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僕の奥さん
オールアップ
しおりを挟むやりきった、遂に私は走り抜いたのだ。やった、やったわ。
婚儀オールアップです!
義両親からのお祝い兼ご褒美はロンダール城での一週間の休暇で私達は今馬車の中だ。
衰弱して送られた時は毛布にくるまっていたからカーテン閉め切りで、本城に戻る時もリードの瞳のせいでカーテン閉め切りだったけど、今度は景色も楽しめるかなと思ったらまたカーテンを閉められた。そして私と並んでいたリリアはリードに代わり、今リリアはリードが座っていたアルブレヒト様の隣にいます。
さて、何故でしょう?
リリアさん、デボラさんと私を愛でる者同士何か感じるものがあったらしく意気投合したのだ。
夜会の後二人は女子会を開き大いに盛り上がったらしい。イイなぁ、私もそっちに行きたかったよ。私なんてくったくただっていうのにジークフリード王太子(血気盛んな二十歳)にとっ捕まって寝室に強制レンコ…………
いや、以外省略。
それは置いておいて、リリアの切ない胸中を知った婚約中で幸せの真っ只中、脳内お花畑的なデボラさん。酔った勢いでこのまま終わらせていいの?ってリリアに詰め寄ったそうだ。
どうやらデボラさん、若干酒癖に問題ありなのかも……
リリアもリリアでここのところ私が振り回しちゃったせいで感情に山あり 谷あり、情緒不安定も良いところ。親身な説得に絆されてアルブレヒト様に突撃!
この短期間に何があったかは存じません。けれどもリリアの恋愛に口出しはしないという方針を撤回し大いに口を出してとっととリリア・ジェローデルになって貰いましょうと企んでたのに、一言も口を挟むことなくアルブレヒト様との婚約が内定したと聞いて私は耳を疑った。
まあ良い、目の前の二人はラブラブだ。
そのせいでカーテンが開けられないんだけどね。
「どうしてハルメサンが一緒なんだ?」
リードが奥歯を噛み締めながら唸っている。
「……だって兄さまが……曰く付きのロンダール城だから魔法陣が残っていないか確認してもらった方が良いって言うのよ」
確かに地雷のように仕掛けられたままにされるってパターンの魔法陣も存在するのだ。
「僕達の新婚旅行なのに……何でこんなものを見せられなきゃならないんだ」
リードはもう何度目かわからないくらい繰り返しているどよんとしたため息をついた。
「で、でもね、向こうで楽しんだら良いわ。木々の緑が濃い今はロンダールのトップシーズンなんですって。森の小道を散歩して湖畔でピクニックはどう?」
「リセのサンドイッチが食べたい。ギュッとして焼いたチーズが溶けてるヤツ」
「ホットサンドね。わかったわ、作ってあげる」
知識があっても実現できない事や物って沢山ある。というか殆どが実現不可能だ。例えば電子レンジが欲しいと思ってもそもそもこの世界には電気がない。それにあんなに手軽に買える電化製品だけど『電子レンジ』の名前が表す通り電子の性質を利用している訳でしょう?素粒子の周りを回ってるあれがどうやってどうなったら物を加熱するのか、的確な説明ができる人なんてそんなに居ないと思うんだけど?
でも単純な仕組みの道具ならどうにかなるものもあって、直火用のホットサンドメーカーはあっという間に作ってもらえた。早速作ったパリッと香ばしいホットサンドはリードの胃袋を鷲掴みにしたらしい。
ピクニックに備えてちゃーんと持って来ましたよ。くふふ。
甘えて膝に頭を預けてきたリードの髪を漉きながら、燕も悪くないなって多分初めて私は思った。
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