6 / 25
3.5話:マイという女の子
しおりを挟む
学校の宿題をハシルとともに終わらせた後、マイは下からマリサを呼んで、ボードゲームに誘う。ハシルとマリサ、リコにマイの4人で勝負すれば、30分ほどで終わるゲームなので、3戦ほど盛り上がったころには彼女が家に帰る時間であった。
マイ「それじゃ、今日はお暇します」
彼女がぺこりと頭を下げて店を後にしようとすると、彼女はリコと目が合った。
マイ「あの、リコさん。今日は、私の家まで送ってくれませんか? 近くなので」
リコ「え、私?」
マイに指名され、リコは戸惑う。
ハシル「おや、僕じゃなくていいの?」
そんなリコに助け船を出すようにハシルが申し出るが、リコも少し興味が湧いてくる。
リコ「私でいいなら。でも、なんで?」
マイ「リコさんと、今日知り合えた記念に。私のことをもっと知ってほしいなって」
少し照れた顔で見上げるマイを見て、リコは微笑み頷いた。
リコ「わかった。それじゃあ送ってあげる」
マリサ「行ってらっしゃいリコ。本当に近所だから、拍子抜けしちゃうかもだけれど」
一緒にボードゲームをしていたマリサに促され、リコはマイと共に夜の甘草を1分ほど歩く。観光地や繁華街からは少し離れているとはいえ、人通りはそこそこ、大通りから小道に入る一瞬程度は危険かもしれないが、ここで虎視眈々と待ち続け、千載一遇のチャンスを狙いすましでもしなければ犯罪のチャンスはないだろう。拍子抜けするほど近いと言われるだけのことはある。こんな小さな女の子でも、安全に帰宅するのに問題はないはずだ。そうしてたどり着いたのは、築何十年と行ったところの古いボロアパート。その一室にマイの家はあった。
ワンルームの小さな家。玄関から家のほぼ全体を見渡せるくらいには狭い。おそらくはユニットバスであろう、風呂と洗面台の掃除されていない、ヘドロのようなカビのような嫌な臭いがする。しかしながら、ため込んだ洗濯物の匂いはしないし、ワンルームの見えるところに目立つごみは落ちていない。母親に放置されているというから、部屋中汚れているかとも思われたが、意外にも掃除はしているようだ。
お酒の匂いもした。男の匂いもするのに、男物の服や靴、小物の一つもない。靴は外出中か、見えるところにないだけかもしれないが。
気付けば、マイは靴を脱ぎリコの目の前に立っていた。
マイ「送っていただきありがとうございました」
マイはぺこりと頭を下げてリコに頭を下げる。目が潤んだ彼女の瞳を見つめていると、何だかこのまま帰りづらい。
リコ「いいのよ。ちょっと外の空気を吸うのもいい気分転換だし……少し、酔っちゃったしなぁ。休んでいこうかな」
リコはそう言い訳をして、マイと少しでも長い時間いてあげる理由を作ると。靴を履いたまま玄関に座り込んだ。そこに黙って寄り添うマイ。やっぱり甘えたかったのだろうか。
室内は冷え切っており、暖房もつけていないので寒い。そのせいか、自然に二人でぴたりと体を寄せ合うことになる。リコはしばらくそのまま彼女の呼吸を感じていた。この子は、バーが好きというわけでもなく、勉強するためというのもついでの理由で、本当は大人に甘えたくてターミナルに来ているのだろうか? そんな考えが浮かんでくる。
だったら、少しの時間だけでも甘えさせてあげようと、リコは何も言わずにその時間を過ごす。
そうしていると、マイがリコの匂いを嗅いでいることに気づいた。お返しとばかりにリコも彼女の匂いを嗅いでやると……マイの服からはマリサのものと同じ匂いがした。こうやって、匂いや外観から家庭環境を想像してしまうのは職業病だなぁ、と思いながらも悪癖は止められず、マイが自宅では洗濯できていないのだろう、だからマリサの家で洗濯していることを推測してしまうリコであった。
リコ「ねえ、学校は楽しい?」
マイ「うーん……わかりません。友達もいないし、最近のゲームやアニメも見れていないから、みんなとあんまりお話し盛り上がらないので」
リコ「そっか。大変だね」
マイ「バーで大人のみんなと話してる方が楽しいんですよね。ボードゲームしたり、勉強教えてくれて……みんな親切だから。それに、ゲーム機も、古い奴をもらったから……感想とかを話すのが楽しくて。ストーリーとか、とても面白いから話が弾むんです。大人になると、ゲームの話をする人もいないからって、結構みんな楽しんでくれて」
リコ「いいねぇ。読書感想文の練習になるんじゃない?」
マイ「いやいや……映像で慣れちゃうと、文章を読むのが難しくって。読書は苦手かな?」
マイは苦笑する。
マイ「でもですね、そうやってお話をしているおかげなのかな、最近はこう……学校の同級生の人たちより、悪口がうまくなったって感じるんです。」
リコ「そんなものうまくならなくたっていいのに」
マイ「だってあいつらさ……私のことを親に捨てられた子供とか、あばずれの娘だとか言ってきて……うざったくって困るんですよ?」
リコ「ひどいこと言うね。どこからそんな噂が漏れるんだか……ってかあばずれって、意味わかっていってるのかな?」
マイ「赤ちゃんを作る行為のまねごとを、誰とでもやっちゃうってことですよね?」
リコ「う、うん……そうだね」
具体的なことを濁しつつも、間違っていないその認識にリコはどう返せばいいのやら、ただ頷くしかできなかった。
マイ「怖いですよね、噂って。でも、いいんですよ。『普通の親がいるってそんなに自慢ができることなの? 貴方自身がすごいわけじゃないのに?』『親に大切にされているのに、人を馬鹿にすることでしか楽しめないの?』『あなたの親は、母親が悪ければ娘も馬鹿にしていいって教えてくれるの?』『素敵な親御さんだねぇ、って褒めてあげればいいの?』『すごい親がいて、貴方はすごいねぇ』って言ったら、『うるせぇ、死ね』としか言えなくなって。自分から喧嘩を売っておいて、何も言い返せなくなる人を見ていると、結構気持ちいいんですよ?」
リコ「おっそろしい切れ味……」
マイの返しがあまりに的確でリコは苦笑する。
マイ「面白いんですよ。人ってね、気分がいいときはいい臭いがするけれど、気分が悪いときは嫌な臭いがするんです。
私が言い返すと、嫌な臭いがプンプンしてきて……ふふ、私が言い返しても効いていない振りをする奴もいますけれど、私には起こってるのを隠すことなんて出来ないんですよね。硫黄の臭いなんですってね」
リコ「えー……嫌な臭いって、そんなの気にしたこともなかったな、すごいね」
リコは考えたこともないような特技を、マイがもっていることを聞いて、感心すると同時に末恐ろしさを感じた。そんな特技を持っていないと生きられないような生活だった、ということか。
マイ「まぁ、悪口も、硫黄の匂いがどうのこうのも……ハシルさんの受け売りですけれどね? 私が学校で馬鹿にされて悩んでいることを打ち明けたら、こう言い返してやれって。もちろん、私からは悪口は言わないようにしています。
ハシルさんからは『悪口は自分の品位を下げるから、なるべく使わないこと。でも、悪口を言われたときは、言い返してもいい』って言われてますので……臭いで不機嫌かどうかわかるのは、ハシルさんでも難しいって褒められちゃいました」
リコ「でも、そんなに怒らせちゃって殴られないの?」
マイ「私に殴られても、親が賠償金とか慰謝料とかを払えないんですよね。だから、相手は泣き寝入りするしかありません。前、一度だけ徹底的に殴り返してやったら、慰謝料請求されたけれど泣き寝入りになっちゃって……みんな私に直接的な暴力なんてしませんよ」
リコ「親がろくでなしでいいこともあるもんだね」
マイ「あら……私ってば、親がろくでなしって遠回しに認めちゃいましたね。あんまり、そう思いたくはなかったけれど。だんだん、私に残してくれる生活費も少なくなってて、それじゃとても生活できないし。バーの人たちに世話されて、何とか生きてます」
リコ「そっか……貴方は、沢山の人に支えられているんだね。親がアレなのはその……何とも言えないけれど。でも、助けてくれる大人がいるのは、いいことだね」
マイ「……はい。みんな優しくて助かってます。だから、ついついバーに行きたくなるんです……マスターもマリサさんやハルトさんも、最初は迷惑がっていましたけれど……今は受け入れてもらってて」
リコ「じゃあ、マイちゃんも常連さんだね。名前と顔、覚えておくよ」
マイ「ありがとうございます」
マイはそういうと、リコの腕をぎゅっと握る。
リコ「あら何、まだ甘えたいの?」
マイ「ダメですか?」
リコ「いいよ。でも、男の人にもこうやって甘えてるの?」
マイ「いやいや、無理ですよ。もっと小さいころは……でしたけれど、今は手をつなぐ程度にとどめています」
そんなマイの行動を茶化すと、マイははにかみながら否定した。そのまましばらく、二人の呼吸音だけが響く。
リコ「結構、ゆっくりしちゃったな。そろそろ、私はお店に戻るかな」
マイ「……ありがとうございました」
名残惜しそうだったが、マイはつかんでいたリコの腕を離し、座ったままリコが立ち上がるのを見届ける。
リコ「それじゃ」
リコがドアの向こうに消えるまで、マイは頭を下げ続けていた。なんというか、すごい子だ。計算づくか、それとも無意識か、「かわいそう」を武器にして、放っておけないように仕組まれているような……そんな気がする。わかっていても、実際に助けてあげないと生きていけない立場だから助けずにはいられなくなる。
そして、助けたらその分だけ、健気に笑顔や愛情を返してくれるような彼女の態度に、助けたことを後悔させない魅力がある。うまくやれば、風俗店や水商売などでいくらでも稼げそうなポテンシャルを感じる。もっとも、本人がそれを望んでいるかどうかは定かではないが。
マイ「……いい匂いだったな、リコさん」
リコが去ったドアを見つめながら、マイはぽつり、つぶやいた。
マイ「それじゃ、今日はお暇します」
彼女がぺこりと頭を下げて店を後にしようとすると、彼女はリコと目が合った。
マイ「あの、リコさん。今日は、私の家まで送ってくれませんか? 近くなので」
リコ「え、私?」
マイに指名され、リコは戸惑う。
ハシル「おや、僕じゃなくていいの?」
そんなリコに助け船を出すようにハシルが申し出るが、リコも少し興味が湧いてくる。
リコ「私でいいなら。でも、なんで?」
マイ「リコさんと、今日知り合えた記念に。私のことをもっと知ってほしいなって」
少し照れた顔で見上げるマイを見て、リコは微笑み頷いた。
リコ「わかった。それじゃあ送ってあげる」
マリサ「行ってらっしゃいリコ。本当に近所だから、拍子抜けしちゃうかもだけれど」
一緒にボードゲームをしていたマリサに促され、リコはマイと共に夜の甘草を1分ほど歩く。観光地や繁華街からは少し離れているとはいえ、人通りはそこそこ、大通りから小道に入る一瞬程度は危険かもしれないが、ここで虎視眈々と待ち続け、千載一遇のチャンスを狙いすましでもしなければ犯罪のチャンスはないだろう。拍子抜けするほど近いと言われるだけのことはある。こんな小さな女の子でも、安全に帰宅するのに問題はないはずだ。そうしてたどり着いたのは、築何十年と行ったところの古いボロアパート。その一室にマイの家はあった。
ワンルームの小さな家。玄関から家のほぼ全体を見渡せるくらいには狭い。おそらくはユニットバスであろう、風呂と洗面台の掃除されていない、ヘドロのようなカビのような嫌な臭いがする。しかしながら、ため込んだ洗濯物の匂いはしないし、ワンルームの見えるところに目立つごみは落ちていない。母親に放置されているというから、部屋中汚れているかとも思われたが、意外にも掃除はしているようだ。
お酒の匂いもした。男の匂いもするのに、男物の服や靴、小物の一つもない。靴は外出中か、見えるところにないだけかもしれないが。
気付けば、マイは靴を脱ぎリコの目の前に立っていた。
マイ「送っていただきありがとうございました」
マイはぺこりと頭を下げてリコに頭を下げる。目が潤んだ彼女の瞳を見つめていると、何だかこのまま帰りづらい。
リコ「いいのよ。ちょっと外の空気を吸うのもいい気分転換だし……少し、酔っちゃったしなぁ。休んでいこうかな」
リコはそう言い訳をして、マイと少しでも長い時間いてあげる理由を作ると。靴を履いたまま玄関に座り込んだ。そこに黙って寄り添うマイ。やっぱり甘えたかったのだろうか。
室内は冷え切っており、暖房もつけていないので寒い。そのせいか、自然に二人でぴたりと体を寄せ合うことになる。リコはしばらくそのまま彼女の呼吸を感じていた。この子は、バーが好きというわけでもなく、勉強するためというのもついでの理由で、本当は大人に甘えたくてターミナルに来ているのだろうか? そんな考えが浮かんでくる。
だったら、少しの時間だけでも甘えさせてあげようと、リコは何も言わずにその時間を過ごす。
そうしていると、マイがリコの匂いを嗅いでいることに気づいた。お返しとばかりにリコも彼女の匂いを嗅いでやると……マイの服からはマリサのものと同じ匂いがした。こうやって、匂いや外観から家庭環境を想像してしまうのは職業病だなぁ、と思いながらも悪癖は止められず、マイが自宅では洗濯できていないのだろう、だからマリサの家で洗濯していることを推測してしまうリコであった。
リコ「ねえ、学校は楽しい?」
マイ「うーん……わかりません。友達もいないし、最近のゲームやアニメも見れていないから、みんなとあんまりお話し盛り上がらないので」
リコ「そっか。大変だね」
マイ「バーで大人のみんなと話してる方が楽しいんですよね。ボードゲームしたり、勉強教えてくれて……みんな親切だから。それに、ゲーム機も、古い奴をもらったから……感想とかを話すのが楽しくて。ストーリーとか、とても面白いから話が弾むんです。大人になると、ゲームの話をする人もいないからって、結構みんな楽しんでくれて」
リコ「いいねぇ。読書感想文の練習になるんじゃない?」
マイ「いやいや……映像で慣れちゃうと、文章を読むのが難しくって。読書は苦手かな?」
マイは苦笑する。
マイ「でもですね、そうやってお話をしているおかげなのかな、最近はこう……学校の同級生の人たちより、悪口がうまくなったって感じるんです。」
リコ「そんなものうまくならなくたっていいのに」
マイ「だってあいつらさ……私のことを親に捨てられた子供とか、あばずれの娘だとか言ってきて……うざったくって困るんですよ?」
リコ「ひどいこと言うね。どこからそんな噂が漏れるんだか……ってかあばずれって、意味わかっていってるのかな?」
マイ「赤ちゃんを作る行為のまねごとを、誰とでもやっちゃうってことですよね?」
リコ「う、うん……そうだね」
具体的なことを濁しつつも、間違っていないその認識にリコはどう返せばいいのやら、ただ頷くしかできなかった。
マイ「怖いですよね、噂って。でも、いいんですよ。『普通の親がいるってそんなに自慢ができることなの? 貴方自身がすごいわけじゃないのに?』『親に大切にされているのに、人を馬鹿にすることでしか楽しめないの?』『あなたの親は、母親が悪ければ娘も馬鹿にしていいって教えてくれるの?』『素敵な親御さんだねぇ、って褒めてあげればいいの?』『すごい親がいて、貴方はすごいねぇ』って言ったら、『うるせぇ、死ね』としか言えなくなって。自分から喧嘩を売っておいて、何も言い返せなくなる人を見ていると、結構気持ちいいんですよ?」
リコ「おっそろしい切れ味……」
マイの返しがあまりに的確でリコは苦笑する。
マイ「面白いんですよ。人ってね、気分がいいときはいい臭いがするけれど、気分が悪いときは嫌な臭いがするんです。
私が言い返すと、嫌な臭いがプンプンしてきて……ふふ、私が言い返しても効いていない振りをする奴もいますけれど、私には起こってるのを隠すことなんて出来ないんですよね。硫黄の臭いなんですってね」
リコ「えー……嫌な臭いって、そんなの気にしたこともなかったな、すごいね」
リコは考えたこともないような特技を、マイがもっていることを聞いて、感心すると同時に末恐ろしさを感じた。そんな特技を持っていないと生きられないような生活だった、ということか。
マイ「まぁ、悪口も、硫黄の匂いがどうのこうのも……ハシルさんの受け売りですけれどね? 私が学校で馬鹿にされて悩んでいることを打ち明けたら、こう言い返してやれって。もちろん、私からは悪口は言わないようにしています。
ハシルさんからは『悪口は自分の品位を下げるから、なるべく使わないこと。でも、悪口を言われたときは、言い返してもいい』って言われてますので……臭いで不機嫌かどうかわかるのは、ハシルさんでも難しいって褒められちゃいました」
リコ「でも、そんなに怒らせちゃって殴られないの?」
マイ「私に殴られても、親が賠償金とか慰謝料とかを払えないんですよね。だから、相手は泣き寝入りするしかありません。前、一度だけ徹底的に殴り返してやったら、慰謝料請求されたけれど泣き寝入りになっちゃって……みんな私に直接的な暴力なんてしませんよ」
リコ「親がろくでなしでいいこともあるもんだね」
マイ「あら……私ってば、親がろくでなしって遠回しに認めちゃいましたね。あんまり、そう思いたくはなかったけれど。だんだん、私に残してくれる生活費も少なくなってて、それじゃとても生活できないし。バーの人たちに世話されて、何とか生きてます」
リコ「そっか……貴方は、沢山の人に支えられているんだね。親がアレなのはその……何とも言えないけれど。でも、助けてくれる大人がいるのは、いいことだね」
マイ「……はい。みんな優しくて助かってます。だから、ついついバーに行きたくなるんです……マスターもマリサさんやハルトさんも、最初は迷惑がっていましたけれど……今は受け入れてもらってて」
リコ「じゃあ、マイちゃんも常連さんだね。名前と顔、覚えておくよ」
マイ「ありがとうございます」
マイはそういうと、リコの腕をぎゅっと握る。
リコ「あら何、まだ甘えたいの?」
マイ「ダメですか?」
リコ「いいよ。でも、男の人にもこうやって甘えてるの?」
マイ「いやいや、無理ですよ。もっと小さいころは……でしたけれど、今は手をつなぐ程度にとどめています」
そんなマイの行動を茶化すと、マイははにかみながら否定した。そのまましばらく、二人の呼吸音だけが響く。
リコ「結構、ゆっくりしちゃったな。そろそろ、私はお店に戻るかな」
マイ「……ありがとうございました」
名残惜しそうだったが、マイはつかんでいたリコの腕を離し、座ったままリコが立ち上がるのを見届ける。
リコ「それじゃ」
リコがドアの向こうに消えるまで、マイは頭を下げ続けていた。なんというか、すごい子だ。計算づくか、それとも無意識か、「かわいそう」を武器にして、放っておけないように仕組まれているような……そんな気がする。わかっていても、実際に助けてあげないと生きていけない立場だから助けずにはいられなくなる。
そして、助けたらその分だけ、健気に笑顔や愛情を返してくれるような彼女の態度に、助けたことを後悔させない魅力がある。うまくやれば、風俗店や水商売などでいくらでも稼げそうなポテンシャルを感じる。もっとも、本人がそれを望んでいるかどうかは定かではないが。
マイ「……いい匂いだったな、リコさん」
リコが去ったドアを見つめながら、マイはぽつり、つぶやいた。
0
あなたにおすすめの小説
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
