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頼りになる彼氏(偽装)
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「それでさあ、元カレを除いた同期のメンバーでまた同期会しよっかって話になって。でもそんなことするとまた色々言ってきそうで面倒なんだよね」
『多分、今はとことん理沙を悪者にする思考になっているだろうから、何をしてもしなくても悪く言ってくるよ。理沙が直接やりあう必要はないけど、一応周囲に根回しだけはしといたほうがいいな』
電話から聞こえる圭司の声にうんうんと頷く。
圭司との電話はもう日課になっていて、今日もお風呂を出てリラックスした状態で電話をしていた。
理沙は電話でだらだら話すのが苦手だと自分で思っていたけれど、圭司と話すのは意外なほど楽しくて長く話していても負担に感じない。幸生のせいでイライラしていたが、こうして圭司に話して聞いてもらえるとすっきりして気持ちが落ち着いた。
『まだ新カレの素性がつかめないから、例の幼馴染ができることと言えば元カレを使って攻撃することだけなんだろ』
「そうだねえ。相手が誰だか分からないと麗奈も動きようがないもんね」
『ごめんな、ちょっとトラブルあって全然時間取れなかったけど、週末は会えるから』
「ありがと、忙しいのにごめんね」
圭司が管理している店舗でトラブルがあったとかで、約束していたが急に会えなくなったことがあった。計画が全然進まず申し訳ないと謝られたが、むしろ忙しい圭司にくだらない役目を引き受けさせてこちらのほうが申し訳ない。
今度は圭司の店ではなく、よく同僚たちが利用しているイタリアンバルに行こうという話になっていた。
金曜の夜であれば誰かしらと出会いそうだから、そこで圭司の情報を流しておくのもいい。
どうやらあれから幸生が理沙の彼氏のことを探っているらしいと同期が忠告してくれたから、もし同僚に会えば必ず情報が彼に回るはずだ。
『じゃあ、金曜日。理沙に会えるのを楽しみにしている』
「あっ、うん。私も……楽しみにしてる」
圭司はまるで本当の恋人のような甘い言葉をさらりと言う。
モテる人は違うな……と理沙は尊敬の念すら覚える。昔から圭司は男女問わずモテていた。その理由は顔がいいだけではない。相手が喜ぶツボを押さえていて、さりげない気遣いが上手いうえに、話をきいてくれるところだと思う。
昔から彼の周りには人が集まっていた。
たくさんの人に求められる圭司の時間を、自分の身勝手な都合で占領していいのだろうか。
お酒の勢いで始まったこの偽装彼氏計画だが、もしも圭司に迷惑がかかるようならさっさと止めるべきだ、とも思う。
でも……。
「そしたら寂しくなるな……」
幸生に振られて麗奈に馬鹿にされてもそれほど落ち込まずにいられたのは、萌絵と、なにより圭司のおかげだった。
偽装彼氏なんてバカバカしい計画に笑って乗ってくれたおかげで笑って過ごせるようになった。もし、この計画を中止して圭司とも会わなくなったらきっと寂しくて落ち込んでしまうだろう。
だから、自分から『止めよう』と言い出せるか自信がなかった。
「それでさあ、元カレを除いた同期のメンバーでまた同期会しよっかって話になって。でもそんなことするとまた色々言ってきそうで面倒なんだよね」
『多分、今はとことん理沙を悪者にする思考になっているだろうから、何をしてもしなくても悪く言ってくるよ。理沙が直接やりあう必要はないけど、一応周囲に根回しだけはしといたほうがいいな』
電話から聞こえる圭司の声にうんうんと頷く。
圭司との電話はもう日課になっていて、今日もお風呂を出てリラックスした状態で電話をしていた。
理沙は電話でだらだら話すのが苦手だと自分で思っていたけれど、圭司と話すのは意外なほど楽しくて長く話していても負担に感じない。幸生のせいでイライラしていたが、こうして圭司に話して聞いてもらえるとすっきりして気持ちが落ち着いた。
『まだ新カレの素性がつかめないから、例の幼馴染ができることと言えば元カレを使って攻撃することだけなんだろ』
「そうだねえ。相手が誰だか分からないと麗奈も動きようがないもんね」
『ごめんな、ちょっとトラブルあって全然時間取れなかったけど、週末は会えるから』
「ありがと、忙しいのにごめんね」
圭司が管理している店舗でトラブルがあったとかで、約束していたが急に会えなくなったことがあった。計画が全然進まず申し訳ないと謝られたが、むしろ忙しい圭司にくだらない役目を引き受けさせてこちらのほうが申し訳ない。
今度は圭司の店ではなく、よく同僚たちが利用しているイタリアンバルに行こうという話になっていた。
金曜の夜であれば誰かしらと出会いそうだから、そこで圭司の情報を流しておくのもいい。
どうやらあれから幸生が理沙の彼氏のことを探っているらしいと同期が忠告してくれたから、もし同僚に会えば必ず情報が彼に回るはずだ。
『じゃあ、金曜日。理沙に会えるのを楽しみにしている』
「あっ、うん。私も……楽しみにしてる」
圭司はまるで本当の恋人のような甘い言葉をさらりと言う。
モテる人は違うな……と理沙は尊敬の念すら覚える。昔から圭司は男女問わずモテていた。その理由は顔がいいだけではない。相手が喜ぶツボを押さえていて、さりげない気遣いが上手いうえに、話をきいてくれるところだと思う。
昔から彼の周りには人が集まっていた。
たくさんの人に求められる圭司の時間を、自分の身勝手な都合で占領していいのだろうか。
お酒の勢いで始まったこの偽装彼氏計画だが、もしも圭司に迷惑がかかるようならさっさと止めるべきだ、とも思う。
でも……。
「そしたら寂しくなるな……」
幸生に振られて麗奈に馬鹿にされてもそれほど落ち込まずにいられたのは、萌絵と、なにより圭司のおかげだった。
偽装彼氏なんてバカバカしい計画に笑って乗ってくれたおかげで笑って過ごせるようになった。もし、この計画を中止して圭司とも会わなくなったらきっと寂しくて落ち込んでしまうだろう。
だから、自分から『止めよう』と言い出せるか自信がなかった。
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