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閉ざされた世界からの反撃
それは、カリストの故郷でした
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乾いた夜風がカリストの黒髪を悪戯に巻き上げた。砂風に負けじと深緑の瞳が見つめる。
カリストは淡々と説明を始めた。
「神と悪魔は私たちの世界とは別の世界から干渉しています。どうやって干渉しているのか不明ですが、今は神が入っている犬を捕獲しました。神の本体ではありませんが」
「本体ではない。とは、どういうことだ?」
クリスの質問にカリストが頷く。
「精神だけこの世界に飛ばしているようです。この神の体は神の世界にあり、犬の中にいる神の精神と繋がっている状態です。繋がっているルートを解析すれば、この世界と神の世界を切り離すことが可能になります」
「だが、切り離すと神の加護が必要な魔法は使えなくなるんじゃないのか?」
オグウェノの質問にカリストが微笑む。
「さすが第四王子、鋭いですね。確かに使えなくなります。ですが、魔法は精霊の力や、魔法陣や、自身の魔力で使えます。そもそも、クリス様の一族が繁栄していた頃は、神の加護がなくても繁栄していました。問題はありません」
「だが、世界はしばらく混乱するぞ」
「そのうち安定します」
クリスがジッとカリストを見据える。
「本当に、この世界と神を切り離せるのか?」
「はい。先ほどクリス様の呼びかけに答えられなかったのは、この準備をしていたためです」
「切り離すのは、ここでするのか?」
「いえ。私たちの一族がいる場所です」
オグウェノが訊ねる。
「それはどこだ?」
「世界一、遠い所です」
「だから、それはどこ……」
ミルクティーを飲んでいたクリスの体が揺れる。強烈な眠気に額を押さえると、カリストが体を支えた。
「今日は、おやすみください」
「茶になに、を……」
クリスの体から力が抜け、目を閉じた。カリストが金髪になったクリスを抱き上げる。
紅茶を一口も飲まなかったオグウェノは予想通りと口角をあげた。
「茶に仕掛けていたか」
「最初の紅茶には何も入れていませんよ。このままでは眠れないでしょうから、少しお手伝いをしたまでです」
「油断ならねぇな」
カリストがクスリと笑う。
「油断していない方が、何を言いますか」
「油断していなくても、嵌められそうだからな」
カリストが悠然と微笑む。
「とりあえず、今日はおやすみください。明日から忙しくなります」
「休める自信がないな」
悪戯っぽく言ったオグウェノにカリストは小さな包み紙を差し出した。
「これを飲めばスッキリ眠れます」
「月姫のように、か?」
カリストは答えることなく、クリスを抱えたまま退室した。オグウェノがテーブルに残された包み紙を睨む。
「フン」
オグウェノがソファーから立ち上がる。テラスから出て行くと同時に、包み紙は灰となった。
※
翌日。一晩休んだクリスとオグウェノは、カリストの転移魔法で見知らぬ土地へと移動した。
到着した先は淡い水色のトンネルの中。トンネルは一直線に続き、耳が痛いほどの静寂しかない。しかも、壁から冷気が漂う。
カリストが準備していた防寒着を着ていなければ寒さで動けなかった。
クリスは前を歩くカリストに訊ねた。
「おまえは東の出身と言っていなかったか? この寒さは東の地のものとは思えないんだが?」
「黒髪、黒目の人間は東方に多くいました」
「つまり実際の出身地は別にある、と? 騙したのか?」
「多くいた、と言っただけで、出身とは言っていませんよ?」
意地悪そうに言いながらカリストが先頭を歩く。そのすぐ後ろをクリスが歩き、最後尾をオグウェノがついていく。
クリスは重傷のイディとともに、オグウェノも置いてきたかった。だが、オグウェノがどうしてもついて行く、無理やり付いてきた。
傷だけは魔法でなんとか治したオグウェノが怠い体で周囲を見回す。
「で、ここはどこなんだ?」
「ケリーマ王国から遥か南にある大陸です」
「南? それにしては寒いな」
寒さに慣れていないオグウェノが体を震わせる。クリスは思い出して声を上げた。
「まさか、氷の大陸か? 遥か南方にあり、海流と激しい風と分厚い氷に閉ざされた……」
「その通りです」
「転移魔法で移動できる距離ではないだろ!?」
「ですから、特殊な魔法陣を使いました。むしろ、あの魔方陣を使わなければ、ここには来れません。この上にある分厚い氷を削って、ここまで来ることは、ほぼ不可能ですから」
「そんな魔法陣があるのか……」
呆然とするクリスにカリストが説明を続ける。
「今より、もっと魔法が発達した時代の魔法陣です。私たち一族は、神と悪魔の交代劇の時に文明の消去に巻き込まれないよう、この場所で存在を消して生きてきました」
「だが、ここは氷の大陸の地上だろ? 何故、消去されなかった?」
「消去されるのは、地表の文明だけです。神と悪魔が交代する時、地表にある文明は消され、紀元ゼロ年まで戻されます。それが何度も繰り返されてきました。ですが、クリス様の一族は三か所、地表にない施設がありました。一か所はクリス様が生まれた月。もう一か所は、今は落下している空中庭園。どちらも、地表から離れた場所でしたので残りました」
「だが、残り一ヶ所の場所にいた者たちは……資材も、食料もなく、しばらくして通信も途絶えた、と記録にはある。月のように長期生存を考えた施設ではなく、一時的な研究施設だったため、餓えで絶滅したのだろう、と……」
クリスが声とともに沈んでいく。
「その場所が、どこか知ってますか?」
「どこかの地下施設としか……」
トンネルの先にドアが現れる。カリストが手袋を外してドアにかざした。
「地下とは氷の下のこと。この大陸の地表調査のため、氷に閉ざされた地上に研究施設を造っていました」
「まさか……」
ゆっくりとドアが開き、眩しい光が目に飛び込む。
「この地で幸運にも出会っていたのですよ。黒の一族と」
光で白くなっていた視界に色が戻る。高い天井から光が降り注ぐ。複数の木が絡み合った大木が天井へと枝を伸ばし、緑の葉を茂らす。
それ以外は何もない。ただの広い部屋だった。
「ここは?」
オグウェノが警戒しながらドアを潜る。今までの寒さが嘘のように温かい。
カリストが上着を脱ぎながら説明をした。
「ここはロビー……この施設の入り口です。服はそこら辺に適当に投げてください。ロボットが回収しますので」
「ロボット?」
あからさまに警戒するオグウェノにカリストが肩をすくめる。
「ここまで来て、そんなに警戒しても、どうにもなりませんよ。クリス様のように腹をくくってください」
「そういうわけにはいかない」
「難儀な性格ですね」
カリストがポイッと床に上着を投げる。普段のカリストからは考えられない行為。そこに壁の一部が小さく開き、銀色のボールが転がって来た。
「な、なんだ!?」
身構えるオグウェノをカリストが手で制する。
「攻撃はしないでください。壊れたら修理が面倒ですから」
「修理?」
ボールが床に投げられた上着の前で停止する。それからチカチカと一部を光らせるとボールの一部が開き、細い棒が出てきた。
目を丸くしているクリスとオグウェノの前で、棒は上着を掴むとシュルリと吸い込んだ。
「え? た、食べた!?」
驚いているクリスにカリストがクスクスと笑う。
「食べていませんよ。収納しただけです。さぁ、クリス様も上着を渡してください」
「あ、あぁ」
促されて上着を脱ぐとボールへ上着を投げた。するとボールから出てきた棒が空中で上着を掴み、そのまま飲みこんだ。
「……面白いな」
目を輝かせているクリスに対して、オグウェノは異形の物を見るように顔を歪める。クリスがオグウェノの上着を掴んだ。
「ほら、おまえも脱げ」
「へ? ちょ、ちょっと待て」
クリスはオグウェノから上着をはぎ取ると、ボールへ投げた。ボールはクリスの時と同じように棒で上着を掴み、シュルリと飲み込んだ。
クリスがカリストに訊ねる。
「これは上着しかダメなのか? 他の服も同じように収納するのか? 収納された服は自由に出せるのか?」
「服でしたら、どんなものでも収納しますよ。出したい時は、着たい服を言えば出てきます」
「便利だな」
ボールに近づこうとするクリスをオグウェノが止める。
「不用意に近づくな」
「別に危険な物ではないのだろ?」
クリスの質問にカリストが頷く。
「はい。攻撃能力はありません」
「だが……」
渋るオグウェノにクリスが上目遣いのまま小首を傾げる。
「少しだけ……ダメ、か?」
おねだりするような表情。こんな顔でお願いされたら断れない。
オグウェノは自分の顔を押さえて俯いた。
「……くそっ。少しだけだぞ」
「よし!」
クリスが屈んでボールを観察する。カリストがそっとオグウェノの隣に立つ。
「惚れた弱みですね」
「……うるさい」
二人はクリスの好奇心が満たされるまで、待つこととなった。
カリストの案内でクリスたちは廊下を歩いた。ケリーマ王国の服でも寒さを感じないほど、この場所全体が温められている。満足するまでボールの観察をしたクリスが満面の笑顔で進む。
その後ろ姿にオグウェノが愚痴をこぼした。
「記憶がなくなっていた間のことを上手く利用してないか?」
「ん? どうした?」
クリスが笑顔で振り返る。
「なんでもない」
「着きました。ここが居住区です」
先頭を歩いていたカリストが大きなドアの前足で足を止める。音もなくドアが開き、現れたのはガラス張りの壁。
カリストに誘導されて部屋に入る。
「……これは、なんだ?」
クリスの呟きが響く。
ガラス張りの壁の先。そこは広い部屋だった。床が見えないほど深く、天井も見えないほど高い。そこに、人と同じ大きさをした楕円形の入れ物が列になり、隙間なくぶら下がっている。
カリストが広い部屋を眺めながら説明した。
「この一つ一つ、全ての中に人が入っています」
「なっ!?」
「はっ!?」
クリスとオグウェノは息を飲んだ。
カリストは淡々と説明を始めた。
「神と悪魔は私たちの世界とは別の世界から干渉しています。どうやって干渉しているのか不明ですが、今は神が入っている犬を捕獲しました。神の本体ではありませんが」
「本体ではない。とは、どういうことだ?」
クリスの質問にカリストが頷く。
「精神だけこの世界に飛ばしているようです。この神の体は神の世界にあり、犬の中にいる神の精神と繋がっている状態です。繋がっているルートを解析すれば、この世界と神の世界を切り離すことが可能になります」
「だが、切り離すと神の加護が必要な魔法は使えなくなるんじゃないのか?」
オグウェノの質問にカリストが微笑む。
「さすが第四王子、鋭いですね。確かに使えなくなります。ですが、魔法は精霊の力や、魔法陣や、自身の魔力で使えます。そもそも、クリス様の一族が繁栄していた頃は、神の加護がなくても繁栄していました。問題はありません」
「だが、世界はしばらく混乱するぞ」
「そのうち安定します」
クリスがジッとカリストを見据える。
「本当に、この世界と神を切り離せるのか?」
「はい。先ほどクリス様の呼びかけに答えられなかったのは、この準備をしていたためです」
「切り離すのは、ここでするのか?」
「いえ。私たちの一族がいる場所です」
オグウェノが訊ねる。
「それはどこだ?」
「世界一、遠い所です」
「だから、それはどこ……」
ミルクティーを飲んでいたクリスの体が揺れる。強烈な眠気に額を押さえると、カリストが体を支えた。
「今日は、おやすみください」
「茶になに、を……」
クリスの体から力が抜け、目を閉じた。カリストが金髪になったクリスを抱き上げる。
紅茶を一口も飲まなかったオグウェノは予想通りと口角をあげた。
「茶に仕掛けていたか」
「最初の紅茶には何も入れていませんよ。このままでは眠れないでしょうから、少しお手伝いをしたまでです」
「油断ならねぇな」
カリストがクスリと笑う。
「油断していない方が、何を言いますか」
「油断していなくても、嵌められそうだからな」
カリストが悠然と微笑む。
「とりあえず、今日はおやすみください。明日から忙しくなります」
「休める自信がないな」
悪戯っぽく言ったオグウェノにカリストは小さな包み紙を差し出した。
「これを飲めばスッキリ眠れます」
「月姫のように、か?」
カリストは答えることなく、クリスを抱えたまま退室した。オグウェノがテーブルに残された包み紙を睨む。
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※
翌日。一晩休んだクリスとオグウェノは、カリストの転移魔法で見知らぬ土地へと移動した。
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クリスは前を歩くカリストに訊ねた。
「おまえは東の出身と言っていなかったか? この寒さは東の地のものとは思えないんだが?」
「黒髪、黒目の人間は東方に多くいました」
「つまり実際の出身地は別にある、と? 騙したのか?」
「多くいた、と言っただけで、出身とは言っていませんよ?」
意地悪そうに言いながらカリストが先頭を歩く。そのすぐ後ろをクリスが歩き、最後尾をオグウェノがついていく。
クリスは重傷のイディとともに、オグウェノも置いてきたかった。だが、オグウェノがどうしてもついて行く、無理やり付いてきた。
傷だけは魔法でなんとか治したオグウェノが怠い体で周囲を見回す。
「で、ここはどこなんだ?」
「ケリーマ王国から遥か南にある大陸です」
「南? それにしては寒いな」
寒さに慣れていないオグウェノが体を震わせる。クリスは思い出して声を上げた。
「まさか、氷の大陸か? 遥か南方にあり、海流と激しい風と分厚い氷に閉ざされた……」
「その通りです」
「転移魔法で移動できる距離ではないだろ!?」
「ですから、特殊な魔法陣を使いました。むしろ、あの魔方陣を使わなければ、ここには来れません。この上にある分厚い氷を削って、ここまで来ることは、ほぼ不可能ですから」
「そんな魔法陣があるのか……」
呆然とするクリスにカリストが説明を続ける。
「今より、もっと魔法が発達した時代の魔法陣です。私たち一族は、神と悪魔の交代劇の時に文明の消去に巻き込まれないよう、この場所で存在を消して生きてきました」
「だが、ここは氷の大陸の地上だろ? 何故、消去されなかった?」
「消去されるのは、地表の文明だけです。神と悪魔が交代する時、地表にある文明は消され、紀元ゼロ年まで戻されます。それが何度も繰り返されてきました。ですが、クリス様の一族は三か所、地表にない施設がありました。一か所はクリス様が生まれた月。もう一か所は、今は落下している空中庭園。どちらも、地表から離れた場所でしたので残りました」
「だが、残り一ヶ所の場所にいた者たちは……資材も、食料もなく、しばらくして通信も途絶えた、と記録にはある。月のように長期生存を考えた施設ではなく、一時的な研究施設だったため、餓えで絶滅したのだろう、と……」
クリスが声とともに沈んでいく。
「その場所が、どこか知ってますか?」
「どこかの地下施設としか……」
トンネルの先にドアが現れる。カリストが手袋を外してドアにかざした。
「地下とは氷の下のこと。この大陸の地表調査のため、氷に閉ざされた地上に研究施設を造っていました」
「まさか……」
ゆっくりとドアが開き、眩しい光が目に飛び込む。
「この地で幸運にも出会っていたのですよ。黒の一族と」
光で白くなっていた視界に色が戻る。高い天井から光が降り注ぐ。複数の木が絡み合った大木が天井へと枝を伸ばし、緑の葉を茂らす。
それ以外は何もない。ただの広い部屋だった。
「ここは?」
オグウェノが警戒しながらドアを潜る。今までの寒さが嘘のように温かい。
カリストが上着を脱ぎながら説明をした。
「ここはロビー……この施設の入り口です。服はそこら辺に適当に投げてください。ロボットが回収しますので」
「ロボット?」
あからさまに警戒するオグウェノにカリストが肩をすくめる。
「ここまで来て、そんなに警戒しても、どうにもなりませんよ。クリス様のように腹をくくってください」
「そういうわけにはいかない」
「難儀な性格ですね」
カリストがポイッと床に上着を投げる。普段のカリストからは考えられない行為。そこに壁の一部が小さく開き、銀色のボールが転がって来た。
「な、なんだ!?」
身構えるオグウェノをカリストが手で制する。
「攻撃はしないでください。壊れたら修理が面倒ですから」
「修理?」
ボールが床に投げられた上着の前で停止する。それからチカチカと一部を光らせるとボールの一部が開き、細い棒が出てきた。
目を丸くしているクリスとオグウェノの前で、棒は上着を掴むとシュルリと吸い込んだ。
「え? た、食べた!?」
驚いているクリスにカリストがクスクスと笑う。
「食べていませんよ。収納しただけです。さぁ、クリス様も上着を渡してください」
「あ、あぁ」
促されて上着を脱ぐとボールへ上着を投げた。するとボールから出てきた棒が空中で上着を掴み、そのまま飲みこんだ。
「……面白いな」
目を輝かせているクリスに対して、オグウェノは異形の物を見るように顔を歪める。クリスがオグウェノの上着を掴んだ。
「ほら、おまえも脱げ」
「へ? ちょ、ちょっと待て」
クリスはオグウェノから上着をはぎ取ると、ボールへ投げた。ボールはクリスの時と同じように棒で上着を掴み、シュルリと飲み込んだ。
クリスがカリストに訊ねる。
「これは上着しかダメなのか? 他の服も同じように収納するのか? 収納された服は自由に出せるのか?」
「服でしたら、どんなものでも収納しますよ。出したい時は、着たい服を言えば出てきます」
「便利だな」
ボールに近づこうとするクリスをオグウェノが止める。
「不用意に近づくな」
「別に危険な物ではないのだろ?」
クリスの質問にカリストが頷く。
「はい。攻撃能力はありません」
「だが……」
渋るオグウェノにクリスが上目遣いのまま小首を傾げる。
「少しだけ……ダメ、か?」
おねだりするような表情。こんな顔でお願いされたら断れない。
オグウェノは自分の顔を押さえて俯いた。
「……くそっ。少しだけだぞ」
「よし!」
クリスが屈んでボールを観察する。カリストがそっとオグウェノの隣に立つ。
「惚れた弱みですね」
「……うるさい」
二人はクリスの好奇心が満たされるまで、待つこととなった。
カリストの案内でクリスたちは廊下を歩いた。ケリーマ王国の服でも寒さを感じないほど、この場所全体が温められている。満足するまでボールの観察をしたクリスが満面の笑顔で進む。
その後ろ姿にオグウェノが愚痴をこぼした。
「記憶がなくなっていた間のことを上手く利用してないか?」
「ん? どうした?」
クリスが笑顔で振り返る。
「なんでもない」
「着きました。ここが居住区です」
先頭を歩いていたカリストが大きなドアの前足で足を止める。音もなくドアが開き、現れたのはガラス張りの壁。
カリストに誘導されて部屋に入る。
「……これは、なんだ?」
クリスの呟きが響く。
ガラス張りの壁の先。そこは広い部屋だった。床が見えないほど深く、天井も見えないほど高い。そこに、人と同じ大きさをした楕円形の入れ物が列になり、隙間なくぶら下がっている。
カリストが広い部屋を眺めながら説明した。
「この一つ一つ、全ての中に人が入っています」
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クリスとオグウェノは息を飲んだ。
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