「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」

桜庵

文字の大きさ
112 / 170
最後の異世界生活~美桜編~

~花が持つ力~

しおりを挟む
美桜やサントリナ、ライラックの馬車が見晴らしのいい殺風景の中にたたずむ、とある孤児院と教会が併設された施設に着いた。

「ん~!ここはいつ来ても空気が気持ちいいわ!ね、美桜ちゃんも深呼吸、してみない?」
「私は…。」
「ふふっ。今は違うかしら。でも…きっとしたくなるわ、深呼吸。」

馬車から降りるなりサントリナは腕を大きく広げ、空気を思いっきり吸い込み深呼吸を一つした。
美桜にも深呼吸を薦めてみるが、気乗りしない美桜は俯いた。
サントリナはその事に特に気にも留めず美桜にただ優しく微笑むだけだった。
そこへ先に現地に着いていたアイリスが駆け寄ってきた。

「サントリナ様~!カノ…美桜様~!!ごきげんよう。お待ちしておりました!本日はお誘い、ありがとうございます。」
「アイリス嬢、ごきげんよう。こちらこそ、お誘い受けてくれてありがとう。」
「…ごきげんよう。…あの……どうして私の事…。」

「サントリナ様から少しお話は聞いていましたの。お久しぶりです、美桜様。」
「…あ!女神祭の後の…王宮の夜会の後以来ですね。」
「はい!私…あの時は入れ替わる現象があるとは思っていなくて…ですが、夜会の時にお会いしたカノン様と、私が初めてお誘いしたお茶会の時のカノン様…雰囲気が違ったので少し疑問でしたの…。それがサントリナ様の説明で納得いきましたのよ。」

「美桜ちゃん、ごめんなさい…勝手にお話ししてしまって…。」
「いえ…。急な事で驚かれるよりは…先に知ってもらった方が良い事もあります。」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。」

「あの、先ほどからすでにお呼びしてますが、美桜様…と、お呼びしてもいいですか?私の事は呼びやすいほうで大丈夫ですので。」
「…はい、私も…呼びやすい方で大丈夫です。えっと…改めまして、よろしくお願いします、アイリスさん。」
「ありがとうございます!こちらこそ、よろしくお願いします!」

美桜とサントリナ、アイリスはその場で少し話し込み、会話が一段落したところで施設に来た目的を果たすため、施設内へと足を運んだ。
三人の様子を少し離れた所からライラックも馬車から降りて見ており、三人の動きに合わせて離れている距離を保ちつつ施設内に足を運んだ。


孤児院という事もあり、数十人の子ども達で施設内は賑わっており、大人も数十人とパッと見た感じでは合わせて五十人ほどの人数がいた。
美桜が目の前の賑わいに唖然としていると、シスターがにこやかな笑顔で声を掛けてきた。

「サントリナ様、こんにちは。本日もお越し頂きありがとうございます。どうぞ、ご自由に中を見て回ってください。」
「シスター、ありがとう。お言葉に甘えますね。さ、美桜ちゃん、アイリス嬢、行きましょう。」
「はい!」
「…はい。」

施設の敷地内を歩いていると、少し開けた所に出るという目前でサントリナは美桜の前に立ちにこやかな笑顔を向け、サントリナの急な行動に美桜は戸惑いを見せた。

「あ、あの…サントリナお姉ちゃん?」
「ふふっ。もうすぐ目的地なの。私が美桜ちゃんの手を引くから目を閉じてくれるかしら。」
「わかりました…。」

サントリナの言葉に従って美桜は目を閉じ、サントリナは美桜が目を閉じたのを確認し、両手を取りゆっくりと目的地まで導いた。

数メートル歩き、美桜の手を引いていたサントリナの足が止まり、美桜もつられて足を止めた。
美桜の前に立っていたサントリナが美桜の横に移動した。

「美桜ちゃん、目を開けても大丈夫よ。」

サントリナの声を聴いた美桜は閉じていた目を開けた。
美桜の目に飛び込んできたのは広い庭…いや、もはや草原とも呼べるくらいに広がった土地一面に咲き誇っている色とりどりの花だった。
美桜は目の前の光景にあっけにとられ、感動の声が自然とこぼれた。

「わぁ…す…ごい…。」
「ふふっ。キレイでしょ。私の好きな花……スリジエ。」

美桜は花を間近で見たくなり近づいてしゃがみ、美桜の隣にサントリナやアイリスも並んでしゃがんだ。
ライラックは三人と離れた所に立ち、目の前に広がる一面の花を眺めていた。
 
「こんなにいっぱい…それに…色も濃い桃色や薄い桃色…白っぽい色もあって…キレイです…。………あれ、でも…この花…よく見たら……桜…?(たしか…芝桜って種類があったはず。)」
「美桜ちゃんのお国では『さくら』って言うの?」

「はい…ここの花みたいに地面に咲く種類もありますが、大きく育った木にたくさんの花を付ける種類もあります。その木がいっぱい並んでいる場所もあって、『さくらなみき』って呼ばれていて、すっごく綺麗なんです。」
「へぇ~!それも見てみたいわ!すっごく、キレイな光景なのでしょうね。美桜ちゃんがキラキラ輝いているもの。」

美桜は自分の国に咲く桜の事を思い出しながらいつのまにか熱く語っていた事に気付き、恥ずかしくなり俯いた。
それを見たサントリナは小さく笑い、視線を花に向けて静かに語り出した。

「この花…スリジエは…私やお兄様…カノンのお母様と同じ名前の花なの…。お母様はここの孤児院出身で…先代のフローライト家の当主とお父様が慈善活動でこの孤児院に来た時にお父様に見初められて、フローライト家に招き入れたんですって。反対の声も多かったけど…お父様が実力つけて押し切ったみたいなの。そういう経緯があって、お母様は私やお兄様が小さい頃、よくここに連れて来てくれたの。私にとって…とても大切な場所なの。今はここにしか咲いていないけど…国のあちこちに咲かせたいわ。」

遠い記憶を思い出しながら花を優しい表情で見つめるサントリナの様子に心を打たれた美桜は、一つの思いが湧き上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...