高尾山で立ち寄ったカフェにはつくも神のぬいぐるみとムササビやもふもふがいました

なかじまあゆこ

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つくも神

この料理を食べるために

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「なんだか不思議な偶然ですね。わたしも店員さんも懐かしさを感じる料理だなんて」

「はい、そうですよね。この料理を食べるためにわたし達はここにいるみたいですね」

  もしかするとわたしもお客さんもこの『ムササビカフェ食堂でごゆっくり』にこの料理を食べるために引き寄せられたのかもしれないなと思った。

「うふふ、案外そうかもですね」

  お客さんは楽しそうに笑いながら菜っ葉の煮物に箸を伸ばした。

「では、ごゆっくりどうぞ」

  わたしはにっこり笑い厨房に戻った。

「真歌さん、お客さんと話が弾んだんですか?」

  厨房に戻ったわたしに高男さんが聞いた。

「はい、お客さんと思い出の懐かしい味で盛り上がっていました」

「やっぱりお客さんも真歌さんもこの料理が懐かしいんですね。あ、冷めないうちに早く食べてくださいよ」

「え?  やっぱりって……」

  わたしは小さな椅子に腰を下ろし首を横に傾げる。

「高男さんは人の食べたいものを感じ取る能力があるんだもんね~」

  ムササビがニヒヒと笑い高男さんとわたしの顔を交互に見る。

「まあ、そんなところかな?  あのお客さんと真歌さんは雰囲気は全然違うけど何となく食べたいものとか似たところがあるのかなと思ったんですよ」

  高男さんはふふっと笑った。

「そうなのか。だからわたしもあのお客さんもこの不思議なムササビカフェ食堂にたどり着いたのかな?」

  わたしは菜っ葉の煮物とそれからお好み焼きを頬張りそうなのかもしれないなと感じた。


  菜っ葉の煮物もお好み焼きも懐かしい味がした。クールビューティなお客さんと一緒に各々の懐かしき思い出の中へとふんわりと包まれている気がした。

  おばあちゃんの家の大きなテーブルにみんなの笑顔。夏休みも冬休みもおばあちゃんの家で過ごした。楽しい時間。

  高男さんが作ってくれた料理を食べながらそんな懐かしい思い出の中に浸っていると、ミケが、

「わたしは初めて食べる料理が菜っ葉の煮物とお好み焼きだけどにゃんだか懐かしいにゃ~て感じるな」と言った。

  ミケの顔に視線を向けるとにゃぱーと笑い大きな口を開けお好み焼きを頬張っていた。その口の周りはソースや青のりにマヨネーズなどがべったりくっついていた。

「ミケちゃん、お口の周りを拭いたら」

  わたしは近くに置いてあったおしぼりをミケに渡した。

「え?」
  わたしからおしぼりを受け取りきょとんとした顔のミケにみんなの視線が集まる。

「ミケちゃんってばソースやマヨネーズで口の周りが汚れているよ~」

  ムササビがそう言うとようやく気がついたミケは「にゃんとまあ」と言って慌てておしぼりで口の周りを拭いた。

  ソースやマヨネーズに青のりなどで汚れたおしぼりに視線を落としにゃははと照れたように笑う人間の姿に化けたつくも神のミケは可愛らしかった。

「あはは、ミケの奴」

  高男さんもおかしそうに笑った。

「ミケちゃんってば」とわたしとムササビも声を揃えて言った。

 
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