ♡そこ駄目だってっ♡」
「ここが弱いんだ。もっと刺激してみるか」
「あ、いやっ♡違うっ♡」

 彼女は切なげな声を上げ、自分の腰をぐりぐりと僕に押し付けてくる。
 冷静さを僕は装っているけど、彼女と別れる寂しさやら、この美少女に対しての愛おしさといった感情に心が溢れそうになっていた。

「好きっ♡んっ、んぁっ♡倉部くんっ♡好きだよっ♡」
「僕も好きだ。愛してる」

 柄にも無いことを言う。
 恋人とセフレの間のような関係。心も愛してるけど、彼女の体も愛している。
 それは本心だ。
 きっとそれは不健全なのだろう。非難する人もいると思う。
 けどお互いそれを望んでいて、求め合って、性的な情熱を向け合っている。
 そう意識すると、当分この子には出会えないんだなという考えも強くなる。
 だから彼女の中に、己が存在を繰り込みたくなる。
 だから僕は、ちょっと耳元で囁いた。悪戯心で。

「ねえ。今ゴム付けてると思う?」
「……ええっ? え、へ、どう言うこと? ちょっと待って♡止めてって♡待ってよっ♡さっき付けてなかったっけ♡あれっ?」
「本当に見てた? 自信ある?」
「え、あ、えっ? 生ってことっ? んっ♡ちょ、ちょっとタンマっ♡気持ちよくなっちゃうからっ♡」

 僕から逃げようとする彼女をぎゅっと掴んで逃さない。
 彼女の小さな手が、僕の背中をパンパン叩いて抗議する。
 白石さんの膣内は、彼女の意思に反してきゅんと僕のことを締め付けてきた。
 男との交尾の行く末を期待するかのように。
 僕はそんな彼女の子宮口付近を、切っ先でとんとんと刺激する。奥に行くほど窄まる膣内が、精を絞り取ろうとするかのように咥えこむ。

「そこっ、ずるいって♡奥突かないでよっ♡駄目だってっ♡抜いてよっ♡倉部くんの赤ちゃん出来ちゃうからっ♡」
「欲しくない? 出来るか試してみようか」
「ホントに駄目だからっ♡今そんなこと言われても困るからっ♡赤ちゃん欲しくなっちゃうからっ♡あっ♡」

 僕は唇で彼女の言葉を塞ぐ。
 舌を入れて彼女の小さな舌に絡ませる。
 涎を交換し合って、口の中を蹂躙して、僕という存在の痕跡を刻みつけるように。
 彼女の身体ごと、闇と甘い幸せに沈み込ませていくような意識で僕はキスをした。
 口付けを解くと、彼女はもう抵抗してこなかった。

「いじわる……っ♡」

 僕の根元から、彼女のぬかるみの穴が僕の精を搾り取った。
 亀頭が大きく膨らんだかと思うと、僕のペニスが精液を迸らせる。
 びくびくっと脈打つたびに、性器がじわりと熱くなる。
 熱が快楽の波に変わり、白石さんの身体はオルガスムスに向けて一気に駆け上がった。

「ああああっ♡やぁああああっ♡」

 射精が終わった時、僕らの身体は汗や涎でベトベトだった。
 白石さんは力無くぐったりとした様子で、快楽の余韻に浸っている。
 僕は挿入を解くと、彼女にある物を見せる。
 精液を収めて膨らんだゴム。
 ぼぅっとしていた彼女の目の焦点が合ってきて、ようやく僕にからかわれていたことに気がついた様子だった。

「ちょっ、倉部くん! 私本気で覚悟決めたんだよ!」
「ごめん。悪戯心で……ってホントにごめんっ。グーで叩かないでっ」

 胸の辺りをそこそこ強めの力で殴られた。
 正直なところ、本当に彼女の中に何もかもをぶちまけたい気持ちはあった。
 彼女の中に、自分の欠片を残したい気持ちはあった。
 でも僕らは誰かの人生を強制的に始めさせるにはあまりにも幼くて、責任だって取れなくて、お互いの人生を棒に振るんだろうなという当然の予測が、そんな欲望を諌めた。

「ホント倉部くんって意地悪だよね。まあ、本当に中出し決めなかっただけ優しい? ……いや、やっぱり酷い人だよね。うん」
「いや、反省してる。もう二度とこういうことはしないから」
「また私とセックスするつもりなんだ」
「ごめん。指導対象です。僕は」
「うん。自覚あるならよろしい。罰は何がいいかなぁ……そうだ」

 いいことを思いついた表情をした後、彼女は先を続ける。

「必ず、私の志望校に合格すること。現役じゃないと駄目だからね?」
「うん……頑張る」
「罰じゃない……って突っ込みは?」
「あ、そうだね」
「ま、私を追いかけてくるなら相応の勉強しなくちゃ駄目だから。私の志望校って言ったっけ」
「ええと……知らないな」
「知らないのに来るつもりだったの? 先が思いやられるなぁ……私が目指している大学はね……」

 彼女はその大学名を口にする。
 かなり名の知れた難関大学だった。多くの著名人を輩出している名門。

「大丈夫? 来れる? 本当に難しいけど」
「……頑張る」
「まあでも、もしも妊娠しちゃったら二人とも人生設計が台無しになっちゃうけどね。ゴム付けてても避妊率は百パーセントじゃないんだからね?」
「う……そうだよね」
「倉部くんの、凄く濃いんだから、もしかしたら本当にデキちゃうかもね」
「ええと……その……」
「デキちゃったら、幸せにしてね? 私も、赤ちゃんも」
「あー……うん。絶対幸せにします」
「それが軽く言える歳になったら、赤ちゃん作ろうよ」
「え。今なんて」
「……っ、いやっ。今のは、その……言葉のあや……だから」

 慌てふためいた様子で、頬を赤く染める白石さん。
 僕の顔から視線を逸らして、口を軽く開けて焦っていた。

「まずは第一歩の受験から始めるよ。そこから幸せになっていこう」
「そ、そうよ! 受験頑張りなさいっ!」
「白石さん、めっちゃ必死だなって思う」
「うるさいっ。お風呂で汗流したら帰るよっ」
「そうだね。性臭付けて電車乗りたくないしね」

 僕らはお互い何も着ていなかったことを思い出すと、二人で照れくさそうに笑うのだった。
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