高尾山で立ち寄ったカフェにはつくも神のぬいぐるみとムササビやもふもふがいました

なかじまあゆこ

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ムササビカフェ食堂で今日も

今この瞬間を大切に

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 おばあちゃんが帰ったあとの店内は少し寂しくなった。

「真朝さんは帰られましたね」

「はい、ちょっと寂しいけど、また今度があるって嬉しいな。ただ、それと同時に今この瞬間も大切にしたいな~って思います」

 わたしはおばあちゃんが帰って行った扉をじっと見つめながら言った。

「そうですね。俺達は今を大切に生きていかなくてはですね。そうすると良き人生を歩んでいけますね」

 高尾さんも扉を見つめたまま柔らかいけれど、力強くもある声で言った。

「人間て大変だね。あやかしにもいろいろあるけどね」

「つくも神のぬいぐるみもいろいろあるにゃん」

 ムササビとミケも扉をじっと眺めていた。



 真昼ひいおばあちゃんもきっと、幸せな人生を送ったはずだ。そして、今、大阪に帰ったおばあちゃんの人生はこの先もまだ続く。そして、わたし自身もだ。

「さて、真歌さんお仕事頑張ってくださいよ」

 高男さんが扉からわたしに視線を移しニヤリと笑った。

「は、はい。頑張りますよ」

 なんだか高男さんのその表情が妖しげでドキッとする。スパルタはやめてくださいね。

「ミケちゃんも頑張るんだぞ」

 高男さんはわたしからミケに視線を移しじっと見ている。

「にゃはは。はい、にゃん。わたし今を大切にしてお料理を美味しくいただきま~すにゃん」

 ミケは得意げに胸を張る。

「おいおい、ミケちゃんそれはなんか違うよな……」

「え? そっかにゃん」
「ミケちゃんとわたしはお料理の味見係なんだよね」
「おいおい、何故にムササビも味見係になるんだよ」

 高男さんは呆れた声を出す。

「にゃはは、わたしは味見係だにゃ~ん。ねっ、ムササビちゃん」

「うん。ミケちゃ~ん」

 ミケとムササビはキャハハと笑い合っている。

「わたしも味見係になろうかな」


「はぁ? 真歌さんまで味見係になってどうするんですか」

 高男さんはそれはもう深い深い溜め息をついた。

「えへへ、だって味見係が一番楽しそうなんですもん」

「呆れてものも言えないですよ。さて、今日もお客さんがたくさん来るといいですね」

「高男さんとムササビちゃんのカフェ食堂は賑わうことってあまりないんじゃないですか」

「おっと、それは失礼な……」

「多数のお客さんよりムササビカフェ食堂はお客さんの質ってことですよ」

「う~ん、人数より質と言ってもね……。お客さんが少ないと売り上げにも影響しますからね。そうすると、真歌さんのお給料にも影響するな……」

高男さんはそう言ってふふっと笑った。

「え! そ、それは困りますよ~」

「あはは、だったらお客さんがたくさん来てくれるカフェ食堂にしなきゃですね」

「そのお客さんは訳ありな人やあやかしなんでしょう?」

「さあ、それはどうでしょうね」

 高男さんは可笑しそうにクククッと肩を震わせて笑っているんだから困ったものだ。

「もう高男さんってなんか意地悪ですよね」

 わたしはほっぺたをぷくっと膨らませる。

「真歌さんのことを考えて言っているんですよ」

 それは絶対ウソだよ。わたしのことをからかって喜んでいるように見えるんですけど。
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