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(47)課長と再会?
しおりを挟む結局ウメコは、町の中心まで滑り降りて、さらにその先にある、大きな建物の前にいた。
「あれ? 誰か、いますね!」
若干興奮した口調で、九重が言った。
もしかして、この氷都市の住人だろうか?
「ずいぶんとウメコが懐いているな」
「めっちゃしっぽ振ってますねぇ」
謎の人物の周りを、ぴょんぴょん飛び跳ねながらまとわりついているウメコ。
「ぐっ……」
「あ、さては先輩、ヤキモチ焼いてますね? ウメコちゃんが、知らない人にしっぽ振ってるから」
「ばっ……そんなことねぇよ!」
「先輩って、意外と可愛いところありますよねぇ」
うふふ……と、魔性の笑み(俺にはそう見える)をたたえながら、俺を見るのヤメテクダサイ。
「とにかく、あの人は誰なんでしょうね? あ、ウメコちゃんがお腹見せてる!」
「何っ?! くそっ! ウメコの裏切り者めっ!!!」
格好から、てっきり男性かと思っていたけれど、近寄ってみるとそれは女性だった。
しかも、黒髪ロングの超美人だった。
割と彫りは深めで、目が切れ長のクール系美女。
女の人の歳ってよくわからないんだけど、年齢は俺より若干上……かな?
(あれ? 何だか──……)
「おや、近江くんじゃないか!」
ウメコをガシガシと撫でていた女性が、微笑みながら近づいてきた。
「え……誰? お前の知り合い?」
「ええっ? 僕じゃなくて先輩の名前呼びませんでした? それにしても、ものすごい美人ですね!」
九重の言う通り、彼女はすごい美人だった。
いや、お前も負けていないけどな、九重。
九重が美少女なら、こっちは美女って感じだな──って、何を冷静に分析してるんだ、俺は。
「無事でよかった。心配していたんだよ。ところでそちらのお嬢さんはどなたかな?」
(……んん?)
美人さんは胸元のポケットから、おもむろに眼鏡を取り出すと、それをかけて九重の顔をじっと見つめた。
「げ!」
「ん?」
「えっ?」
奇妙な声を上げた俺を、二人が怪訝そうに振り返った。
「か、課長──────っ?!!!!」
「えっ……えええっ?!!」
九重のポカンとした顔も可愛いな……じゃなくて!
美女が豊満な胸元から取り出した眼鏡、それ課長の瓶底メガネじゃないか! 遠近両用のやつ!
こんな眼鏡を持ってるのは課長しかいない。課長以外にありえない。
声も姿もずいぶん様変わりしてしまったが、俺の勘がそう告げている──いや、勘ではないな。
課長が美女になることは考えられても、この眼鏡を課長以外がかけることはまず考えられない。それが、世界の真理ってやつだ。
「課長も無事だったんですね! あ、ちなみにこいつは九重ですよ、九重!」
ん? これって無事っていうのかな?
女性になってしまっているんだから、無事ではない?
しかし、九重が美少女になってるんだから、課長が美女になっていてもおかしくないな。
遺跡の呪いか、未知のウイルスか、はたまたもっと何か違うものの影響か──何にしろ、目の前の美女が課長だという事実はゆらぎないんだが。
「いやはや、九重くんも女性になってしまうとはな」
課長は感慨深げに九重を見つめている。
「課長の方こそ、こんな美人さんになられていてびっくりしましたよ!」
「いや、異世界へきて新しい人生を送りたいとは思っていたが、新しすぎるんじゃないかね? まさか、性別が違う人生を送ることになるとは思わなかったよ」
「いえいえ、とてもお似合いですよ!」
「そういう九重くんこそ、ずいぶんと可愛らしくなったな。我が課のアイドルと言っても過言ではないぞ」
「そんなぁ。えへへ~! 課長から褒めて貰えて嬉しいです」
美女と美少女がうふふあははと微笑み合う光景、いいな。
心が癒される。
中身が男だってわかっていても、だ。
視覚の幸福は別腹なんだよ、悪かったな。
「そうそう、君たちに紹介したい人がいるんだよ」
「紹介……?」
「ここに来てから会ったんだが……カオリさーん?」
課長は、建物の陰に向かって呼びかけた。
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