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あの日から今
辿り着いた
しおりを挟むその二人の笑顔は、パンの焼き上がる甘くて香ばしい香りにふらふらと引き寄せられるように歩き、ピンク色の三角屋根でどことなく懐かしい雰囲気が漂い和と洋が調和しているこのムササビカフェ食堂にわたしが、辿り着いたあの日の笑顔と同じだった。
あの時が過去なのか今現在が過去なのかわからないけれど、どちらにしてもここへ辿り着くことが出来て良かった。
高男さんとムササビがこちらを見てにっこりと笑っている。
「やっとこの場所に辿り着くことが出来ました」
わたしも両手を大きく広げ微笑みを浮かべた。
ミケのピンク色の温もりはさらにあたたかさを増した。
わたしの思いが届いた。ううん、ミケがずっと、わたし達の幸せを願っていたから。それに真昼ひいおばあちゃんが天国からわたし達を見守ってくれていたからかな。
あたたかいミケの温もりに包まれたわたしはとっても心地よくて眠ってしまいそうになるほどだ。
「ミケちゃん、真昼ひいおばあちゃんにおばあちゃん。それから、高男さんとムササビちゃんに会えて良かった」
わたしは胸に両手を当てた。
すると、わたしの胸のあたりがぽかぽかとあたたかくなり幸せなピンク色に包まれた。
と、というのかわたしの体もミケと同じようにピンク色の光を放っているようだ。
「にゃはは、真歌ちゃん」
「ミケちゃん……」
わたしはミケのキラキラと輝く黄色の目を見つめた。その瞳はとても美しかった。
そして。
ゆっくりみんなの顔を見回すと、真昼ひいおばあちゃんにおばあちゃん、それから高男さんにムササビもあたたかいピンク色の光を放っていた。
みんなのぽかぽかとあたたかい春の陽だまりのような温もりがぱっと重なり合う。
あたたかい心と心が重なり合う。すると、それはもうなんとも言えないあたたかくてほっとする温もりに包まれた。
どんどんぽかぽかあたたかくて、ふわりと心地よくなる。
おばあちゃんが助かる。わたしはゆっくり視線をおばあちゃんに向ける。
「ありがとう、真歌ちゃん」
わたしを見てにっこりと微笑むおばあちゃん。
「この場所に出会えて良かった」
微笑み返しながら視線をゆっくり真昼ひいおばあちゃんに向けると、少女の姿から優しい雰囲気がふわりと漂う七十代後半くらいのおばあちゃんの姿に戻っていた。
「真昼ひいおばあちゃん!! 元の姿に戻ったの?」
「え? あら、わたし可愛い女の子の姿じゃなくなったのね……」
真昼ひいおばあちゃんは両手で自身のほっぺたに触れ「あらいやだわ。お肌にハリがなくなっているわね」と、ちょっと残念そうに言った。
「もう、真昼ひいおばあちゃんってば気にするところはそこなの」
「だって、わたしも女性だからね。気になるわよ」
真昼ひいおばあちゃんは、頬に両手を触れたまま言うものだからなんだか可笑しくて、わたしはクスッと笑ってしまう。
「そうだよね。やっぱり気になるよね。でも、おばあちゃんの姿の真昼ひいおばあちゃんも素敵だよ」
そう、真昼ひいおばあちゃんはふわりと優しさが顔に滲み出ている。きっと、困難や哀しいこともたくさんあったかもしれないけれど、それを笑顔で乗り越えてきたのだろうな。
「あら、そうかしら? それだったらとても嬉しいわ」
真昼ひいおばあちゃんはやっぱりふわりと優しさが滲み出る微笑みを浮かべた。
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