【完結】公国第二王子の一途な鐘愛 〜白い結婚ではなかったのですか!?〜

緑野 蜜柑

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~6. 公国の戦略~

手紙の字

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「ありがとう。詳細は追って説明をしていく」

そう言って立ち上がった殿下がわたくしの手の上の帳簿を閉じる。机へ置かれたそれを見て、ふと、その近くに置かれていた手紙に視線が向いた。

上質な白い封筒。位の高い貴族からの物だろう。それよりも気になるのは、その達筆な字…

「あの、殿下…、その手紙は…?」
「あぁ、これか? 古くからの知り合いからの手紙だが…」

そう言って、殿下が差出人を見せるように手紙を裏返す。そこに書かれていたのはわたくしの知らない名。投函住所は、わたくしがまだ訪れたことのないレリック公国内の地名だ。

「この手紙が、どうかしたか…?」
「い、いえ。何も…」

一瞬、それはわたくしがよく見慣れた字だと思った。でも、名が違うということは他人だ。字が似ている人など幾らでもいる…

でも、この字をわたくしが見間違えることなんて、あるだろうか…。いや、でも…

「ロザリア…?」
「あ…っ、いえ、なんでもありませんわ…!」

そう言ってわたくしは慌てて殿下に微笑んだ。

「ところで…、その…」
「……?」
「よく…似合っている…」

突然、殿下が照れくさそうにわたくしにそう言った。

「え…?」
「髪だ。いつもと違うだろう…?」
「え…っ、あ、これは…」

殿下が首筋に付けた歯の痕を隠すために、レイラが片側に髪を纏め、大振りの花の髪飾りを付けてくれたものだ。

「先ほどレイラが結ってくれたのですわ」

そう言いながら殿下に微笑む。殿下の指がわたくしの髪の先にそっと触れる。

「殿…下…?」

わたくしを見つめる瞳。その奥に僅かに熱を感じた瞬間、殿下の顔が近づき、花飾りとは逆側の頬に接吻キスをされた。

「─…っ!」

予想外のことに驚く。ここは執務室で、殿下は今、執務中だ。部屋の向こうには執事のルバートもいる。

「で、殿下…!?」

慌てるわたくしに唇を離した殿下が小さく笑い、そのまま耳元で囁いた。

「今夜は、こちら側のうなじは、噛まないようにせねばな」
「─…っ!」

少し悪戯な表情でそう微笑んだ殿下に、わたくしはカァっと頬を熱くした。
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