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転校生の正体
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そして明人は休み時間になるとすぐさまクラスでも派手なメンバーに囲まれ、すっかり仲良くなっていた。
放課後も明人はすぐに彼らと教室を出て行った。
最早学年中で、イケメンの転校生が来たと明人の噂は持ちきりのようだった。
「美結、今日の帰りカラオケ行こうよ!」
しかし転校生の明人の存在は、美結たちのグループには全く影響がなかった。
海と日向が始業式が終わるのを待ってましたごとく、直したての化粧姿で美結の下に来た。
美結達三人は、学校が終わるとよく駅ビルに行って買い物をしたり、カラオケをしたり、カフェやファーストフードに行ったりして夕方まで語り合って過ごしていた。
いつも美結は三人の中でも率先して遊んでいたのだがー。
「ごめーん。今日は妹の誕生日だから早く帰らないと。」
「そっかそっかー、じゃあまた今度行こ!」
美結は明人がクラスに来てから、心ここにあらずであった。
日向たちは久しぶりに遊びたくて仕方ないようで、美結の変化をあまり気に留めず教室から出ていった。
美結が一人でゆっくりと帰り仕度を終えた頃には、いつの間にか教室には工しかいなかった。
「あれ?工は帰らないの?今日バイトじゃなくて?。」
「気づくの遅っ。今日はバイトなくてさ。美結と一緒に帰ろうと思ってた。さ、帰ろ。」
工は普段は放課後ファートストフード店でバイトをしていた。
今の今まで机に突っ伏して寝ていた工だったが、実は工は美結のことを心配でさり気なく待っていたのであった。
そして工は美結の鞄を持つと、先に教室から出て行った。
「工、待ってよー。」
いつもはくだらないことで喧嘩ばかりする美結と工だった。
しかし今日の美結は工から何を話しかけられても気が乗らず、沈黙が続いていた。
だから工は美結の少し前で自転車を漕いでいたが、美結とすぐに距離が空いてしまう。
工は美結に合わせてゆっくりと運転はしているものの、さすがに肝を切らして、自転車を止めて美結を待ち並列になった。
「なぁ、美結」
「ん?」
「間違ってたらごめん。あのさ、今日来た転校生ってさ…。」
美結が元気のない理由を、工は感づいていた。
工は勇気を振り絞って聞こうとしたが、美結によって言葉を遮られた。
「明人は、幼なじみだよ。」
そう、転校生の明人は陸と同様に美結の幼なじみであった。
しかし明人と工は同じ中学校でも会ったことがない。
明人は中学二年の冬に転校し、工は中学三年の春に引っ越してきたからだ。
「明人、元彼なんだろ?」
工はつい勢いで聞いてしまったことに、美結の表情を見て後悔をした。
美結は俯いてゆっくりと頷くと黙り込んだ。
工はさすがに美結に返す言葉がなかった。
しばらく沈黙が続いた後に、交差点で自転車を止めていた美結は心配そうな眼差しを向ける工に我に返った。
美結はいきなり自転車のペダルを踏みこみスピードを上げて横断歩道を渡り、工の方に振り向くと笑顔を作って手を振った。
「ごめん、工。私妹のプレゼントまだ買ってなかった!駅寄って帰るから、じゃあね!」
「美結!」
自分の興味本位の言動が美結を傷付けてしまったと工は深く反省していた。
そして美結の元彼ー明人が戻ってきた事実を前に、深くため息をついた。
「まじかよ……。」
工と美結はただの友人ではない。
工が転校して間も無く美結に一目惚れをして、中学三年の夏から二人は付き合っていた。
しかし二人は友達以上恋人未満の枠を超えることができなかった。
中学を卒業する時に工は美結から、元彼が忘れられないと言われて振られた。
それでも工は美結のことが今でも大好きで仕方なかった。
どうにかしてでも美結の側にいたいと工は今のポジションに付けるまで努力をしてきた。
ーライバルがまた一人増えるー、しかも強力な相手が。
美結は心配する工には本当に申し訳ないけれど、一人になりたかったため咄嗟に嘘をついた。
明人の姿を見てからずっと、その姿が美結の頭からずっと消えなかった。
ーどうして、明人が戻ってきたの。
美結は二年ぶりに明人に再会できた嬉しさよりも、辛い気持ちの方が蘇ってきていた。
美結の頭の中はすっかり混乱していた。
美結は夢中で自転車を走らせ、いつの間にか自宅に到着すると、庭に無造作に自転車を置いて玄関に入った。
「お母さん、ただいまー。」
「……美結!お帰り!あのね!ってちょっと!」
ダイニングから甲高い母の声が聞こえたが、美結はそのまま階段を上り、放心状態のまま部屋に入った。
「きゃー。」
美結の部屋の机の椅子に、想定外の相手が座っていた。
美結は驚いて悲鳴を上げると、部屋の端まで逃げた。
「久しぶり、みゆ。」
それは今日一日のほぼ半分以上いやほとんどといっていいくらい、美結の脳裏から離れなかった相手、明人だった。
「あき…。」
美結はすかさず明人に背を向け、鏡の前でくしゃくしゃになった髪を整えながら深呼吸し心を落ち着かせた。
美結の波打つように速く動く心臓の鼓動は、止まらなかった。
そして一呼吸置いて、美結は恐る恐る明人に話しかけた。
「ねぇ、転校ってどういうこと?」
「今月から婆ちゃん家に住むことになったんだ。学校でみゆに話せなかったからさ、家来ちゃったんだ。」
明人はそう言って笑うと椅子から立ち上がり、硬直する美結の下に近寄った。
少しずつ近付く明人との距離に美結は何故か足が動かず、強く胸が締め付けられていた。
ーずっと、会いたかった。
放課後も明人はすぐに彼らと教室を出て行った。
最早学年中で、イケメンの転校生が来たと明人の噂は持ちきりのようだった。
「美結、今日の帰りカラオケ行こうよ!」
しかし転校生の明人の存在は、美結たちのグループには全く影響がなかった。
海と日向が始業式が終わるのを待ってましたごとく、直したての化粧姿で美結の下に来た。
美結達三人は、学校が終わるとよく駅ビルに行って買い物をしたり、カラオケをしたり、カフェやファーストフードに行ったりして夕方まで語り合って過ごしていた。
いつも美結は三人の中でも率先して遊んでいたのだがー。
「ごめーん。今日は妹の誕生日だから早く帰らないと。」
「そっかそっかー、じゃあまた今度行こ!」
美結は明人がクラスに来てから、心ここにあらずであった。
日向たちは久しぶりに遊びたくて仕方ないようで、美結の変化をあまり気に留めず教室から出ていった。
美結が一人でゆっくりと帰り仕度を終えた頃には、いつの間にか教室には工しかいなかった。
「あれ?工は帰らないの?今日バイトじゃなくて?。」
「気づくの遅っ。今日はバイトなくてさ。美結と一緒に帰ろうと思ってた。さ、帰ろ。」
工は普段は放課後ファートストフード店でバイトをしていた。
今の今まで机に突っ伏して寝ていた工だったが、実は工は美結のことを心配でさり気なく待っていたのであった。
そして工は美結の鞄を持つと、先に教室から出て行った。
「工、待ってよー。」
いつもはくだらないことで喧嘩ばかりする美結と工だった。
しかし今日の美結は工から何を話しかけられても気が乗らず、沈黙が続いていた。
だから工は美結の少し前で自転車を漕いでいたが、美結とすぐに距離が空いてしまう。
工は美結に合わせてゆっくりと運転はしているものの、さすがに肝を切らして、自転車を止めて美結を待ち並列になった。
「なぁ、美結」
「ん?」
「間違ってたらごめん。あのさ、今日来た転校生ってさ…。」
美結が元気のない理由を、工は感づいていた。
工は勇気を振り絞って聞こうとしたが、美結によって言葉を遮られた。
「明人は、幼なじみだよ。」
そう、転校生の明人は陸と同様に美結の幼なじみであった。
しかし明人と工は同じ中学校でも会ったことがない。
明人は中学二年の冬に転校し、工は中学三年の春に引っ越してきたからだ。
「明人、元彼なんだろ?」
工はつい勢いで聞いてしまったことに、美結の表情を見て後悔をした。
美結は俯いてゆっくりと頷くと黙り込んだ。
工はさすがに美結に返す言葉がなかった。
しばらく沈黙が続いた後に、交差点で自転車を止めていた美結は心配そうな眼差しを向ける工に我に返った。
美結はいきなり自転車のペダルを踏みこみスピードを上げて横断歩道を渡り、工の方に振り向くと笑顔を作って手を振った。
「ごめん、工。私妹のプレゼントまだ買ってなかった!駅寄って帰るから、じゃあね!」
「美結!」
自分の興味本位の言動が美結を傷付けてしまったと工は深く反省していた。
そして美結の元彼ー明人が戻ってきた事実を前に、深くため息をついた。
「まじかよ……。」
工と美結はただの友人ではない。
工が転校して間も無く美結に一目惚れをして、中学三年の夏から二人は付き合っていた。
しかし二人は友達以上恋人未満の枠を超えることができなかった。
中学を卒業する時に工は美結から、元彼が忘れられないと言われて振られた。
それでも工は美結のことが今でも大好きで仕方なかった。
どうにかしてでも美結の側にいたいと工は今のポジションに付けるまで努力をしてきた。
ーライバルがまた一人増えるー、しかも強力な相手が。
美結は心配する工には本当に申し訳ないけれど、一人になりたかったため咄嗟に嘘をついた。
明人の姿を見てからずっと、その姿が美結の頭からずっと消えなかった。
ーどうして、明人が戻ってきたの。
美結は二年ぶりに明人に再会できた嬉しさよりも、辛い気持ちの方が蘇ってきていた。
美結の頭の中はすっかり混乱していた。
美結は夢中で自転車を走らせ、いつの間にか自宅に到着すると、庭に無造作に自転車を置いて玄関に入った。
「お母さん、ただいまー。」
「……美結!お帰り!あのね!ってちょっと!」
ダイニングから甲高い母の声が聞こえたが、美結はそのまま階段を上り、放心状態のまま部屋に入った。
「きゃー。」
美結の部屋の机の椅子に、想定外の相手が座っていた。
美結は驚いて悲鳴を上げると、部屋の端まで逃げた。
「久しぶり、みゆ。」
それは今日一日のほぼ半分以上いやほとんどといっていいくらい、美結の脳裏から離れなかった相手、明人だった。
「あき…。」
美結はすかさず明人に背を向け、鏡の前でくしゃくしゃになった髪を整えながら深呼吸し心を落ち着かせた。
美結の波打つように速く動く心臓の鼓動は、止まらなかった。
そして一呼吸置いて、美結は恐る恐る明人に話しかけた。
「ねぇ、転校ってどういうこと?」
「今月から婆ちゃん家に住むことになったんだ。学校でみゆに話せなかったからさ、家来ちゃったんだ。」
明人はそう言って笑うと椅子から立ち上がり、硬直する美結の下に近寄った。
少しずつ近付く明人との距離に美結は何故か足が動かず、強く胸が締め付けられていた。
ーずっと、会いたかった。
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