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カラスと日記帳
駄菓子屋とお兄ちゃんとの思い出
しおりを挟むわたしは、久しぶりに駄菓子屋さんの扉を開いた。
「あら、史砂ちゃんいらっしゃい」
と顔見知りのお店のおばちゃんが明るい笑顔で言った。
「おばちゃん、久しぶり~」
わたしも明るく答えた。
お店の中には、小さな駄菓子類が綺麗にところ狭しと並べられていた。
うまい棒、ブラックサンダー、ポテトフライ、ふ菓子、チロルチョコ等々数えきれないほどいろいろなお菓子がある。
わたしは、駄菓子専用の小さなカゴにお菓子を選んで入れた。
駄菓子は、十円から高くても百円位なのでわたしのおこづかいでも充分買える。
うまい棒のめんたい味、お兄ちゃんが好きだったなと思いカゴに入れた。わたしは、コンポタージュ味が好き。
久しぶりにたくさん駄菓子を買って、お店のおばちゃんに、おまけのラムネをもらいお店を出た。
わたしは、お兄ちゃんの事故現場のお花等が置かれている場所に、うまい棒のめんたい味とポテトフライトを置いた。
「お兄ちゃん、久しぶり」
わたしは、手を合わせた。
この場所にお兄ちゃんの魂が残っているのかは分からないけれど、ここ、この場所で、お兄ちゃんは亡くなった。
それなのに、わたしは事故以降この場所に来ることを避けていた。
ごめんね。お兄ちゃん、許してね。
許してね、許してね。お兄ちゃん……。
すると、何処かから暖かい風が吹いてきたような気がした。
お兄ちゃんが 、史砂と言っているように感じられた。
暫くの間お兄ちゃんが亡くなったこの場所にわたしは佇んでいた。
「また、来るね、お兄ちゃん」
わたしは、お兄ちゃんに挨拶をしてその場を離れた。
ふわふわと風が吹き、お兄ちゃんが『わかったよ』と言ってるように感じた。
わたしは、前を向き歩き出した。それから、うまい棒のコンポタージュ味を袋から取り出して、パリパリと食べた。
美味しいな。お兄ちゃんは今頃めんたい味のうまい棒を食べているかな?
食べている、食べているよきっと。そうだよ。きっと。
わたしは、久しぶりに明るい気持ちになり歩いている。
それから、近くの公園に行きベンチに座った。わたしの他には誰もいなかった。ここは人のあまり来ない穴場の公園なのだ。
わたしは、ポテトフライトを袋から取り出してパリパリと食べた。
うん、これも美味しいな。
そして、猫の鞄に手を入れてお兄ちゃんの日記帳を取り出した。
日記帳のページをぺらぺらと捲った。
○月○日
最近、俺の周りで何かが起こっているんだろうか?
自分のそっくりさんや史砂のそっくりさんも見た。それから、最近カラスをよく見かける。この前なんてあのクチバシでつつかれそうになったのだから。
また、俺の生き写しみたいな男の子を見るかもしれないと思うとビクビクしてしまう。その反面俺の生き写しの本人と直接話をしてみたいなと思うのも事実だ。
それから史砂のそっくりさんとも話してみたい。また、隣町のショッピングセンターに行ってみよう。
今度は一人で行こう。そして、俺の生き写しみたいな男の子を見つけてやるぞ。
怖いけれど、楽しみだ。俺は男なんだからビクビク弱気にならないぞ。
楽しみが増えたと思えばいいのだ。
そうだろう?
ーーー――――ー
お兄ちゃんの強気な気持ちがひしひしと伝わってきた。
だけど、もしかすると、お兄ちゃんは自分に似た人を見つけ出して何かが起こったとか? まさか。
でも、あの事故は、わたしのせいだし……。
わたしが、突然走り出して飛び出したから。ハンカチを落としたから。
だけど……。
わたしが飛び出したのとは別に、あのお兄ちゃんを轢いた車は呪われていたとか?
駄目だ。だんだん話が飛躍していく。
鳩がベンチのまわりに集まってきた。わたしは、袋からポテトフライをもう一袋取り出して、ぱらぱらと撒いて鳩にあげた。
ガツガツクチバシで、ポテトフライトをつつく鳩。
鳩達は、パサパサと次から次へと集まってきて、我先にとポテトフライをつクチバシでつく。結構こうして見ていると、鳩も狂暴だなと思う。
だけどカラスのクチバシと比べたらずっと可愛いよね。なんて思いながらわたしは眺めていた。
穏やかで幸せな時間がずっとずっと続くといいな。
お兄ちゃんの日記帳は続きはあとで読むことにして、わたしは公園を出た。
晴れた秋の日差しが心地いい。日差しがわたしの顔を照らす。
お兄ちゃんの日記帳が入っている鞄を持っているとなんとなく心強い。お兄ちゃんと一緒に歩いている、そんな気分になれる。
幼かったたくさんの日々達がいっぱい溢れてきた。泣きたくなる、だけどぐっと堪えてわたしは上を向いた。
上を向き顔を上げると真っ青な青空が眩しくて、その青があまりにも綺麗で余計に涙が出そうになる。
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