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閉ざされた世界からの反撃
それは、優雅なお邪魔虫でした
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肌ざわりのよいシーツ。ふわふわのマット。太陽の匂いに、心地よい鼓動の音。
極上の微睡の中、堪能するように頬をこすりつける。すると、応えるように温もりに包まれた。
クリスが微かに目を開ける。霞んだ目にぼんやりと映る赤髪。
「……ん?」
寝ぼけた頭で顔を動かすと、ルドの寝顔があった。
「!?」
声にならない声を上げながら、クリスが上半身を起こす。慌てて周囲を確認すると、そこはケリーマ王国の王城の離れの部屋だった。
「どういうことだ? 警報がなって、穴に落ちて…………まさか、夢だったのか?」
訳が分からないまま視線を落とす。隣には熟睡しているルド。その頭元には藁で出来た人形と、二つの魔宝石。
「一つは私が飲み込んだのに……」
クリスが首を傾げながら魔宝石をネックレスにはめ込む。
「本当に夢だったの……んぁ!?」
上半身に腕が絡み付く。抵抗する間もなくベッドへ引きずり込まれた。
「おい!?」
抗議の声をあげるが、目の前には幸せそうに微笑むルドの顔。その表情にすべてが吹き飛ぶ。
「おはようございます」
「……おはよう」
もごもごと小声で返すのが精一杯。その様子をルドが愛おしそうに見つめる。
「やっと、会えました」
「なんだ?」
「ずっと、待っていました」
ルドがクリスの頬に手を添え、金色の髪を後ろに流す。
「なにを、待っていたんだ?」
「師匠の記憶が戻るのを」
「あ、いや、それは……」
クリスが逃げるように顔を逸らす。しかし、ルドは逃がさないとばかりにクリスを引き寄せた。
「師匠」
「な、なんだ?」
逃げることを諦めたクリスが頬を赤くしながらルドの方を向く。
「師匠の記憶が戻ったら、言おうと思っていたことがあります」
「……なんだ?」
真剣な琥珀の瞳にクリスが息を飲む。二人の間に静寂が落ちる。
そこに紅茶の匂いが漂ってきた。懐かしい匂いにクリスが体を起こす。
「これは、屋敷で飲んでいた紅茶の匂い……そうだ! カリストは!? カリストはどうなった!? あの場所は!? 爆発はどうなった!?」
いままでの甘い雰囲気が一瞬で消え去る。慌てて立ち上がろうとするクリスをルドがなだめた。
「落ち着いてください。急に動くと体に負担が……」
「シェットランド領に戻るぞ! セスナであそこへ行く!」
「あそこは分厚い氷の下ですから、セスナで行っても、中には入れませんよ。そもそも遠すぎて、セスナでは行けないですし」
「それでも行かなければ!」
「まずは紅茶を飲んで一息ついてください」
「茶を飲んでいる場合では……?」
クリスがルドの方を向く。
「おまえ、いつの間に茶を淹れた?」
「自分はなにもしてないです」
二人が同時に振り返る。窓際のテーブルに紅茶をセットしているカリストが。
「どうぞ」
いつものように優雅な動きで紅茶を勧める。
立ち上がったクリスがカリストの胸倉を掴む。
「本物か!? 生きているのか!? 怪我は!?」
「はい。体に問題はありません」
いつも通り微笑むカリストにクリスが大きく息を吐く。
「よかった。また、失ったかと……」
「ご心配をおかけしました」
カリストが微笑んでいると、鋭い視線が突き刺さった。琥珀の目が無言で睨み、その背後には赤毛の狼の幻影。常人なら足がすくんで動けない。
だが、カリストはサラリと無視してクリスに話した。
「紅茶が冷めないうちに、どうぞ」
「いや、その前に聞きたいことが……」
「食事をしながらお答えしましょう」
カリストが影の中から食事が載ったワゴンを出し、テーブルに食事を並べる。その光景と匂いに魔力を使い果たした二人の腹が鳴った。
「どうぞ」
クリスとルドが勧められるまま食事をとる。テーブルを埋め尽くしていた料理が次々と消えていく。
デザートの前にクリスがカリストに訊ねた。
「私は穴に落ちたと思ったんだが、何がどうなった? あの施設は無事なのか?」
「はい、無事ですよ。被害は最小限にとどめました」
「おまえはあの状況から、どうやって脱出したんだ?」
カリストがクリスの髪を櫛で茶色に変えながら説明する。
「被害を最小限にとどめた後、影を使って移動しました」
「そうだ。影を使って移動できるのを忘れていた……」
クリスがテーブルに伏せる。それから、顔だけをあげてルドを睨んだ。
「カリストが無事だと知っていたな?」
「そのように聞いていましたので」
「聞いていた? どういうことだ?」
カリストが説明する。
「花子には私が無事だと伝えていたので、その話だけ聞いていたのでしょう。あとは転移魔法でケリーマ王国の王城の離れまで戻ってきました」
「私は穴に落ちた時からの記憶がないから、それからずっと眠っていた、ということか?」
「はい。師匠の場合は自分の魔宝石を飲み込んでいたので、体が魔力でボロボロになりかけていました。タナカハナコ殿が魔宝石を素早く取り出してくれたおかげで、最悪の事態は免れました」
「そ、そうか。礼を言わないといけないな」
クリスがルドから逃げるようにデザートを口に入れる。
「師匠。魔宝石を飲み込むなんて危険はことは二度と……」
「わかった、わかった。もう、しない。で、お前たちの一族は、これからどうするんだ?」
クリスが無理やり話題を変える。カリストが空いた皿を下げながら答える。
「さて。隠れる必要はなくなりましたが、すぐに出てくることもないでしょう。しばらくは世界の様子を見ていると思います」
「急には変われないからな」
「そうですね」
クリスが両手を上げて背筋を伸ばす。
「あー、風呂に入りたいな。もう、いろいろなことがありすぎた。こういう時は何も考えずに、湯に浸かりたい」
「湯の準備は頼んできましたので、入れますよ」
「では、入ってくるか。おまえはどうする?」
「一緒に入ってもいいのですか?」
「なっ!?」
一瞬で顔を真っ赤にしたクリスにルドが意地悪な笑みを浮かべる。
「冗談ですよ。自分は、もう少しここで休んでいますので」
「そういうタチの悪い冗談は言うな」
クリスが歩調を荒くして部屋から出て行った。
そこで、いままで穏やかだったルドの雰囲気が鋭くなる。そのまま、カリストを突き刺すように睨んだ。
攻撃的なルドの視線にカリストが微笑んだまま訊ねる。
「どうかされましたか?」
「ワザとですよね?」
「なにが、ですか?」
「先ほど、自分が師匠に言おうとしたことを、ワザと邪魔しましたよね?」
ルドが不機嫌全開で問い詰める。カリストは微笑ましいものを見守るに笑った。
「素直に感情を表すようになりましたね」
「誤魔化さないでください」
カリストが空になったカップに紅茶を注いでルドに差し出す。こうなるとカリストからの回答がないことは、この短い付き合いの中で学んだ。
返事を諦めたルドは改めてカリストの全身を確認した。
「とりあえず、無事で良かったです」
「おや。よい雰囲気だったところを邪魔され、射殺さんばかりに睨んでいた方の台詞とは思えませんね」
ルドが眉をひそめながら紅茶に口をつける。
「そう思うなら、邪魔しないでください。そもそも、死者には敵いませんから」
「どういうことですか?」
「死者の記憶は、残された人に美しく残ります。これ以上、死者に師匠の心を占めてほしくありません」
「なかなかな嫉妬心ですね」
ルドがカリストに視線を向ける。
「師匠は死に魅かれています。そして、幸せになることを拒んでいます。それに気づいているから、あんなことを言ったのでしょう?」
『生きて、幸せになって……』
カリストが微かに笑みを浮かべる。
「さて、どうでしょう」
「また、誤魔化すのですか?」
微笑むだけのカリストにルドがため息を吐く。
「あなたは、自分が思っているよりも師匠の心の中を占めているんですよ」
「まるで見てきたかのような言い方ですね」
「実際に見えましたから。ボルケーノに、ここは自分の心の中だ、と説明されても半信半疑の時は分かりませんでした。ですが、師匠が心の中に現れ、そのことを強く認識した瞬間、すべてが透けて見えました。師匠とボルケーノの記憶から考えまで、一気に」
「クリス様の気持ちも、すべて?」
「いえ。師匠が大事にしているところは目を閉じました。ただでさえ勝手に見てしまったのですから。すべてを見てしまっては、いけないでしょう? ですが、心の中では相手のことが手にとるように分かり、まるで自分が神になったような気分でした」
ルドが探るようにカリストを覗き見る。
「夢の世界で生きる人たちもいますしね。この世界が誰かの心の中の世界でもおかしくない。という、突拍子のない考えまで浮かびました」
カリストが黙ったまま微笑みを崩さない。
「驚かないのですね」
「私も、その可能性を考えたことがあります」
「え!?」
「まあ、これでもあなた方の十数倍は生きてますから。いろいろ無駄に考えています」
「十数倍!?」
「長寿なので」
「何歳ですか?」
「秘密です。クリス様が知ったら解剖されそうですので」
「……解剖させてください」
黒い瞳が丸くなる。そして、面白そうに笑った。
「そういえば、あなたも、そういう人種でしたね」
男二人が談笑? している一方でクリスは……
※※
「やっと会えましたわ! 今まで、どこにいましたの!?」
風呂場でベレンに迫られていた。
極上の微睡の中、堪能するように頬をこすりつける。すると、応えるように温もりに包まれた。
クリスが微かに目を開ける。霞んだ目にぼんやりと映る赤髪。
「……ん?」
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「!?」
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「なんだ?」
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ルドがクリスの頬に手を添え、金色の髪を後ろに流す。
「なにを、待っていたんだ?」
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「あ、いや、それは……」
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「師匠」
「な、なんだ?」
逃げることを諦めたクリスが頬を赤くしながらルドの方を向く。
「師匠の記憶が戻ったら、言おうと思っていたことがあります」
「……なんだ?」
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そこに紅茶の匂いが漂ってきた。懐かしい匂いにクリスが体を起こす。
「これは、屋敷で飲んでいた紅茶の匂い……そうだ! カリストは!? カリストはどうなった!? あの場所は!? 爆発はどうなった!?」
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「落ち着いてください。急に動くと体に負担が……」
「シェットランド領に戻るぞ! セスナであそこへ行く!」
「あそこは分厚い氷の下ですから、セスナで行っても、中には入れませんよ。そもそも遠すぎて、セスナでは行けないですし」
「それでも行かなければ!」
「まずは紅茶を飲んで一息ついてください」
「茶を飲んでいる場合では……?」
クリスがルドの方を向く。
「おまえ、いつの間に茶を淹れた?」
「自分はなにもしてないです」
二人が同時に振り返る。窓際のテーブルに紅茶をセットしているカリストが。
「どうぞ」
いつものように優雅な動きで紅茶を勧める。
立ち上がったクリスがカリストの胸倉を掴む。
「本物か!? 生きているのか!? 怪我は!?」
「はい。体に問題はありません」
いつも通り微笑むカリストにクリスが大きく息を吐く。
「よかった。また、失ったかと……」
「ご心配をおかけしました」
カリストが微笑んでいると、鋭い視線が突き刺さった。琥珀の目が無言で睨み、その背後には赤毛の狼の幻影。常人なら足がすくんで動けない。
だが、カリストはサラリと無視してクリスに話した。
「紅茶が冷めないうちに、どうぞ」
「いや、その前に聞きたいことが……」
「食事をしながらお答えしましょう」
カリストが影の中から食事が載ったワゴンを出し、テーブルに食事を並べる。その光景と匂いに魔力を使い果たした二人の腹が鳴った。
「どうぞ」
クリスとルドが勧められるまま食事をとる。テーブルを埋め尽くしていた料理が次々と消えていく。
デザートの前にクリスがカリストに訊ねた。
「私は穴に落ちたと思ったんだが、何がどうなった? あの施設は無事なのか?」
「はい、無事ですよ。被害は最小限にとどめました」
「おまえはあの状況から、どうやって脱出したんだ?」
カリストがクリスの髪を櫛で茶色に変えながら説明する。
「被害を最小限にとどめた後、影を使って移動しました」
「そうだ。影を使って移動できるのを忘れていた……」
クリスがテーブルに伏せる。それから、顔だけをあげてルドを睨んだ。
「カリストが無事だと知っていたな?」
「そのように聞いていましたので」
「聞いていた? どういうことだ?」
カリストが説明する。
「花子には私が無事だと伝えていたので、その話だけ聞いていたのでしょう。あとは転移魔法でケリーマ王国の王城の離れまで戻ってきました」
「私は穴に落ちた時からの記憶がないから、それからずっと眠っていた、ということか?」
「はい。師匠の場合は自分の魔宝石を飲み込んでいたので、体が魔力でボロボロになりかけていました。タナカハナコ殿が魔宝石を素早く取り出してくれたおかげで、最悪の事態は免れました」
「そ、そうか。礼を言わないといけないな」
クリスがルドから逃げるようにデザートを口に入れる。
「師匠。魔宝石を飲み込むなんて危険はことは二度と……」
「わかった、わかった。もう、しない。で、お前たちの一族は、これからどうするんだ?」
クリスが無理やり話題を変える。カリストが空いた皿を下げながら答える。
「さて。隠れる必要はなくなりましたが、すぐに出てくることもないでしょう。しばらくは世界の様子を見ていると思います」
「急には変われないからな」
「そうですね」
クリスが両手を上げて背筋を伸ばす。
「あー、風呂に入りたいな。もう、いろいろなことがありすぎた。こういう時は何も考えずに、湯に浸かりたい」
「湯の準備は頼んできましたので、入れますよ」
「では、入ってくるか。おまえはどうする?」
「一緒に入ってもいいのですか?」
「なっ!?」
一瞬で顔を真っ赤にしたクリスにルドが意地悪な笑みを浮かべる。
「冗談ですよ。自分は、もう少しここで休んでいますので」
「そういうタチの悪い冗談は言うな」
クリスが歩調を荒くして部屋から出て行った。
そこで、いままで穏やかだったルドの雰囲気が鋭くなる。そのまま、カリストを突き刺すように睨んだ。
攻撃的なルドの視線にカリストが微笑んだまま訊ねる。
「どうかされましたか?」
「ワザとですよね?」
「なにが、ですか?」
「先ほど、自分が師匠に言おうとしたことを、ワザと邪魔しましたよね?」
ルドが不機嫌全開で問い詰める。カリストは微笑ましいものを見守るに笑った。
「素直に感情を表すようになりましたね」
「誤魔化さないでください」
カリストが空になったカップに紅茶を注いでルドに差し出す。こうなるとカリストからの回答がないことは、この短い付き合いの中で学んだ。
返事を諦めたルドは改めてカリストの全身を確認した。
「とりあえず、無事で良かったです」
「おや。よい雰囲気だったところを邪魔され、射殺さんばかりに睨んでいた方の台詞とは思えませんね」
ルドが眉をひそめながら紅茶に口をつける。
「そう思うなら、邪魔しないでください。そもそも、死者には敵いませんから」
「どういうことですか?」
「死者の記憶は、残された人に美しく残ります。これ以上、死者に師匠の心を占めてほしくありません」
「なかなかな嫉妬心ですね」
ルドがカリストに視線を向ける。
「師匠は死に魅かれています。そして、幸せになることを拒んでいます。それに気づいているから、あんなことを言ったのでしょう?」
『生きて、幸せになって……』
カリストが微かに笑みを浮かべる。
「さて、どうでしょう」
「また、誤魔化すのですか?」
微笑むだけのカリストにルドがため息を吐く。
「あなたは、自分が思っているよりも師匠の心の中を占めているんですよ」
「まるで見てきたかのような言い方ですね」
「実際に見えましたから。ボルケーノに、ここは自分の心の中だ、と説明されても半信半疑の時は分かりませんでした。ですが、師匠が心の中に現れ、そのことを強く認識した瞬間、すべてが透けて見えました。師匠とボルケーノの記憶から考えまで、一気に」
「クリス様の気持ちも、すべて?」
「いえ。師匠が大事にしているところは目を閉じました。ただでさえ勝手に見てしまったのですから。すべてを見てしまっては、いけないでしょう? ですが、心の中では相手のことが手にとるように分かり、まるで自分が神になったような気分でした」
ルドが探るようにカリストを覗き見る。
「夢の世界で生きる人たちもいますしね。この世界が誰かの心の中の世界でもおかしくない。という、突拍子のない考えまで浮かびました」
カリストが黙ったまま微笑みを崩さない。
「驚かないのですね」
「私も、その可能性を考えたことがあります」
「え!?」
「まあ、これでもあなた方の十数倍は生きてますから。いろいろ無駄に考えています」
「十数倍!?」
「長寿なので」
「何歳ですか?」
「秘密です。クリス様が知ったら解剖されそうですので」
「……解剖させてください」
黒い瞳が丸くなる。そして、面白そうに笑った。
「そういえば、あなたも、そういう人種でしたね」
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