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盗聴器
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久しぶりの更新になってしまいすみません。
更新再開いたします。
完結まで投稿いたしますので、どうぞよろしくお願いします。
――――――――――――――
翌日、萌絵に『付き合うことになりました』と報告のメッセージを送る。
彼女の返信は、『おめでと~圭司がヘタレでなくて良かった』というシンプルな内容で、今度会った時に詳しく話してねとあっさり受け入れてくれた。
本当に何もかも萌絵にはお見通しなのだなとメッセージ画面を見て笑ってしまった。
そしてその土日を使って、理沙は圭司の家に引っ越しを済ませた。
経済的な問題で最後まで悩んでいたが、恋人になったのにこの状況で家を出る意味が分からないと言われ、せめて麗奈の問題が解決するまではここにいてくれと彼のほうから懇願され、その言葉に甘えて同棲を決めた。
引っ越しの手配は圭司が知り合いの業者に頼んでくれて、お任せしたらあっという間に荷物の搬出と搬入、不用品の処分までが済んでしまった。
どうやら特殊な引越し屋さんらしく、ストーカーから逃げる人の引っ越しを請け負っているらしい。
盗聴器の有無を確認し、トラックは途中で入れ替えて追跡をされないように荷物を運搬してくれると聞かされ感心すると同時に、世の中にはこういう業者を必要とする人がたくさんいるのだなと知って複雑な気持ちになる。
聞くところによると、ストーカーや厄介な親族から逃げるためにこういう引越し方法を希望する人が近年増加していて、今かなり需要があって従業員を増やしても追い付かないくらい相談が来ているらしい。
理沙としては、自分の引っ越しにそこまでしなくても……とは思ったが、個人でやっている業者だからか料金が大手のものとそう変わらなかったため、お願いすることにした。
「でも私の引っ越しで盗聴器のチェックはさすがにやりすぎじゃない?」
「いや、理沙に対してじゃなくても、前住人がターゲットとかで盗聴器が残っていたとかいう事例もあるし。つか、理沙はあれだけストーカーされてんのに呑気に構えすぎだって」
初めて見る盗聴器チェッカーなるものを荷物にかざす業者の人を見ながら圭司と雑談していると、業者の人に苦笑いされてしまった。
それでも盗聴器チェッカーなんてテレビの世界みたいだなあと笑っていたら、その甘い考えを打ち砕く出来事が引越しの途中で判明した。
「アパートから運んできた荷物は全て問題ありませんでした。それと、念のためすでにお持ちになっている荷物のチェックもしておきましょうか」
荷物の搬入が済んだところで、業者の方が引越し前に持ってきていた衣服やカバンに盗聴器のチェックをしたほうがいいと提案してくれた。
引っ越しの事情は簡単に話してあったから、それなら普段の持ち物に仕掛けられている可能性もあると言われ、半信半疑ながらも前に持ってきた荷物も全てチェックしてもらうことにした。
「先に持ってきたのは服が入ったこのトランクくらいです。こっちは普段通勤で使うバックで、あと化粧ポーチとか……持ってきたのはこれくらいですね」
言いながら私物をテーブルに広げていると、業者の人が持っている盗聴チェッカーが『ピイイイイー』と大きな音を発した。
「「えっ⁉」」
圭司と二人で驚きの声を上げる。業者の人は冷静にチェッカーを荷物にかざして音が大きくなる部分を探している。
「あー……ありますね。ちょっとカバンの中、拝見しても?」
「はい。え、ホントに盗聴器が? どうして……」
理沙が普段から持ち歩いている通勤カバンにチェッカーをかざすと大きな音がなる。急いで中の荷物を全部出して確認すると、中敷きの下から見覚えのないUSBが出てきた。
「なにこれ……こんなの知らない……」
「うん、コレですね。USB型の盗聴器ですよ。あと……USBについているキーホルダーはGPS発信機ですね」
ぱっと見、丸いキーホルダーがついているだけでなんの変哲もないUSBだ。革製のカバンの底に入っていても気づかないくらいの大きさで、もし気づいても誰かのUSBが紛れ込んでしまったのかと思って疑わなかったかもしれない。そんなものが入っていたことにも全く気付かなかった。
「電池式のものですから、ここ最近に仕掛けられたものでしょう。このタイプですとせいぜい50~100メートル程度でしか電波がひろえないですね。だからGPSと組み合わせたのかな。最近はどちらも安価で手に入りますからね」
「GPS……居場所が知られていたってことですよね」
いきなり麗奈がカフェに現れた日のことを思い出す。
あの日、すでにこれが仕掛けられていたなら、居場所を特定された理由も説明がつく。
「中敷きの下にありましたから、あなたのカバンを触れる身近な人物が入れたのでしょうが、思い当たる人物はいますか?」
「いえ……会社では鍵のかかるロッカーに入れていますし、カバンをなくしたこともないんです。こんなものを入れられる機会ないはずなんですが……」
こんなことをする心当たりと言えば麗奈しかない。だが彼女がこのカバンを触る機会はなかったはずだ。
移動になった主任や男性社員たちの顔も浮かんだが、彼らが女子更衣室に入ったとは思えないし、そもそもロッカーには鍵がかかっている。
「まだ電池が生きているので、入れられたのはせいぜい数カ月以内でしょうね。残念ながらあなたの居場所は特定されてしまっているかと。こちら、ひとまず電場を遮断する袋に入れておきますね。警察に行くならこのまま中身に触らずにお持ちください」
「はい……ありがとうございました」
これ以上は警察の領分になってくる。
これまでは麗奈からの攻撃はまだ嫌がらせの範囲に収まっていたが、これは完全に犯罪行為だ。心臓がバクバクして呼吸が苦しくなる。
どうしてここまでするのか。
麗奈が何を思ってここまで理沙に執着してくるのか、全く分からず恐怖だけが膨らんでいく。
更新再開いたします。
完結まで投稿いたしますので、どうぞよろしくお願いします。
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翌日、萌絵に『付き合うことになりました』と報告のメッセージを送る。
彼女の返信は、『おめでと~圭司がヘタレでなくて良かった』というシンプルな内容で、今度会った時に詳しく話してねとあっさり受け入れてくれた。
本当に何もかも萌絵にはお見通しなのだなとメッセージ画面を見て笑ってしまった。
そしてその土日を使って、理沙は圭司の家に引っ越しを済ませた。
経済的な問題で最後まで悩んでいたが、恋人になったのにこの状況で家を出る意味が分からないと言われ、せめて麗奈の問題が解決するまではここにいてくれと彼のほうから懇願され、その言葉に甘えて同棲を決めた。
引っ越しの手配は圭司が知り合いの業者に頼んでくれて、お任せしたらあっという間に荷物の搬出と搬入、不用品の処分までが済んでしまった。
どうやら特殊な引越し屋さんらしく、ストーカーから逃げる人の引っ越しを請け負っているらしい。
盗聴器の有無を確認し、トラックは途中で入れ替えて追跡をされないように荷物を運搬してくれると聞かされ感心すると同時に、世の中にはこういう業者を必要とする人がたくさんいるのだなと知って複雑な気持ちになる。
聞くところによると、ストーカーや厄介な親族から逃げるためにこういう引越し方法を希望する人が近年増加していて、今かなり需要があって従業員を増やしても追い付かないくらい相談が来ているらしい。
理沙としては、自分の引っ越しにそこまでしなくても……とは思ったが、個人でやっている業者だからか料金が大手のものとそう変わらなかったため、お願いすることにした。
「でも私の引っ越しで盗聴器のチェックはさすがにやりすぎじゃない?」
「いや、理沙に対してじゃなくても、前住人がターゲットとかで盗聴器が残っていたとかいう事例もあるし。つか、理沙はあれだけストーカーされてんのに呑気に構えすぎだって」
初めて見る盗聴器チェッカーなるものを荷物にかざす業者の人を見ながら圭司と雑談していると、業者の人に苦笑いされてしまった。
それでも盗聴器チェッカーなんてテレビの世界みたいだなあと笑っていたら、その甘い考えを打ち砕く出来事が引越しの途中で判明した。
「アパートから運んできた荷物は全て問題ありませんでした。それと、念のためすでにお持ちになっている荷物のチェックもしておきましょうか」
荷物の搬入が済んだところで、業者の方が引越し前に持ってきていた衣服やカバンに盗聴器のチェックをしたほうがいいと提案してくれた。
引っ越しの事情は簡単に話してあったから、それなら普段の持ち物に仕掛けられている可能性もあると言われ、半信半疑ながらも前に持ってきた荷物も全てチェックしてもらうことにした。
「先に持ってきたのは服が入ったこのトランクくらいです。こっちは普段通勤で使うバックで、あと化粧ポーチとか……持ってきたのはこれくらいですね」
言いながら私物をテーブルに広げていると、業者の人が持っている盗聴チェッカーが『ピイイイイー』と大きな音を発した。
「「えっ⁉」」
圭司と二人で驚きの声を上げる。業者の人は冷静にチェッカーを荷物にかざして音が大きくなる部分を探している。
「あー……ありますね。ちょっとカバンの中、拝見しても?」
「はい。え、ホントに盗聴器が? どうして……」
理沙が普段から持ち歩いている通勤カバンにチェッカーをかざすと大きな音がなる。急いで中の荷物を全部出して確認すると、中敷きの下から見覚えのないUSBが出てきた。
「なにこれ……こんなの知らない……」
「うん、コレですね。USB型の盗聴器ですよ。あと……USBについているキーホルダーはGPS発信機ですね」
ぱっと見、丸いキーホルダーがついているだけでなんの変哲もないUSBだ。革製のカバンの底に入っていても気づかないくらいの大きさで、もし気づいても誰かのUSBが紛れ込んでしまったのかと思って疑わなかったかもしれない。そんなものが入っていたことにも全く気付かなかった。
「電池式のものですから、ここ最近に仕掛けられたものでしょう。このタイプですとせいぜい50~100メートル程度でしか電波がひろえないですね。だからGPSと組み合わせたのかな。最近はどちらも安価で手に入りますからね」
「GPS……居場所が知られていたってことですよね」
いきなり麗奈がカフェに現れた日のことを思い出す。
あの日、すでにこれが仕掛けられていたなら、居場所を特定された理由も説明がつく。
「中敷きの下にありましたから、あなたのカバンを触れる身近な人物が入れたのでしょうが、思い当たる人物はいますか?」
「いえ……会社では鍵のかかるロッカーに入れていますし、カバンをなくしたこともないんです。こんなものを入れられる機会ないはずなんですが……」
こんなことをする心当たりと言えば麗奈しかない。だが彼女がこのカバンを触る機会はなかったはずだ。
移動になった主任や男性社員たちの顔も浮かんだが、彼らが女子更衣室に入ったとは思えないし、そもそもロッカーには鍵がかかっている。
「まだ電池が生きているので、入れられたのはせいぜい数カ月以内でしょうね。残念ながらあなたの居場所は特定されてしまっているかと。こちら、ひとまず電場を遮断する袋に入れておきますね。警察に行くならこのまま中身に触らずにお持ちください」
「はい……ありがとうございました」
これ以上は警察の領分になってくる。
これまでは麗奈からの攻撃はまだ嫌がらせの範囲に収まっていたが、これは完全に犯罪行為だ。心臓がバクバクして呼吸が苦しくなる。
どうしてここまでするのか。
麗奈が何を思ってここまで理沙に執着してくるのか、全く分からず恐怖だけが膨らんでいく。
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