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泊まりがけの同窓会とオレンジ色
楽しかった記憶は
しおりを挟む橋の上から赤く色づき始めた紅葉や美しく輝く湖を眺めながらわたし達は歩いた。学生時代はこの道を通り学校に通ったなと思い出した。
何もない町だけどキラキラ輝く青春時代だったな。と考えたところで本当に? 頭の中に疑問符が飛び交う。
楽しかった記憶は何かが違うように思えてきた。それがどう違うのか分からない。
真夜は気づくと美奈と話しながら歩いていた。美奈のツインテールの髪が楽しげに揺れている。
「おい、亜沙美先生、小説のアイデア思いついたか?」
松木が声をかけてきた。
「全く思いつきません」とわたしは答え心の中で思い浮かぶのはオレンジ色の提灯ばかりですと呟いた。
「即答かよ。やっぱりぽんこつだよな」
松木はケタケタと笑っている。この憎たらしい松木の笑いさえも今はホッとする。
「松木ぽんこつって酷いよ」
わたしは、松木にムッとしながらもこうして言い合いをしていると暗く沈んでいた気持ちを忘れることが出来る。
「だって、本当のことだから仕方ないよな」
松木は大袈裟に溜め息をついた。
「亜沙美ちゃんと松木君は良いコンビだよね」
真由香がわたしの隣にやって来て言った。
「え~そうかな?」とわたしと松木の声が揃う。
「ほら、声が揃って息もぴったりじゃない」
真由香はそう言ってクスクスと笑った。
「そんなことないもん」、「そんなことないぞ」とわたしと松木はほぼ同時に言った。
「ほらほら、やっぱり良いコンビだよ~」
真由香は肩を震わせて笑った。
わたしと松木は眉間に皺を寄せ嫌そうにお互いの顔を見る。
そんなわたし達を見て真由香がお腹を抱えて笑う。高校時代のわたし達はいつもこんな感じだったな。
腹が立つ松木の顔と真由香の笑顔が高校時代のあの頃と重なって見えた。
気がつくと夕方になっていた。湖面に映る夕日と赤く染まった夕焼け空がとても綺麗でなんだか涙が出そうになった。
「みんな~夕飯食べて帰る?」
前を歩いていた美奈がくるりと振り返り言った。
わたし達は、「賛成~」と答える。
みんなで懐かしい舗装された田舎道をてくてく歩いた。ぞろぞろと歩き続けているとこの道はどこまでも続いているのではないかとそんな感覚に陥る。
そして、高校時代のあの懐かしい日々に出会えるのではないかなとさえ思えてくるのだった。
過ぎ去ったあの日々がこんにちはとわたしに呼びかけてくる。確かに存在した日々がキラキラと輝きわたしの前に姿を見せる。
「なんだか高校時代に戻ってきたみたいだね。懐かしいな」
真由香がぽつりと呟いた。
「うん、わたしも同じことを考えていたよ」とわたしは言った。
「俺もだよ。なんだかまだ自分が高校生なんじゃないかななんてね」
松木もそう言って懐かしそうに目を細めた。
みんな同じことを考えているんだなと思うとちょっと嬉しくなった。制服姿のわたし達が今もこの道を歩いている。
この道はあの頃と変わらずここにある。
「わたし、小説に書こうかな?」と思わず声に出していた。
「えっ!? 亜沙美遂に目覚めたのか~」
松木が振り向きわたしの顔をじっと見て言った。
「あ、えっと、懐かしい高校時代の小説でも書けたらなと思ったんだよ」
「おっ! それいいじゃん、書きなよ」
「うん、書けるか分からないけど頑張ってみるね」
そう答えわたしがにっこりと笑ったその時……。
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