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初デート
「何ーっ。デートに誘われたって?」
「デート、やっとそうきたか陸くん。」
美結は友人達と球技大会の慰労会と題したカラオケパーティに来ていた。
美結が友人達に陸から誘いを受けたことを話すと、それはそれは大盛り上がり揶揄われた。
たった一人を除いてだが。
「デート行くのかよ。」
誰にも聞こえないような声でボソリと呟いたのは工だった。
あからさま工は不機嫌な態度で、ジュースのストローを啜っていた。
「それでどこに行くの?ご飯?買い物?」
「…映画に連れて行ってくれるって。」
美結はそう言うと頬を赤らめて、陸が提案した映画の広告をスマホで探して皆に見せた。
実際美結も、満更ではなかった。
しかも男の子との二人きりのデートは、元彼の明人と工としか経験がなかった。
「さて、明日から陸くんとのデートに向けて準備しよう!!」
「賛成ー!流行りのメイクやファッション調べとくわ。あ、流行りじゃなくて陸くんの好みのやつね。美結、さり気なくリサーチしとくのよ!」
最早当事者の美結より盛り上がっている海と日向は、美結と陸の念願のデートに向けてスケジュールを立てて準備をしたのだった。
そして球技大会からニ週間明けた休日、美結が陸と会うために向かった場所は陸の家だった。
二人の映画デートは行われることはなかった。
陸は球技大会を終わって間も無く、部活でアキレス腱を切ってしまうという大怪我をしてしまったのである。
一週間入院して治療に励み、数日前に陸は退院したばかりだった。
デートどころではない陸の下に、美結は陸の家に訪問しお見舞いに来たのであった。
陸の家に着くと、陸の両親は仕事で不在のようだった。
「美結お姉ちゃん、久しぶり。元気だった?」
「私は元気よ。空くん、また身長伸びた?」
「伸びた!早く家に上がって。お兄ちゃん待ってたから。」
代わりに陸の弟、小学生六年生の空が家に美結を招き入れ、陸の部屋に案内してくれた。
美結は陸の部屋に入るのが中学一年の頃以来でとても緊張したが、人懐こい陸の声かけに少し気持ちが楽になった。
「陸、大丈夫?大丈夫じゃないよね。まだ痛い?」
美結がノックをして陸の部屋に入ると、陸は横になっていた身体を起こしてベッドサイドに腰を下ろした。
陸はまだ身体を動かすと、表情を顰めていた。
「美結、本当にごめんね。せっかく約束してたのに。」
「大丈夫だよ、陸。」
「おわびといってはなんだけど、空アレよらしくね。」
「はーい。」
そう言って早足で陸の部屋を出て行った空は、しばらくすると季節のフルーツが沢山乗ったタルトのホールケーキを二人の前に持ってきた。
美結は綺麗にデコレーションされたタルトケーキを見て思わず歓声をあげた。
「美味しそう!素敵なケーキ!」
「球技大会で、お互い出場したチーム優勝しただろ?二人でお祝いしたかったんだ。」
そう言って床に身体を移そうとした陸の身体が前のめりにふらつき、美結はすかさず陸の身体を支えた。
目が合った陸は頬を赤らめて、美結から顔を逸らした。
美結もつい自分がしてしまったことに反応し、陸と同じ表情になっていた。
「あれ、お兄ちゃんたちってもしかして…。」
「空。かぁ、ケーキ食べよう。」
陸と美結の様子をニヤニヤと笑って見つめる空を他所目に、陸はタルトケーキを頬張った。
ー陸って小さい頃から甘いもの好きなんだよね。美味しそうに頬張ってて、可愛い。
美結は甘いもの好きの陸の幸せそうな食べっぷりを見つめ、微笑んだ。
そして三人は昼過ぎまで楽しく会話をした後、陸の母親が帰ってきたため美結は帰宅することにした。
美結の帰り際、陸は松葉杖を支えに立ち上がると美結に言うのだった。
「美結、今日は家に来てくれて嬉しかった。明後日から学校はしばらく車で行かなきゃいけないんだけど、美結は一人で大丈夫?良かったら一緒に車に乗ってく?」
「大丈夫よ。私まで車に乗ったら大変だから。」
「そっか。くれぐれも気をつけてね。」
「ケーキありがとう。美味しかった。また明後日学校でね。」
心配性な陸の気持ちに胸が熱くなった美結はそう言うと、笑顔で陸と空に手を振って陸の家を後にした。
そして美結が自宅の前に着くと、玄関には紗夜が仁王立ちしていた。
「ねぇ、お姉。工から今日は陸と家デートするって聞いたけど、どうだった?」
「ちょっと待って。なぜ、あんたが工と繋がってるんだ。」
「お姉の元彼だからだよ!」
まるで掴みかかるかのような勢いの紗夜を美結は払いのけて、家に入りリビングのソファーに座った。
「なんでお姉ちゃんばっかり。」
「陸とはただお見舞いに家に行っただし。」
「ただってなによ。ただって。」
「いや、だからさ。」
しかし紗夜はしつこく美結の隣に座ると寄ってたかって、小言を言い始めた。
「あらあら、姉妹喧嘩はよしなさーい。見て見て、お昼はグラタンよ!」
「お母さん、グラタンの季節じゃないと思うんだけど…。」
「紗夜もグラタンな気分じゃない。」
しかしいつもと変わらず天然な母に場の空気は和み、姉妹喧嘩は終わった。
そして美結は季節外れだけど温かくて美味しいグラタンを頬張りながら、もし陸と本当にデートができていたらどうなってたかを考えていた。
ーあれ?デートというか陸にとっては、球技大会お疲れ様会だったのでは?私が考えすぎてたんじゃ…。
しかし陸の気持ちはまだ鈍感な美結には伝わりそうにはなかった。
「デート、やっとそうきたか陸くん。」
美結は友人達と球技大会の慰労会と題したカラオケパーティに来ていた。
美結が友人達に陸から誘いを受けたことを話すと、それはそれは大盛り上がり揶揄われた。
たった一人を除いてだが。
「デート行くのかよ。」
誰にも聞こえないような声でボソリと呟いたのは工だった。
あからさま工は不機嫌な態度で、ジュースのストローを啜っていた。
「それでどこに行くの?ご飯?買い物?」
「…映画に連れて行ってくれるって。」
美結はそう言うと頬を赤らめて、陸が提案した映画の広告をスマホで探して皆に見せた。
実際美結も、満更ではなかった。
しかも男の子との二人きりのデートは、元彼の明人と工としか経験がなかった。
「さて、明日から陸くんとのデートに向けて準備しよう!!」
「賛成ー!流行りのメイクやファッション調べとくわ。あ、流行りじゃなくて陸くんの好みのやつね。美結、さり気なくリサーチしとくのよ!」
最早当事者の美結より盛り上がっている海と日向は、美結と陸の念願のデートに向けてスケジュールを立てて準備をしたのだった。
そして球技大会からニ週間明けた休日、美結が陸と会うために向かった場所は陸の家だった。
二人の映画デートは行われることはなかった。
陸は球技大会を終わって間も無く、部活でアキレス腱を切ってしまうという大怪我をしてしまったのである。
一週間入院して治療に励み、数日前に陸は退院したばかりだった。
デートどころではない陸の下に、美結は陸の家に訪問しお見舞いに来たのであった。
陸の家に着くと、陸の両親は仕事で不在のようだった。
「美結お姉ちゃん、久しぶり。元気だった?」
「私は元気よ。空くん、また身長伸びた?」
「伸びた!早く家に上がって。お兄ちゃん待ってたから。」
代わりに陸の弟、小学生六年生の空が家に美結を招き入れ、陸の部屋に案内してくれた。
美結は陸の部屋に入るのが中学一年の頃以来でとても緊張したが、人懐こい陸の声かけに少し気持ちが楽になった。
「陸、大丈夫?大丈夫じゃないよね。まだ痛い?」
美結がノックをして陸の部屋に入ると、陸は横になっていた身体を起こしてベッドサイドに腰を下ろした。
陸はまだ身体を動かすと、表情を顰めていた。
「美結、本当にごめんね。せっかく約束してたのに。」
「大丈夫だよ、陸。」
「おわびといってはなんだけど、空アレよらしくね。」
「はーい。」
そう言って早足で陸の部屋を出て行った空は、しばらくすると季節のフルーツが沢山乗ったタルトのホールケーキを二人の前に持ってきた。
美結は綺麗にデコレーションされたタルトケーキを見て思わず歓声をあげた。
「美味しそう!素敵なケーキ!」
「球技大会で、お互い出場したチーム優勝しただろ?二人でお祝いしたかったんだ。」
そう言って床に身体を移そうとした陸の身体が前のめりにふらつき、美結はすかさず陸の身体を支えた。
目が合った陸は頬を赤らめて、美結から顔を逸らした。
美結もつい自分がしてしまったことに反応し、陸と同じ表情になっていた。
「あれ、お兄ちゃんたちってもしかして…。」
「空。かぁ、ケーキ食べよう。」
陸と美結の様子をニヤニヤと笑って見つめる空を他所目に、陸はタルトケーキを頬張った。
ー陸って小さい頃から甘いもの好きなんだよね。美味しそうに頬張ってて、可愛い。
美結は甘いもの好きの陸の幸せそうな食べっぷりを見つめ、微笑んだ。
そして三人は昼過ぎまで楽しく会話をした後、陸の母親が帰ってきたため美結は帰宅することにした。
美結の帰り際、陸は松葉杖を支えに立ち上がると美結に言うのだった。
「美結、今日は家に来てくれて嬉しかった。明後日から学校はしばらく車で行かなきゃいけないんだけど、美結は一人で大丈夫?良かったら一緒に車に乗ってく?」
「大丈夫よ。私まで車に乗ったら大変だから。」
「そっか。くれぐれも気をつけてね。」
「ケーキありがとう。美味しかった。また明後日学校でね。」
心配性な陸の気持ちに胸が熱くなった美結はそう言うと、笑顔で陸と空に手を振って陸の家を後にした。
そして美結が自宅の前に着くと、玄関には紗夜が仁王立ちしていた。
「ねぇ、お姉。工から今日は陸と家デートするって聞いたけど、どうだった?」
「ちょっと待って。なぜ、あんたが工と繋がってるんだ。」
「お姉の元彼だからだよ!」
まるで掴みかかるかのような勢いの紗夜を美結は払いのけて、家に入りリビングのソファーに座った。
「なんでお姉ちゃんばっかり。」
「陸とはただお見舞いに家に行っただし。」
「ただってなによ。ただって。」
「いや、だからさ。」
しかし紗夜はしつこく美結の隣に座ると寄ってたかって、小言を言い始めた。
「あらあら、姉妹喧嘩はよしなさーい。見て見て、お昼はグラタンよ!」
「お母さん、グラタンの季節じゃないと思うんだけど…。」
「紗夜もグラタンな気分じゃない。」
しかしいつもと変わらず天然な母に場の空気は和み、姉妹喧嘩は終わった。
そして美結は季節外れだけど温かくて美味しいグラタンを頬張りながら、もし陸と本当にデートができていたらどうなってたかを考えていた。
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