どうかわたしのお兄ちゃんを生き返らせて

なかじまあゆこ

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カラスと日記帳

部家に戻る恐怖とナイフ

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  わたしは、振り返りもしないで、トボトボ階段を上がり二階の自室に戻った。

  はぁーと大きな溜め息が出る。

  わたしは、まだ中学一年生なのに毎日疲れている。カラスと戦い、お兄ちゃんのことで悩み、毎日毎日悩み続けている人生だ。

  こんな人生に意味があるのかなと、ふと考えてしまう。

  苦しいだけだよ。お兄ちゃん。

  わたしは毎日苦しいよ。どうしたらいいのかな?

  
  薄暗い部屋の中を見渡す。わたしの部屋、わたしの物たちで溢れている部屋。

 小さな頃から自分の部屋が大好きだった。好きな本を読んだり、お菓子をムシャムシャ食べたり、この部屋でごろごろするのも好きだった。

  それから隣のお兄ちゃんの部屋に行き、用事もないのに、「お兄ちゃん、ねえ、お兄ちゃ~ん」と言ってお兄ちゃんの勉強の邪魔をするのも大好きだった。

  あの楽しかった日々は一瞬のうちにガラガラと崩れ落ちた。

  
  あの事故が起きたせいで、お兄ちゃんの命もわたしの幸せも一瞬のうちに壊れた。

  何もかもがあの日を境に輝きから暗闇へと姿を変えたのだ。

  本当だったらわたしは今頃無邪気な中学生だったはずだ。

  だけど、今のわたしはひたすら辛いばかりの毎日を送っている。どうしてこんな目遭わないといけないの?

  わたしが、何をしたと言うのかな?

  あのカラスをあのカラスをぐちゃぐちゃにしてやりたい。と、考えたところであの事故とカラスは関係はないかと思い直した。


  だけど、カラスがわたしを苦しめていることは確かだ。

  あのカラスが現れなかったら、わたしはここまで苦しむことなどなかったと思う。

  やっぱり、やっぱり、あのカラスのせいなんだ。わたしが苦しいのはあのカラスのせいなんだよ。
 
  
  カラスのせいなんだ、あのカラスのせいなんだと考え続けているとわたしは苦しくなってきた。

  苦しいよ。苦しいんだってば。わたしは、気がつくとカッターナイフを持っていた。

「えっ……!?」

  わたしは、このカッターナイフで何をしようとした?

  考えると恐ろしくなってきた。

  
  無意識のうちにわたしは……。

  わたしは……。このカッターナイフで、そうだ、自分を刺してもいいかもと思い、死んで楽になってもいいかもなんて思ってしまった。

  自分の考えたことがあまりにも恐ろしくて、わたしはガタガタと震えた。

  体の中からなんとも言えない負の気持ちが溢れてきた。真っ黒でドロドロドロドロした気持ちが溢れてきた。

  
  気持ち悪い、気持ち悪い。もう何がなんだか分からない。

  手にしたカッターナイフの刃をわたしは見つめた。

  刺して見ようかな?

  刺したら、きっと血がどばどばと出て、黒色が赤色に変わるかもしれないよ。

  悪魔のわたしが囁いた。

  これは、悪魔の言葉だと分かっているのにどうすることも出来ない自分がいる。


  
  わたしの手は震えている。左右にガタガタ震えている。

                 助けて。助けて誰か……。

自分で持っているカッターナイフがひとりでに動いて、わたしの喉元に近づく、止めて、止めて、どうしたというの?

  わたしの手がまるで他人の手のように感じられた。カッターナイフの光る刃がわたしに向かう。

           助けてーーー――――――――――

  わたしは、どうなるの!

  
  光る刃がまるで生きているかのようにわたしの喉元に近づく、確かに生きているのは辛いと思っただけど、だけど死ぬのは怖い。

  お兄ちゃんに助けてもらったこの命を無駄になんて出来ないよ。

  出来ないんだから。

「そうか、無駄には出来ないんだな、そうか
そうなんだな」

  何処からかあの低くてよく通る声が聞こえてきた。

  この声は……。


  

  そうだ、アイツの声だ。あのカラスの声だった。間違いない。

「何処にいるの?  悪魔、あなたがわたしの手を動かしたの?」

  わたしの声だけが部屋中に響いた。

  暫くの間静寂に包まれた。

  それから暫くすると、突然、

「ワハハハッ、ワハハハッ、アハハハッ」とあの悪魔のようなカラスの笑い声が聞こえてきた。

「どういうつもりなの、一体何がしたいの?  わたしに何か恨みでもあるの?」

  わたしが悲痛な声で叫ぶとカラスは、

「恨みだと」と、深い深い、地の底から絞り出すような声で答えた。


  
「そうよ、わたしは、あなたに何もしていないよ。なのに、どうしてわたしに攻撃をしてくるの?  恨みでもあるって言うの?  それにあなたは本当にカラスなの?」

  わたしは、必死になりながら尋ねた。

「史砂、自分で考えるんだな。アハハハッアハハハッ。さらばじゃ、また会おう」

  カラスは、そう言って姿も現さないで、さらばじゃと言って、それからはわたしが何回問いかけても返答はなかった。
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